ピクピク様の吸血鬼すぐ死ぬ、女子攻めイベント「女子きこそものの攻手なれ」の4作目です。
人魚姫ヒナドラのお話で、ヒナイチ姫が幼い頃拾った小さなメンダコのお話です。
すっかり仲良くなったロナルド王子夫妻とのお茶会、何気なく聞いた「小さい頃、何かを拾った事はあるか?」という話題。
拾ったものの、住む世界が違う為に手放した小さなメンダコ…考えなしに子守歌を聞かせてしまった幼い頃の自分。
人魚の歌声には、魅惑の効果がある。だから、そのメンダコは、今もヒナイチ姫に魅惑されているだろう。
人魚の歌声には、魅惑の効果がある…今のヒナイチ姫は、それを知っている。それなのに、今宵も『命を賭けて欲しい』想い人のリクエストである、イナ海国の子守歌を歌う…その理由は?
いきなり、捏造から入るので1P目の設定を見てOKな方はどうぞ。
拾ったメンダコ『ぷにぷに』のお話はこちら→忘れられないあの思い出 https://privatter.net/p/10490454
これまでに書いた人魚姫ドラヒナのお話は、こちらから読めます。
https://privatter.net/category/59631
@kw42431393
*捏造設定になります。
魔女ドラルク 別名、深海の魔女。深海でも強大な力を持つ一族を両親に持つメンダコ。生まれつき不治の病を患っており、自身を治す為に魔女となった。現在、人魚の肉を材料とした薬で、かろうじて生き延びている。体は弱いが、魔術、医術、薬学の知識はトップクラスで、料理は趣味。陸では商人ドラルクとして、シンヨコ王国と交易したり、ロナルド王子の退治仕事に同行して、材料を調達していた。ヒナイチ姫の肉を狙って接触したが、情が移って出来なくなった。現在、カズサ王の陸と海を繋げる計画の中心人物。
ヒナイチ姫 イナ海国の第一王女。自身が領海内をパトロールするほど、武勇に優れている。人魚の王族として濃い血を持ち、その肉は長命種のドラルクをも不老不死に出来る。ドラルクの作るお菓子に魅了され、毎日通う契約を結んでいた。現在は、兄の命令で、ドラルクの護衛、監視員、助手をしている。幼い頃、小さなメンダコに変身したドラルクが、ヨシキリザメに襲われている所を助けた事がある。
シャコガイジョン サンゴ礁を襲った嵐により、深海に流された稚貝が、魔女に拾われたのが今の姿。魔女ルクさんの使い魔で命を共有している。陸では、アルマジロに近い姿で行動している。主人の非人道的な姿や、契約に破れた者達の末路を見てきたので、冷静でドライな一面がある。
ロナルド王子 人外にも開放的なシンヨコ王国の第二王子。武勇に優れ、人間と人外のトラブル解決で名をあげている。嵐の晩に海に投げ出され、ヒナイチ姫に命を救われた。現在、サンズ姫と新婚さん。乱暴だが、お人よしで面倒見がいい。シンヨコ王国は迷惑行為をする人外が多いので、平等な態度で付き合う事ができる。ドラルクとは、腐れ縁の様な間柄。
サンズ姫 シンヨコ王国の隣国、サンガ国(女性の多くが、くノ一を生業としている)の王女。おっちょこちょいだが、自身も優れたくノ一。気絶していたロナルド王子の第一発見者で、後に彼と結ばれた。最近は、ヒナイチ姫に懐かれて困っている。火薬や薬学の見識が高いくノ一で、ドラルクが探している治療薬作成のキーマンの一人。
ぷにぷに 魔女ドラルクが、紫色の小さなメンダコに変身した姿。9年前、魔女ドラルクはジョンの生まれ故郷見たさに、サンゴ礁に向かい、ヨシキリザメに襲われた。ジョンを逃がした後、小さなメンダコに変身して沈没船に隠れていた所を、幼い頃のヒナイチ姫に救われる。彼女に一目惚れされ、お持ち帰りされる所だったが、正体を見破ったカズサ王に牽制されて、その場を撤退している。その際、ヒナイチ姫の歌声を聞いた事が、彼がヒナイチ姫に執着する原因の一つでもある。気恥ずかしくて、その事件については、話していない。
魔女ルクさんには、契約した者達を実験台にし、人魚達を誑かして肉を食らっていた等、後ろ暗い経歴があります。
陸に行った元人魚達、人間から人魚になった者達の中には、望郷の念に駆られた者も多い。
彼らへの救済措置、人外にも友好的なシンヨコ王国との同盟、交流、付随する経済効果も狙って、カズサ王が陸と海を繋げる計画を立てています。
中心人物には魔女ドラルク。協力者として指名されたのが、ヒナイチ姫とロナルド王子、サンズ姫になります。
