X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

【サガフロR】最期まで戦い抜こう。このせかいで。

全体公開 サガフロ 7964文字
2024-05-03 23:04:41

サガフロブルー編のラストから数十年後、地獄の封印の綻びが見え、もう一度地獄の君主と戦うブルーとルージュの話。ナチュラルに二人が再度分離してます。
※リマスター3周年祝いに書いた話なので、リマスターのヒューズ編「双子の術士事件」準拠の内容になっています。

 戦いは、熾烈を極めた。
 何度も姿を変えて多彩な攻撃を仕掛けてくる地獄の君主は、この為に準備をしてきたブルーとルージュの体力を容赦なく削って行く。一進一退の攻防が続き、やがてブルーとルージュの表情に翳りが見えてきた。
……おい、ルージュ。まだ術力は残っているか」
……ごめん。もう無理。ブルーは」
「俺もだ」
 二人の術士の息が上がっている。対して地獄の君主の方はまだ余力が残っているようだった。そうして歪な形の剣が容赦なく二人に向かって振るわれる。
「ぐっ……!」
「ううっ……!」
 攻撃を避ける余裕などあるわけもない。あの時よりも強くなったのは自分たちだけではなかったのだ。地獄もまた、力を蓄えていたのだ。だからこそ封印を破ろうとしたのだろう。
「ブルー、生きてる?」
……ああ。とりあえずだが」
 赤い法衣をより赤く染めながらもルージュが立ち上がる。ブルーの青い法衣も血で染まっていた。
……
……
 二人は目を見合わせると頷いた。もう、術を放つ力も技を繰り出す力も残っていない。ならば己の生命力と引き換えにするしかないだろう、と。
 まだ立ち上がる二人に、もう一度地獄の君主が剣を振り上げる。ブルーとルージュが生命力から術を練り上げようとしたその時だった。
「真・アルフェニックス!!」
 真っ赤に燃える鳥が地獄の君主の頭部へと突撃していったのだ。その衝撃で地獄の君主の身体が地面へと崩れ落ちる。唖然とするブルーとルージュの前に、赤と金のボディスーツに身を包んだヒーロー・アルカイザーが回転しながら着地する。
「マジックキングダムの、そしてリージョンの危機にサントアリオからの使者、ヒーローアルカイザー、参上!」
「レッド! レッドじゃないか!!」
「は? おまえあのキグナスの船員か?」
「しーっ! しーっ! ルージュ、そこはアルカイザーって呼んでくれよ!?」
 ルージュが目を輝かせてアルカイザーもといレッドの名を呼ぶ。アルカイザーは格好つけたのも束の間、慌ててルージュに駆け寄ると人差し指でジェスチャーしながら訴えた。三人が地獄の君主から目を離したその時、咆哮を上げながら再び立ち上がろうとするが、それは叶わなかった。
「ロザリオインペールっ!!」
「十字砲火!!」
 赤い剣が十字の軌跡を描き、さらに弾丸が十字の形に地獄の君主を穿ち、もう一度地面に縫い止められる。そこには緑の髪の少女が赤く光る刀身の剣を手に、金髪の女性が二丁の銃を持ち立っていた。
「アセルス姉ちゃんとエミリアさん!?」
「アセルス! エミリアも!」
「全く、二人だけで行くとか無茶するんだから!」
 エミリアが三人の元へと駆け寄ると、結界石と呼ばれる石を割る。その場にいた全員の体力がみるみるうちに回復して行く。アセルスも側へ駆け寄ると、エミリアに同意するように頷いた。
「コイツが目覚めたら、リージョンが危ないんでしょう? それってもう、人間も妖魔も、メカもモンスターも関係ない!」
「ええ、そうです。全く、ブルー様は人が悪い。お互い協力した方が早いと仰ったのは貴方でしょうに」
「そうだよ! ブルーとルージュの故郷のピンチなんでしょ!」
「そうだぜ〜♪ 仲間のピンチに〜♪ 駆け付けないのは〜♪♪ 格好悪いぜ〜♪♪」
