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フェザ夢♀

全体公開 5247文字
2024-05-03 20:21:58

読んだ瞬間絶対書きたい!と思って設定をお借りして書いた、フェイマナ前提のフェザ夢です。

Posted by @xxxcadence


設定をお借りした、りこ様の素敵な本家はこちら→[まだ今は答えられないけれど](https://privatter.net/p/10179768)








崩れかけた建物の中。
天井に空いた隙間から太陽の光をのぞむその姿はまるで絵画のように美しくも寂しい光景でした。



「けっこんしてください!」
「は?」

幼い少女が見つけた美しく白い竜は、その少女の言葉にとても人間くさい返答を返した。
少女が5歳の時の、忘れもしない思い出である。


「ドラゴンさん、結婚しましょう!」
「断る。何度言われても答えは変わらないというより、良い加減此処に来るのをやめろ」

その日より定期的に竜の元に訪れるようになった少女はすくすくと育ち、制服を身に纏うようになっていた。
そしてその格好のまま、森の奥深くにある廃墟の中に今日も訪れている。
名前はお互い名乗ったことはない。
ただ、少女は勝手に「ドラゴンさん」とそう呼んでいた。
そして出会ったその日から会うたびに求婚をしているのである。
一度も、欠かすことなく。

「結婚してくれるまでやめません!」
「しない。来るな」
「相変わらず、つれないで--ッ!?」

今日もいつもと変わらぬ求婚の言葉を適当にあしらう竜は、いつもと違う点を見つける。
少女の前髪で隠れる額に赤黒く変色した部分があることを風が吹いた時に見てしまった。
ぶわりと何かが渦巻く感覚を覚えた竜は、気付いた時にはこの数百年とることのなかった人型になり少女の前髪を上げて怪我を直接確認していた。

「これはなんだ?」
「っえ、あ!?ふぇ、ッ!?」

少女もまさか竜が人型になれるとは思っていなかったのか、かなり動揺している。
緑と赤の長い髪は男の動きと風によってサラサラと、まるで風に揺れる木々のように揺れている。
少女を真っ直ぐ見つめる瞳は竜の姿の時の色をそのままそこに閉じ込めており、美しくも力強さを感じさせた。
さらに加えて、驚くほど完璧で美しい造形をしている顔は誰であれ目を奪われてしまうだろう。
少女が動揺するのも無理はない。

「質問に答えろ」
「え、えーと、これは、その……転んだだけで」
「私に嘘をつくとは良い度胸だな」

少女の言い分は何故だか一瞬で嘘だとバレて、無かったことにされてしまった。
だが、少女は本当のことを竜に言うつもりはない。
この怪我は投げられた石が当たってできたものである。何故投げられたのかは分からない。
少女は学校で迫害されており、その原因は正直分からない。
人より勉強ができることや人より運動ができること、その2つを兼ね備えてしまったことが多感な時期の子供には羨ましく見えるのだろう。
それを正直に言ったとして。
ただでさえ人間に興味がなさそうなこの美しい竜が、人間に嫌悪感を抱くようなことがあっては万が一にもあってはならないのだ。
少女は竜と結婚したいのだから。
怪我に近づいた『人の手』に小さくも引き攣った呼吸をした少女を竜は見逃さなかった。

「--
「あ!ちょっ、汚れますから!」

突然、ふわりとした白い布で怪我をした部分を拭われる。一体その布はどこから出したのだろうか。
そんなことより、綺麗だった白い布は少女の血で汚れてしまっていた。

「もう来るな」
……

するりと竜の姿に戻った美しいひとは、あまり温度の感じられない声でそういうと廃墟の奥へと去っていってしまった。





「ドラゴンさん!結婚してください!」
もう来るなと、言ったはずだが。」

数週間後、怪我が薄くなった頃には少女はまた竜へと会いに来ていた。

「きこえませーん。ねえ、ドラゴンさん。むかし言ってましたよね、待ってる人が居るって」

少女がもっと幼かったころ。
何故こんなところで1人でいるのかを尋ねたことがある。
竜だから街に行ったら大変なことになる、と言われればそれまでだがそれでもこんな今にも崩れそうな廃墟の中で過ごし続ける理由はなんなのか。
それに対して竜はただ一言、待っている者がいると答えた。
その時の目が、懐かしさと寂しさで細められていたのを今でも覚えている。
そしてそれを見て少女は、忘れればいいのにと思ったのだ。

