@SpaceIsVast16
足跡を辿ると、見慣れない大きめの箱がある。
宝箱か何かなら大層嬉しいけれど。
「Asgore、開けてみようヨ。」
「良いのかな?これ誰か人のものだったりしないかな?」
「立て看板にはご自由にご利用くださいって書いてあるし、覗いても良いと思うわよ?」
じゃあ、とガコンという音を立ててそれを開けた。
中には手袋が一枚だけ。
「えぇーっ、いや、でも…。着けて損は無いね、こんな寒さなんだし。」
「一瞬凄い失礼だったヨ。」
箱の大きさに比べると、やはりどうにも釈然としないので立て看板をよく読むと、どうやら「この箱に物をしまうと、別の場所にある同じ箱からもしまった物が取り出せる」というものらしい。
「地下世界ってこんな技術もあるんだ…。」
「それならちょっとこのリボンしまっテ…。ちょっと…、ネ。」
「あー…、そうね。これはしまいましょ。」
他の人が利用したい時にこの汚れきったリボンが届いてしまうのは少し申し訳ないが、お別れをした。
道なりに進むとCharaがいた。僕を見つけるとやっぱり遅いと思っていたのか、ぷひゅ、ぷひゅと音を鳴らして地団駄した。
「あれ、Charaパズルの先にいるんじゃなかったの?」
「ここはね、わんちゃんいるの。うごいてたらみつかるの!」
「あら、怖いわね?」
「こわい!」
さっきから何か変だと思っていた感じの正体が分かった。この子は幽霊のTorielをしっかり認識して受け答えをしているのだ。
Torielが心なしか嬉しそうなのはそういう事なのだろう。
「それで、その怖いわんちゃんの所を通り抜けるにはどうしたらいいのかしら?」
「それはねー…。」
杖の先から放たれる光が強くなった。そうか、目潰しってやつだね。
そう思っていたらFrisk同様に僕を片手で持ち上げた。いや、彼女よりも乱暴な鷲掴みである。
「こうだよ!」
全力投球、文字通りのそれを僕でやってのけた。
凄い、けど…
「Gorey〜!Boogie〜!止まってぇ!!!」
「無茶言わないデ、こんなスピードで僕がツル伸ばしたら千切れル!」
豪速球で通り過ぎるというパワープレイは僕らが何かしらの方法で止まれたらの場合の最適解なのだ。
あらゆるモンスターを通り過ぎていく。
Boogieでさえこれを止められないのであれば僕は次の瞬間何になっているのか。
最早諦めの境地に達した僕は来世のことを考えることにした。
またTorielたちと一緒になる?
なれるはず、きっと。
-ぽよんっ…
「…ってて…、あれ、痛くない…。」
はい、キャッチ。
見上げるとFriskだった。
ぎゅむと抱きしめられると僕の感じた感触、そして何で止まれたのかが分かる。
僕は人目も気にせず、しばらく抱きついていた。
「衝撃吸収凄いネ、このもちもチ。」
「でしょー、Charaが沢山育ててくれたからねぇ。」
「CharaってFrisk食べようとしてル?」
「いやぁ?Charaがいっぱいお菓子作ってくれるんだよぉ。残すなんて選択肢は僕には無いからねぇ。」
「それでも食べ過ぎじゃなイ?」
「んふふー、果たしてどうだろうねぇ。」
そんな言葉はどこ吹く風よと、どこからかパイを取り出してホールのまま齧り出した。
となるとあのホイルは…。
そう思うと少し感心さえするほどだ。筋金入りの大食漢。
僕がそんなに食べたらお腹がぽっこりするだろうが、彼女の場合はどうにもおやつに過ぎないらしい。まだ足りないと言わんばかりの腹の音が響く。
「Friskはその身体、大丈夫なの?」
「うん、僕の身体能力ナメちゃダメだよぉ。こう見えて凄い動けるんだからぁ。」
「そうじゃなくて…。」
んん、と少し咳き込む。
そこから先は言わないで、という顔だ。
「…僕はこの身体を嫌だって思ったことなんて一度も無いよ。実際このキャッチャー『ミート』で君も助かったから、良かった。」
キャッチャー、ミート?
頭の中で「?」が浮かぶ。Friskは反応を期待している顔だが、残念ながら僕にはピンと来なかった。
「んー…、笑うところなんだけどなぁ…。」
「ねーちゃん!しろやぎさん、わらってる!」
「うわっ、ビックリした!」
いつの間にか音も無く、Charaは僕の隣に立っていた。
ぐるりと見渡すと、確かにTorielは笑っている。
「しろやぎさん?何処にもいないよぉ、いるのはくろやぎさんだよぉ。」
「しろやぎさん!ぷかぷかしてるの、あるいてるの!」
「へぇ…、…。Charaもしろやぎさんもありがとねぇ。僕の心がちょっと救われたなぁ。」
CharaはFriskに飛びつき、Friskはそれを優しく抱きしめて先へ進んだ。
「赤ちゃんには大人の見えないものが見えると聞くけれど、本当なのね。」
「確かにあれは赤ちゃんのそレ。」
「じゃあ、先に進みましょうか…、ってGorey?そっちじゃないわよ?」
「あー、ちょっと寄り道したくなっちゃって…。」
「仕方なイ、ちょっとだけだヨ。」
よたよたと二人が進んだ方とは別方向に進むと、汚れた雪の塊があった。
何で僕はこれを見に来たのだろう?
いや、引き寄せられてる?
