@yama35329532
その1
「もし、もしもだよ?星を食べちゃう星とか、人を食べちゃうエイリアンがいたとしたら君はどう思う?」
「味は?」
即答だった。
なんだこの生命体。
「食べようとしてる?逆に食べられちゃうかもよ?」
「これは持論だが、食って良いのは食われる覚悟があるやつだけだ。」
……もしかして、こいつヤバいやつなのでは?
とっかかりにして食ってやろうとしたけど下手したらこれこっちが食われるのでは?
力でなら負けるはずもないけど、なんか、怖いなこいつ。
「まぁそんな食いしん坊とならご飯に行っても引かれなそうで助かるが、いるわけないよなぁ。」
いるんだよなぁ。
「それに、星は流石に食べたことがない。どんな味がするのか気になる。」
「星ごといこうとしてる?マジで?」
てか、あれ?
「……宇宙人は食べたことあるの?」
「はははは!流石にないなぁ。あ、言っとくがヒトもないぞ。雑食は美味しくないらしいし。」
「は、ははは……。」
「こんな話してたら腹減った。焼肉行くか。」
「あ、行く。」
それはそれ、これはこれ。
目の前のこいつはまだ食べないでおいてやろう。
命拾いしたな、人類。
(はらぺこなふたり:完)
その2
「もし宇宙人がいたとして『こんなものも食べるんだぞ!』って自慢するなら何?」
「SF好きか?まぁ宇宙人はロマンがあるから好きだけど。」
大学の友達が最近宇宙の話ばかりふっかけてくる。
面白いやつだから良いが。
「まぁ、そんなとこかな。」
「そうか。自慢、自慢ね……。」
「こんにゃくとか?三年かけてデカく育てたイモを灰と一緒に煮て作るんだが、このイモ生で食べると口の中に針が刺さる。」
「痛そう。」
その時点で食べるのやめ……てたらこいつみたいなのは産まれないよなぁ……。
「あとやっぱ王道はフグだな。」
フグは確かテトロドトキシンの。
「フグの卵巣漬け、なんで毒が抜けてるのかわかってないけど食べてるからな。」
「怖くないの……?」
「うまかったぞ?」
最近まで海外に居たっていうから慣れてないのかもしれない。
ただ一度は食べてほしい。
「すごいね、なんか。」
「海外だとキビヤックもすごいぞ。」
キビヤック。
「海鳥をアザラシにつめて発酵させて食べる。」
「ワァォ……。」
地球人の食への探究心は底なしか?
「中々うまかった。」
「あ、食べたことあるんだ。」
「おう。」
……アーガッシュ人もそのうち食われそうだなぁ。
(変わり種食文化:完)
その3
「……もしもの話だけど、僕がその『なんでもたべる宇宙人』だったら君は僕を食べる?」
「友達は食べないぞ流石に。あ、でもそうだな。もし本能に勝てなそうな時は言ってくれ。介錯はする。」
「そうなるかぁ……。」
「大切な友達を化け物にするぐらいなら手を汚すぐらいどうってことないさ。」
「たとえ話だからな?言っとくけど。」
「わかってるって。そんなのが居たらNASAに見つかってるだろうし。」
笑いながらのんきに答える『友人』を眺めつつ、やっぱりこいつを捕食するのは先延ばしにしよう、なんて。
同胞に見られたら嗤われそうだなぁ。
でも同胞が擬態してなかったらこいつに喰われそうだなぁ……。
(友情の話:完)
その4
世界滅亡なんてにわかにゃ信じられないが、目の前の惨状を見ると多分マジなんだろう。
最早ベコベコの金属バットを振り抜き、この場にいない友人に思いをはせる。
大丈夫かな、あいつ。
まぁ……オレのカンが当たってたらあいつだけは大丈夫だと思うが。
「一つさばいては焼肉のためェ!二つさばいてはピザのためェ!」
思ったより大変なかけ声とともに、『トモダチ』は同胞をホームランにしている。
「食って良いのはァ!」
「喰われる覚悟があるやつだけだ、だろ?」
「……ああ、無事だったか!」
よく言うよ、本当に。
擬態していないこの姿を見て、表情すら変わらないなんて。
「知ってたさ。お前、嘘つくのヘタだし。」
「……は?」
「ほら引っかかった。」
こんな簡単なカマカケにも引っかかる純粋なやつだ、あのたとえ話が全部本当だってことぐらい察しがつく。
「で、どうなんだ?俺の答えは変わってねぇぞ。」
まっすぐに目を見ようとしたが、目どこだ?
