ピクスク様のオールジャンルイベント『集まれ!ヤバピーポー』参加作品の3作目です。
反転ドラヒナで、まだお嬢ルドくんが合流しておらず、ドラヒナの二人は緊張状態にあった頃のお話になります。
いつも通り、監視に吸血鬼の居城来たヒナイチくん。屋根裏部屋から出ようとすると、下から客と思しき女性と、母国語で楽し気に談笑する主従の声がして…捏造した反転セデューマが出ます。ご注意下さい。
一応、以前ドラヒナキスの日企画に参加したお話(君が目覚めるまで:https://privatter.net/p/10152534)で、土壇場でドラルクさんが、転化させるのをためらう伏線的な設定ですね。
@kw42431393
反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
反転ドラルク:
強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。胃袋と快楽による刷り込みを行い、彼女を自分に溺れさせようとする事に余念がない。
反面、彼女が無事でいて、毎晩監視に来て欲しい一心で、隠れて敵性吸血鬼達を暗殺したり、自首する様に催眠術をかけて回るなど、良くも悪くも一途な所がある。
反転ヒナイチ:
吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、快楽堕ち一歩手前まで追い詰められている。
夜と昼…どちらかの世界を選ぶ様に選択を迫られており、ドラルクに対して、愛憎入り交じった複雑な感情に苦しんでいる。
反転ジョン:
ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
主夫婦がヤンデレ同士なので、仲立ちする等、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。
反転セデューマ:
竜子公の妹ゴルゴナの娘。ドラルクとは、幼馴染みの従兄妹同士。母親譲りの赤毛と石化能力を持つ。
17の頃、彼と縁談があったが破談になっている。詳しい事情は、親族が誰も話したがらない為、不明。
性格は絵に描いた様な模範的な貴族令嬢で、スリルを求めて問題行動を繰り返すドラルクとは、妙に馬が合った。
従兄の評価によれば、「虫も殺さぬお淑やかな令嬢に見えて、実はお嬢ルドくんとタイプが似ている。あの師匠がちょっかいをかけようとしない…と言えば、分かって貰えると思う。」との事。
他に書いた反転ドラヒナは、こちらから→https://privatter.net/category/50931
『Nu ne-am văzut de mult.Dralc,John.(お久しぶりですわね。ドラルク、ジョン。)』
『Hmm…Ultima dată când ne-am întâlnit a fost în timpul celui de-al Doilea Război Mondial. Ei bine, bine. Vă rog să luați loc.(うむ…最後に会ったのは、第二次大戦中だったか。まあ、いい。そこにかけ給え。)』
Domnișoară Seduma.iată, ceai.(セデューマ様、お茶をどうぞヌ。)
いつも通りの監視の時間だった。
屋根裏から顔を出そうと思った時、下から聞きなれない女性と、ここの住人達の声が聞こえてきたのは…。
「客か…珍しいな。」
聞こえてくる言葉は、彼の母国語だろう。時折、彼が漏らす独り言、それに、電話で話している時の会話に、ルーマニア語が混ざっている事には、気づいていた。全く分からない様では、監視員の意味がない。
だから、こっそり勉強していたのだ。このぐらいの日常会話なら、なんとかヒアリング出来る。
相手も同じ言語を使っているという事は、親戚か友人か…それとも。
そっと、監視用の覗き穴から、様子を窺う。
黒い喪服に身を包んだ吸血鬼の女性が、ジョンが引いた椅子に腰かける所だった。燃える様な赤い髪に、上品な立ち振る舞い…なにより、どこかで見た面立ちだった。
「報告書で見た…ドラルクの叔母上に似ている気がする。」
吸血鬼界でも最大の勢力を誇る、竜の血族者達は世界中に多い。理由は、最強無敵の真祖と名高い竜大公…ドラルクのお祖父様…がフランクな方で、望む者に血を分け与えるからだという噂がある。
普通、特に人間は吸血鬼化しづらく、失敗する事も多い。しかし、ご真祖様ほど濃い血を有していると、ほぼ完全に吸血鬼化させ、自分の血族に迎え入れる事が可能なのだ。
竜子公の妹であるゴルゴナは、直接、血は繋がっていない。しかし、ご真祖様から授かった血を通して、実妹の扱いを受けているのである。確か、娘が一人いたはず…。
「従妹…か?『触れたいと思った女性は、君だけだ』とか、言ったくせに。」
ヤキモチではないが、思わず独り言が漏れる。
『うるさい!ど、どうせなら、もっと…素直な女性にすればいいだろう!どうして、私なんだ!?ひっく…もう嫌だ!いい加減にしろ!』