この三人の心臓には、魔法のパスポートが埋め込まれており、自由に陸と海で行動可能です。
「なぁ。ロナルド王子にサンズ。小さい頃に、何か拾った事はあるか?小さいタ…陸だと犬とか、猫かな。」
「小さい頃?あるぜ。怪我した子亀を拾って、お城で飼ってた。なんか知らねえけど、数年前に吸血鬼化してな、庭の池でのんびり暮らしてるよ。それが、どうした?」
「サンズちゃんも、ありましたね。下町で小さな子猫を…今も、あの子は母国にいますよ。猫又になって、忍猫達の頭として働いています。」
ヌンは、拾われた側ヌからね。ドラルク様に拾われて、とってもとっても幸せヌ。
兄が立ち上げた、海と陸を繋げる計画が始まって、しばらく経った頃だった。
元々、ドラルクが作るお菓子に魅了された私は、『毎日、魔女ドラルクが作ったお菓子を食べに通う』という契約を結んでいたのだけれど…まぁ。そこから、色々あってな。
その計画に彼が指名され、私は魔女の監視員・護衛・助手として、公然とここに通う事となった。
そして、魔女が陸からの協力者として指名したのが、なんと、二度と会う事はないと思っていた、ロナルド王子夫妻だ。
嵐の晩に、たまたま私が助けた人間の王子。そして、彼の命の恩人と間違われて、婚姻した隣国の王女。
縁とは、奇妙なものだよな。
その二人と私達は、こうして深海の魔女の別宅で、あるいはシンヨコ王国の会議室で『仕事』と『お茶会』をしている。どういう訳だろう。
彼らとは会えば会う程、初めて会った気がしなくて…こんな感じに、何でもない話をしたり出来るんだ。
「そっか。ジョンもその子達も、幸せなんだな。」
拾ったからには、最後まで面倒を見る…私もそういうものだと思う。
私はしてやれなかったから、猶更なんだろう。
「何だよ、しみじみしちゃって…お前は、どうだったんだ?」
「ヌーン。」
ロナルド王子が、紅茶を飲みながら首を傾げた。
「うん、このぐらいの小さなメンダコをな。ヨシキリザメに襲われてた所を、助けたんだ。可愛かったから、『ぷにぷに』って名前をつけて…お城で飼おうとしてたんだけど。兄さんに、駄目だって言われてな。」
「何でだ?ドラ公は可愛くねえけど、メンダコは可愛いだろ?」
「ヌヌヌヌヌン!」
「う~ん。魔女が顔も性格も可愛くないのは認めますけど。カズサ王が言うのは仕方ないと、思いますです。」
子供の頃は意味も分からず、泣いて、ゴネて。飼えないなら、深海に通う…なんて、騒いだっけ。
でも、今でもそれは難しかったと思う。深海の環境は、我々の体に負担があるのだ。
そして、当時拾った『ぷにぷに』にとっても、サンゴ礁は合わない。
いや、鍛えている私と違い、あの子はすぐに死んでしまったと思う。
「『住む世界が違う』って、よく言うじゃねーですか。それに、拾われた側がそれを望んでいたかは、不明です。」
サンズ姫の言う通りヌね。ヌンはドラルク様に会えてよかったヌけど、ずっと自由でいたい者もいるヌもの。
そう…住む世界が、違ったんだ。
住む世界が違い過ぎて…現に、ロナルド王子達が来るもっと前から、ドラルクの元に来ていた私は…
「ふわぁ…。」
「お、ヒナイチ。眠いのか?」
「仕方ないですよ。今回、サンズちゃん達は、ここに来るのが遅かったですものね。」
「ヌン。」
…疲れてきたな、眠くなってきた。慣れてきたとはいえ、深海の環境は、私達には体の負担が大きい。
「自分で部屋に戻れるか、ヒナイチ?」
「ん、大丈夫だ。じゃあ、ロナルド王子達もまたな。」
友人達を置いて、テーブルを離れる。途中で、追加のクッキーを取りに行っていたドラルクと、鉢合わせた。
「おや、お姫様。また、眠くなってきたのかね?」
「ん…ちょっとだけ。仮眠してから、帰るぞ。」
やっぱり…将来的に、魔女と契約して、あるいは自分で魔術を覚えて…ジョンの様に深海で暮らせる体にしようと思う。
いや、もっとそれは簡単になるかもしれないな。
私は、胸に手を当てる。ドラルクが試験的に作った、パスポートがここに、そして、ロナルド王子達にも埋め込まれている。
これが有効な間は、表層に住む私どころか、陸のロナルド王子達さえ、深海でも行動可能だ。
私達で問題がない事が証明されれば、ドラルクが属している魔女達の協会で、パスポート量産化の目処が立つのだと言っていた。
