@akirenge
【コラージュ】
沢田香奈は一軒家で双子の兄である沢田綱吉と母親である沢田奈々と暮らしていた。
父親である沢田家光は滅多に家に帰らない。滅多に家に帰らないのはイタリアでマフィア、ボンゴレファミリーの実質ナンバー二をしているからであると
知ったのは中学二年になってからだった。知ったきっかけも兄である綱吉に家庭教師が、赤ん坊の家庭教師が付いたからであり、
「……九人で暮らすことになるとは」
「お前の家は手狭すぎだろ。妹ぉ」
「元は四……三人家族だったので」
「さりげなく家光のことを除外しようとしていなかったか?」
業務用のスーパーに香奈は来ていた。業務用のスーパーは大量買いが可能だし、安く買える。香奈はカートを押していた。
時刻は夕方、今日の香奈は夕食当番であり、買出しに出ていた。隣にいるのはスペルビ・スクアーロだ。
沢田家はとても賑やかになった。香奈、綱吉、奈々と暮らしていたのが、赤ん坊の家庭教師、リボーンがやってきて居候となった。
そこからボヴィーノファミリーの殺し屋、五歳児であるランボがきて、リボーンの四人目の愛人であるビアンキもやってきた。
さらにイタリアから沢田家にホームステイをしにきたアディシアが加わった。
アディシアは沢田兄妹の護衛の名目で来たが、名が通り過ぎている暗殺者であり、ボンゴレファミリー独立暗殺部隊ヴァリアーの者であった。
本人曰く立場は微妙だったらしい。
彼女はスクアーロの義妹で、ヴァリアーが彼女の入隊前にやらかしたクーデターの影響でボンゴレファミリーにこき使われていたが、
夏の時にある事件に関わって隠れるために沢田家に来たのもあった。ちなみにヴァリアーから隔離されていたので、リング争奪戦の時はさらに立場が大変だったらしい。
これで七人、家は毎日賑やかになっていた。
「していません。余り帰ってこないので忘れてもいいかなと。たまに帰ってきたら人の部屋を勝手に開けるし。着替え中だったし」
「思春期にはきついなぁ」
話しながら晩御飯のメニューを考える。
沢田家は食事は出来る限り交代制にすることにしていた。奈々と香奈とアディシアで分担している。ビアンキは無理だし、ちび達はやらせないほうがいい。
アディシアが加わった後で、中国から来た殺し屋である
五歳児のイーピンと年明けにランキング星にアクセスが出来る……今はもうできなくなったが……情報屋のフゥ太が居候を始めて、沢田家は九人が暮らすようになった。
賑やかに暮らしていたら、マフィア関連のバトルに巻き込まれたり内ゲバに巻き込まれたりしたが今は平和である。
香奈の中では平和なのだ。
思春期のせいも半分は入っているかもしれないが、香奈は家光を苦手としていた。いきなり帰ってきて香奈の部屋を訪ねに来たのはいいが香奈は着替え中だったりして、
目覚まし時計を投げたことがある。
「何にしようかな。……アディがオレンジのサラダを出した時はびっくりしたっけ。果物なのに」
「シチリアはオレンジをよく食うからな。日本だと果物はデザートばっかりだって言うし」
「そう。だから驚いて」
「食は違うところは違うしな」
「よし。野菜も食べてもらわないといけないからポテトサラダにしよう」
予算については家光が振り込んでくれているので心配はいらない。マフィアのフロント企業からの資金によって沢田家は運営されている。ブラックすぎるが
いいフロント企業だからとアディシアにフォローは入れられていた。いいフロント企業って何だろうとなるが。
スクアーロが香奈の買い物に付き合っているのは休暇で来て、アディシアの顔を見に来たのだが、アディシアは獄寺隼人のコンビニバイトに付き合っていていなかったのと
香奈が買い物に出るとのことでついてきてくれたのだ。
オレンジのサラダはオレンジをメインにしたサラダだ。ウイキョウとか入っていた。イタリアではフェンネル。よく食べられる野菜らしい。
香奈はカートにじゃがいもを放り込む。
「日本のポテトサラダってどんなのだ」
