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夢への第一歩

全体公開 Δドラヒナ 13 5072文字
2024-04-03 17:42:42

ピクリエ様の、オールジャンルイベント『サロン・ド・ピクリエ』に参加させて頂きました。
Δドラヒナのお話で、ヒナイチくんが高校を卒業し、正式な退治人になってドラルク隊長の元に、挨拶にいく話です。
色々捏造設定だらけなので、1P目をご覧になって、OKなら次にお進みください。
これまでに書いたΔドラヒナのお話は、ここから読めます。→https://privatter.net/category/51192

Posted by @kw42431393

 *捏造設定になります。

 ・Δ隊長は、父親のドラウスさんは人間、母親のミラさんが吸血鬼という設定です。ヒナイチくんより一回り年上。ルーマニア育ちの日系ハーフ。なので、独り言や鼻唄に突然ルーマニア語が混じったりする。生まれつき虚弱体質だが、ブーストを使えば短期戦の戦闘参加は可能で、本編よりは体力もある。幼い頃から「ダンピールとしての、突出した探知能力で市民を守る」という夢の為に突っ走ってきたので、子供時代の話や、普通の高校生をしているヒナイチくんと喋る時、寂しそうな顔になる癖があります。

 ・Δジョンは元々ミラさんの使い魔で「体の弱い息子をよろしく頼む」と言われ、Δ隊長を主人として尊敬し、行動を共にしている設定になっています。なので、Δジョンの方がΔ隊長よりちょっと年上です。この世界でも新横浜のアイドル。

・ΔヒナイチくんとΔ隊長の出会いは、彼女が幼い頃に下等吸血鬼に襲われていたところをΔ隊長が助けた、という事になっています。Δ隊長は幼い頃からの憧れの人で、常にキラキラした目で見上げています。元々和菓子党だったが、幼い頃に貰ったクッキーを食べてから、現在はクッキー党。バーの娘なので、他の世界線に比べて料理は上手で、コミュニケーション能力もそこそこ高い。

・Δロナルドくんは、大侵攻で最も退治人・吸対連合を悩ませた、不死身で怪力、変身能力、飛行能力を持ったチート吸血鬼。無邪気なお子様で、吸血鬼らしくないのが悩み。みっぴきが揃っている時間が、一番幸せ。今回のお話は、大侵攻前の時間軸な為、出番がありません。

 ・Δカズサは、現新横浜吸血鬼退治人ギルドのマスター。それ以前は、赤い帽子とジャケットがトレードマークの、拳銃使い『レッドバレッド・カズサ』と名の売れたシンヨコの退治人でした。趣味はソシャゲ、喰えない性格、と公式に準拠。両親が忙しかったので、実質、妹の父親代わり。なので、完全に反対ではないが、妹の恋に関しては微妙に応援しづらいと感じており、冗談交じりに隊長をイジッたり、両想いになってからも、成人するまで清い交際でと、釘を刺したりしている。




 「よっ、ヒナイチ。とうとう、今日から俺達と一緒だな。」
 「ありがとう、ケンさん!新人だから、迷惑をかけると思うが。皆、これからもよろしく頼む!」

 早いもんだ。この間まで、小さなガキだと思ってたのに。
 目の前のヒナイチは先月高校を卒業して、本日から退治人としてデビューするほやほやのフレッシュ退治人だ。
 実力は、俺にまだまだ及ばない。とはいえ、幼い頃から鍛錬を積んだ期待のルーキーだ。すぐにでも、週バンの一面を飾る退治人になるだろう。
 「ヒナイチさん、頼りにしていますよ。何しろ、レッドバレッド・カズサの衣装を引き継ぐんですからね!」
 サギョウが冷やかしながら、ヒナイチの赤い退治人衣装を見る。
 これらは、少し前まで俺のトレードマークだった赤い帽子に、ジャケットを仕立て直したものだ。

 うん?気になるのはその下だと?露出が多いって?
 別に、イヤらしい目的じゃない。吸血鬼対策課の、目立つ白いコートと同じ理屈だ。
 吸血鬼共には、『畏怖欲』というものがある。それを満たす為だけに、問題行動を起こす輩もいる訳だな。だから、吸対の面々は吸血鬼の目を引く為に、ああいうデザインの制服を着ている訳だ。
 あと、どういう訳か、このシンヨコで問題を起こす高等吸血鬼には変態が多い。
 まぁ、小さいのは仕方がないが、うちの妹は美人だし、スタイルはいいぞ?だから、こういう衣装に決まったんだ。

