みずいこお題部第六回より「写真」「紫」をお借りしました
関西弁非ネイティブのため口調は勘頼り
@a_yuuzora
「あ、写真きた」
スマホの通知を見た生駒がそう言うのを聞き、水上は振り向く。
「写真?」
「じいちゃんの写真。見たい言うてたやろ」
「言いましたねえ」
生駒の言動や行動指針は祖父の影響が強く、雑談でも度々祖父の話が出てくる。するとその人のことが気になるのは当然で、隊の皆も生駒の祖父がどんな人物か見てみたいと言った。
その話を律儀に生駒は家族に送っていたらしい。
「じいちゃん昔からあんま写真好きやなくてな、こっそり撮ろうとしてもバレるし逃げんねん。で、オカンが昔の俺のアルバム整理してたら発掘したって」
そう言って生駒はスマホを見せる。そこに映し出された写真は、藤棚の下で幼児を抱えたやや年嵩の男性が立っているものだった。子供は垂れ下がる紫色の天井に興味津々でこちらの方を向いていないが、男性はにらみつけるような真顔でカメラを向いている。その顔立ちは生駒にそっくりだった。
「うっわ、めちゃめちゃイコさんに似てますねえ! 血ぃ強っ」
「それ、帰省する度に近所のおばちゃんたちに言われるわ。そんな似てる?」
「イコさんがそのまま歳とったらこんな風になるやろなあって思うレベルっすよ」
「ほんま? でもじいちゃん若い頃はよぉモテたって聞いとるのに、俺は全然モテへんねんなぁ」
「あー……まあ、今と昔じゃモテる基準ちゃうからやないです?」
「せやろか」
生駒の少年心を忘れないところは同世代の女子には子供っぽく見えるだろうから、モテないのはそこじゃないだろうか、と水上は推測している。つまり、黙っていればモテる。が、喋らない生駒は彼の魅力が八割減するとも思っているので水上は敢えて指摘しなかった。今更モテてもらっても困るので。
そのまま写真に視線を落としていると、生駒はいつもより弱弱しい声音で訊ねる。
「やっぱじいちゃんイケメンやんな」
「え? まあそうですねえ。モテてたってのも納得の、若い頃も歳食ってからも男前なタイプやなと思いますけど」
「お前もこういうタイプのほうが好き、やったりする?」
「……んん? なんの話です!?」
「じいちゃんが男前なんは俺も認めるところやけど、流石にコイビトもそっちに靡かれたら困るなあ思て」
祖父とそっくりと言われる割にモテ度がかなり違うのは生駒にとって若干のコンプレックスだったらしい。水上は慌てて首を振って否定した。
「いやいやいや誤解ですって! 俺が見とったのはこっちです」
そういって指さしたのは、写真に写った子供――幼少期の生駒の方だった。
「カメラ目線やないイコさん希少やなあって」
「言われてみれば、せやな?」
「それと、ちっちゃいイコさん可愛いなあって。今でも可愛いですけど」
「キャッ嬉しっ、流れるように口説くやん」
「そら、可愛くてかっこいいイコさんなんてなんぼ褒めてもええと思ってるでね」
「ほんま? でもあんま褒められると照れてまうからほどほどにしてな」
「了解っす」
水上は画面を触ったついでにピンチアウトして幼少期の生駒の顔を拡大する。流石に面立ちはだいぶ変わっているが、初めて出会うものを見たときのキラキラした瞳は今と変わらないな、と思う。
「そうだ、イコさん、ゴールデンウイーク帰省でけへん言うてたやないですか」
「むしろ帰ってくんな言われたなあ」
観光シーズンの京都は尋常でなく混むし、交通費も高い。帰ってくるなというのは親心だろう。
「第三中の近くの公園の藤棚で、これと同じ構図で写真撮りません? ビフォアフター的な。イコさんの誕生日にそういうの送ったったら親御さん喜ぶんちゃいます?」
「えっ、何それ素敵やん……水上もしかして天才?」
「それほどでもありますけど。生駒隊の頭脳ですから」
「あっでも俺誕生日めっちゃ予定あんねん」
「撮るのは別に誕生日当日やなくてもええでしょ。送るのは当日にして」
「確かに!」
「ちょうど前日なら天気もよさそうやし、任務終わりに一緒に藤棚行きましょ」
「せやな! バッチリ撮ってや」
「カメラ目線したらダメですよ、同じ構図で撮るんすから」
「えっ、それ結構ムズくない?」
「なんもムズいことないです」
交友範囲が広く人気者の生駒の時間を誕生日前日に一人占めする算段をつけた水上がスケジュール帳にそれをしっかり書き込む傍ら、そんな算段に気付きもしない生駒はカメラを意識しない撮られ方を思い悩んでいた。