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染めるどころか、塗り潰す。

全体公開 反転ドラヒナ 3 6361文字
2024-05-31 18:04:31

ピクスク様のオールジャンルイベント『集まれ!ヤバピーポー』参加作品の3作目です。
反転ドラヒナで、まだお嬢ルドくんが合流しておらず、ドラヒナの二人は緊張状態にあった頃のお話になります。
 いつも通り、監視に吸血鬼の居城来たヒナイチくん。屋根裏部屋から出ようとすると、下から客と思しき女性と、母国語で楽し気に談笑する主従の声がして捏造した反転セデューマが出ます。ご注意下さい。
一応、以前ドラヒナキスの日企画に参加したお話(君が目覚めるまで:https://privatter.net/p/10152534)で、土壇場でドラルクさんが、転化させるのをためらう伏線的な設定ですね。

Posted by @kw42431393

反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
 
 反転ドラルク:
 強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
 自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。胃袋と快楽による刷り込みを行い、彼女を自分に溺れさせようとする事に余念がない。
 反面、彼女が無事でいて、毎晩監視に来て欲しい一心で、隠れて敵性吸血鬼達を暗殺したり、自首する様に催眠術をかけて回るなど、良くも悪くも一途な所がある。

 反転ヒナイチ:
 吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
 幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、快楽堕ち一歩手前まで追い詰められている。
 夜と昼どちらかの世界を選ぶ様に選択を迫られており、ドラルクに対して、愛憎入り交じった複雑な感情に苦しんでいる。

 反転ジョン:
 ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
 ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
 主夫婦がヤンデレ同士なので、仲立ちする等、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。

 反転セデューマ:
 竜子公の妹ゴルゴナの娘。ドラルクとは、幼馴染みの従兄妹同士。母親譲りの赤毛と石化能力を持つ。
 17の頃、彼と縁談があったが破談になっている。詳しい事情は、親族が誰も話したがらない為、不明。
 性格は絵に描いた様な模範的な貴族令嬢で、スリルを求めて問題行動を繰り返すドラルクとは、妙に馬が合った。
 従兄の評価によれば、「虫も殺さぬお淑やかな令嬢に見えて、実はお嬢ルドくんとタイプが似ている。あの師匠がちょっかいをかけようとしないと言えば、分かって貰えると思う。」との事。

 他に書いた反転ドラヒナは、こちらから→https://privatter.net/category/50931 



 『Nu ne-am văzut de mult.Dralc,John.(お久しぶりですわね。ドラルク、ジョン。)』
 『HmmUltima dată când ne-am întâlnit a fost în timpul celui de-al Doilea Război Mondial. Ei bine, bine. Vă rog să luați loc.(うむ最後に会ったのは、第二次大戦中だったか。まあ、いい。そこにかけ給え。)』

 Domnișoară Seduma.iată, ceai.(セデューマ様、お茶をどうぞヌ。)

 いつも通りの監視の時間だった。
 屋根裏から顔を出そうと思った時、下から聞きなれない女性と、ここの住人達の声が聞こえてきたのは
 「客か珍しいな。」
 聞こえてくる言葉は、彼の母国語だろう。時折、彼が漏らす独り言、それに、電話で話している時の会話に、ルーマニア語が混ざっている事には、気づいていた。全く分からない様では、監視員の意味がない。
 だから、こっそり勉強していたのだ。このぐらいの日常会話なら、なんとかヒアリング出来る。
 相手も同じ言語を使っているという事は、親戚か友人かそれとも。
 そっと、監視用の覗き穴から、様子を窺う。
 黒い喪服に身を包んだ吸血鬼の女性が、ジョンが引いた椅子に腰かける所だった。燃える様な赤い髪に、上品な立ち振る舞いなにより、どこかで見た面立ちだった。
 「報告書で見たドラルクの叔母上に似ている気がする。」