『住む世界が違う』という垣根を、私達が参加しているこの計画は、崩そうとしてる。
それがどんな変化をもたらすかは、分からないが…今まで諦めていた事も、予想も出来ない事をも可能にする、という希望を孕んでいると、思っている。
「ウフフ。少しと言わずに、ゆっくりおやすみ。私の可愛い人魚姫。」
いつも通りに額に落とされる口づけに、心がホッと満たされていく。
「ありがとう。…そういえば、魔女。お前なら…」
さっきロナルド王子達と交わした話題を、彼にも聞いてみる。違う世界から来たシャコガイと契約をして、命を共有した彼ならば、どういう答えを返してくれるのだろう。純粋に気になったんだ。
「あは…言ってたね。ヨシキリザメから助けた、メンダコの話…。」
どうしてかな。魔女にこの子の話をすると、いつも彼は照れ臭そうに笑う。
彼は、ぷにぷにを知っているのだろうか。あの子は、どこか…彼に似ている気がする。何故だろう。
「そうだね…連れて帰っても、すぐ死んでしまったと思う。だから、カズサ王の言う事は、もっともだったのだよ。でもね…。」
そう言って、彼は私をローブの中に招き入れてくれる。嬉しいな。
だから、胸いっぱいに大好きな匂いを吸い込んで…うん、今日もいい夢が見れそうだ。
「そのメンダコは、貴女のおかげで命を拾ったのだ。そして、おかげでもっと楽しい事に出会えただろうね…とても感謝していたはずさ…そして、今も。」
「う…ん。そうだといいな。」
「そうだとも…感謝しているよ。だって、そのメンダコは…」
「…う…ん。」
トクトクと、優しい3つの心音を聞きながら…今日も、私の意識は落ちていく。

『今…君達に会えて、最高に幸せな時間を過ごしているのだから。』
『懲りない奴だな。何度も言うが、あんまり遠い所と深い所には行くなよ。』
『…分かってる!!』
兄のため息と呆れた顔を尻目に、トライデントだけ持って、私はお城を飛び出した。
深海まで行きたいけど…あの時も、たまたまサンゴ礁の位置を知っているシャコガイに会えたから、帰ってこられたんだ。だから、結局、この頃の私じゃ無理だったんだ。
今私達がいる、この水深200m岩場さえ、行けるはずがなかったんだ。
でも…いいよな?あの難破船ぐらいまでなら、いいよな?
そう思って、昨日ぷにぷにと出会った、あの場所へ向かう。
少しずつ水深が深くなっていって、周りが少しずつ暗く、冷たくなる。
『ヒナイチ姫、ここに来るのは珍しいですね。』
イトマキエイが、ゆったりと鰭をはばたかせながら声をかけてきた。
『うん、友達に会いたいんだ。』
『おや、そうですか。最近、そっちはサメが多いので、お気をつけくださいませ。』
大丈夫だぞ、私はとっても強いんだから。
『あら、お姫様。おでかけですか?』
『うん、友達に会いにいくんだ。』
岩場の間から、カサゴ達が珍しそうに声をかけてくる。
『どちらまで?あまり行くと、領海外になりますよ。』
『この先の、沈没船のある所までな。』
意外と、遠いんだよな。ご飯までには、帰らないといけないのに。
『沈没船まで?なら、私の背中に乗りませんか?』
懐っこいバンドウイルカが、声をかけてきた。そうだな、いつ来るか分からないんだ。早いに越した事はない。
『頼むぞ!』
『ウフフ、承りました。』
それに、本当は知ってる。結局、沈没船で待ったけど、ぷにぷにを見る事はなかった。
『♪~♬~♩♯~~』
あの頃、私は何日通ったんだろうな。来たのが私だと分かる様に、沈没船に腰かけて、毎日毎日、あの子に聞かせた子守歌を歌ったんだ。
それに、人魚の歌には魅惑の効果がある。
ヨシキリザメから助けた後、私は『ぷにぷに』を掌に乗せて、この歌を歌ってあげたんだ。その時、あの子は目を細めて、読経の様な調子っぱずれな音で返してきた。
たぶん、気に入ってくれたんだと思う。
魅惑にかかっているメンダコなら、私の声に引き寄せられるはず…そう思って、通い詰めていた。

諦めが悪いって?うん、人間達にはそう思えるよな。でも、私達人魚も執着心が強くてな…深海の者達ほどでなくても、それが我々…人ならざる者達だ。
『おい。いい加減にしろ、ヒナイチ。それは、誰彼構わず聞かせていいものじゃない。』
ある日、沈没船に着いたら待っていたのは、険しい顔をした兄だった。
結局、最後まで一番会いたいメンダコに会う事は出来なかったんだ。
『あのメンダコは、来ない。ここでも、彼は暮らせないんだ。』