 メカの駆動音と何者かが駆け寄る音に振り向けば、T260Gと呼ばれるメカと、ラモックス族のモンスターの少年クーン。そして、己と同じ名を持つ楽器で弾き語りながらやってくるリュートがいた。
「T260G……クーン……リュート……でも、どうして」
「あのなあ『もしも俺たちの身に何かあったら後は頼む』なんて事付けだけIRPO残して何も言わずに勝手に事を起こすなってーの! 俺に直接言え直接!」
 ブルーの呟きに応えるかのように、走ってきたヒューズが叫ぶ。だが、悲しきかな。だいぶ息も上がり疲労感がありありと見えていた。
「それは、俺たちが生きて帰れなかった場合への対処であってだな……
「えーと、一緒に地獄の封印どうにかするって意味じゃなくてですね……
 ブルーとルージュが説明するが、どうやら火に油を注ぐだけだったらしい。先程よりも大きな声でヒューズが叫ぶ。
「アホか! 生きて帰ってこい! 俺が知らない間に勝手に死のうとするなっての!!」
「アホとはなんだアホとは!!」
「お前らはなあ! こんな誰も知らねーところでくたばるんじゃなくて、ベッドの上で大往生しろって言ってんだよ!!」
「「!!」」
 その言葉に、ブルーとルージュは言葉を失った。ヒューズは今にも泣きそうな顔をしている。他の五人も同じような表情をしていた。
「! 目標の対巨大生物、再び動き出します」
 T260Gのセンサーが地獄の君主の動きを再び捉えた。その場にいる全員が、各々武器を構える。
「手ごたえはあったのに……!」
「しつこい奴ね! まあでも、今なら返り討ちにできるんじゃない? ねえ、お二人さん?」
……ああ。お前らの力、遠慮なく使わせてもらうぞ」
「その為にここまで来たんだ。出し惜しみなんてしないぜ」
「みんな、ありがとう!」
「だって、ブルーとルージュの故郷、せっかく元に戻ったんでしょ? また壊れちゃうのは、そんなの悲しいよ!」
「そうそう。だからなんとかしようぜ〜」
 地獄の君主が咆哮を上げる。今度は人の形ではなく竜に似た形態となり、その口から火炎放射器以上の炎を勢いよく吐いた。全員が一斉にその場から散り散りになり回避する。そして攻撃の先陣を切ったのはヒューズの弾丸だった。
「喰らえ!」
 一発の銃弾があらゆる場所に反射し、地獄の君主の左目を貫いた。更に別方向からもう一撃、いや目にも止まらぬ速さで二撃、今度は右目が撃ち抜かれる。エミリアの曲射だった。
「これでどう!?」
 さらに追撃とばかりに、抜刀したまま敵の眼前まで移動していたリュートがその巨体を切り伏せ、上空からアルカイザーが勢いをつけ蹴りの体勢で急降下していく。
「無拍子!」
「シャイニングキック!」
 四人の連携攻撃に 地獄の君主はつんざく様な悲鳴を上げながらのたうち回る。確実にダメージは負っているが、まだ致命傷には至らない。そして今度はその巨大な口からムスペルニブルの吹雪にも似た冷気のブレスが撒き散らし、その場にいる全員に襲い来る。さらに鋭い爪を繰り出し——術の詠唱中のルージュが狙われた。
「!!」
「ルージュ!」
 それにいち早く気づいたのはアセルスだった。赤い刀身の剣、幻魔を振るいその攻撃を弾き返す。
「はあああああああああ!!!!」
 その勢いのまま、アセルスが幻魔を振るう。それに続くのはモンスターのクーンだ。
「グランドヒット!」
 身体を切り刻まれた地獄の君主の足元に地鳴りの衝撃が加わり、その巨体が地面へと減り込む。
「ダークスフィア!」
「超風!」
「V-MAXシステム起動完了——コズミックレイヴ、発動します!」
 そして詠唱を終えたルージュとブルーが術を続けざまに放つ。闇の球体と光の波動が地獄の君主を襲った。更にV-MAXを起動させたT260Gが光を纏った弾丸の様に何度も体当たりを行う。
 ——オオオオオオオオオオ!!
