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30年後のリスの巣箱

全体公開 反転ドラヒナ 15 7278文字
2024-04-08 19:34:33

サロン・ド・ピクリエの参加作品3作目になります。
反転ドラヒナのお話で、屋根裏部屋が監視任務の為に改造される前日譚です。
反転ドラルクさんの監視任務に就いてすぐのお話なので、まだ、執着どころかお互いに思い入れがない、我儘な人外と意地っ張りなリスの関係の頃になります。
最後のページは、紆余屈折あって、二人が結ばれて子供達が生まれ、さらに、ヒナイチくんが吸血鬼に転化してから後のお話に繋がります。
彼女が転化する経緯については、この二つのお話とリンクしております。
君が目覚めるまで  https://privatter.net/p/10152534
反転したその先へ。  https://privatter.net/p/10152690

なお、ドラルクさんの右目を潰した退治人は、三木さんのお祖父さん、あるいは親戚筋の方という裏設定で書いています。別に恨んでも何でもないので、子孫を見つけた所で「あぁ、そう。」という反応だと思われます。

他に書いた反転ドラヒナのお話は、こちらから読めます→https://privatter.net/category/50931

Posted by @kw42431393

 捏造設定はこんな感じです。それでもOKな方は、次へどうぞ。

・反転ドラルク:強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。数十年前の人間と吸血鬼の抗争の最中に、当時随一と言われた吸血鬼殺しの男性に右目を潰され、義眼を嵌めている。彼が病死したのを聞いてから、遊び相手がいないので、『療養中』と称して引き籠っていた。再び、反人間派の組織に戻る可能性あり、と派遣されてきた監視員のヒナイチの太刀筋に、『面白そうな玩具』として興味を持ち、居城に通う事を許している。当初はそういう目で彼女を見ておらず、『最近、気の強いリスに餌付けしている。可愛がってやっているのに懐かない。』と公言して憚らなかった。

・反転ドラルク(30年後):ヒナイチへの執着心を拗らせ、無理矢理想いを遂げてから、一方的に夜の世界に引きずり込もうとしていた。最終的に、ジョンとお嬢ルドくんの助けを借りて、彼女と『両種族の抗争が終わったら、血を受け入れて永遠に共にいる』という契約を交わし、抗争終結に協力する。お嬢ルドくんによる、長年の『お説教』の甲斐があって、角が取れ、現在は子煩悩の父親。「溺愛の仕方が、お父上と似てきた」と言われるのが、密かな悩み。

・反転ヒナイチ:吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に、密かに父親像を求めている。警戒心の塊で、いつも屋根裏に隠れている。初めて会った時に出されたクッキーの虜になり、お茶の時だけは主従の前に姿を見せる。
 
・反転ヒナイチ(30年後):お互いの想いの行き違いや意地の張り合いから、心身共に傷つけられ、快楽堕ちの一歩手前までなった。が、ジョンやお嬢ルドくんの助けを借りて、ドラルクと契約を交わし、両種族の抗争終結を目指す。現在は、みっぴきの悲願が叶ったので、ドラルクの血を受け入れ、転化を果たして目覚めたばかり。一男一女の母をしつつ、リハビリ中。将来的に、OBとして現場復帰するかも

・反転ジョン:ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。主人夫婦がどちらもヤンデレなので、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。30年後は子供達の世話も手伝いつつ、安心して平和を満喫している。

・反転ロナルド(30年後):全ての吸血鬼と友人になれる世界を作るのが夢の退治人。最強のお嬢で、戦闘に参加しないが、お話合いという必殺技を使う。最終的にお嬢が反転してゴリラになるのは、内緒。両種族の共生の為には吸血鬼、吸対、退治人の連携が不可欠な為、みっぴきで協力して、その悲願を達成した。今回のお話では、教え子になったドラヒナ夫妻の長男を連れて、仕事に出かけているので、出番がない。

・竜輝:ドラルクとヒナイチの間に生まれた長男。15歳のダンピール。本当はもっと画数の多い中二臭い名前だったらしいが、反対されたという裏設定。両親が種族の認識の違いで喧嘩が絶えなかったので、ロナルドとジョンを目標に育った。仕草や喋り方は、尊敬するロナルドおじ様の影響を受けて、中性的。顔は、本編ショタルクにアンテナがついて、そのまま15歳になった感じ。局所的に両種族間の諍いは存在しているので、狭間の者として橋渡し役になるのが夢。

 ミラーカ:二人の長女。8歳のダンピール。平和の兆しが見え始めた時期に生まれた為、父親にベタベタに甘やかされた。父親の血が濃く、怪力と高い身体能力を持つ。見た目は白髪のセミロング。母親譲りのおちゅんの口元と、父親譲りの眠そうな目元が特徴。ヒナイチくんがとっくに屋根裏部屋を使わず、地下室で眠る様になったので、現在の屋根裏部屋の主で、2代目クッキーモンスター。