「その人、いつ来るんですか」
「いつだろうな。来るかもしれない。来ないかもしれない」
「待ってて、つらくないんですか」
「勝手に待っているだけだ。」
「その人が、好きなんですね」

数百年の時の中、誰からも忘れ去られた廃墟で来るかも分からぬ人を待っている。
竜でありながら、輪廻転生というものを信じていること自体が信じれらない。
だが、それを信じたいほど愛しいものがかつてこの美しい竜に居たのだ。

「--ああ。長い長い私の生の中で、ほんの一瞬だけ伴侶として隣にいてくれた者だ。」

いつもより少しだけ柔らかな声だ。
少女は少しだけ泣きたくなってしまった。

「忘れたりしないんですか」
「声が、きこえなくなった」
?」

ぽつりと呟いたその声は、今まで聞いたことのないくらい不安に揺れている。

「忘れるなんてあるはずないと思っていたのにな。言葉は覚えているのにその声が今はもう、聞こえない。」

目を閉じた竜をみて、泣いているのかとおもってしまった。
しかし、次に目を開けた竜は淋しそうな瞳をしているだけで泣いてはいないようだ。
どれだけ長生きをしても別れの寂しさはきっと人間と変わらないいや、もしかしたら人間よりもつらいのかもしれない。

「つまらない話だったな。忘れてく「でも、貴方は今ひとりきりなんですね」
何が言いたい」
「いえ。なんでもありません。またきますね」
「来るなと言っているが

少女は、見たことのない弱々しい竜の姿を見て、いっそのこと一気に忘れてしまえば楽だっただろうにと思ってしまった。




「ドラゴンさ……あれ、今日は人?」

少女がいつものように廃墟に訪れると、いつかみた美しい緑と赤の髪の男性が天井の隙間から空を見上げていた。
スッと綺麗な瞳が少女の姿を映す。
そのあまりにも美し過ぎる光景に少女はいつもの求婚を忘れてしまった。

「お前を待っていた」
「へ!?あ、でもちょうどいいかもしれません。コーヒー飲みませんか?いれてきたんです」
「いただこう」
「やった!すぐ用意します」

少女は持ってきていた道具を広げてコーヒーの準備をする。
豆はなるべくあの頃と変わっていないものを。
きっと挽きたてが美味しいだろうから持ち運びができるコーヒーミルを購入した。
丁寧に豆を挽けばふわりとコーヒーの香りが漂う。

「--ずっと、考えてきた。」
「?何をですか?」

じっと少女の動きを眺めていた竜が口を開く。
ただ、その言葉はあまりに唐突なものだったので少女は尋ね返した。
豆は粉に変わり、紙を敷いたドリッパーにサラサラと流す。お湯はもうすぐ沸きそうだ。

「お前が幼少のころから此処に来るのを拒否しきれない理由だ」
「押しに弱いからじゃなかったんだ。はい、どうぞ」

丁寧に丁寧に入れたコーヒーを差し出す。
この人には砂糖もミルクも不要だ。
少女はそれを知っている。
そして自分のものには、砂糖とミルクを多めに入れてカフェオレを作った。
黒と白が混ざり合い、柔らかな色になったそれを一口飲む。
あの頃と変わらぬ味に、ほうと息を吐いた。

「あの時もお前はカフェオレを飲んでいたな」

少女と竜の間に流れる時が一瞬だけ停止した。
竜は何も言わずに少女を見つめ続けている。
まるで、どんな動きも見逃さないかのように。

……んの、話かよく、分かりません」
「お前には、将来を約束した伴侶はいるか?」

あの時と、変わらぬ質問が投げられる。
言葉を忘れていないというのは嘘ではなかったようだ。
そしてその言葉に無反応であれるほど、少女は今世において演技がうまくはなかった。

「--ぁえ、と……ぃ、います!」
「嘘だな」
「!?」
「お前は許婚がいるのに私に求婚していたと?」
「そっ、あその、えっと!」

そもそもとして。
少女は隠し通すつもりでいたのだ。
数百年前の記憶を持って生まれてきたなどと、言って信じる人は誰もいない。
記憶を頼りにかつて自分が所属していた建物に向かえばそこは人の手入れが無くなって久しい廃墟となっていて。
あまりの変わり様に、呆然としながら歩いていると一際開けた場所にその人はいた。