『…ぷにぷには、私のだ。私のモノだ!この歌が聞こえたら、来るんだ!私の元に、来るはずなんだ!』
『諦めろ。これ以上、歌うのはよせ。会う事も出来ないのに、恋焦がれる苦しみを…お前は、間違ってここで歌を聞いた者達にも、与える気か?』
『…。』
そういえば、そうだったな。その日以降、私は歌を歌わなくなったんだ。
そして、いつしかその記憶も薄れていった。
魔女のベッドで眠っていて、あの子と出会った時の事を、夢に見るまで。
あれから、9年も経っていたんだな。
『魔女!お前の作ったおやつは、いつだっておいしいな!』
『それは、どういたしまして。』
『なぁ、お礼って…いらないのか?通うだけで、こんな美味しいものを。』
『お礼ねえ…じゃあ。』
「…チ…姫?」
『一曲、歌っておくれ。イナ海国の子守歌をリクエストするよ。』
『簡単に、歌っていいものじゃないんだぞ?人魚の歌声には…』
『知ってるよ。魅惑の力がある…大丈夫。私なら、大丈夫。だって、私は…』
本気で欲しい者にしか、この歌は聞かせられない。他に聞かせていいのは…
『とっくに、かかっているのだから…なんてね。私の美しいお姫様。』
…命を賭けてでも欲しいと決めた、お前だけだ。だから、今夜も私は…
「…イチ姫?どうかしたかね?」
「クッキー!!」
優しい声と、大好きなクッキーと紅茶の香りで飛び起きる。
そっか。私は、魔女が用意してくれていた部屋で、仮眠を取っていたんだった。
「おやおや…歌っているのが、聞こえたから。てっきり、起きているものだと思って、持って来たのだよ。寝言だったの。」
「うん!今、起きたぞ!これを食べたら、帰るからな。」
ベッドテーブルに並べてくれた、クッキーを口に運ぶ。
ホロホロと、口の中で溶けていくバターの風味に、控え目な甘さ。
明日も明後日も…何十年後も、永遠に食べたいお前のクッキーだ。
ずっと、ずっと…永遠に、私の為に焼き続けて欲しい。
「おいしい、おいしい。」
「そうそう、私のお姫様はそうでなくては。ねえ、折角だもの。帰る前に、一曲聞かせておくれ。」
「お安くは、ないぞ?覚悟はあるか?」
イタズラっぽく、笑ってみせると、お前もヴィラン気どりの笑顔で返してくれる。
「…あるとも。命を賭けても惜しくはない。何度も言わせないでおくれ、ね?」
そう…お互い、私達の想いは同じもの。
だから、本当は帰りたくない…でも、今は帰らなきゃ。
海と陸を繋げるこの計画を成功させるまでは…この契約を完遂させるまでは。
魔女は黙っているけれど、この契約を果たした時、私は深海の魔女の元に嫁入りする、と契約書に書かれている。それまでに、やらなきゃならない事がたくさんあるんだ。
永遠に、共にいられる未来を手に入れる為に…まだ、私はサンゴ礁に帰らなきゃ…
「じゃあ、ヒナイチ姫。気をつけておかえり。また、明日。」
そう言って…お前は、私の手に口づけをする。
最近、お前の助手をしているから。深海の魔女の一番弟子になったから…知ってるぞ。
それは、私が明日もここに戻って来る様に、願掛けの魔力を込めたものなのだ。
『永遠に、私の元に通って欲しい』
そうなのだろう?
私達の願いは同じもの。いや、もっと私の願いの方が重いんだ。
「ああ、魔女ドラルク!また…」
だから、そう言って、私はお前の唇に口づけをする。私も、新米だけど魔女の一人になったのだから…この行為にも意味がある。
私は彼の願掛けの上に、重い呪いを、さらに重ね掛けする。
『どんな運命が待っていても、私と永遠に一緒にいろ』
その呪いを込めながら、驚いたお前の咥内に舌を入れる。
逃げない様に後頭部を押さえて…お前も私が逃げない様に触手で絡めて…
「…んっ!?あ…ッ…」
「んくっ…ふ…」
お互いの口を離した後、困った様に笑うお前も…気づいているだろうか。
今日も私はお前に、お前は私に、呪いをかけたんだ。
願いを込めた甘露をお互いに啜り合って…お互い呪いをかけ合って…忍び寄って来る、残酷な運命をねじ伏せようとする。
想いをかけた以上は、最後まで責任を取るべきだ。
あの時の私は、無責任に自分が魅惑したメンダコを手放したけれども…今度こそ、お前だけは離さない。
「…明日もな!」
「うん、明日も来ておくれ。」
だから、今宵も私はお前の前で、あの子に聞かせた歌を歌う。
私達が繋いだ想いの糸を、もっともっと強固にする為に。