 「クシュッ!」
 目を開けると、私は灯りが全くない埃だらけの部屋にいた。季節柄、少しは温かくなってきたが、それでも夜と明け方は、底冷えがする。寒気を感じた私は、寝袋に再び潜り込んだ。
 そういえば、そうだ私が今いるのは寮の部屋ではなく、吸血鬼の居城だ。屋根裏の一角に、私は潜んでいるのだ。
 この前から、私はこの城の主元反人間派に属していた吸血鬼ドラルクの監視員となったのだから。

 『おや、そう来たかね?これは、しくじりだ。』
 『降参するヌ?伊達にずっと、ドラルク様の相手を務めてきた訳ではないヌもの。』

 耳を澄ませると、下からここの住人達の楽しそうな雑談が聞こえてくる。コトリコトリと鳴ってるのは、部屋でチェスをして遊んでいるのだろう。今夜もどこかへ行こうとしたり、誰かと連絡を取る気配はなさそうだ。
ケホ、ケホ。」
 当たり前だが、屋根裏は元々人が住む様な場所ではない。この数日、通常業務を終えた後、この城に監視任務にやってきて、0時に監視が終了するまでここに潜むそんな事を繰り返していたのだ。
 冷暖房なんてある訳がないし、張り込み場所の居心地が悪いからと、勝手に掃除する訳にもいかない。
 「甘ったれては、ダメだ。他の隊員だって、張り込みでこのぐらいはしているぞ。」
 震えながら、そう自分に言い聞かせる。私は年若いけれども、ヒヨシ隊の副隊長なのだから、と。
 今ならもっとスマートに、張り込みも出来たのかもしれないが、私にとって、誰かを監視したのはドラルクが初めてで最後だった。もっと服を着こむなり、懐炉を仕込むなり方法は、あっただろう。
 当時の食事事情も、ドラルクに健康管理されていた訳ではない。チラリと部屋の隅に目をやる。ここから寮に帰る時に持ち帰る予定だが、さっきここで食べたコンビニ弁当のゴミが一纏めにして置いてある。
 私達兄妹は、フードファイター並みに食べるのだ。仕事をしながら自炊する量を賄えなかったし、寮の食堂に寄らずにここに来て、埃まみれの部屋で食べていたのだ。
 様々な条件が重なって、風邪ぐらい引いて仕方がなかったと思う。


 
 コン、コン
 
 と、床を叩く音が聞こえた。ここの家主が、私に用だろうか?
 「ケホ!ま、待て。今、そちらに行く。」
 「ヒナイチくん、そこにいるね?ならば、その必要はない。」
 私が寝袋から出るより前に、床板が跳ね上がる。真っ暗な部屋に、フワリとドラルクが降り立った。
 私は職業柄、多少夜目が利く闇の中に浮かび上がる白髪と義眼の機械的な光が、なんとも言えない不気味さを醸し出していた。
 「な、何だ!急にッ!入ってくるな!」
 「やれやれ酷い言い分だ。ここは、私の居城だろう?勝手に入っているのは、君の方だ。」
 ぐうの音も出ない。監視の許可は得ているとはいえ、あまり褒められたものではないからだ。
 「具合でも悪いのかね?今日は、ずっと咳をしているじゃないか。下で食べていた時は、クッキーで噎せたと言っていたがそうでもなさそうだ。」
 熱を測ろうとしたのだろう。手袋を外した手が、こちらに伸びる。だが、当時の私は
 
 バシッ!!

 「貴様が、気にする事ではない。このぐらいよくある事だ。」
 彼の手を振り払って、剣を突きつけた。そもそも、ドラルクとは出会って間がない、何十年も引き籠って事件は起こしていないが、いつ反人間派に戻るか分からない『元危険度A』の吸血鬼だ。
 何より、当時の私が吸血鬼に対して、警戒心の塊だったのだ。
 「はぁ老婆心から言わせて貰うが。これからは、仮眠には客間を使い給え。屋根裏に潜んでいるのは知っていたが、寝袋まで持ち込んでいるとは思わなかった。風邪を引くのは、当たり前だとも。」
 「余計なお世話だ。私は監視員だぞ、客ではない。それとも、私を懐柔するつもりか?」
 「ククク君を懐柔、ね。それも面白い。懐きにくい生き物ほど、ペットにし甲斐があるというものだ。」
 なんて言い草だ。やはり貴様らにとって、人間なんてそんな認識なのか?
 カッと、頭に血が上る。
 「ペットだと!?お、お前!いい加減に!!」
 「アハハハハ!そもそも、リスが屋根裏に潜むのも、触ろうとすれば噛みつくのも、よくある事!既にクッキーに釣られて、近くまで来ているじゃないか!あとは、居心地のいい巣箱を用意おっと。怖い、怖い。」
 図星だ。だから、思わず突きつけた剣で袈裟懸けに軽々と避けられてしまった。
 お茶の時間だと呼ばれた時だけは、下に降りて彼らと過ごしていたのは認めるしかない。
 だが、さらに巣箱を用意するとまで言われて、本気で彼を睨みつけていたのだろう。それを見たドラルクは、ますます図に乗ってゲラゲラと笑っている。
 「おい!笑うのをやめ
 「うん?何かね?この匂いは
 彼の笑い声がピタリと止まったと、急にヒクヒクと鼻が鳴る音がする。
 彼ら吸血鬼は、人間よりずっと嗅覚や視覚が優れているその赤い瞳が向かう先を辿るあっ。
 「安っぽい油の匂い?」
 「か、帰れ!後で行くと言ってるだろう!?紳士なら、女の部屋に土足で入ってくるな!!」