『仕方がないだろう…200年以上生きていて、そうしたいと思った初めての女性が、君なのだ。どうして、信じてくれないのかね?』
所謂、痴話喧嘩の類いだが、彼の言い分を信じた訳ではない。
信じた訳ではないが…そう言われるのは、嫌な気分ではなかった。それほど、私自身も彼に染まりつつあったのだ。認めたくはないが。
『ウフフ、変わりませんわね。これは、お土産ですわ。食材の方が、喜ぶと思いまして…。』
『おや、これは懐かしい。羊乳のチーズも、あまり日本にはないのでね。ワインと一緒に頂くよ。そうだ。今夜は、郷土料理にしてあげよう。ヒナイチくんの口に合うといいのだが。』
大丈夫ヌよ。ヒナイチくんが、ドラルク様の料理を嫌うはずがないヌもの。
『季節の変わり目か、疲れた顔をしていてね。やはり、そうしよう。腕の振るい甲斐が、あるというものだ。』
下から聞こえてくる彼らの声は、楽しそうだ。私がいる時より、ずっと…
『あら、監視員の方の事ですわね。伯父様から窺っております。彼女が来てから、反人間派の同胞とのつき合いをやめたと、喜んでおられましてよ。』
『お父様か…相変わらずだな。』
『ヌー…』
『伯父様が、貴方との見合いを強行させたのは、貴方がご心配だからですわ。まぁ、私も貴方に感謝しておりますけれども…。』
見合い…という単語に、ドキリとする。
まぁ、長生きしているから、寧ろ、あり得る事なのだ。
でも…おかしいな。この女性は、喪服を着ているし、台詞の端々から、既婚女性を示す単語が聞こえる。おそらく、未亡人なのだろう。
何故、受けなかったのだろうな。どう見ても、仲がよいとしか思えないが…
『クックク…思い出させないでくれ給え。君と…正確には、君の恋人と3人で…見合いを壊してやった時の、あの髭の顔ときたら…アハハハ!』
ドラルク様、人が悪いヌ。ヌンと出会う前の時代の話ヌけど…ヌー。
『懲りないお人ですわね。ノースディン伯父様に、アイスバーにされかけたのをお忘れですの?』
その女性の恋人?見合いを壊した?判読出来る単語の断片を繋げても、どうにも分からない話だ。
「どうしたものか…うん。」
下からは、その後も楽しそうな談笑が聞こえる。思い出話に花を咲かせているのだろう。
「だんだん、スラングが増えて分からなくなってきた。なんだか…。」
電気の消した屋根裏部屋に、一人きり。下から聞こえてくる言葉は、分からない外国語。
自分から誇りを奪った相手とはいえ、少なからず、本音を漏らせる一人と一匹が…遠く感じる。
「吸血鬼ドラルク、今夜も監視に来たぞ。」
「ご親戚の方ですか?私は、吸血鬼対策課のヒナイチと申します。」
いつも通り、そう言って、姿を現しても構わないのだ。何故、遠慮する?何故…
「不安になるのだろうな…。」
足音を忍ばせて、覗き穴から離れると、私はデスクでパソコンを立ち上げた。
分かる所まで、報告書を上げなければ…でも、どう書けば…書かなければいけないはずの言葉が、浮かんでは消える。
『それでは、そろそろお暇します。ヒナイチさんに、よろしくお伝え下さいませ。』
『うむ…また、顔を見せてくれ給えよ。とはいえ、当分、日本には来ないだろうね?』
『夫が、祖国で待っておりますの。娘が日本に嫁いでおりまして…孫の顔を見たら、すぐルーマニアに帰るつもりです。』
彼女は、孫までいる既婚者で、幼馴染の従妹。恋愛感情ではない事は、言葉の端々から察しはつく。でも…
「でも…私とジョン以外に、そんな優しい声を出さないで。」
パソコンを閉じて、机に突っ伏した。こんな状態で、報告書なんて書けるものか。
セデューマ様、今も喪服で通してたヌね。
「うむ。何故、夫を転化させなかったのか…。分からなくはないが。」
さっき話題に出た、従妹の夫とは、昼の子だった。しかも、かなり歓迎されない身分の男性だった。所謂、流浪の民出身だったのである。
「お父様としては、問題ばかり起こす私に家庭を持たせて、更正させたい。叔母様としては、娘を別れさせたい。元々幼馴染みで、正反対の性格で、何故か馬が合う従兄妹同士。だから、あの師匠が持ちかけたのだよ。」
分かってないね、あの髭は。仲がいい、だからといって、添い遂げたいとは限るまいに。
それで、結託して壊したって話ヌね。
まあ、そういう訳だ。さらに、あの髭をギャフンといわせられる、というオマケもつく。
たまたま、彼と私の背格好が似ていたのも、幸いした。何より、セデューマは、母親譲りの石化能力を有していたのだ。
「見合いなんて、まだるっこしい。そのまま、親族全員の前で誓約してしまおう…そう言ってだね。」
彼に私の服を着せて、石で作った精巧な私の顔を張り付けさせたのだ。ダメ押しに、霧となった私を彼に纏いつかせて、気配臭を誤魔化す。そういう作戦だったのだ。
…よくバレなかったヌね。
「まあね。ノースディンだけは、かなり疑っていたよ。しかし、隣のお父様が感涙していたので、何も言えなかったのだ。セデューマの評判が、模範的な貴族令嬢だったのもある。しかし…サインさえすれば、こちらのものだ。」
