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染まる色、染める色。

全体公開 本編ドラヒナ(両片思い期) 4 5290文字
2024-05-26 22:49:23

ピクスク様のオールジャンルイベント『集まれ!ヤバピーポー』に参加させて頂いた1作目です。
本編ドラヒナで、ジューンブライドに憧れるヒナイチくんがメインのお話です。
個人的に好きなコンビ、ネコチュン屋の相方とのお茶会シーンを添えて。
白と黒のウェディングドレスの逸話については
白:貴方の色に染まります
黒:貴方にしか染まりません
が有名ですね。
今回のラストで、「白と黒の色について」云々をドラルクさんに語って貰っておりますが、実はこれは昔通っていたビーズ教室の先生が言っていたお話の受け売りです。配色に悩んだら、白か黒をベースにするといいよという言葉に、なるほどなぁと思ったものでした。
他の本編ドラヒナ(両片思い期)のお話は、ここから読めます→https://privatter.net/category/50955

Posted by @kw42431393

 「はい、感謝するです。これ、お前にもくれてやるですよ。」
 「ありがとう!サンガのお饅頭か。なぁ、食べてもいいか?」

 いいか?では、ねーでしょうよ。手品の様に一瞬で、包装が剥がされた箱から既に、饅頭が半分消えてるじゃねーですか。
 変わらないですね、こいつは。
 「うん。おいしいぞ。」
 「カフェで、お土産を開けるとか常識のねー奴ですね。」
 「おいしい、おいしい。もちもちして。」
 「美味しい?まぁ、いいです。あまり美味し過ぎると、サンズちゃんがあの砂に恨まれてしまいます。」
 欠食児童じゃあるまいに常に、何かを頬張っている様なヒナイチの言葉は、別に嘘ではないでしょう。
 でも
 「ちん、何だ?私に何かついてるか?」
 「饅頭の食べかすなら。」
 サンズちゃんが見ているのは口元ではなく、頭。いつもピコピコ動いているアンテナです。
 サンズちゃんの目の前で、赤いアンテナは犬の尻尾の様に左右に揺れているだけでした。
 「体は、正直ですよ。」
 「?」

 『あれ、サンズ女史も気づいちゃった?あれねフフ。私のお手製料理を食べた時しか、見られないんだよ?私の時だけなんだって、ウフフ。私のスナァ!?』
 『ニヤニヤすんな!しつこいんだよ!すみませんね、サンズさん。』

 いつでしたかフクマの代理で、ロナルドさんの原稿を受け取りに行った時に、ドラルクがドヤ顔で惚気てきた事があったのです。
 まぁ、サンズちゃん達にも色々ありまして別にヒナイチとは、馬が合う訳でもねーですが。年も近いし、お互い他県から働きに出ていて、知り合いも少ない何より、あのデブ猫の口車に乗せられて、ロナルドしゃんにご迷惑をおかけした事件以来サンズちゃん達は、都合が合えば、お茶ぐらいする間柄になりました。
 それに、サンズちゃんは、(かな~り不満ですが)ドラルクのクソゲーコラムの担当です。
 ドラルクからも、問わず語りに色々聞いたりしますし、お茶の間でもヒナイチの言葉の端々から、明らかに『満更でもない』事を察しています。
 羨ましい事ですよ。サンズちゃんは仕事にかこつけないと、憧れの人にお会いする事も叶わないのに。



 「親戚の結婚式だって?やっぱり、くノ一の里だから、白無垢か?」
 「そうでもねーですよ。今日日、くノ一だって教会でドレスぐらい着ます。見たいですか?」
 「うん、見たいぞ。ここに来るまで、可愛い服を着たりする事もなかったけど。今は、憧れてはいるんだ。」
 「ここシンヨコに来るまでって事ですか?」
 「ああ。マリアさん達にも、妹みたいに可愛がって貰っててな。女子会にも参加させて貰っているんだが、着ていく服が分からなくてドラルクに見繕って貰ってる。縫ってくれる事もあるんだぞ。」
 そういうのを、コナかけって言うですよ。そこまでやってて、気づかれないあいつも気の毒ですね。
 気づくぐらい、大人になるのを待ってるんですかね。
 「はい、どーぞ。」
 「あぁ。スマホ、いいか?花嫁さん、綺麗だな。それに、一緒に写ってるサンズも。パーティドレス、似合ってるぞでも、おっぱいとお尻、おっきくなってないか?今度は、ハマるなよ?」
 「失礼過ぎんだろ、てめーは!まな板とは、一緒にしねーで欲しいです。」
 アハハと笑うヒナイチは、もう一度スマホに視線を戻します。
 ドラルクの台詞を借りれば、『昼下がりの木漏れ日の様な』翡翠の瞳は、煌びやかな花嫁の姿を追っていました。
 やっぱり、こいつも女の子なんですよね。
 「そういえば。ヒナイチは、子供の頃、夢見たりはしなかったんですか?」
 「子供の頃か。」
 大抵の女の子の将来の夢は、『好きな人のお嫁さん』です。小さい頃、『お父さんと結婚する!』なんて、言うじゃないですか。
ヒナイチは道場の娘で、幼い頃からずっと吸血鬼対策課に行くと、決めていたそうです。