 吸血鬼界でも最大の勢力を誇る、竜の血族者達は世界中に多い。理由は、最強無敵の真祖と名高い竜大公ドラルクのお祖父様がフランクな方で、望む者に血を分け与えるからだという噂がある。
 普通、特に人間は吸血鬼化しづらく、失敗する事も多い。しかし、ご真祖様ほど濃い血を有していると、ほぼ完全に吸血鬼化させ、自分の血族に迎え入れる事が可能なのだ。
 竜子公の妹であるゴルゴナは、直接、血は繋がっていない。しかし、ご真祖様から授かった血を通して、実妹の扱いを受けているのである。確か、娘が一人いたはず
 「従妹か?『触れたいと思った女性は、君だけだ』とか、言ったくせに。」
 ヤキモチではないが、思わず独り言が漏れる。



 『うるさい!ど、どうせなら、もっと素直な女性にすればいいだろう!どうして、私なんだ!?ひっくもう嫌だ!いい加減にしろ!』
 『仕方がないだろう200年以上生きていて、そうしたいと思った初めての女性が、君なのだ。どうして、信じてくれないのかね?』
 所謂、痴話喧嘩の類いだが、彼の言い分を信じた訳ではない。
 信じた訳ではないがそう言われるのは、嫌な気分ではなかった。それほど、私自身も彼に染まりつつあったのだ。認めたくはないが。
 
 『ウフフ、変わりませんわね。これは、お土産ですわ。食材の方が、喜ぶと思いまして。』
 『おや、これは懐かしい。羊乳のチーズも、あまり日本にはないのでね。ワインと一緒に頂くよ。そうだ。今夜は、郷土料理にしてあげよう。ヒナイチくんの口に合うといいのだが。』

 大丈夫ヌよ。ヒナイチくんが、ドラルク様の料理を嫌うはずがないヌもの。

 『季節の変わり目か、疲れた顔をしていてね。やはり、そうしよう。腕の振るい甲斐が、あるというものだ。』

 下から聞こえてくる彼らの声は、楽しそうだ。私がいる時より、ずっと
 『あら、監視員の方の事ですわね。伯父様から窺っております。彼女が来てから、反人間派の同胞とのつき合いをやめたと、喜んでおられましてよ。』
 『お父様か相変わらずだな。』
 『ヌー
 『伯父様が、貴方との見合いを強行させたのは、貴方がご心配だからですわ。まぁ、私も貴方に感謝しておりますけれども。』
 見合いという単語に、ドキリとする。
 まぁ、長生きしているから、寧ろ、あり得る事なのだ。
 でもおかしいな。この女性は、喪服を着ているし、台詞の端々から、既婚女性を示す単語が聞こえる。おそらく、未亡人なのだろう。
 何故、受けなかったのだろうな。どう見ても、仲がよいとしか思えないが
 『クックク思い出させないでくれ給え。君と正確には、君の恋人と3人で見合いを壊してやった時の、あの髭の顔ときたらアハハハ!』

 ドラルク様、人が悪いヌ。ヌンと出会う前の時代の話ヌけどヌー。

 『懲りないお人ですわね。ノースディン伯父様に、アイスバーにされかけたのをお忘れですの?』
 その女性の恋人?見合いを壊した?判読出来る単語の断片を繋げても、どうにも分からない話だ。

 「どうしたものかうん。」
 下からは、その後も楽しそうな談笑が聞こえる。思い出話に花を咲かせているのだろう。
 「だんだん、スラングが増えて分からなくなってきた。なんだか。」
 電気の消した屋根裏部屋に、一人きり。下から聞こえてくる言葉は、分からない外国語。
 自分から誇りを奪った相手とはいえ、少なからず、本音を漏らせる一人と一匹が遠く感じる。

 「吸血鬼ドラルク、今夜も監視に来たぞ。」
 「ご親戚の方ですか?私は、吸血鬼対策課のヒナイチと申します。」

 いつも通り、そう言って、姿を現しても構わないのだ。何故、遠慮する?何故
 「不安になるのだろうな。」
 足音を忍ばせて、覗き穴から離れると、私はデスクでパソコンを立ち上げた。
 分かる所まで、報告書を上げなければでも、どう書けば書かなければいけないはずの言葉が、浮かんでは消える。
 
