🎃さんが☕さんと🐸さんに勝負を仕掛け、完全勝利するお話。ほのぼのです。
ネタバレは特にないです。
@rikka_trpg801
完全勝利
どんな縁かは知らないが度々集められては何かさせられることに定評のある刑事たちは、今回も唐突に招集されいつもの宿舎で生活していた。
警察という共通点はあるものの所属はある程度ばらけている。そんな中で聖、帰代、神無の三人は公安という特殊な所属なのもあって、任務では共に行動することも多い。仲もそれなりに――聖のセクハラを除けば――良い方だ。
一方で年齢が近く同じ時空から来ている聖、帰代と、未来からやって来た最年少の神無との間には、先輩後輩に近いちょっとした上下関係が発生している。上二人は何かと最年少の神無を気遣って任務の役割を決め、それに対して神無がもっと任せて欲しいと訴える場面は度々あった。
聖も帰代も、可愛らしい外見かつ能力が高く素直な神無に対し、しがらみのない後輩として可愛がるという普通の公安ではできないこと満喫している。帰代などは否定するかもしれないが、その様は傍から見ていると母子のようでさえあった。
しかし、神無とて優秀な公安刑事としての自負がある。
「確かに帰代先輩も聖先輩も優秀かもしれないけど、俺だって二人に勝てることくらいあるんだからな!?」
びしりと突き付けた神無の指を、帰代が「人を指さすんじゃありません」と下げさせる。
正論に一瞬黙った神無は、改めて拳を握り締めて宣言した。
「二人とも、俺と勝負だ! 俺が勝ったらもっと俺のことを頼るように!」
「別にいいけど、何で勝負するの? 夜の勝負なら大歓げ――――」
すかさず際どい発言をする聖のみぞおちに帰代の肘鉄が炸裂し、呻き声と共によろめいた。神無は少しだけ心配そうな視線を送ったが、帰代なら手加減しているはずだと気を取り直す。
「内容はこれから決める!」
「構わないが、拳銃だと俺たちに分がありすぎるし、逆に剣道はお前くらいしか実践レベルでやっていない。体力測定でもするのか?」
「それは何だか似たようなことやった気がするからしない」
「なら知能か? だがこれも、今の正解や解き方が未来で変わっている可能性があるから微妙だぞ?」
「あ、そっか……じゃあ別ので」
自信のある頭脳面で勝負する気だったが、神無は時代の壁の前に断念する。
神無が考え込んでいると、復活した聖が呑気に提案した。
「運ゲーにしとく? トランプとかそのあたりなら決着も早いしさ」
「嫌だ! 絶対心理戦に持ち込む気だろ!?」
経験の差か、それとも年の功か、ポーカーフェイスや騙し騙されは聖や帰代の方が得意だ。勝ち目が薄いとわかっているから、神無も乗ってこない。
一向に進まない話に、帰代が溜息を吐いた。
「もう何でもいいから、さっさと決めてくれ」
このままでは勝負が始まらないまま、この話が終わってしまう。焦りつつ自慢の頭脳を回転させた神無は、やがて一つ思いついて手を打った。
「そうだ、これならいける!」
「お、決まった?」
「ちゃんとまともな勝負か?」
自信満々に頷き、神無は「誰でも、それこそ一般市民でもできることだし、一時間もかからない。勝ち負けもはっきり目に見える」と説明する。
「何なら今からだってできる」
「そうか、じゃあさっさと終わらせよう」
時計を見て夕飯の支度までの時間を見積もり、帰代は神無を促した。聖も特に文句はないらしい。
「ふふふ……目にもの見せてやる!」
不敵に笑った神無は、対戦相手の二人と野次馬希望の他の刑事たちを引き連れて、勝負の舞台へと向かった。
口元に手を当て、帰代は込み上げてくるものを堪えた。額には脂汗が浮かび、指先は微かに震えている。
「変ちゃん、ここまでだ……本気で顔色悪いよ」
そう言う聖も、決して健康的とは言い難い顔色だ。唇は血の気が引いており、片手は頭痛を堪えるかのようにこめかみの辺りを押さえている。
