春の〆祭り参加作品の3作目です。今回は、反転ドラヒナのお話です。
吸血鬼・退治人・吸対が連携し、人間と吸血鬼が共生する時代を目指すみっぴき。
連携してそこそこ時間が経ち、新横浜で高等吸血鬼による事件が減り、県外にも遠征するようになった頃。県外の反人間派の同胞に、連絡を取って欲しいと反転ノースディンに頼みにいく、ドラルクさん。
プライドを捨て、ロナルドくん達を通じて、人間達や他の同胞達と交流をする様になってきた、今だからこそ思う所がある…そんなお話です。
いつも通り、捏造設定をご覧になってから、次にお進みください。
他に書いた反転ドラヒナのお話は、こちらから読めます→https://privatter.net/category/50931
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反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
反転ドラルク:
強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。彼女を自分に溺れさせようとしている内に、彼女の血以外受け付けなくなる程、自分の方がのめり込んでしまった。
ジョンやロナルドの助けもあって、彼女とは両想いとなり、「両種族の抗争が終結したら血族になる」という契約を交わし、抗争終結に協力する。
下等吸血鬼など話し合いが通じない相手へのお野蛮担当。
反転ヒナイチ:
吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、さらに快楽堕ち一歩手前までなる。
ジョンやロナルドの助けもあって、依存から愛情に移行するまで成長する。市民の警護や避難の担当。
反転ジョン:
ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
主夫婦がヤンデレ同士なので、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。
みっぴきのバランサー。
反転ロナルド:
全ての吸血鬼と友人になれる世界を作るのが夢の退治人。
戦闘に参加しないが、お話合いという必殺技を使う。最終的にお嬢が反転してゴリラになるのは、内緒。
両種族の共生の為には吸血鬼、吸対、退治人の連携が不可欠な為、仲介者として奔走している。
最強のお嬢で、みっぴきの切り札。
反転ノースディン:
ドラウスの親友でドラルクの師匠。反人間派寄りの中立派なので、向こう側の同胞達に対して顔が利く。
弟子に対しては、やる気を引き出す為に悪役を気取るのではなく、単に嫌味なだけ。
女道楽で、口説くのにチャームを使わない。多くの才能ある女性達のパトロンとなり、花に見立てて育て上げるのが趣味。
親友夫妻の息子の言動が粗野になってきたので、躾も兼ねて自分の城に連れてきた。格闘技と料理の腕はトップクラスで、そこのみ弟子に受け継がれた。
「全く…3年いてマシになったのは、言葉遣いと立ち振る舞いだけか。お前は、誇り高いあの方の血を引いた直系の孫なのだぞ。ドラウスの事を考える、頭もないのかな?」
「うるさいですよ、やっと明日からあんたの元から離れられるのです。お小言は、終わりにして頂けませんかね?」
「『あんた』では、ない。『貴方』だ…やはり、あと10年程追加するべきだと、ドラウスに報告しておこう。不出来な弟子くん。」
この3年間、無駄に長かった。15歳から18歳まで、私は、父の親友であるノースディンの元に預けられていたのだ。
幼い頃に再生能力がない事が発覚してから、両親からは甘やかされ、『どうせ、いつか死んでしまうのだ。やりたい事をやってから、死んでやる』とヤケクソになった、当時の私は…まぁ、思い出すのも恥ずかしいぐらい、グレていたのだ。
未だに中二臭いと、ヒナイチくん達に揶揄される私であるが…言わせないでくれ。
黒歴史、というやつだ。
問題行動を繰り返す、強大な力を持った少年の私を、周りの者は持て余し、両親は腫物を扱う様に大事にし、見るに見かねた氷笑卿が引き取った…そういう経緯だ。
『人間達との関係は、悪化するばかりだ。どう足掻いても、我々も人間達は食料として必要だ。奴らがもたらす文明の恩恵がなければ、存続は難しい。両親がその関係調整の為に、日々奮闘しているのは、知っているだろう?目立って、反抗的な行動を取るのはやめろ、と言っている。』
