ドラルクさんの誕生日のお話です。30年後のドラヒナで、夫婦水入らずでイチャイチャしながら、出会った頃からの日々を思い出します。このネタ、結構書いてるなぁ。何度でも思い返してると思うんよ。
30年後のヒナイチくんがプレゼントした『サンストーン』は、11月28日の誕生石。
意味は、『愛の祝福』『幸福な日々』らしいです。勇気づけたい、元気になりたい時にお勧めだとか。
捏造設定で、床下を改築して、ロナサン夫妻と二世帯住宅になっており、それぞれに子供がいる設定になっております。ご注意下さい。
誕生日から一夜明けて、出勤するヒナイチくんを見送るドラルクさんのシーンを追加しました。
2023/11/28に上げました。
@kw42431393
毎夜、私を退屈させないシンヨコの夜。
今日も面白い事件がおきないかな…そんな期待を持って棺桶から出て来るんだけど、今晩だけは遠慮して欲しい。
「♩はっぴ…ごめんって。ジョン、そんな顔をしないでおくれ。」
「ヌヌ!」
私がする事なら何でも肯定してくれるジョンだけど、これだけは昔から塩対応だ。
でも、ついつい漏れてしまうのは仕方がないと思う。
だって、今日は…
「ただいま、ドラルク。あれ?ロナルドは?」
おや、我が最愛のクッキーモンスター…もとい、吸血鬼対策課ヒナイチ隊の隊長殿のご帰還だ。
「おかえり、ヒナイチくん。いつもの事さ。今日はシンヨコで、いや世界で最もめでたい日だから、脱稿しておいてって言ったのに。」
「懲りない奴だ、また缶詰めか。じゃあ、サンズもつき合いでオータムだな。」
「そうそう。子供達も帰って来るまで時間があるよ。だから…ね?遠慮なく。」
両手を広げてみせると、少し頬を染めながらも胸の中に来てくれる。
30年前だったら茹蛸になってただろうし、なんなら1回ぐらいは殺されてる。
「Draluc. La multi ani(ドラルク、誕生日おめでとう)」
「Mersi,Domnisoara(ありがとう、お嬢さん).」
唇に口づけを落としても怒らない。彼女の方からしてくる事もある。
その場合は、尊死のあまり、私が塵になってしまう事も珍しくなってきている。
基本的に、バッチリエスコート出来てるドラドラちゃんだけど。
『クッキーモンスター』『床下のリス』『餌付けし甲斐のあるハムスター』と揶揄していたはずの少女に、いつの間にか、精神的に追い越しされそうになっているのは、自覚せざるを得ないよね。
もう、されちゃったかな?されちゃってもいいけどね。
「フフッ、大人になったものだよねぇ。」
「仕方ないだろう。出会ってから、30年も経ってるんだ。娘だってもう外に出てるし、当たり前だ。」
そうだったね。初めて出会ったのは、この事務所。
ロナルドくんに長年住んでいた居城を爆破されて、転がり込んで間がない頃。
新鮮な生き血が恋しいなって、たまたま思ってた矢先に現れたのが君だった。
「あの頃は、手に挨拶のキスをしただけで真っ赤になって、飛び出して行ったよね。」
「う、うるさい!鍛錬ばかりしてて、飛び級で吸隊に入ったんだ。免疫がなかっただけだ。」
それから、私のクッキーの虜になってくれた君を、毎晩毎晩餌付けして、極上の処女の血に育て上げていたはずだったのに。だから、君を狙っている奴らを、こっそり追い払ったりしてたはずだったのに。
『あいつはいい奴だ。一緒にいて楽しいんだ!』
『私の為に、一生美味しいクッキーを焼き続けろ!』
篭絡されたのはこっちだったんだよね。負けてばかりじゃ癪だもの。
だから、ちょっとからかっちゃう。
「いつからだったかな~、『いってきます』のキスをしても怒らなくなったのは。手から場所が変わっていっても、受け入れてくれる様になったのは。」
「う、うぅ。お前の気障ったらしい行動パターンに慣れて、手ぐらいならと許してただけだったのに。だんだん図に乗って来て…。」
それが、作戦だったんだよね。いきなり頬や口はハードル高いもの。
じわじわ際どい所まで攻めていく。きっちり、術中にかかってくれちゃって。
「酷いなぁ。その内、自分から手や頬を出してきてくれる様になったじゃないか。頬を染めておずおずと…あれは嬉しかったとも。」
図星を刺されて、俯いた顔を覗く。軽く小突くだけで死んでしまう私が抱きすくめても、抵抗しようともしない。
ロナルドくんもいないし、気を利かせたジョンが見張りに出たのをいい事に…綺麗なうなじに舌を這わせても、艶やかな声を上げて、体をくねらせただけだ。