「……ははははは!!!いや、まさか、まさか同胞の匂いで食欲なくすとは思わなかったよ!!君はいつも僕の想定外を行くなぁ!」
その時が来たらしんみりして見せたあとに食べてやろうと思ってたのに!
こんなことになるとは思わなかった!
「なんだそりゃ。」
「いや、僕も想定外なんだって。」
「でも、この星はもうすぐアーガッシュに飲まれるよ。」
どうせもうじき滅びるのか。
あ、じゃあ。
「それまでに食べとかねぇともったいねぇなこいつら。あんた、食ったことあるか?」
「全く、地球人と一緒にしないでくれよ。そんなに悪食じゃないっての!」
「臭みがあることを考えるととりあえず香辛料で臭み消しはしなくちゃならねぇな……スーパーやってるかな。」
「今なら全品100%オフじゃない?」
「10割引か、いいな。」
どうせ今更だ、母星がこの星を飲むまでは『トモダチ』でいてやってもいいじゃないか。
(ある二人の実に賑やかな終末:完)
閑話
「肉の臭み消しには生姜が良いんだ。」
「僕を見ながら言わなくでくれよ、食われるかと思うだろ!」
「悪ぃ悪ぃ。」
その4
あれからすぐにアーガッシュがこの星を飲み込むか……と思いきや、どうもそうはならないようで。
というのも想定より地球人が生き残ってしまったためにアーガッシュの到来が遅れているらしい。
そんなわけで、僕はまた地球人に擬態する羽目になった。
「で、今度は一体何だい。」
「ん?ああ、俺はこう見えてお料理チャンネル的な動画をたまにあげてるからな。インターネットも復旧したんで動画作らねぇとと思って。」
「へぇ。」
ある意味思った通りではある、が。
「今度のテーマはアーガッシュ料理か?」
「冷蔵庫にそれぐらいしかなくて……。」
「……手伝ってあげようか?」
「いいのか?いや、ありがたいことではあるが。」
「良いよ。お互い様だ。」
「……どういう意味だ?」
答えてなんてやらない。
ある程度行政が復旧するまでの間同胞を食べるのを拒んだ僕のためにわざわざ川で魚取ってきてくれたりしたお礼だ、なんて言えるもんか。
「全く、この宇宙人たらしめ。」
「言いたい事があるならちゃんと言ってくれないと困るんだが……。」
困ってしまえ、このお人好し地球人め。
(どっこい続いた、何処か変わった日常:完)
その5
「今日の晩ご飯はなんだい?」
「刺身とエビフライ。揚げたてはうまいぞ?」
「明日の朝ごはんは?」
「鯖の味噌煮だ。冷蔵庫に入ってるがつまみ食いするなよ。」
「……おかしいと思わないのかい?」
「なにがだ?」
「僕が!平然と!ここにいることだよ!」
「いや、ずっと泊まってるわけでもねぇだろ。それに一人分のシチューやらカレーやらって作りにくいんだよ。居てくれた方が料理のレパートリーが増える。」
またこいつはこんなことを。
「いつか本当に君のこと食べちゃうかもしれないんだよ?」
「何、黙って食われる俺じゃねぇよ。知ってるだろ?」
……まぁ、こいつがあれこれ作るから僕もこいつを食えないんだけど。
こいつ食ったらもうこいつの料理食えないし。
「お前さんも随分慣れてきたじゃないか。最初は『君達の細胞の半分以上は大豆でできてるのかい?』なんて言ってたくせに。」
「それは今も思ってるよ正直。」
「驚かせてやろう。」
「何かな。」
「お前が今つまみ食いしてるその枝豆、大豆の若い頃だぞ。」
「……流石に驚かないよ。」
嘘、ほんとは驚いた。
「じゃあそうだな……昨日作ったずんだ餅のあの緑色の餡、枝豆だぞ。」
「は?」
「ねぇ、もしかしてさ……君達、一日のうちに最低一食は米と豆食べないと死んじゃうのか?」
「んなわけあるか。」
(胃袋をつかまれた宇宙人と大豆の万能性:完)
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