 『鍛錬ばかりしててな。よく、男の子に間違われたっけ。』

 そう言っていましたね。

 「父が仕事で、あまり家になかったからな。さりとて、悪の権化の『兄さんと結婚する!』とも言う気になれなかったし憧れる様になったのは、つい最近の事だ。仕事で忙しい今頃になってたるんでるな。」 
 人んちの床下に、勝手に部屋を作る非常識な奴ですが変な所に、真面目なんですよね。
 だから、ちょっと言ってやるです。
 「忙しくたって、憧れてもいいじゃないですか。あの雑魚に打ち明けてもいいと、サンズちゃんは思いますよ。」

 監視対象だから、種族が違うから、ずっと年上だから何より、ロナルドさんやジョンくんも含めた、あの事務所での日常を変えたくない、妹か娘の様な間柄でいい黙っている理由は、いくつもあるのでしょう。

 「自分の事は、棚に上げて簡単に言ってくれるな。」
 「うるせーですよ!ロナルドしゃんは、お忙しい方なんです!あいつは、暇人じゃねーですか!」

 困った様に笑って、ヒナイチはスマホを返してきました。
 背中は押してやったですよ、あとは、お前なりに考えればいいです。



 初めて、ボサツが事務所で問題を起こした時の事だったな。
 ボサツをおびき寄せる餌に、ドラルクが取り出したクッキー。あれを口にした瞬間に、頭に浮かんだ風景。

 『ご飯、出来ていますよ』
 『ああ、頂こう。』

 夕飯を用意して、笑って出迎えてくれるドラルクの姿が、頭をよぎったんだ。
 どうしてだろうな私が、旦那さんの様な立ち位置の未来予想図だった。あの時の私は、お嬢さん扱いされる事に慣れてなくて、『可愛い』と言われる度に恥ずかしがって、怒鳴ったりしたものだった。女性である事より、警察官である事を優先していたからだったと思う。

 今はどうか、だと?どうなんだろうな。

 「ヌヌイヌヌン、ヌヌッヌイ!」
 「いらっしゃい、ヒナイチくん。ご飯、出来ているよ。食べていくでしょ?」
 「ああ、頂こう!そういえば、ロナルドは?」
 「急遽、依頼が入ってね。帰るのが、遅くなるって。ジョンと、先にお食べ。」
 
 当時の予想図とは、少し違う現実。でも、もっと心地よい現実。
 それは、間違いない。これが、毎日の楽しみだと思っている。
 でも

 「おや、サンズ女史と会って来たんだね?」
 「ちん?よく分かったな。」
 「そりゃあ。」
 マニキュアで彩られた、細い指がこちらに伸びる。かつてなら、払いのけただろう手を目で追っていると、優しく口元を拭われた。
 「口についてるよ、サンガの里名物のくノ一饅頭。」
 クスッと笑った顔は、何故か、あの時見た予想図のドラルクを思い出させた。
 遅ればせながら、頬が熱くなる。
 さっきの『打ち明けてもいいと思う』と言ったサンズの言葉を意識したせいだ。サンズニャンのせいだぞ。
 
 あれ、美味しいヌよね。うちにもくれたんだヌって、どうしたヌ?ヒナイチくん?

 怪訝そうなジョンの言葉に、我に返る。
 今、考えていた事を悟られたくなくて、必死に話題を逸らす。やっぱり、恥ずかしいじゃないか。
 「ああ、な、何でもない、ぞ。そうそう。サンズニャン、親戚の結婚式で帰省していたんだ。写真も見せて貰ってな。」
 「らしいよね。サンズ女史も、もう少し若造を押せばいいのに。」
 「花嫁さん、綺麗だった。今日日、くノ一もウェディングドレスを着るらしいな。」
 「そりゃあ。今日日、吸血鬼だって、教会で式を挙げる者もいるよ。くノ一だって、するだろう。」
 そうなのか。まぁ、吸血鬼が十字架や教会を嫌うのは、かつて対立していた時代に、悪魔と同一視された歴史があるからだ。
 若い世代になると特に、宗教にうるさくない日本で育った夜の者達は、猶更、そうかもしれない。
 「フフ。私も、そんなに気にしないもの。そうでなければ、十字架を身に着けた退治人の所に転がりこまないよ。」
 そっか、じゃあいやいや、何を考えた?
 サンズが、変な事を言うからだ。
 「だから、私はお嫁さんに任せるだろうね。私が決めたお嬢さんだもの。和装にしても、どのドレスも、どこの教会でも、神社でも似合うはずだもの。」
 その言葉に驚愕して、ドラルクを見上げる。杭でも打たれた様な背筋が凍る心地がした。
 考えてみれば、ドラルクは200年以上生きている吸血鬼だ。しかも、彼は竜の血族の嫡孫なのだ。許嫁ぐらいいても何もない、なんて何故考えていたんだろう。
 「よ予定、あるのか?」
 「予定って?ちょっと、ヒナイチくん?」
 「ヌーヌヌヌ?ヌイヌーヌ?」