 隅に積み上げたごみ袋を見られたくなくて、私は彼を下に突き落とした。



 ドラルク様、聞こえてたヌよ。また、ヒナイチくんを怒らせて。

 本気で怒った彼女に突き飛ばされて、下に戻った私を待っていたのは、長年連れ添った使い魔のお小言だった。
 何しろ、何かを住まわせるつもりがない空間だ。防音も断熱処理もちゃんとしていた訳ではない。丸聞こえだったのだろう。
 「クスクス、女の部屋だとさ。そんなに気に入ったのかね、変わったお嬢さんだ。それより、ジョン。君が屋根裏に行ってやっておくれ。今夜は、懐炉役を頼むよ。私がやってもいいが、殺されてしまう。」
 冗談めかして、指で首を掻っ切る真似をしてみせる。今の彼女では土台無理な話なので、猶更だ。
 しかし、あの年齢で太刀筋はいい。戦いからは身を引いていたが、トレーニングは続けている。
 今度、彼女を誘ってみようか。折角だから、彼女に剣術と格闘術を指南してやってもいいとも思う。
 「あぁ。そうなるとトレーニングに使っている、庭園に電灯も設置してやらなくては。昼の子を飼おうと思えば、色々手を加えなければならないね。」
 「ヌンヌー?」

 彼女が仕上がった所で、再び『飽きたから』距離を置いていた反人間派の同胞共に加担してやって、本気でこの首を狙わせるか
 まだ、19歳だ。平均寿命までとは言わないが、健康でいてくれれば、あと30年ぐらいは私と遊んでくれるだろう。
 そうなったならばさっき見せた、怒りに染まったあの顔で、この心臓を貫いてくれるのだろうか。
 それとも、私の影響を受けて笑いながら、この首を切り落としてくれるのだろうか。
 自分専用の自分を殺すナイフを、自分で作るなかなか面白い考えとは思わないかね?

 当時の私は、ヒナイチくんに対して、そんな考えだったのだ。後々、本気で執着し、命どころか、さらに大事なプライドを捨てでも欲しい女性になる、とも知らずに。
 今となっては、度し難い考えだと思う。

 はぁ、また悪い事を考えてるヌね。折角、静かに暮らしていたヌに。あれ?どこに行くヌ?

 ため息をつくジョンを尻目に窓を開ける。
 背中にコウモリの羽を生やすと、察しがついたのかジョンは苦笑いをした。
 彼には悪いが、そろそろ私も引き籠っているのに『飽きた』らしい。遊び相手になってくれそうな、面白い昼の子を見つけたから。

 「風邪薬を買ってくるよ。人間だから、厄介なものだ。巣箱と一口に言っても、素人が簡単に作れるものではない。とはいえ通ってくれるリスと、少しでも長く楽しいつき合いが出来る様にしたい。そう思わないかね?」



 まずは薬局に行ってから、ホームセンターにいや、電機工事が必要だから、実家の伝手を使って本格的に業者を呼ぶか。
 金銭的には実家が持ってくれるから、糸目はつけない。冷暖房を完備して、換気システムもちゃんとしてやろう。寝心地のいいベッドに、報告書や持ち帰った仕事も出来る様に、事務机をネット環境も必要だろうか?
 「そういえば。」

