みずいこお題部第十回より「ほんまに?」【白】をお借りしました 関西弁非ネイティブのため口調は勘頼り
@a_yuuzora
だらだらとした雑談の中で、中距離って銃手ばっかだよな、という話になった折。
「俺、C級の初期の初期は銃手でしたよ」
水上がそう言うと、生駒は目をくるりとまるくして驚いた。
「え、嘘、ほんまに?」
「ほんまですって。だって最初のボーダー説明会んときに射手の説明なかったでしょ」
二人は入隊が同時期だったので、同じ説明会に出席していたはずである。
「あー……どうやったっけ、覚えてへん。俺刀使うの決めとったから他はなーんも聞いとらんかったわ」
「はは、イコさんらしいすわ」
「そんで、水上はなんで射手に転向したん?」
「最初はトリオン兵倒すだけなら銃で充分やろと思ってたんですけど、ランク戦の話聞いて『対人戦闘やるならもっと手数が要るなあ』て」
「ほぉん。――なあ、今でも銃トリガー使える?」
「まあ、突撃銃だけなら多分」
「ほんなら訓練室でバトってみいひん? 銃持った水上見てみたいわ」
「え!? 嫌ですよ銃の射程入る前に旋空でぶったぎられて終わりやないですか」
「じゃあ俺もスコーピオンに切り替えるわ。めっちゃ射程減るで」
「そこまでして……? そんなに言うなら、まあ別にええですけど」
「せや! 服もC級の頃のにしてみぃひん? トリガーも一個だけにして」
「はいはい、ええですよ」
「……服変更どうやるんやっけ」
「結局俺がやるんかい。ちょぉ貸してください、トリオン体は俺がいじります。チップの組み換えは任せました」
「おん、任された」
随分と懐かしい白いC級隊服を着、久しぶりに出した突撃銃を手元でぽんぽんと軽く弄べば、手元でがちゃがちゃと音が鳴る。射手は物質化した武器を持たないため、それを持つことそのものに違和感があった。
しばらくして同じようにC級隊服を着た生駒が訓練室の向かい、かなり遠く――それでも生駒旋空なら届くだろう距離に転送された。
「始めてええー?」
「ええですよー」
訓練室の壁にある時計が5カウントを始める。
5,4,3……と減っていく数字、それと白い服、手元の重みで鮮明に思い出した。銃手だった頃、水上は一度だけ生駒とソロブースで戦ったことがある。水上は記憶の彼方に追いやっていたが、生駒は記憶の片隅にも置いていなかっただろう。あまりにも一瞬で決着がついてそれきりだったから。
2,1,0。遠くで生駒は一瞬だけ構えの姿勢を見せてから(おそらく弧月のときの癖でやっている)まっすぐこちらに向かって走る。水上も応じて銃の引き金を引く。持ちなれない突撃銃は射線の角度を変えようとすると身体ごと動かさなければいけないのが厄介だ。偏差撃ちもろくにできないままジグザグに走る生駒にあっという間に距離を詰められ、生駒のスコーピオンが水上の胴を真っ二つに切り裂いた。
上体がぐらりと傾ぎ、視線が生駒を追う。闘志のほかに何も乗っていないただただシンプルでクリアな瞳。その眼差しに、射貫かれた、と思った。
『トリオン供給器官破損』
耳元でアナウンスが告げる。それはどちらの攻撃にだ、と一瞬思考の止まった頭が考えた。ソロブースでの一戦のときと同じことを。
今思えば、あのときまさに一目惚れをしたのだと思う。あまりに鮮やかな剣の閃きと、心臓をまっすぐ突き刺す眼光、そしてブースを出た後に交わした会話のギャップに。
「お前、ほんま銃向いてへんねんな」
スコーピオンをしまいながら生駒が半ば呆れたような声音で言い、そりゃあそうですよ、と水上は笑った。
「イコさんの正面に立つのは荷が重いっすわ。俺は後ろでイコさんの背中見てるくらいがちょうどええんです」