 冷静になれ、私。声が、プルプルしてるじゃないか。私達は、監視員とそのたいしょう
 「そんな顔をしないで君が考えてる様な意味じゃないよ。」
 そう言うドラルクは、何故か少し寂しそうな顔をしていた。どうしよう私は見当違いな事でも、言ったのだろうか。
 そう考えていると、チュッとリップ音がした。
 いつの間にか、髪を掬われてキスをされたのだ。
 「着替えておいで。今日は、君が好きなものばかりだよ。」
 「う、うむ。」
 ショックは受けていても、お腹は空く。現に、その言葉に反応して、頭のアンテナが動いているのを感じていた。
 自分でも、単純な奴だな。こんなんじゃ、そんな対象として見て貰える訳がない。
 考えるのは、もうよそう。今でも、十分楽しいんだ。
 私は、お前の妹か娘それどころか、餌付けし甲斐のあるハムスター。今まで通りで、いいじゃないか
 
 



 「ねえ、ヒナイチ君。白と黒ならどっちが好き?」
 「え白と黒か?」
 突然振られた見当違いな質問に、思わず床下に向かおうとした足が止まる。
 「そんなに、気負わないで。純然たる興味だから参考にしたいだけとも、言うね。」
 「また、服でも縫ってくれるのか?」
 「まぁ、そんな所。」

 白と黒かどうなんだろう。
 どちらかというと、白だろうか。今の自分の制服を見る。幼い頃、白いコートを着た兄を見上げてきたから、馴染みのある色。
 でも、最近ここに来る様になってから昼と夜の世界の両方の者達とつき合う様になってから、黒も悪くない気がしてきている。
 濡れ鴉みたいに、綺麗なお前の黒い髪とはためくマントの黒いや、もっと言うなら。

 「白はね、相手に寄り添って、自分が染まるモノ。黒はね、強い意志を持って、その相手を染めるモノ。どちらも素敵な意味を持つのだよ。どちらが、悪いという事もないのさ。」
 「どちらかが、最終的には『染まる』という意味では同じじゃないか?」 
 白か黒かでなければ、いけないのかな。染まりたい相手は染めたい相手は、一人だけなのに。
 だから、染まりたい色と染めたい色なら、決められるけど。
 「ゴメン、ゴメン。なんか、重かったかな。じゃあ、好きな色でいいよ。」

 好きな色というかもう、言ってしまってもいいか。
 『あの雑魚に打ち明けてもいいと思いますよ。』
 サンズもそう言ってくれたんだし。 

 「染まりたい色なら紫。そのマントの裏地と、その菱形のボタンみたいな。」

 不安な時に、私を包み込んでくれる温かいマント。包まれた中で見える、落ち着く色。
 『優雅で気品のある、まさに私みたいな色でしょ?』
 そう言っていた、お前を体現する色。

 この回答は、駄目だろうか。おずおずとドラルクを見上げる。
 「フフこの紫が、いいの?嬉しいな。」
 うん、それだけじゃないんだ。染めたい色の方も言っていいのかな。
 この色の中では、お前は生きられない。
 『わざわざ、撮ってくれたの?ありがとう君を通していつも見ているから、気にしないのに。』
 いつだったか、上手く撮れた夕日の写真を見せた時に、お前はそう言ってたんだ。
 その時、笑ってくれたから、嫌いな色じゃないと思う。

 「染めたい色なら橙色。お前が綺麗と言ってくれた、この髪の色。」
 「染めたい色それって。」
 あぁ、ダメだ。やっぱり、返事を聞くのが怖いだから、臆病なリスの様に、そのまま床下に飛び込んだ。
 言うんじゃなかった自分でも何を言ってるのか、さっぱり分からな

 ドラルク様。ヒナイチくんが、勇気を出して言ってくれたんだヌ。今日こそ今まで想ってた事を

 『ズルいなぁ先に言うなんて。君こそ、私をこんなに染めあげておいて。』

 扉を閉める。あぁ、なかった事にしたい。着替えて出て来た時には、いつものあいつに戻っていますように
 
 『私も君を染めていいんだ?大人になるまで、待つつもりだったのにヒナイチくんが言ったんだよ?覚悟してね?』
 
 
 
 

 
 
  
 


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