その姿をみて、美しいと思うと同時にとても泣きたくなったことを覚えている。
長い長い贖罪を終えたこの人は何を思って今日までを過ごしてきたのだろう。
現在はかつての人の姿ではなく、竜の姿で過ごすことが多いようだった。
だから少女は「ドラゴンさん」と呼んだ。
絵本で見たドラゴンにそっくりだと、そう言って。
かつて、その生涯すべてを使って愛したその人を少女は呼ぶことができなかった。
あの頃よりも寂しそうな目を見て、この人の心を溶かす人がこの数百年1人も現れなかったのだとすぐに分かってしまった。

それが、どうだ。
少女は隠し通すつもりでいた。
でも、あまりにも寂しそうな目をする愛しい人にほんの少し。ほんの少しだけヒントを与えてしまった。
この人の頭の良さを忘れたことなど無かったのに。
そしてそれを竜は正しく理解した。

「今回は猶予を与えるつもりはないぞ、マナブ」

かつての名前を呼ぶ声は何も変わらない。
少女が前世で生を閉じるその瞬間まで愛し続けた声だ。

「言いましたよね、子孫を残せる相手を伴侶に迎えてくださいって」
「期間を決められてはいなかった」
「屁理屈っていうんですよそういうの」
「お陰でお前が戻ってきた。これで子孫を残せるな?」
「わ、わかった途端にグイグイ来る!」

水を得た魚のように嬉しそうに、楽しそうにこちらを追い詰める姿に文句を言いたいのに。
そんなに嬉しそうにされたら何も言えない。
目の前に立った美しい人を、見上げることしか少女にはできなかった。

「さて、もう一度聞こう」

ききたくないという少女の声はあえて聞こえないフリをしたようだ。
するりと少女の頬に美しい人の綺麗な手が添えられる。

「私の伴侶になれ」
「命令じゃないですか!」
「返事は」
「〜〜っっ!!い……今まで返事をくれなかったくせに

少女は何度も、出会った時から伝えていたというのに。無視し続けたのは男の方なのに。
少女は隠し通したまま、約束させたことを守らせようとしていた。
それなのに、分かった途端に求婚してくるとはなんてズルい男だろうか。

「ふむ。たしかにな。ではお前から改めて言ってくれるか?」
「嫌ですけど!?」
「私のことは、嫌いか……?」
「あなたそれワザとなら本当に嫌いになりますからね!?」
「それは困る。でも、お前を手放したく無いんだ」

少女はかつて同じことを言われた時、必死にフォローしたことを思い出す。
ギュッと胸が痛くなると同時に遊ばれてると分かったのでしっかりと言い返した。
くすくすと口を隠して笑う姿は何も変わらない。
ああ、もうダメだ。と少女は思った。

「あーもう!!負けです負け!」
「うん?」

これほどまでに綺麗で、寂しがり屋で、どんなことでもしてあげたくなるような人を前にして今更逃げるなんてことは出来ない。
そもそもとして逃げるつもりもなかったのだけれど。

「私と結婚してください、フェイザーさん」
「勿論。今世も最期まで離さない」

少女には夢があった。
この美しい竜と結婚して、子供を産んで、育て上げて。
そうして隠し通した最期の最期。
蒼月マナブとの約束を守ってくれてありがとう、とそう言い切って死んでやろうと思っていたのだ。
その夢は潰えてしまったけれど、新しい夢を考えた。
この愛しい人がいつか死ぬその時まで、少女が今まで見続けたあの寂しい目をさせないようにたくさんの人で囲んでやるのだ。

そんなこというと喜ばせるだけなので絶対に言ってはやらないけれど。



+++++++++++

許可をいただき大変感謝しております

カフェオレを使った異星人と地球人(?)の表現方法や、総帥とマナブと考え方の違いなど、ひとつひとつを丁寧に表現されていたりこ様の作品を私のような表現力の乏しいものが引用させていただくことすらおこがましいとは思ったのですが、どうしても未来まで幸せになってほしかったので書かせていただきました

読んでいく中で、「少女」にマナブだったころの記憶があることを知ってもらいたかったのであえて概要欄では説明を少なくさせてもらいました。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



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