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十余年経てども変化なし。

全体公開 二修 2 4903文字
2024-06-14 19:07:37

□幹部になった三雲修と二宮匡貴。珍しく二宮匡貴が自覚しているパターンです。なのに二修要素が薄すぎる。エワ10記念。

□おまけはモブ視点の修愛され。

Posted by @wtkotaji

 幹部になって数年。
 ある程度には慣れたが、業務が多岐に渡り多忙になった三雲修に補佐が付くことになった。
 補佐を付けるとなった当初は、あちらこちらから募集もしていない立候補者が湧いて出てきて混沌を極めたのだが、城戸司令により補佐は何故か新人隊員から選ばれた。
 理由はただ一つ。
「彼も補助すべき新人に迷惑をかけてまで無茶はしないだろう」
「あー、はは」
「なるほど。完全に無茶が無くなるとは限らないが、三雲くんに甘い同僚よりはいいかもしれませんね」
「頻度は減るかもしれんな」
「まぁ、試す価値はあるかもしれませんがねぇ
 他よりはマシな筈、という微妙な満場一致で決定した。
 新人幹部の育成も兼ねているので、見本となるような言動を心掛けるように。
 無言のメッセージに、幹部になって益々無茶をするようになっていた修には断ることなど出来なかった。
 実際、猫の手も借りたいのも確かだ。
 新人とはいえとても優秀らしい助っ人に、修は少し期待して空き部屋にて新人を出迎えた。
 
 ──何故か、二宮匡貴と二人で肩を並べながら。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 十余年経てども変化なし。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「はじめまして、今日から宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しく」
 緊張気味に挨拶をする新人に修もぺこりと頭を下げ、知っていると思うけど一応と自己紹介を簡単に済ませる。
 話すことにより多少は緊張が解れたらしいが、やはり修の隣が気になるらしく、そろと向けられた新人の視線は直ぐに逸らされた。怖かったらしい。
 それはそうだろう。
 修自身も気になって仕方ない。
 根負けしたように修は隣にいるその人に訊いてみた。
「あの、補佐が付くのに何故それに更に補佐が付くのでしょうか」
「知るか」
 普段のお前の言動のお陰だろうと言われた修はぐっと詰まった。否定出来ない。
 二宮にも自己紹介をして貰うべきか。
 一応お願いしてみたが、「二宮だ」だけで終わった。それくらい新人だって知っているだろう。
 冷や汗をかく修の隣で不機嫌に眉間に皺を寄せているのは、同じ幹部である二宮匡貴だ。
 同じといっても優秀さや次期本部長と噂される二宮と、何某かの問題報告の方が多い修では雲泥の差がある。
「お前に補佐とはいえ新人幹部の教育を一任するのを上層部が不安になったんだろ」
「はぁ、」
 そんなことを言われても困る。修よりも困った顔をしているのは、きちんと指定された時間にやってきた新人だ。
 主に今日新人の彼にお願いする予定だったのは、修のスケジュール管理だ。一先ず、一日の流れを簡単に覚えて貰えればそれで良い。
「じゃあ、取り敢えず。一日の予定を、」
「待て三雲」
「はい?」
 二宮が手帳を取り出した修を止める。
「今日は急にお前の教育を丸投げされて俺の業務予定が狂っている」
「それはなんというか。すいません」
「俺は先に自分の業務を終わらせてくる」
「あ、はい」
 要するにそれまでは自分だけで何とかしろと言われたのに修は頷いた。
 そもそも、多忙を極める二宮に頼むこと自体が間違っているのだ。そのくらい何ともない。
「だからこれは不在間のアドバイスだ」
 そう言いながら二宮が話しかけ始めたのは新人だった。修ではない。
 淡々とだが口を挟む隙を与えない勢いで話す二宮の言葉を聴いていた修は、途中で気付いた。
(これは、)
 