吸血鬼対策課では、誰もが憧れの眼差しで見上げるヒナイチ隊長。
若くしてスピード出世した、戦闘力トップクラスのエリート戦士。
30年の時間を経て、元々あった凛々しさに冷静さと妖艶さが加味された、素晴らしい女性。
そんなヒナイチくんが、こんな虚弱な男の前では19歳の頃と変わらない顔をしているのだ。
最高の昼の子を手に入れた私の特権だ。優越感ぐらい湧いても仕方ないと思う。
「も、もういい!成人する前の話だ…それより、ロナルド達が帰って来る前にこれを渡しておこう。」
手に抱えていた紙袋を差し出される。気にしなくていいのにね。
若造なんて、こちらから欲しい物を指名しておかないと忘れてしまうのに。
「ありがとう、嬉しいよ。開けてもいいかね?」
「勿論だ、気に入ってくれるといいんだが。」
紙袋に入っていたのは、小さな小箱。開けると、ネクタイピンが入っていた。
「ありがとう。触れるだけで温かい気がするよ。」
「大袈裟だな。11月28日の誕生日石なんだそうだ。トパーズとどっちにしようか迷ったんだが…。」
手で弄びながら、蛍光灯に反射した光を楽しむ。
ネクタイピンの先についたシンプルな石は…吸血鬼の私には見られない、太陽の様にキラキラと赤やオレンジに輝くサンストーン。
「どうしても種族が違うからな。実際に一緒にいられる時間が少ない。だ、だから…。」
うん、そのつもりで選んでくれたんでしょ?
太陽を具現化した様な、明るくて温かい昼の子。
その君を思い出させる、太陽の石を。
「昼間、棺桶で眠っている間も側に持っていてくれると…嬉し、うん。嬉しいんだ。」
にっと笑った笑顔は眩し過ぎて…
「お、おい…だから、死ぬな。私だって恥ずかしか…」
その時だった。廊下の先から賑やかな声が聞こえてきたのは…
『ヌヌヌリ!』
『あっ、ジョンくん。ただいまです~。』
『サンズさんまでつき合わせてしまって、すみませんでした。やれやれ、頼まれていたクソゲーも買えたし。これで、とやかく言われずにすみますよ。』
『あとは、息子達が帰ってくるのを待つだけですね。』
『おっ、今RINE入ってますよ。ミナちゃんとも合流したから、もうすぐ着くって。』
ロナルドくん達が帰ってきたらしい。夫婦の甘い時間もここまでか。相棒夫婦との二世帯暮らしだから、仕方ない。
そして、それがまた楽しいのだけれど。
「ウフフ、じゃあ。着替えてくる。楽しみだな。」
「いつもでしょ、ここに来てから。特に君達と会ってから…」
「うん、そう…だな。」
今まで、楽しみじゃなかった日がないのだから。
「ドラルク、おやすみ。私は、早めに出勤しなくてはいけなくて…」
ジョンと昼の子達の食事を用意し終えて、戻って来る頃。
ちょうど、入れ違いにヒナイチくん達が出勤の準備を始める。
これが、種族が違う事の辛さだ。何より辛いよ。
吸血鬼対策課と吸血鬼退治人だから、普通の人間よりは彼らといられる時間は長い。
それでも…やっぱりもっといたいと思う。どうにもならないと、分かってはいても。
「いいよ、いってらっしゃい。お弁当におやつも用意してあるから、楽しみにしていて。」
「ヌッヌヌッヌイ。」
仕方ないよね、君にはやりたい事があるんだ。昼の子の寿命は、短い。
だから、健康で少しでも長く、やりたい事をして欲しい。
「フフ、なんだか照れ臭いな。さっそく、つけてくれたんだ。」
そういって、ヒナイチくんがネクタイピンを撫でる。そりゃそうだとも。
ジョンや君、ロナルドくんに貰ったものは、ぜ~んぶ大事に取ってあるよ。全部に大切な思い出が詰まっているから…今回のプレゼントは特に。
「いってきます。また、今夜な。」
弄っていたネクタイを、君は引き寄せる。慣れた様に重ねられる唇。
君は戻って来るとも、大丈夫。彼女を気持ちよく、昼の世界に送り出さなきゃ。

「うん、待ってるよ。また、今夜。」
床下から出ていく君を見送ると、30年経っても慣れない寂寥感がある。
ドラルク様…
「うん、大丈夫。私達も寝ようか。」
「ヌン。」
いつものネグリジェに着替えると、ジョンを胸に抱いて、私は棺桶に入る。
枕元に、外したネクタイピンを並べると…
「太陽の石、とはよく言ったよね?」
「ヌン!」
夜目の利く私達には、はっきり見える。
真っ暗な狭い空間に、小さな小さな君が見守っていてくれているのを。