「…………」
現状が芳しくないことは帰代とて分かっている。それでも、途中で投げ出すのは許さなかったのだ。自尊心ではなく、どちらかというと倫理観や道徳心というべきものが。
しかし、動かすべき手は最早それを拒否してしまっていた。そしてただ時間だけが過ぎ、遂に隣で歓声が上がる。
「俺の勝ちだ!」
高々と拳――というかそこに握られた細長い柄のスプーンを掲げ、神無が宣言した。見物していた他の刑事たちから拍手が送られる。
それを聞いて、負けはしたものの勝負が終わったことで脱力した聖と帰代がテーブルに突っ伏した。
神無の前には、空っぽになった巨大なグラスがある。一方で聖と帰代の前にあるそれは、まだ三分の一程中身が残っていた。
駅前のレストランにある、ジャンボデラックスパフェの早食い競争――それが神無の選んだ勝負だった。デザートの看板メニューであるデラックスパフェは通常でも十分にボリューミーで、これだけでお腹がいっぱいになる人間もいそうな代物である。そのジャンボ版は、五人から七人での完食を想定されたサイズだった。
勝負内容を知って始まる前から後悔した聖と帰代に、「二対一でもいいけど?」と神無は余裕の表情で告げた。帰代は僅かに眉根を寄せたが、聖が指差したディスプレイの食品サンプルを見てその提案を受けることにした。
そして始まった二対一の勝負は、神無の完勝となったのだ。
「いくら好物だからって、あんなに入るもんか……?」
油断するとぶり返す吐き気を堪えつつ、帰代が信じられないといった口調で呟く。
アイスにクリームにフルーツ、焼き菓子、ゼリー、チョコレートとパフェに使われているスイーツの種類は豊富だが、どれもこれも大きく括れば甘い。どれだけ食べ進めても、甘いのだ。単純な量の多さも辛いが、それ以上にこの終わりない甘さに聖と帰代の心は折れた。ついでに言うと、上層部を飾っていた大量のアイスの所為で身体が冷えて寒気がする。
ホットコーヒーに救いを求めつつ、聖が遠い目をして諭すように言う。
「認めよう、変ちゃん。あれは若さだ。俺たちが失いつつあるものなんだ……」
「俺はまだ二十代だ……!」
「二十八は十分アラサーなんだよ……まだ学生で通じる二十二の三十一ちゃんとは違うんだ」
「くそっ」
そんなどこか悲しいやり取りをしている敗者二人に、巨大なパフェをぺろりと食べきった神無が嬉々として宣言する。
「どうだ参ったか!? 今度からはもっと俺のことも頼るように!」
当初の目的からすればかなりずれた勝負内容と決着だと思うのだが、指摘する気力は二人に残されていなかった。
「わかった」
「うん、この手のことは三十一ちゃんに一任することにするよ」
どの手のことかは言っている聖にもわからないが、神無は満足そうに腰に手を当てているので構わないだろう。
こうして神無と聖、帰代の戦いは神無に軍配が上がった。残ったパフェは野次馬していた他の刑事たちが協力して完食したので、店に迷惑もかけていない。
その後、神無の希望が無事に叶えられたかはわからない。一つ確かなのは、帰代がグロッキーになったことによって夕飯が出来合いになったため、他の刑事たちからのブーイングを受ける羽目になったことだけである。
(あとがき)
ほのぼのな刑事たちが書きたくて、特に☕🐸🎃の三人組。その結果こんな毒にも薬にもならないお話ができました。パフェがチャレンジメニューじゃなくてシェアOKで良かったね?
二十歳前後までは余裕でスイーツビュッフェ全種類とかいけてたんですが、二十代後半から胃腸がどんどん雑魚になっていく感覚は実体験……性差と個人差はあるでしょうが、きっと☕🐸の二人も……とか切ないこと考えながら書いてました。質より量から、量より質へと転換していきません? 私はしました()
🎃さんこの勝負ならきっとだらだら先輩にも圧勝できるよ! たぶん勝負自体を受けてもらえないだろうけど!