「確実に新人くんへの三雲くん取り扱い上注意だねぇ」
「犬飼先輩」
「二宮さんのお迎えに来たよ」
 ひょっこりと扉から顔見せ、これから防衛会議だからねと犬飼が笑う。
 当然のように二宮の後を追って幹部となった犬飼は、現在は二宮の補佐をしている。当人としては別に二宮の為ではなく自分の為らしい。
 いつだか楽しそうに飛行機の操縦体験の話をしていたので、犬飼はボーダーを辞めた後にパイロットになるものだと思っていた。
「? どうしたの」
「あ、いえ」
「もしかしてまた規則破ったとか?」
「いつも破っているような言い方はやめて欲しいんですが」
「またまたー、謙遜するねぇ」
「謙遜するようなことではないような」
 二宮に目を付けられていると思っている修は、二宮の右腕のように動く犬飼と会う頻度は中々高い。昔より、犬飼との仲は良好だろう。
 二宮としては後輩を気にかけているつもりなのだが、修は気付いていないので補佐となった犬飼と話す頻度の方が増えている。
 それが面白くないというように、度々二宮は二人の会話に入りたがるのだが。
「今までも規則は一応破ってないですよ」
「規則の穴を潜るような悪辣なことばかり思いつく三雲くんが悪いんじゃない?」
「それは、そうなんですが。犬飼先輩、楽しそうですね」
「いやー?そんな三雲くんの世話しなきゃなんない新人くんが可哀想だなーって思ってるだけ。代わってあげたいくらいなんだけど」
「いきなり二宮さんの補佐は、新人には重責が過ぎますよ」
「んー、そうなんだけど」
 そうじゃないんだよなぁと犬飼が苦笑した。
「──おい」
「二宮さん」
 話が終わったのか、先程より不機嫌そうな二宮がずいと二人の間に割り込むようにやって来た。
 慣れたように修は一歩下がり、二宮に犬飼の隣を譲る。二宮は犬飼の隣が好きらしい。
「ちょっと二宮さん、ヤキモチ妬かないでくださいよー」
「誰が誰にだ」
「折角仲良くしてたのにね、三雲くん?」
「そう、ですか?」
「三雲は疑問形じゃねぇか」
「そんなことはないですってキッパリ否定されてた昔に比べたら大分いいですよ」
 何を微妙なことをと二宮が何とも言えない顔をしている。しかし否定はしない。
「あの、お二人ともこれから会議では
「「!」」
 忘れかけていたらしい。
 これは流石に不味いと時計を確認する犬飼と、急ごうとしてから振り返った二宮に、修は頭を下げた。
「二宮さんの業務が終わったら、またよろしくお願いします」
あぁ」
 二宮は修にずっと付いていられるほど暇では無い。
 儘ならないが、以前程理由を付ける必要もなくなったので、良い機会だと二宮はこの状況を大いに利用する気だった。
「くれぐれも新人に妙な事を教えるなよ」
「は、はい」
 大人しく恒常業務をしていろと釘を刺すのを忘れず、二宮は「またね」と手を振る犬飼を連れ退室した。
 どこまでも信用がないらしい。
 修は少し気落ちしたが、気を取り直してじっと控えて立っていた新人に軽く謝りながら声をかけた。
「待たせてすまない。それじゃあ改めて、簡単にスケジュールを説明しようか」
「はい、宜しくお願いします」
 やっとまともに新人と会話を始めた修は、区切りの良いところで訊いてみた。
 二宮が新人にどんなアドバイスをしたのかに興味があったのだ。
「さっき二宮さんとどんな話をしたのか、訊いていいか?」
「えぇと、人との付き合い方、といいますか、……不慮の事態、に対する対応の仕方を」
……そうか」
 非常に言いにくそうにしている新人に、そういえば二宮は『三雲修』の取り扱いを説明していたのだったと思い出す。
 新人の彼の直属の上司になる修には言い難いことこの上ないだろう。
 新人なのに申し訳なく思う。
「すまない、大丈夫だ。君に無茶をさせるつもりはないから」
 どちらかというと無茶をする上司を止めるのも諌めるのも仕事の内ということにプレッシャーを感じていたのだが。新人は曖昧に返事をしておいた。
 そこで何か思い出したのか、そういえばと新人が言う。
「二宮さんは三雲さんの能力を高く評価されているんですね」
「評価?」
 