 『それでは、そろそろお暇します。ヒナイチさんに、よろしくお伝え下さいませ。』
 『うむまた、顔を見せてくれ給えよ。とはいえ、当分、日本には来ないだろうね?』
 『夫が、祖国で待っておりますの。娘が日本に嫁いでおりまして孫の顔を見たら、すぐルーマニアに帰るつもりです。』

 彼女は、孫までいる既婚者で、幼馴染の従妹。恋愛感情ではない事は、言葉の端々から察しはつく。でも
 「でも私とジョン以外に、そんな優しい声を出さないで。」
 パソコンを閉じて、机に突っ伏した。こんな状態で、報告書なんて書けるものか。



 セデューマ様、今も喪服で通してたヌね。

 「うむ。何故、夫を転化させなかったのか。分からなくはないが。」

 さっき話題に出た、従妹の夫とは、昼の子だった。しかも、かなり歓迎されない身分の男性だった。所謂、流浪の民出身だったのである。
 「お父様としては、問題ばかり起こす私に家庭を持たせて、更正させたい。叔母様としては、娘を別れさせたい。元々幼馴染みで、正反対の性格で、何故か馬が合う従兄妹同士。だから、あの師匠が持ちかけたのだよ。」
 分かってないね、あの髭は。仲がいい、だからといって、添い遂げたいとは限るまいに。
 
 それで、結託して壊したって話ヌね。

 まあ、そういう訳だ。さらに、あの髭をギャフンといわせられる、というオマケもつく。
 たまたま、彼と私の背格好が似ていたのも、幸いした。何より、セデューマは、母親譲りの石化能力を有していたのだ。
 「見合いなんて、まだるっこしい。そのまま、親族全員の前で誓約してしまおうそう言ってだね。」
 彼に私の服を着せて、石で作った精巧な私の顔を張り付けさせたのだ。ダメ押しに、霧となった私を彼に纏いつかせて、気配臭を誤魔化す。そういう作戦だったのだ。

 よくバレなかったヌね。

 「まあね。ノースディンだけは、かなり疑っていたよ。しかし、隣のお父様が感涙していたので、何も言えなかったのだ。セデューマの評判が、模範的な貴族令嬢だったのもある。しかしサインさえすれば、こちらのものだ。」
 我々人ならざる者にとって、契約は絶対だ。
 堂々と皆の前で二人がサインをして、婚姻を表明する。
 「確認してみれば、表記されている名前は私ではない。術を解除してみれば、姿も違う。アハハハ!いやはや、あの場の皆の顔ときたら最高のショーだったとも!」

 そこまで苦労して、結ばれた二人だ。なのに、セデューマは、夫を吸血鬼に転化させなかった。
 彼を見送ってから150年近くを喪服で通し、石化させた死体と共に過ごしているという。

 『何故、転化させなかったのかね?彼も共にある事を、願っていたそうじゃないか?』
 『分からないお人ですわね。仮に、失敗してグールとなった場合でも私は、満足です。でも、子供達は、どう考えるでしょう?』
 知性を失い、爛れた姿となった父親を、子供達に見せたくないという。
 私なら両親から強い血を受け継ぐ私なら、ヒナイチくんを転化させられる自信がある。それに、失敗しても後悔しない自信がある。どんな姿になっても、愛してあげられる自信がある。
 子供達か。私もヒナイチくんとの間に子供が生まれれば、同じ様に考えるだろうか。
 『お祖父様に転化して貰う選択も、あったのでは?』
 『貴方なら、そうなさりますか?なさらないでしょう?私もそうですわ。』
 そこは、分かる。
 ヒナイチくんを転化させるのは、牙を突き立てていいのは、私だけだ。お祖父様にだって、譲れない。
 彼女を染めていいのは