 唸り声と共に、地獄の君主の巨体が地響きと共に地に沈む。周囲に砂煙が舞い、辺りが見えなくなった。
「やった……のか?」
……いや、まだだ」
 苦虫を噛み潰した顔でブルーが呟くと同時に、再び人型となった地獄の君主が立ち上がる。そうして、不気味な笑みを浮かべた。
「!! しまった!」
「みんな!」
 ブルーとルージュが全員に声を掛けるが時すでに遅し、麻痺対策をしていたブルーとルージュ、アルカイザーに変身していたレッドとメカであるT260Gを除いて全員が倒れ込む。
「敵性存在、先程の動作、麻痺状態付与と確認——高エネルギー反応。攻撃、きます!」
「我らを災厄から護りたまえ! ——盾!」
 人型となった地獄の君主が、手にした剣を間髪入れずに振るえば、レーザービームがその場にいる全員に降り注ぐ。その寸前でルージュが秘術の盾を唱えたが、身体が動かない以上、もろに攻撃を喰らってはあまり意味がないだろう。
 今までの攻撃を倍返しするかの如く、地獄の君主の猛攻は続く。すかさず巨木のような手を振るい、猛毒の嵐を巻き起こしてきた。
 麻痺で身体が動かない上に、毒まで浴びせられ、ブルーたちの分が更に悪くなっていく。
「クソっ……!」
 ——命術が使えれば。
 一瞬、ブルーの脳裏に、かつて融合していた時に習得していた術が過ぎる。だが、あの術は陰陽の術を所持していなければ使用できない。ブルーとルージュが分かれている今、使えなくなっていた。だが。
「みんな! 死ぬなよ!! ——ファイナルクルセイド!」
 アルカイザーが叫ぶと彼の身体が光り始めた。その光が倒れ込む皆に向かって降り注ぐ。先程受けた攻撃の傷が見る間に回復していった。
「こんなことも出来るのか」
「流石は正義のヒーロー!」
「私にも回復効果を確認。メカタイプ6による修理機能以上の効果です」
「おい! 毒と麻痺も解除できねーのかよ!」
 ブルーとルージュ、T260Gが感嘆の声をあげる。しかし未だ毒と麻痺により身動きが取れないヒューズが、地べたに這いつくばりながら、どうにか動いたらしい口で叫んでいた。
「俺だって解除出来るもんならしてるっつーの!! くらえ、真・アルフェニックス!!」
 アルカイザーが叫びながら地獄の君主へと炎を纏い突進していき、それに合わせるようにT260Gのボディが再び光出し、浮遊していく。それに合わせてブルーが印術の印を
結んだ。
「勝利のルーン!」
「スターライトシャワー!」
 そして流星雨のようにレーザーを地獄の君主へと向かって降り注いだ。一人と一体の猛攻に、再び地獄の君主の身体が揺らぎ、膝をつく。
「! 身体が動く! みんなは!?」
 麻痺の効果が切れたアセルスが叫べば、他の皆からも声が返ってきた。
「私も動けるわよ!」
「俺も〜」
「ボクも!」
「おうよ!」
 倒れていたエミリア、リュート、クーン、そしてヒューズが再び立ち上がる。真っ先に動いたのはクーンだった。
「いっくよー! グリフィススクラッチ!!」
 勢いよく地獄の君主へと向かって一目散に走り出したかと思えば、目の前にきた瞬間、そのままくるりと身体を一回転させ、鋭い爪をその身体へと突き立てる。次に動いたのはアセルスとヒューズだ。アセルスはクーンを追いかけるように駆け出し、徐々にそのスピードを上げ、勢いを殺さぬまま目にも止まらぬ速さで剣を振るい、ヒューズもまた負けじと走り出していた。
「神速三段突き!」
「いい加減倒れろってんだ! 羅刹掌!」
 アセルスが地獄の君主を上から捉えた瞬間ヒューズがその足元で渾身の一撃を放ち、その衝撃で地獄の君主の身体が吹き飛んだ。
「よかった。危うく二人を巻き込むところだったわ! いくわよ! スカイツイスター!」
 二人に追いついたエミリアがその場から飛び上がり、旋風を巻き起こしながらその巨軀に向かって急降下していく。
——そこだ!」
 そして、刀を鞘にしまい構えたまま微動だにしなかったリュートがカッと目を見開くと同時に抜刀した。離れていた距離にいたが、その衝撃波が地獄の君主の身体を切り刻む。