『アハハハ、よく言うよ。師匠は、お父様に気を使っているだけじゃないか。本当は、人間共なんて労働用の家畜で十分だ、なんて思ってるのは、俺でも察してますけど~?』
『久しぶりに『俺』が出てるぞ。畏怖度-10億点をやろう。』
口も態度もイタかったのだ。
誇り高い竜の血族の嫡孫らしい行動を…と、二言目には言われて、窮屈で窮屈で仕方がなかった。
教育的指導でアイスバーにされそうになったのは、二度や三度ではなかった。現代でやると、訴訟ものだと思う。
『元々、貴様の頭は、悪くはないのだ。座学だって、ちゃんと机に…おい、聞いているのか?その程度も出来ないとは…15歳だと記憶していたが、本当は5歳だったらしいね?』
興味がある事なら、ちゃんと学んでいる。興味がなければしない、それだけだ。
『そういうのを、世間では脳筋というのだ。チェスでは私を負かすのに、何故、実技で戦略を立てて向かってこない?再生能力がない事さえ、忘れてしまったらしいな?』
料理とこの授業だけは、楽しかった。だから、実際忘れているのだ。再生能力がない事どころか、痛みさえも忘れている。
師匠こそ、もう少し殺気を持って斬りつけて来て欲しいものだが。せいぜい、私の手を凍傷にする程度しか、攻撃してこなかったと記憶している。
『どこで覚えてきたのだ、そんな言葉遣い。いくら強大な力を持っていても、その辺の雑魚共の様な立ち振舞いで、畏怖して貰えると思っている…そこまで、幸せな奴だったとはな。』
それは、一理ある。
力で圧倒した時に、獲物には怯えた顔をして欲しい。吸血鬼のサガとして、下等吸血鬼でも出来るただの恐怖ではなく、その中に畏怖の念も入っていると、尚良い。
そこに関してはそう思って、譲歩した。
『人に好かれる所作も覚えておくべきだ。特に、女性を優雅にエスコートし、心も身体を掴んでおく必要がある。合意的に穏便に、極上の女性の生き血を…おい。霧になって逃げても無駄だ。何度言えば、分かるのだ?』
生き血が欲しければ、人間同士の戦争に紛れて、殺した獲物や捕らえた捕虜の血を吸えばいい。お人好しのお父様は、『幼い身で祖国の為に、義勇兵に参加している』と勘違いして、うれし泣きしていた。一石二鳥という奴だ。
実は…ヒナイチくんには未だに信じて貰えないが、当時の私が一番無意味と思っていたのが、『この授業』だった。
元々、武闘派の私はこういう事に関心が薄く、同胞に誘われても、ほとんど女遊びをしなかった。師匠の、同時進行で何人もの女性と関係を持つ…という事を嫌悪していたのだ。
もっというと、人づき合いも面倒な部分は、避けていたのである。
「嘘つけ!未だにほとんど毎晩…いや、いい。満月の夜以外、今のお前は痛い事はしないから…は、恥ずかしいから、その話はよせ。しつこいぞ!」
『自分から触れたいと思った女性は、200年以上生きてきて君だけだ。』と、何度言っても信じて貰えないのだ。
なまじ年齢を重ねてから、当時彼から教わった知識を引っ張り出してきて、彼女に行使した為、元々の教えからもズレていった…今となっては、そんな気がしている。
「やれやれ。かつて、『もうあんたの世話にはならない。ここを出れて、せいせいする。』と言った、乱暴なおぼっちゃまは…どこに行ったのだろう?不肖の弟子よ。」
「どこにも行ってないでしょう。ここにいますよ?師匠…貴方の可愛い弟子が、ね?」
吸血鬼生も、どう転ぶか分からないものだ。
現在の私は、監視員であったヒナイチくんに入れ揚げ、彼女が心置きなく、夜の世界に来られる様に…『吸血鬼、退治人、吸対が連携』し、何百年にも渡って続いてきた『両種族の抗争を終わらせよう』と、奮闘しているのだから。
「退治人のあの男とも契約し、監視員のお嬢さんとも契約し、そこそこ経ったはずだ。最近、交渉する相手も、新横浜限定でなくなってきた。今回は、千葉の反人間派の同胞達と連絡を取れ…だと?忙しそうで、何よりだな。」
「目が回る様に忙しいですよ。足代わりというか、彼らの飛行機代わりだって、しています。だから、師匠にもご協力頂かないと。」
語学研修で東欧に行っていたロナルドくんが帰国して、対立気味だった吸血鬼退治人と吸血鬼対策課の連携が、良好になってきた。