「…あの…。」
その何とも言えない塊はもぞもぞと動き出し、顔を出した。
「すみません、ビックリさせましたか…。」
「あぁ、いや…。」
「つまらないのですが、私の身の上話を聞いてくださいませんか…。」
「随分と低姿勢な雪だるまだネ…。」
身だしなみを整えるように、最低限雪だるまだと分かるようにいそいそと身体を集めると、ぽつぽつと語りだした。
「この世界はおかしいのです。全てはあの日、一人の女王が出て行った日から徐々に皆さんが生気を失っていった。貴方達が後々出会うであろうDoggoさん、夢の世界に逃げ込むため、あの人は悲しいことにジャーキーをキメ過ぎてほねっこジャンキーになってしまったのです。私が今こんな状態なのはそのせいです。私はここから動けません。だから、お願いです。私の欠片を連れて行ってください。そしてこの世界が今どんな状態なのか、私に教えてください…。」
そのカラカラの細い手を擦り合わせて、そう懇願してきた。
「君の欠片、溶けちゃわなイ?」
「この世界は不思議なもので、どうやら私はいつまでも溶けないようなのです。ですからどうか、何卒…。」
「見てみなさいこの目を…。儚いながらも覚悟を決めた眼差しよ。」
「よし、そのお願い叶えてあげよう!」
「あぁ…、何とありがたい言葉…。では私を託します…。」
* ゆきだるまのかけらを てにいれた。
「私も頑張って生きますので…、貴方達も生きてください…。もしもの時は私を食らってでも。貴方が私を食らう時というのは、貴方の命が懸かっている時でしょうから…。」
「お、重いね…、でも、分かった。」
「急に入れないでヨ冷たいでショ!」
雪の体に秘めた氷のように固い決意を託された僕は、最初のパズルの元へ向かった。
「おー、来たよぉ。」
「もぐ、もぐ…。」
Charaはチョコレートを頬張る。食べ終わる頃、何とはなしに杖の先の、例の光に似たそれが大きくなった気がした。
「ここはね、でんげきビリビリめいろっていってね!ただしいみちをとおらなかったらしぬんだって!」
「僕の友達がそう言ってたから多分そうだよぉ。」
物凄く物騒だ…。
「はやくこっちきて!」
Charaはぶんぶん手を振って急かしてくる。
-
あの音だ。何気無しに僕が手を伸ばしていた方向にあったのはあの光だった。
ひっ、と小さく叫んで手を引っ込めた。
でも、それを皆んなは気にも留めていないようだった。
二つの恐怖を抱えた僕は、その迷路にちょこんと足をつける。
…電撃は流れない。
でも、次の一歩を踏み出したら僕は-
ひとたびそう思ってしまうと上下左右どこにも足を出せなくなってしまった。
「…まぁ、ヒント無しじゃこうなるよネ。」
「だって少しミスしたら即死よ?」
少し泣き出しそうになっていると、ぷひゅぷひゅという音が近づいてきた。
「こっち、こっち…。」
見かねたCharaが助け舟を出してくれるらしい。
「良いの…?」
「うん!」
僕はそれに乗ることにした。
臆することなく僕の手を引いて連れて行ってくれるその後ろ姿の心強さは、魔女ではなく勇者だった。
「おー、Charaったら思わず人助けしちゃったねぇ。これからもそのままでいてくれたら僕は嬉しいなぁ。」
「ねーちゃん、もっと、もっとほめて!」
「もちろん。Charaは素敵、この子の希望の光だったよぉ。」
Charaはほっぺたを両手でおさえて照れ照れしている。
Friskの褒め言葉シャワーをいっぱい浴びると、はっとしたような顔で次のパズルを整備しに行った。
「あ、お礼言うの忘れてた…。」
「ねぇ、言いたいことがあるんだけド。」
「何、Boogie?」
「…このパズル、機能してるノ?」
その言葉を聞いてパズルの方に向き直ってみる。
ここをどうやって通ったか。
一直線だ。
「そんなことあル?」
「…ここってこのオーブ持ってないと電撃流れないんだよねぇ。」
Friskは青緑の球体を取り出してそう言った。
「…もしかして…?」
「そのまさかだよぉ。」
「まぁ、とにもかくにもここは突破出来たねぇ。次も頑張ってぇ。」
今度はスナック菓子をばりぼりと食べる。大丈夫だろうか?
「じゃ、またね?」
「うん、またねぇ。」
「…最近忘れっぽいなぁ…。」
-
「あぁ、Frisk…。ごめんね…。」
その男は一人ぽつりとこぼした。
-
雪玉を蹴る。
ころころと転がり、大きくなる。
僕はそれを目的地へ、でも、長く楽しむために適当な場所へも蹴る。
どれだけ大きくできるのか気になるのだ。
まるで、まるで-。
「Gorey、Gorey?」
「あっ、何?」
「さっきの『Doggo』って何なんだろうネ、ってサ。」
どうやら僕は考え事をすると周りの声が聞こえなくなるらしい。
ごめん、と謝り頭を掻く。
「ジャンキーなモンスターと言うと…、Friskとか?」
「それは別のジャンキーね。Doggoはどうやらヤバいジャンキーのようよ。」
「まぁ、出会っても動きさえしなければ良さそうだけド。」
「出来るだけ会いたくないなー、あ、ゴールだ。」
特大の雪玉がゴールへ吸い込まれていく。カチリと音が鳴ると、アナウンスが流れた。
ワンダフル!君は相当の暇人だワン!そんなしけた人生の君には…
「何このアナウンス…。」
「滅茶苦茶ウザいネ。」
「一言一句同意よ。」
「スペシャルなプレゼントの贈呈だワーン!」
* Dr. 109が マシンにのってあらわれた!