「各家庭で違うけど、うちだとじゃがいもにキュウリにハムに茹で卵とか玉ねぎとか入っていてマヨネーズで味付けを」
「こっちだと、インサラータルッサだなぁ。イタリアのポテトサラダだが、意味はロシアのサラダ」
「何故ロシア」
「諸説ある」
イタリアなのにいきなりロシアに飛んでいた。香奈はカートにきゅうりと玉ねぎも入れておく。玉ねぎは特に常備しておけばなんにでも使える野菜だ。
業務なスーパーの内部はそこそこに混んでいた。
「アディは日本のポテトサラダを作っていたような」
「インサラータルッサは酸味が強い。お前等、日本に合わせたんだろ」
現在の沢田家は殆どがイタリア系であるたまに中国ではあるが、酸味が強めだったので作ることは止めておいたらしい。
沢田家はちび達も多いのだ。
「前にツナはイタリア料理ならナポリタンって、来たばかりのアディにリクエストをして」
「日本料理だろうが!!」
ナポリタンはイタリア料理ではなく、日本料理である。アディシアやビアンキやリボーンが呆れた顔をしていたのを香奈は今も覚えている。
沢田家女性陣、ビアンキとイーピンを除いてレシピを読めば料理は出来る者たちが揃っているので何とかなるところはなるのだ。
魚売り場では魚が並んでいた。
「何にしよう。本当ならば一週間ぐらい献立を決めて作ると節約になるとか」
「シェフも居ねえんだろ無理いうな。行き当たりばったりにしておけ。金は家光が振り込むだろ」
ヴァリアーにはシェフがいると聞いたことがある。シェフに任せておけば料理は安心だ。行き当たりばったりとしているが、一週間の献立を決めるなと
いうことだ。一日三食として、一週間だと二十一食、二十一のメニューを考えなければならない。
節約としているが父親である家光は大量に食べるに食べていた。節約なんてない。
カートを引っ張り肉コーナーの方へとたどり着く。この辺りにはソーセージやベーコン、生ハムのコーナーのほかに鶏肉や豚肉、牛肉のコーナーもあった。
どれも大きなパックである。香奈はひき肉を手に取った。
「ひき肉丸ごとハンバーグとかやってみたい。ピーマンの肉乗せは不評だったし」
「ピーマンの肉乗せ?」
「アディが前に作った。ピーマンの肉詰めの詰めないものというか。フライパンでひき肉を焼いてピーマンを乗せる」
ピーマンの肉詰めはピーマンを縦半分に切って、小麦粉をまぶしてひき肉を詰めて焼いた料理だが、ひき肉を詰めることと焼くことが大変だ。
それを短縮するためにひき肉を焼きつつ上にピーマンも載せて一緒に焼く料理がある。アディシアはネットでレシピを検索して作ってみたのだが、
「料理が不評だったのか」
「……ピーマン嫌いがそこそこにいてピーマンをはがして押し付け合いに」
「単なる肉焼きじゃねえかぁ!!」
スクアーロが叫んでいた。叫びたくもなるだろうとしつつ香奈は耳を手でふさいだ。煩いことに変わりはない。
料理自体は美味しかったのだ。大きめのフライパンで制作したため、焼いたひき肉の上にピーマンを乗せたものとなったが、ランボはピーマンが嫌いだし、
フゥ太もピーマンを苦手としていたので押し付け合いになったのだ。綱吉はピーマンを食べていたが喧嘩である。
「私は食べたけど、だから肉だけを出しておけば。ピーマン美味しいんだけど」
「好き嫌いはあるよな。ボスも肉は好きだが。あんまり野菜は食わねえ」
「ザンザスさん。ピーマンの肉詰めを食べられるのかな。ピーマン、はがしたりしない?」
「食べさせてみねえとわからねえが」
ヴァリアーのボスであるザンザスは肉を好んでいる。ヴァリアーの食卓は高確率で喧嘩になることがある。香奈が疑問に思うが結びついてしまったのだろう。
ピーマンの肉詰めをザンザスは食べるのかとスクアーロは思案してみるが、ヴァリアーの食卓には出ない。
黙っていた二人は、
「今度、食べさせてみてほしいかも」
「シェフに言っとく」
「大きなひき肉があるし、これでひき肉丸ごとハンバーグにしよう。いいお肉みたいだし」