 復活した4人の連携攻撃に、その巨体からは血らしき赤黒い体液がとめどなく吹き出して大地を濡らす。それでもなお、地獄の君主は立ちあがろうとしていた。もう一度皆が臨戦態勢をとる中、ゆっくりと二つの人影が地獄の君主の前へと現れる。
「きっと君も、僕らと同じキングダムの犠牲者なんだよね」
「もう、これで終わりにしよう。だが、お前の存在を、地獄の存在をなかったことにはしない」
「「俺たちが/僕たちが、全て抱えて、このキングダムで生きていく!」」
 ブルーとルージュが二人で手を握り、もう片方の手で術の印を結び、地獄の君主が異形の剣を振るった。真紅の巨大な宝玉が二つ現れ、剣から放たれた衝撃波で宝玉が割れ、破片が辺りに飛び散っていく。
 その場に立っていられなくなるほどの振動と目を開けていられない強烈な光、鼓膜を突き破るような破壊音がその場を支配した。永遠に続くのかと思われたそれは、やがて何かが崩れ落ちる音を最後に、ようやく収まったのだった。

***

 ブルーとルージュが放った強力な術を最後に、地獄の君主は動かなくなった。そして最後に、砕いた石のようにその身体がボロボロと崩れ去り——やがて地面に溶けるみたいに消えていった。
 その場に居た誰もが「これで全て終わった」のだと息を吐いたまさにその瞬間だった。
 ドン! と地面から突き上げるような衝撃が全員を襲う。そして地面がゆっくりと揺れ出し誰もが慌てる中、メカのT260Gが淡々と事実を告げる。
「このリージョン内部のエネルギーが膨張し続けている模様。その影響で地鳴りが起きているようです。これは、リージョンが崩壊する前の現象に九十九.九%相似しています」
『崩壊!?』
 その場にいる全員が見事にハモった。更にT260Gは続ける。
「完全崩壊まで推定残り三十分です」
『三十分!?』
 再び全員がハモる。慌てたエミリアが方向もわからないまま走り出そうとしていた。
「ってちょっと出口というか入口どっちだっけ!?」
「待ってエミリア! そっちじゃない!」
「入口はあちらですエミリア様」
 パニクっているエミリアをアセルスがどうにか引き留め、全員がT260Gが示した方向へ向かって走り出す。ヒューズが隣でホバリングするT260Gに尋ねた。
「なあT260G。完全に崩壊するまでに俺たち無事に生きてられるか?」
——計測不能です」
「おい! そこは嘘でもいいから百%って言えー!!」
 思わずヒューズがキレながらツッコむが、真面目すぎるこのメカには暖簾に腕押しである。T260Gは感情の乗らない合成音声で答えるだけだ。
「詐称は出来かねます」
「お前な〜!!」
「ああもう! 御託はいいから早く逃げるぞ!」
 やりとりを前で聞いていたブルーが怒鳴るとすかさずリュートとクーンが元気に笑った。
「あっはっは、大丈夫大丈夫! なんとかなるって〜!」
「そーそー、大丈夫! ボクこういうの二度目だし!」
「こんなことが二度も三度もあってたまるか!!」
 ブルーが怒鳴ったと同時にドン! と再び強い衝撃が全員の足元を襲う。そして、先程よりも地面の揺れが強くなっていた。
「うーん、ちょっとこれ本格的に不味そうだね!」
 引き攣った笑顔でルージュが言う。そして何か閃いたような顔でヒューズがブルーとルージュに問いかけた。
「あっそうだお前らゲートだっけ? 移動できる術あんだろ!?」
「アレをここで使うと混沌に投げ出されるから無理だ! それより他のパトロールとは連絡取れんのか!」
「残念な知らせだが、さっきの戦いで通信機が壊れたんだよ!」
「もっと大事に扱え!」
「壊れたもんはしょうがねえだろ!?」
 ブルーとヒューズが言い合いをし、まあまあとリュートとクーン、ルージュが宥めるのを後方から見ていたエミリアがボソリと呟く。
「あの二人良く走りながらよくアレだけ喋れるわね?」
「ブルーはよくわからないけれど、ヒューズはほら、刑事さんだし慣れてるんじゃないのかな?」