その際、ロナルドくんと私は、『ご友人となって、退治人ロナルドの悲願である、『全ての人間とお吸血鬼さんが、お友達になれる世界を作る事』にご協力する』という契約を結んでいる。
ここで、吸血鬼と退治人のパイプラインが、作られていった。
紆余屈折あって、ヒナイチくんと私が心身ともに結ばれて、『抗争が終結したら、私の血を受け入れて、永遠に一緒にいる』という契約を交わした事で、実家の協力も得やすくなった。
吸血鬼対策課と親人間派の同胞達のパイプラインが、構築されたのだ。
実を言うと、近頃、新横浜では高等吸血鬼による大きな事件は、減って来た。
ヒナイチくんが、定時で帰ってきてくれる事も増えた…かつての私にとって、ここで目標は終わりのはずだったろう。
「管轄を超えて、将来的には海外に遠征…なんて、愉快じゃないですか。実家の伝手を借りれば、向こうの同胞とも連絡が取れるし、通訳から案内、護衛、敵性吸血鬼の掃討まで、私がしてやれます。」
勿論、荒事にもことかかないし、私にとって趣味と実益を兼ねている。結構な事だ。
しかも、いつかはヒナイチくんを夜の世界に呼べるのだ。厭う理由は、全くない。
「そういう惚気というか、バカを晒しているというか。全く、人間共に絆されおって。貴様の師匠をしていた事が、恥ずかしいわ。」
「そう仰らずに…土下座程度なら、いくらでもして差し上げます。」
「うむ、最近プライドも捨て過ぎだ。本気で、当時お前の師匠を引き受けた事を、後悔している。言えば、靴さえ舐めそうなのでね。」
ロナルドくんが、無理矢理彼女を転化しようとしていた私に対して、『どうしても彼女が欲しいのなら、何かを諦める、何かを捨てる事をお勧めします』と言った。
私にとって、この世で最も大切なのは、ジョンだ。だから、その次に大切なプライドを捨てた。
捨てたら気楽になり過ぎて、自分でも驚いている。
「うむ…してやっても構わんが、その口で、ヒナイチくんにキスをする訳にはいかん。どうしたものか…。」
「本気で言っているな?はぁ…これ以上、バカ弟子の相手をするのも時間の無駄だ。さっきの件は、私の方で向こうに連絡をしておく。そのロナルドとかいう退治人と一緒に、彼らを説得する事だ。それより…。」
ノースディンが、私の前に置かれたゴブレットを見る。中に満たされているのは、ノースディンが世話をしている女性の一人から採った、極上の生き血である。
一口も飲んでいない、と言いたいのだろう。相変わらず、嫌味な人だ。
いつからだったか。
私は自身の執着を拗らせて、ヒナイチくんの生き血以外は、体が受け付けなくなってしまったのだ。1か月に一度、彼女から200cc貰えるのが、まともな食事と言っていい。
だから、生存に必要な最低限の生き血を、紅茶やワインで割って賄っている。
あんただって、知っているだろうに。
「その血でもダメか?未だに、そのお嬢さん以外の血では、吐いてしまうらしいな?」
「貴方がキープして、健康な生活を保障して、隔日採血させている女性達が、どの様な方々かは知りませんがね。匂いだけでも、噎せそうですよ。特1級だろうが、自販機の最安値のパックだろうが、火を通したゲロと同じでした。別に、よろしいじゃないですか。私の体が彼女以外を拒否した、というだけの事。」
「それを治そうと、VRCに通っていてよく言うものだ。私が知らないとでも、思ってたのか?」
何で知っているんだ、この髭。私のストーカーか、お前は。
「ワンチャン、私の口が奢っただけなら。静脈から血を入れて、何とかならないか…と思ったんですよ。」
結果は酷いものだった。溶岩を直接ぶち込まれた様になって、釣り上げたアリゲーターガーの様に、のたうち回る羽目になったのだ。
お人好しの所長に凄んで、口止めはしたはずだが…。
「竜の血族の嫡孫が、恥ずかしい真似をするな。全く、律儀に待合室に座りおって…VRCには逮捕された者達もおれば、そこから出所した者もおるわ。彼らから、聞き出したのだ。」
順番を破る訳には、いかんだろう。しかし、それはマズいな。
その後も、何か代替になるものがないか、調べて貰ってる。現在進行形で見つかっていない。
「飢餓感からヒナイチ嬢を衰弱死させてしまう恐れもあるし、唯一飲める血液を持っている彼女が、敵対している連中に狙われる恐れがある。そこまでは、理解しよう。」
私が諦めつつも、VRCに通っているのはそういう事だ。何か、つっこまれる事でもあるだろうか?