好奇心で気になってしまったのでスクアーロに言えばスクアーロも気になったのかシェフに進言をしておいてくれるらしい。
ねーちゃん、ひき肉はいいのを選ぶんだよ、とはアディシアの言葉だ。ひき肉焼きはひき肉の鮮度や味によってダイレクトにうまいか不味いかが決まる。
ひき肉をかごに入れて食卓分を買っておいた。肉も入れておく。
「冷凍のハンバーグとか買っておけ。楽は出来るだろう」
「そうしておこう」
スクアーロが冷凍食品コーナーの方に視線を向けた。冷凍技術の発展により、冷凍食品はとても美味しくなっている。
沢田家の冷蔵庫は大型になっていた。前に壊れたので買い替えたのだ。楽をすることは重要だ。
「俺は魚の方が好きだな」
「カジキとか?」
シチリアではカジキが良く食べられると聞いたことがある。シチリアとなったのはマフィアと言えばシチリアだからだ。
「カジキも好きだが最近だとぶり大根が好きだ」
「……日本すぎません?」
「アディが寿司屋の手伝いをしていた時に尋ねたら店のオヤジが出してくれた」
寿司屋とは同級生であり綱吉の守護者として加えられている山本武の父親がやっている店、竹寿司のことだろう。ぶり大根は和食だ。
話しつつも調味料も補充していく。
「他には」
「ペスカトーレとか」
「魚介好きで。スクアーロさん、みりんを買うときお願いします。未成年は買えなくて」
「おう。酒もあるんだな。飲んでゆっくりしたいぜ」
ペスカトーレは魚介を使ったパスタのことだ。みりんを買おうとして気づいたがみりんは酒の一種なので未成年の香奈には買えない。
スクアーロに頼んでおく。
「家に帰ったらワインがあるかも。たまに料理でワインを使うときがあってもうちは母さんはそこまで飲まないし」
「料理で使うワインは、以外と使わない時は使わねえな」
沢田家は成人しているのは母親である奈々ぐらいだが奈々はそこまで酒を飲まない。酒が余っていたことを記憶している。
「お父さんが飲むかもしれないけれどお父さんが飲むぐらいならスクアーロさんが飲んだ方が、お腹出して寝るもの」
「俺は酔いには強いが家光。嫌われてるな」
「嫌ってはないけれども扱いがよくわからないというか……」
「……レジで買うか」
困惑している香奈に対してスクアーロは買い物を促しておく。父親の扱いが微妙すぎるのは家庭の事情ではある。
荷物はほぼスクアーロが持ってくれていた。帰ったら調理をするだけだ。
「スクアーロさんも食べて行きますよね」
「アディも食べに来てくれとは言っていた。なあ、お前の母親がおおらかすぎるがどうやって家光は結婚したんだ」
「昔聞いたところによると父のひとめぼれでアタックしたそうで」
「日本にはそういう米があったな」
ありましたね、となる。
スクアーロと奈々は面識がある。アディシアの義兄がスクアーロだからだ。最初に育った組織から壊滅し、逃がされた際に
拾ったのがスクアーロであり、義理の兄妹仲はとてもよい。香奈にも綱吉という双子の兄弟がいるが、年齢が近すぎるため、スクアーロのような
年の離れた兄は羨ましいとなる時はった。
「お米も今度買い足しておかないととか、何なら三十キロの玄米を買って少しずつ精米した方がいいんじゃないかにもなってきたとかで」
「コメの消費量は確かにでかくなっただろうが、確か米は十キロのがあるな。アディの様子を見にちょくちょくくるから米が欲しかったら言え。もってやる」
(頼りになるな)
口にせずに荷物をほぼ持ってくれるスクアーロの隣を歩く。
「お前も休めるときは休んでおけ。妹。体力がなさそうだからなぁ」
「体力もないし、戦闘は無理」
「だろうな。兄貴の方に押し付けとけ」
一応は綱吉に何かあったらボンゴレファミリーの後継者になる香奈だが、今は平穏な方である。平穏な方だ。
スクアーロに気遣いを受け取りつつ、二人はのんびりと家に帰る。
――帰ったら騒動が待っているのは、まだ二人は認識していない。
【Fin】