我々人ならざる者にとって、契約は絶対だ。
堂々と皆の前で二人がサインをして、婚姻を表明する。
「確認してみれば、表記されている名前は私ではない。術を解除してみれば、姿も違う。アハハハ!いやはや、あの場の皆の顔ときたら…最高のショーだったとも!」
そこまで苦労して、結ばれた二人だ。なのに、セデューマは、夫を吸血鬼に転化させなかった。
彼を見送ってから…150年近くを喪服で通し、石化させた死体と共に過ごしているという。
『何故、転化させなかったのかね?彼も共にある事を、願っていたそうじゃないか?』
『分からないお人ですわね。仮に、失敗してグールとなった場合でも…私は、満足です。でも、子供達は、どう考えるでしょう?』
知性を失い、爛れた姿となった父親を、子供達に見せたくない…という。
私なら…両親から強い血を受け継ぐ私なら、ヒナイチくんを転化させられる自信がある。それに、失敗しても後悔しない自信がある。どんな姿になっても、愛してあげられる自信がある。
…子供達か。私もヒナイチくんとの間に子供が生まれれば、同じ様に考えるだろうか。
『お祖父様に転化して貰う選択も、あったのでは?』
『貴方なら、そうなさりますか?なさらないでしょう?私もそうですわ。』
そこは、分かる。
ヒナイチくんを転化させるのは、牙を突き立てていいのは、私だけだ。お祖父様にだって、譲れない。
彼女を染めていいのは…
「ドラルク…今夜も監視に来たぞ。」
大事なお嬢さんの声に、顔を上げる。今宵も、疲れた顔をして、俯いた姿は私の庇護欲をそそってくる。
「いらっしゃい、ヒナイチくん。少し、遅かったね。」
「ヌヌヌレヌヌ。」
「ん…パトロールが、長引いてな。」
椅子を引いて彼女を座らせると、用意していたジャムクッキーとお茶を並べる。
「さあ、ジョンとお上がり。君が休んでいる間に、食事の用意をしよう。」
「うん、頂くぞ。」
サクサクという、心地よい音を聞きながら、アンテナがハートになっていく様子に、満足する。知らず、饒舌になる。趣味の話になると、相手の都合を考えないのは、私の悪い癖だ。
「さっき、従妹が来ていて、土産を貰ったのだ。待っておいで。今宵は、ルーマニア料理を振る舞わせて貰うよ。」
「…ドラルク。」
キッチンに向かおうとすると、小さな手が伸びてきて、マントの裾を掴んだ。
「…ヒナイチくん?」
「ヌーヌヌヌ?」
俯いていて、表情は読めない。だだ…声がとても弱々しかった。
「…うん。」
意地っ張りなお嬢さんが、こういう事をするのは珍しい。突っぱねる姿に、心惹かれて始まった想いだが…
「フフ…こうかね?」
「うん…。」
彼女であれば、どんな姿でも愛おしい。
そっと、マントの中に引き入れる。いつもなら、無理矢理招き入れる場所。暴れるリスを押さえつけて、一方的な満足感を得る行為。今宵は、そうではないのだね?
「この中も…悪くはないだろう?」
「うん…。」
覗き込んだ顔は、うっすら染まっていた。彼女が纏っている吸対のジャケットと同じだ。
白いモノは、染まりやすい。ここまで、染まりつつあるのだ。もう…いっそ
「Așa că vino în lumea nopții.(だから、夜の世界においで。)」
全部、染まってしまえばいい。さっきから、「うん」としか言わないのだ。そのままの流れで、承諾させる事が出来たなら…
「…Nu(嫌だ)」
「…Ai aflat?」
冗談交じりに、舌を出して見せる。
クスクス…バレたか。違う言語で、言質を取ろうと思ったのに…。
「まあ、いいとも。いつか『da』と言わせてみせよう。あと、そのジャケットをお貸し?」
「ジャケットを?ああ…いつもすまない。」
よく見ると、さっきのジャムがついていた。このままでは、シミになる。
「白いモノは…染めやすい、染まりやすい。管理が大変だとも…君の心と同じで。」
ここまで私に染まったのに、何かの折に、再び迷い始める。すんなり、こちらに来て貰えない。
従妹が纏っていた喪服を思い出す。そういえば、彼女は恋人と誓約書にサインする時に纏っていたドレスも、黒だった。
黒いウェディングドレスには、『貴方以外には染まらない』という、花嫁の強い意識を示しているのだという。
私達の時もそうしようか…こちらに連れてきてからも、迷わぬように願をかけて。
ドラルク様、ヒナイチくんは疲れてるヌ。そういう話は、また後で…
そうだね、このぐらいに…そう思っていたのだけれど…ずっと俯いていたヒナイチくんが、そこで顔を上げた。
「大丈夫だ、ジョン。それに…今更、白も黒もないだろう?」
「おやおや、それはどういう意味かな?」
「これまで…その日の気分で、好き勝手に塗り潰しておいて。白も黒もあるものか。」
ああ、そういう考えもあるのか。それまで、一貫性がなかった私も、甘かったのかもしれない。
しかし、全ての色を混ぜると、黒に近づく。ならば、これからは、他の追従も許さない程に…しっかりと…
「黒く塗り潰す…か。それもいいね…楽しみにして給え。」