イアアキ+イコちゃんでオムライスを作るss。ほのぼの。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
ハートを描いて
瞬きも忘れ、意識を手先に集中させる。高まる緊張感で額に汗が滲んだ。拭いたいところだが、今は両手が塞がっている。
一発勝負だ。やり直しはきかない。アキラは息を止めて慎重にタイミングを見計らった。
そして、遂に勝負の一瞬が訪れる。
「いけ……!」
小さく気合の声を上げ、利き手を閃かせる。金属の擦れる音がして、次にべちゃりと濡れた音。
結果――アキラは勝負に、負けた。
「「「ああ~」」」
三つの落胆の声が重なった。
アキラ、イアン、イコの視線の向かう先はコンロの上のフライパン。そこには、オレンジ色のライスと黄色い卵が一塊になって焼けていた。
肩を落としつつ、焦げる前にとアキラがそれを皿へと移す。
「難しいもんだな」
「ああ、想像以上だった」
テーブルには三つの皿があり、そのすべてにオレンジと黄色――ところにより茶色――が斑になった塊が乗っている。
アキラがイアンの家を訪れたその日、イコも交えて挑戦したメニューはアキラの好物であるオムライスだった。ケチャップ味のチキンライスは順調に作れたものの、その後に待つ仕上げこそがオムライスの最難関、焼いた卵で包むという工程だ。
最初は普段料理をしているイコ、次に家主のイアン、最後にアキラが挑戦したのだが、見事に全員失敗した。卵が破けてライスがはみ出しているし、黄色一色になるはずの卵だって焼き過ぎて茶色になっている部分がある。
「残念」
しゅんとするイコの頭をイアンが撫でる。
「初めて作ったのだから仕方がない。次はきっともっと上手くできる」
「うん」
頷きつつも、イコは口先を尖らせて皿をじっと見つめている。出来栄えに納得がいかないのも無理ないが、すでに三人前あるので作り直すというのももったいない。
「そうだ! 日本じゃコレでオムライスに絵を描くのが定番らしいぞ?」
指を鳴らし、アキラがケチャップを手に取ってイコにウインクする。「食べ物に絵を描くの?」とイコの目が輝いた。
「ああ、定番はハートマークらしいな。赤いからか?」
「やってみるか?」
イアンに問われ、イコがこくこくと頷く。アキラがその手にケチャップを渡してやれば、真剣な表情で皿と向き合った。
ボトルを握りながら手を動かしていく。トマトの赤色が線を描き、やがてスタート地点へと戻って来た。
「できた」
黄色とオレンジが斑になったオムライスの上に、はみ出さんばかりの大きく赤いハートマークが咲いた。カーブが少し歪んでいるのはご愛敬だ。
「お、いい感じじゃないか!」
「上手だ」
アキラとイアンが褒めると、イコは満更でもない様子で胸を張る。
そして、持っていたケチャップをイアンへと差し出した。
「俺も描くのか?」
当然だとばかりに肯かれ、イアンは小さく笑ってそれを受け取った。
自分で焼いたオムライスの表面にケチャップを垂らす。描き上がったのはイコよりも控えめなサイズのハートマークだ。イアンは少し悩んでから、線の内側もケチャップで埋めた。
「随分と情熱的なハートだな?」
「嫌いか?」
「いいや、好きだぜ」
意味ありげに視線を絡め微笑み合う。
一周して戻って来たケチャップを手にしたアキラは、残る一皿を手元に引き寄せた。少し考えてから、ちょこちょことケチャップを持った手を動かす。
「よし、これでどうだ?」
出来上がったオムライスには、いくつもの小さなハートが散らばっていた。卵の破れや焼き目が隠され、ぱっと見ちゃんとしたオムライスに見える。
「すごい」
「器用さにはちょっと自信があるんだ。まあ、オムライスを包むのは失敗したけどな?」
沢山のハートで飾られたオムライスを見て、イコが目をキラキラさせている。アキラはそんなイコの前に、自分が手掛けた皿を寄せてやった。
「いいの?」
「ああ、このオムライスはお姫様に。俺にはダーリンの情熱的なハートがあるからな」
そう言いながらアキラはイアンが手掛けた皿を手に取る。視線で問えば、イアンは笑って頷いた。
「俺はこの一番大きなハートを貰おう。食べると元気が出そうだ」
イコの描いた一皿はイアンの下へ。
三人でテーブルを囲み、温かな夕飯の時間が始まる。
初めて一緒に作ったオムライスはちょっぴりケチャップが多かったが、その分甘酸っぱくて、これはこれで悪くないと笑いあったのだった。
(あとがき)
イアアキ+イコちゃんで疑似親子。仲良くオムライス食べて欲しい。ちなみに包む方のオムライスは正直ふわとろよりも難易度高いと思うけど、海外だと半熟卵はやばいので仕方がない。ケチャップの下りはアキラさんDEX15にちょっと夢見ました。