 苦笑しつつ少し後ろを走っていたアセルスが答えたその時だった。彼女の足元が崩れるのを最後尾を務めていたアルカイザーが声を掛けて手を伸ばす。
「! アセルス姉ちゃん、エミリアさん! 危ない!」
 二人がアルカイザーに手を掴まれ、引き寄せられる。足場が完全に崩壊し、奈落に落ちるのを間一髪回避する。だがしかし、それは前を走る者たちと完全に分断されることを意味していた。
「うおい!? マジかよ!」
 後方からの叫び声の、前方を走っていた者たちが足を止めて振り返る。そこは、飛び越えるには厳しい陥没が広がっていた。そして、さらに地鳴りがし、崩壊が進んでいく。
「クソッ……!」
 何か、何か方法はないのかと皆が逡巡しているその時だった。
「リバースグラビティ(弱)!」
「この空間の時を止めよ——時間蝕」
 この場にいる者たちではない声が響き、全員の身体が重量を無視して空中へと浮いていく。そして地獄の崩壊がまるで石化したかのように止まった。皆がハッとして頭上を見上げれば、そこには空術を操る麒麟と、その麒麟の背中には時術を操る妖魔・時の君がいた。
「トキノ君! 麒麟! なんでここに!!」
「パトロールの人たちに頼まれたんです。地獄に行ったヒューズさんを助けてほしい、と」
「全く、本当にお前の周りには酔狂な者たちばかりが集まるようだな」
 かつてヒューズがブルーとルージュの資質集めの件で奔走しIRPOで一時保護をした麒麟と時の君は、地獄封印後には再び己のリージョンへと戻って元の生活をしていた。だが、この事件後からヒューズが彼らを頼りにすることがあり、また麒麟と時の君もそれぞれ交流を続けていたのだ。
「ちょっとタイミング良すぎて夢かと思うんだが?」
「現実ですのでご安心ください。地獄に向かったヒューズさんたちと連絡が取れず、帰ってこないのを心配されて私たちが派遣されたのですよ。今、地上のキングダムでは地震があちこちで発生し、住民たちは皆避難しています」
「ここはマジックキングダムの一部でありながらも異質な場。ならば空術と時術を扱える我々が適任だろうという理由だな」
「空間と時間を操るって反則技だよね……
「本当にな……
 ブルーとルージュは思わず感嘆の声を上げた。未だに氷漬けにしたかのように地獄の崩壊は止まっているし、この場にいる全員が空中で浮遊を続けている。ずっと術を維持できるのも、彼らの技量があってこそだろう。
「さて、話はここまで。いつまでも空間と時間を支配し続けるわけにはまいりません。皆さん、ここから脱出しますよ! もっと私の近くへ寄ってください!」
 麒麟が一際大きな声で皆に呼び掛ければ、慣れない空中散歩に四苦八苦しながら麒麟と時の君の側へ寄っていく。
「鳥モンスターに変身したときみたい!」
「わかります。私も飛行形態のタイプにボディ変更した際に似ています」
「空を♪♪ 生身で♪♪ 飛んだんだぜ〜♪♪」
「そういえばアルカイザーって空飛べたっけ?」
「技出す時に飛び上がるくらいだな〜。空飛ぶヒーローってわけじゃないし」
 脅威が薄れたためであろうか。何処となく場の空気が穏やかになり雑談が聞こえ始める。だが、何処かでビシッとひび割れる音がした。
——いかん。麒麟、時間蝕の効果が切れる」
「わかりました。皆さん、良いですね? 空間を超えますよ!!」
 麒麟が高らかに声を上げその場を跳躍すれば、まるで紙を裂いたように空中に亀裂が入り、その向こう側にマジックキングダムの風景が見えた。そして、その向こう側の空間へ全員が吸い込まれていく。
 ——こうして、全リージョンを巻き込む事になった地獄の再復活の幕は下ろされた。
 ブルーとルージュ、二人の術士。かつて彼らと共に旅をした仲間と、空術使いと時術使いの手によって。
【next:後日談】

無音(お題bot)
@nothing_glassより
「最期まで戦い抜こう。このせかいで。」


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.