「ならば、愛しの君が為と騙し透かして、無理にでも彼女をドラウスの元に連れ帰って、保護するのが一番だと思うがな。彼女と契約を結んでしまったから、その手は使えん。自分で首を絞めおって。」
そうか。ヒナイチくんを手に入れるだけなら、そういう手もあったか。私が先に敵性吸血鬼共を殲滅し、彼女を守ってやれば済むだけの話なので、考えもしなかったな。
「大方、お前の事だ。VRC通いを、ヒナイチ嬢にも隠しているな?」
「…。」
図星だ、義眼が不機嫌な音を立てるのが分かった。
仕方がないだろう。今でもそんな必要もないのに、彼女は罪悪感を感じているのだ。
「ちゃんと、話しておけ。『お前が一番、無駄で馬鹿げだ授業』と揶揄した、人に好かれる所作だがな。初めに教えた女性の扱いの部分を嫌悪する余り、全体を毛嫌いしていたな?あれには、人間共とトラブルを起こした時の対応も含まれていたのだ。全てサボっていたから、使い魔だけでなく、あの退治人の手まで、借りなければならなかった。違うか?」
…それは、今となっては認めるしかない。
「帰れ。都合のいい時だけ頼って来るバカ弟子のせいで、私は忙しい。」
言うだけ言うと、そのままノースディンは、席を立つ。
背を向けた彼に、私は黙って頭を下げた。
「ヒナイチさん、もうおやすみになってはいかがです?」
ヌン、ドラルク様ならちゃんとヌンが出迎えてあげるヌから。
うん、そうなんだけどな。あいつは、私が監視員だった頃から、ここにいて私を出迎えてくれる。
今回も、嫌っている師匠の元に行ってくれたのだ。だから、労ってやりたいんだ。
「大丈夫だ…時間がかかっていたらしいな。さっき、戻ると電話があったから、そろそろ帰ってきていいものだけど。」
クスリ、と上品にロナルドが笑う。彼もそろそろ帰らないと…ロナルドも、千葉県の反人間派の者達と会う準備をしなければならないのに。
「分かりましたわ。それじゃあ、ジョンさんとお二人にお任せします。でも…。」
そう言って、ロナルドの大きな手が私の頬を包む。つくづく、綺麗な目だと見入ってしまうな。
彼がお嬢でなかったなら、ドラルクがうるさかっただろう…そんな事を考える。
「貴女も、ちゃんとおやすみなさいませ。睡眠不足は、お美容の大敵ですもの。」
「ヌンヌン。」
事務所へと向かう、ロナルドを送り出す。まだ、夜風は冷たかった。
だから、ドラルクに縫って貰ったショールを纏うと、私とジョンは窓の外を眺め続ける。
季節柄、日の出は早くなってきている。少しずつ東の空が白み始めた。
肉体が頑強だから、日光で死ぬ事はないが…色素の薄いあいつは、肌が爛れやすい。心配だな…。
あ、ヒナイチくん。帰ってきたヌよ。
ジョンの声に、窓を開いて目をこらす。オオコウモリが猛スピードで、こちらに向かってくるのが見えた。
「おかえり、ドラルク!」
お疲れ様ヌ、ドラルク様。
私達は白いオオコウモリを招き入れると、遮光カーテンを閉じる。
振り返ると、蝙蝠が見慣れたあいつの姿に戻る所だった。
「ただいま、遅くなってしまった。ヒナイチくん、ジョン。」
駆け寄ると、ドラルクは私達を抱き締めた。ホッとしたからだろうか…
「ふわあ…すまない。つ、つい…」
締まらない事に、大きな欠伸が出てしまった。
ヌフフ、仕方ないヌよ。
「クスクス、いいよ。ところで、ヒナイチくん。今日は、遅番だったね。少し眠り給え。起きたら、少し話したい事があるのだ…時間は、あるかね?」
「話したい事…?」
「まあ…何と言うか。格好のいい話では、ないのだ。それでよければ、聞いておくれ。」
何だろう…首を傾げて見上げると、妙に吹っ切れたドラルクの顔があった。
「どんな話でも、大丈夫だ。今、話してくれ。何があっても、最後にはお前を選ぶ…と、言っただろう?」