 一通り三雲修の生態を話した二宮は、すっかり引いている新人に気付き、暫し逡巡したのちに言ったという。
 
『アイツにも、見習うべきところはある』
 
「だから三雲さんをよく見て学べと、アドバイスをいただきました」
………
 あの二宮さんに評価されるなんて凄いですねと新人に尊敬したような瞳を向けられ、修は曖昧な笑みを浮かべた。
 
(──遠回しの忠告か何かだろうか)
 
 二宮が自分を褒める訳が無いという大前提がある修は、つまりは見習うべき何某かを作り新人の手本になれということだろうと解釈し、改めて気を引き締めることにした。
 
 
 二宮と修がボーダーで出会ってから十余年。
 二人の関係に特段変化はない。

 
 
 
 ...end?
 
 


 
「『それは、そうなんですが』などと言って微妙に苦悩するような表情をしていたあの眼鏡が『それもそうですね』と妙に腹が立つすっきりとした顔で肯定するようになったら即警戒しろ」
「警戒?」
「人の注意も規則も道徳も無視して独断専行する直前だが正直に言えば阻止されると理解しているので堂々と嘘を吐きやがるふざけた眼鏡になっている時だということだ」
……⋯」
 そうなったら直ぐ報告しろと言って去っていく二宮はそんな眼鏡と共に新人である自分を残して行ってしまった。二宮は忙しいのだ。仕方無いと新人は自分に言い聞かせる。
 そっと噂の眼鏡の人を振り返った。
 何故かボーダーのランク上位者には容姿の整った秀才が多い。
 しかしこの三雲修という人は、見た限りではどこにでもいそうな人だった。
(でもかなり無茶をする人らしいからな

 三雲修は幹部になって何故か益々信用がなくなったらしい。そんな無茶をする人の補佐が、果たして自分に出来るだろうか。
 
 そんな新人の不安など露知らず、修が笑う。
 
「じゃあ先ずはランク戦を見に行こうか」
「は?」
 
 何故ランク戦を?という疑問は「以前、借りを返す代わりに太刀川さんのランク戦を応援すると約束してしまったから」という答えが返ってきた。
 意味がわからなかった。

 その後も、
 
「風間さんにランチに誘われているから。カツカレーは好きか?」
「そういえば王子先輩からのメールに返信していなかったな、」
「出水先輩にお礼をしに行くから、いいとこのどら焼きを買いに行こうか」
「菊地原先輩、良かった行き違いにならなくて。菊地原先輩を探してたんです」
「あぁ、それは唐沢さんからいただいた花だよ」
「もしもし烏丸先輩、お願いしたいことがあるんですが。指輪?いえ、装飾品ではなく装備についてご相談といいますか」
「この本?今から諏訪さんに返しに行くんだ。いつも続きが気になるところで終わってて、ついついまた借りに行ってしまうんだ」
「あれ隠岐先輩?猫ですか?いやぼくは猫じゃないですよ」
「先日はありがとうございました東さん、良かったらお礼に、いやこの間連れて行って貰ったばかりですし、流石にまたご馳走になるのは、」
「空閑と千佳に声をかけてから行くから、先に部屋に戻っていても大丈夫だ。あぁ、でもやっぱり心配だから、付いてきてくれるか?」
 
 
………………わかりました」
 
 
 あっという間に時間が経ち、新人は確信した。
 
 前言撤回。
 この人は絶対に普通なんかじゃない。
 
 こんな怖い眼鏡は普通いない。どこにでもいたら困る。物凄く困る。
 補佐がどうとかじゃない、この人は好きにやらせてはダメな人だ。
 
 新人が心の中で訂正をしていると、何かに気付いたのか修が手を伸ばし、新人の髪に触れた。
 びくりとした新人に、無断で触れたことを修が詫びる。
「すまない、花びらが付いていたから」
「⋯ありがとうございます」
 ですが普通に指摘してくれれば自分で取るのでやめていただきたい。それか付けたまま浮かれたお花畑野郎として生きていくのでそっとしておいてください。
 たった一日で修に執着する輩が多く、針のむしろ状態だった新人はまだ死にたくないと微妙な笑みで一応お礼は言った。
 
 
 
 
 
 


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