 「ドラルク今夜も監視に来たぞ。」

 



 大事なお嬢さんの声に、顔を上げる。今宵も、疲れた顔をして、俯いた姿は私の庇護欲をそそってくる。
 「いらっしゃい、ヒナイチくん。少し、遅かったね。」
 「ヌヌヌレヌヌ。」
 「んパトロールが、長引いてな。」
 椅子を引いて彼女を座らせると、用意していたジャムクッキーとお茶を並べる。
 「さあ、ジョンとお上がり。君が休んでいる間に、食事の用意をしよう。」
 「うん、頂くぞ。」
 サクサクという、心地よい音を聞きながら、アンテナがハートになっていく様子に、満足する。知らず、饒舌になる。趣味の話になると、相手の都合を考えないのは、私の悪い癖だ。
 「さっき、従妹が来ていて、土産を貰ったのだ。待っておいで。今宵は、ルーマニア料理を振る舞わせて貰うよ。」
 「ドラルク。」
 キッチンに向かおうとすると、小さな手が伸びてきて、マントの裾を掴んだ。
 「ヒナイチくん?」
 「ヌーヌヌヌ?」
 俯いていて、表情は読めない。だだ声がとても弱々しかった。
 「うん。」
 意地っ張りなお嬢さんが、こういう事をするのは珍しい。突っぱねる姿に、心惹かれて始まった想いだが
 「フフこうかね?」
 「うん。」
 彼女であれば、どんな姿でも愛おしい。
 そっと、マントの中に引き入れる。いつもなら、無理矢理招き入れる場所。暴れるリスを押さえつけて、一方的な満足感を得る行為。今宵は、そうではないのだね?

 「この中も悪くはないだろう?」
 「うん。」
 覗き込んだ顔は、うっすら染まっていた。彼女が纏っている吸対のジャケットと同じだ。
 白いモノは、染まりやすい。ここまで、染まりつつあるのだ。もういっそ

 「Așa că vino în lumea nopții.(だから、夜の世界においで。)」
 全部、染まってしまえばいい。さっきから、「うん」としか言わないのだ。そのままの流れで、承諾させる事が出来たなら
 「Nu(嫌だ)」
 「Ai aflat?」
 冗談交じりに、舌を出して見せる。
 クスクスバレたか。違う言語で、言質を取ろうと思ったのに



 「まあ、いいとも。いつか『da』と言わせてみせよう。あと、そのジャケットをお貸し?」
 「ジャケットを?ああいつもすまない。」
 よく見ると、さっきのジャムがついていた。このままでは、シミになる。
 「白いモノは染めやすい、染まりやすい。管理が大変だとも君の心と同じで。」
 ここまで私に染まったのに、何かの折に、再び迷い始める。すんなり、こちらに来て貰えない。
 従妹が纏っていた喪服を思い出す。そういえば、彼女は恋人と誓約書にサインする時に纏っていたドレスも、黒だった。
 黒いウェディングドレスには、『貴方以外には染まらない』という、花嫁の強い意識を示しているのだという。
 私達の時もそうしようかこちらに連れてきてからも、迷わぬように願をかけて。

 ドラルク様、ヒナイチくんは疲れてるヌ。そういう話は、また後で

 そうだね、このぐらいにそう思っていたのだけれどずっと俯いていたヒナイチくんが、そこで顔を上げた。
 「大丈夫だ、ジョン。それに今更、白も黒もないだろう?」
 「おやおや、それはどういう意味かな?」
 「これまでその日の気分で、好き勝手に塗り潰しておいて。白も黒もあるものか。」

 ああ、そういう考えもあるのか。それまで、一貫性がなかった私も、甘かったのかもしれない。
 しかし、全ての色を混ぜると、黒に近づく。ならば、これからは、他の追従も許さない程にしっかりと

 「黒く塗り潰すか。それもいいね楽しみにして給え。」
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 
 

 






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