 「それだ。父さんが兄さんにこのギルドを譲って、地元の応援にいくとは思っていなかったな。」
 「仕方ないだろう。向こうのギルドマスターが、一人引退したそうじゃないか。誰かが、赴任しなければならない。優秀な貴様の兄がいるからこそ、出来たのだ。マスターも安心して地元に貢献出来る。今のギルドマスターをサポートする、ますます俺達の腕の見せ所だ。」

 フフフ。半田。さすがだな。よく分かっているじゃないか。まぁ、そういう事だ。



 長年、この新横浜ハイボールを切り盛りしてきた親父殿だが、そこそこいい歳だからな。引退とは言わないが、この店を俺に譲って、もう少し吸血鬼事件が少ない地域に転任してはどうかそういう話は、出ていたんだ。
 そんな折に、埼玉のある地域のギルドマスターが『引退したいのだが、まだ引き継げるほどの退治人が育っていない。元々、地元が埼玉だし、息子にシンヨコを任せて、こちらを引き継いでくれないか』という話が、舞い込んできた。お袋も埼玉出身だしな、悪い話じゃない。
 とはいえ、このシンヨコは吸血鬼達にとって、ホットスポットだ。問題行動を起こす連中に、第一線で睨みを利かせている俺が、後方に下がるのはまだキツイ。だから、ヒナイチが実戦に出る様になってからにしようそれが、今日から実行された訳だな。
 ヒナイチは幼少時から退治人になる事は、決まっていた。だから、実は在学中に資格や手続きは済ませてある。
 学生時代から、退治人として前線に出て貰ってもよかったんだが

 『急かす必要は、ないだろう?』



 ヒナイチが、高校2年の頃だったか。
 吸血鬼対策課のガリヒョロ隊長さんが、難色を示したんだ。他人が言う事だから、構う必要はないんだがまぁ、奴の言う事も一理ある。
 『早く退治人になって、この街を守りたいそれは、妹自身の夢だ。あんただって、知ってるだろ?』
 『知っているとも。私だってそうだったんだ。それこそ、年相応に遊ぶ事なく走って来たのだ。あの子なら、あっという間に、トップに立てるだろう。だからこそ。』
 公私混同だと思ったんだろうな。奴さんは、そこで言葉を切った。
 公務員ってのは、難儀な奴らだ。あんだけコナをかけておいて、自分の本心に素知らぬ顔をしなきゃならんとは。
 ただ、『ヒナイチくんは、私にとって大事な女性だ。だから、一言言わせて貰う』そう言ってもいいんだぞ?

 『トップに立てば、もう一般人としての時間は送れない。だから、今だけでもただの高校生としての時間と思い出を、大切にして欲しい。あんたの言う様に、外野の言い分だ。分かっているはいるが。』

 外野か。もう少し待てば、ヒナイチは18歳だ。一応、結婚だって出来る。
 本音を言ってくれれば義理の兄貴として考えてやってもよかったのにな。
 
 『兄さん、私の一方的な片思いだ。隊長さんを悪く言わないでくれ。』

 ヒナイチは、そういうがな。厄介な事に向こうも、自分の片思いだと思い込んでいるんだよ。 
 これは、ヒナイチの方から動かないと進まないかもしれんな。



 「こんばんは、ヒナイチさん。今日から、退治人なんですって?改めて、よろしくね。」
 「こんばんは、希美さん。お蔭さまで、今日から退治人になりました。よろしくお願いします!」
 落ち着いた大柄の女性に頭を下げる。希美さんは、この新横浜警察署吸血鬼対策課が創設された当初から、ミカエラ副隊長と共に、ドラルク隊を支えて来た人だ。人当たりもよくて、頼り甲斐のあるお姉さんという感じ。
 実は、こうして警察署に入ったのは初めてだ。いつもパトロール中か、ギルドに視察と会合に来る時しか、彼らと会う事はなかった。それが、今日から仕事で出入りする様になるんだよな。

 なんだか、不思議な感じだな。それにうん。楽しみだな。だって
 「ドラルク隊長に挨拶に来ました。」
 「あらあら、貴女なら顔パスでしょうに。隊長室はこちらよ、案内するわ。」
 
 仕事で憧れのあの人に会えるんだ。役に立てるんだ。

 コン、コン!