 部屋で嗅いだ、安っぽい揚げ物の匂いを思い出す。クッキーを並べてお茶に呼ぶと、屋根裏から逆さまに顔を出す少女の顔を思い出す。
 『そのアンテナいつもハートマークをしているが、どういう仕組みになっているのかね?』
 『さ、触るな!ハートマークだと?何の話だ?』
 クッキーを口にした瞬間、頭のアンテナがクルリとハートマークを描く。警戒心に満ちた戦士の顔が、年相応の少女に戻る。
 それを見ていると、表現しづらい不思議な感情が、湧いてくる。だから、ついつい追加で焼いて、目の前に並べてしまう。
 少しでも長く、その姿を眺めたくて
 では、コンビニ弁当を食べる時、彼女はどんな顔をしているのだろうあの顔は、して欲しくない。私が作った料理と同列にされるのは、あの顔を他の者に見られるのは、何だか面白くないものの様な気がする。
 何より
 「病気か。あの男は病死だと聞いたな。」
 右の義眼に手をやる。数十年前の戦いで私の右目を潰した、当世随一の吸血鬼殺しと呼ばれた退治人の事を思い出す。
 とはいえ、勝手に周辺が色々言っているが、我々はお互いを意識していなかった。現に、今も当人の顔も名前もはっきり思い出せない。
 三十半ばで、家族を養う為に、副業で退治人をしていた男性だった気がする。
 私が彼に望んでいたのは殺気を伴ったサンザシの杭で、彼が私に望んでいたのはこの首にかかった賞金現実はそんなものだ。

 『これに懲りたら、馬鹿げた真似も大概にする事だ。』
 『まさか?あれには、一本取られましたよ。師匠。』
 あの時、片目を失った私に対して、ノースディンは『護身の為に』と、自身の氷化能力を込めた義眼を作ってくれた。全く反省していなかった私は、有難く貰っておいたその義眼は、現在もこの右の眼孔に嵌っている。
 『喜んでいる場合か。ドラウスが、どれだけ気を揉んだと思っている?』
 『あぁ、退屈だ。向こう同様、しばらく入院せねばならんし、リハビリする必要がある。自分に再生能力がないのが、口惜しい。そう思わないかね、ジョン?』
 『ヌー。』

 結論から言うと、再戦される事はなかった。家族を養う為にかなり仕事を詰めていたらしい、その退治人はその後、病気であっさりこの世を去ったと聞いている。現在と違い医療技術もよくなかったので、よくある話だ。

 「折角、また面白そうな相手を見つけたのだ。せいぜい、長く遊んで貰わねばな。」
 巣箱の設計図だけでなく、食事事情も考えておこう。あんな食事を続けておれば、十数年後には体を壊してしまうはずだ。
 「フフフリスの飼い方の教本なら書店にあるだろうが、人間の本はあるまい。こちらの面でも、しばらく退屈しないで済みそうだ。」
 
 当時を思い返すと、よくここまで来れたものだと思う。そういう意味でも、ジョンとロナルドくんに感謝してもしきれない。
 どこか寂し気な雰囲気を纏った、意地っ張りで気難しいお嬢さんそんなヒナイチくんに対する認識は、まさに『興味深い玩具』以外、何でもなかった。対等な伴侶になって欲しい、という気持ちが、あの頃の私には1ミリもなかった。
 私が彼女を『愛玩物』ではなく『一人の女性』として認識するまでには、ロナルドくんと合流してから後も、かなりの時間を要していたのだから。



 「宿題終わったかね?お茶にしよう、可愛いお嬢さん達。」

 降りてらっしゃいヌ。竜輝様とロナルドくんも、もうすぐ帰ってくるヌよ。

 今宵も私達はクッキーを持って、リスの巣箱だった部屋に声をかける。かつて、そこから逆さまに顔を見せるのは、気難しい赤毛のお嬢さんの怒った顔だった。
 でも、今は

 「はーい!とーさまのクッキー、まってたよ!!」
 逆さまに顔を見せた、白髪の少女は、屈託なく笑う。狭間の子を示す金色の瞳が、手元のクッキーを捉えてキラキラと光って
 「えい!」
 元気に飛び出してくる、2代目クッキーモンスターを抱き留める。目に入れても痛くない、ヤンチャな盛りの愛娘を。

 あれから、30年の時間が過ぎた。
 当時の私は、ヒナイチくんの事を『30年ぐらいは遊んでくれるだろう』と考えていた。だが、30年経った現実は
 「待て、ミラーカ。おやつの前に、ちゃんと片付けなさい。」
 娘に続いて、意地っ張りなリスだった君も、苦笑いしながら部屋に降りて来る。
 予想と違って、今の彼女は、憎悪の眼差しで刃を向ける吸血鬼殺しではなく私の血を受け入れて転化した、優しい母親となっていた。
 クッキーを見た瞬間、クルリとアンテナがハートマークを描く。翡翠の瞳が深紅に変わっても、クッキーモンスターは変わらない。

 「クスクス
 「ヌヌヌヌヌヌ?」
 「どうした、私に何かついてるか?」
 「どうしたの?とーさま?」
 思い出し笑いをする私に、二人と一匹は首を傾げて見せる。
 「何でもないよありがとう、ヒナイチくん。」
 「う、うむ?」
 
 散々、君を苦しめた化物に。
 自分の事しか考えない、最低な男に。
 30年どころか永遠に『飽きない』時間と、『飽きない』存在達を私にくれてありがとう。 
 


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