 と、希美さんが扉をノックする音が、妙に大きく聞こえた。それまで、ワクワクしていた心が、急にドキドキと緊張した音を立てる。
 隊長さんがシンヨコに赴任してきた時から、ずっと顔を合わせていたはずなのに。
 パトロール中に会えたらお話しながら、ギルドまで一緒に歩いたり、隊長さんがギルドに来たら、いつもクッキーを貰って、あの人がコーヒーを飲んでいる横で、勉強を教えて貰ったりしてたはずなのに。
 「隊長、ヒナイチさんが挨拶に来ましたよ。」
 「あぁ、ありがとう。入って貰ってくれ給え。」
 さぁ、どうぞそう言って、希美さんはウインクしながら、仕事に戻っていく。
 「あ。」
 急に不安になって、希美さんに手を伸ばそうとしてしまう。ダメだ、皆忙しいんだ。
 弱気になる必要なんてない。隊長さんだぞ?いつも通り、いつもどおりに話せばいいんだ。
 「よしいくぞ。」
 これから、トレードマークになる赤い帽子を被り直すと、私はドアノブを回した。



 「いらっしゃい、可愛い退治人さん。」
 「ヌンヌンヌ!」
 これまでも会ってたはずなのに、ここで会うあの人は、また違う姿に見えて
 「あ。」
 事務机の向こうに見える、私を迎える優しい笑顔。その肩で笑っている可愛いマジロ。
 同じ人なのに、なんだかもっと渋くて、頼り甲斐があって、カッコよくて。
 「どうしたの、ヒナイチくん?」
 そ、そうだ!見惚れてる場合じゃないぞ、ちゃんと挨拶をしなくちゃ!
 「ギルドマスターの妹のヒナイチです!よろしくお願いします、ドラルク隊長!」
 あぁ、恥ずかしい。緊張して、大きな声が出てしまった。呆れてないかな、ど、どうかな?
 チラリとあの人の顔を窺う穏やかな笑顔は変わってない。ホッとすると同時に気恥ずかしくなっちゃって
 「なんてな。」
 照れ隠しに、舌を出してみる。後で考えると、それまで妹みたいに可愛がってくれた気安さから、公私混同も甚だしかったんだけどそれしか、思いつかなくって。
 「ッ!!アハハハハハ!そうだよね、私もこの顔を保つのそろそろ苦しくって。」
 そう言って、ひとしきり笑ったあの人は、息を整えてから言葉を繋いだ。
 「気楽にしよう。さぁ、こっちへおいで。」
 上げた顔は、私がいつも知っている優しい顔だった。安心して、隊長が指し示すソファに腰を下ろす。
 「は、はい!隊長、あとこれケンさんから預かった報告書。」
 「ありがとう。目を通している間、ゆっくりしてくれ給えよ。緊張しないでほら。」
 緊張は、するぞ。新社会人なんだ警察署に入ったのだって、実は初めてだしな。
 クスリ、と笑ったあの人は、紙袋からタッパを取り出した。それから、紅茶とコーヒーのいい匂いがしてきて
 「クッキー!?」
 貴方がギルドに来る度くれた、大好きなクッキーの匂い。思わず、アンテナが反応するのが分かった。

 ヌフフフ、それでこそクッキーモンスターだヌ。さぁ、ヒナイチくん。どうぞヌ、ドラルク様特製の就職祝いヌよ。
 
 「そうだとも、ケーキもあるよ。君は、夢をこれで一つ叶えたね。おめでとう。」
 「あ、ありがとうございます!!」
 並べられたクッキーを頬張る。仕事中なのも忘れて、美味しくて、嬉しくて、次から次へと口に運ぶ。
 「おいしい、おいしい。」
 「君が来てくれて、私達も嬉しいよ。これからも、よろしくね。」
 妙に真剣な声に、手を止めて貴方を見上げると、目の前に手袋を外した手が差し出された。
 「。」
 不健康に色白で、無駄な肉のない、骨ばった手この手で色んな人を助けてきたんだよな。
 本当にガリガリなんだ、それなのにいつもこの街で体を張って体だって弱いのに。
 私が戦える様になったからには、もっと後方に専念できる様にしてみせるから。
 「ヒナイチくん?どうしたの?」
 だから、私も真剣にその手を握り返した。今まで思っていた決意を新たにする為に。
 「はい!何でも言って下さい。貴方の夢は、私の夢と

 いつか『ダンピールとしての能力を使って、市民を守るのが私の夢だ』と、貴方は言った。
 その夢は、『鍛錬した力を使って、市民を守りたい』という私の願いと同じもの。

 「協力させて下さい!ドラルク隊長!!」
 だから、もう背負い込まないで私だって、今日からこの街を守る戦士の一人だ。
 
 
 


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