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FellApart-11 「寂れた町」

全体公開 FellApart 4371文字
2024-06-18 19:27:13

そこはただただ、鬱屈とした町だった。人が少ないのはまだ良いとしても、活気が、生気さえ無い者がいる。

人がいるはずなのに、さっきよりもしんとしている。

看板を見ると「Welcome to」の先は掠れ、赤のペンキで「Ghost Town」と殴り書きされていた。少し風が吹くたび軋む音がする。

「何、ここ。」

その圧に思わず二人の顔を見ようと下に上に顔を向けると、今まで穏やかだったTorielの顔が少し険しい。

「やっと思い出した。ここは元々Snowdin、雪の降る町。私は散歩をよくしてたから町の風景は何となく覚えてるの。例えば家の配置とかね。」
「ここガ?」
「えぇ。何があったかは知らないけれど、間違い無いわ。」

雪の降る町-。

そういう別名があったにしては雪がない。この炎が無ければ僕など凍ってしまうほどの寒さだけがそこにある。



思わず耳を塞ぐ。

はっとした時にあったのはあの光。キラキラとしたその輝きの反面、やはりどことなく不気味さがある。

この町の雰囲気のせいか?いや、それは無いはず。不気味なのはそれ自体と、それに触れた時。

僕の行く先々に現れること。

知らないうちに引き寄せられているような感覚がすること。

そして何より、これを触った時僕以外の時が止まったように感じること。

一瞬、たった一瞬だけだけど、その時だけ僕しかいないような。

今こうして見つめているのも-。

その時、頬に何かがぱしんと強烈に当たった。

Boogieのビンタだった。いつもと変わらないジト目だけど、少しだけ不安そうな顔。

僕がそれに気づくと、確認するようにまた反対の頬をはたいた。でもそれはするりと、撫でるようなものだった。

僕もTorielも雪だるまも、皆んないル。そうダ、気になることいっぱい聞こうヨ。」
「そうだね、ごめんね心配させて。」

ふふ、とTorielは笑うと、こそり僕の耳に顔を寄せた。

「あの子、さっき『またAsgoreがカチコチになっタ!』って慌ててたのよ、可愛いでしょ、ふふふ。」

さっきまで平静を装っていた彼は、顔を赤くしてTorielをぱしぱしはたき始めた。彼女は痛くも痒くも無いのに「やめてー」とニコニコ笑う。

僕も息を吐く。少し心があったかい。気を取り直して、熊のようなモンスターに話を聞くことにした。

「あの。」
「何だい、お坊ちゃん。」
「この町、どうしてこんな。」
「実に政治的な話だねぇ。良いよ。この世界はかつて二人の女王が治めていた。一人は武闘派の、かたやもう一方は理知的だったのだが、いつの日か武闘派の女王が消えた。そこからさ。緩やかに地下世界は没落していった。」
「雪だるまの話と同じね。」
「この町は元から小さな町だったけれど、活気はあった。しかし希望を誰もが失った時、全てはFortressに流れていった。」

初めて聞く名前だ。

「Fortressって?」
「この先にある、ある程度の生活を保証してくれる施設さ。この辺鄙で、先の無い場所よりマシだと皆んなは言ったけど、まぁ、向こうも良い事ばかりでは無いみたいだけどね。」

ふっと笑うと、政治って難しいものだねと言って話を終えた。

皮肉なように、憐れむように溢れたようなその笑みの余韻はやけに長かった。

じっと見つめているのに気づいた彼が首を少し傾げるまで。

今度は近くのネズミのような姿をしたモンスターに話しかけた。

さっきの会話を聞いていたのか、要件も聞かず語る。

「この町の住人はかつて、ギャグとジョークで廃れていくこの世界から目を逸らしていた。でも今はもう見つめるしかない。ただ二人を除いてね。」
「ニンゲンですか?」
「うん、あの二人は例外中の例外だね。何でかは知らないけど。」

すると隣の案山子?が口を挟む。

「ここに問題こそあれ、皆んな口を閉ざしているんだよ。何でって?自分たちで何とも出来ない問題に文句言っても何一つ変わらないからね。そんなもんさ、この世界。」

「あ。」

さっと逃げるように、そして頭から抜け落ちていた用事を思い出したように来た道を戻る。

「なになに、どうしたノ?」
「ん、寄り道!」

向かったのは窓硝子の向こうから良い匂いが漂う家。

「何かさっき、パンみたいなの焼いてたなーって。」
「焼きたてパン美味しいわよねー。」

Boogieはやれやれといった様子だが、その口からじゅるりと聞こえたので入ることにした。

「あぁ、いらっしゃい。」

少々やつれた様子の、兎のようなモンスターが出迎えてくれた。

「これください!3つ!」
「あぁ、シナモンキーね。75Gだよ。ありがとうね。」

背伸びしてチャリン、と渡すとほかほかのそれが僕とBoogieの手の中に渡った。Torielは「私ったら勿体ない」と少し拗ねている。

「ねぇ。」
「何だい、知りたいことでもある?」
「あの二人、FriskとCharaの事が知りたいんです。」

カランとトングを置いて、そうねぇ、と呟く声がする。

「あの二人。今でこそ穏やかなんだけど、昔は違ったのよ。」

ぼんやりとした様子でぽつぽつと語る。

「あの二人が初めてここに来た時、Friskは、そうねぇ。君より多少大きい程度で痩せていたわ。Charaは見た目こそ同じだけど顔が違ったの。」
「顔が?」
「今はほら。キラキラした楽しそうな顔をしているじゃない?その時は何というか、無表情だった。」
「よくそんな所まで覚えてるネ。」
「異質だったのよ。」

その声で少し空気がぴり、とした。少し間を置いて、また話し始める。

「でもいつの頃からかFriskは柔和になった。みるみるうちに大きくなって、結果あんな感じよ。今では入口も潜るくらいの大きさ。ニンゲンっていうのは不思議よねぇ。その時くらいね、今のCharaになったのは。それくらいね。」

はいお終いと手を叩く。とても長い時間が流れたように思えたが、パンはまだ温かかった。

「ありがとう、色々話してくれて。」
「良いんだよ、君たちが多分Friskが話していた子だろうし。」
「Friskここに来てたノ?」
「来てたよ。大体Charaの惚気だったけどね。電気の迷路で助けてくれたんだってね?」

さっきまでと比べるとその顔は少し明るくなったような気がして嬉しいけど、その事を言われるのはやっぱり恥ずかしい。

「Frisk、それだと異常に速くない?」

Torielがぼそりと呟く。確かに、僕たちの足だとどれだけ掛かるかという距離を彼女はさっさと移動していることになる。

「ま、まぁ、自称天才と戦ってたシ?」
「そうだよね、きっと、うん。」
「それだと電子レンジの場所はどう説明したら良いのかしら。」

考えれば考えるほど泥沼にはまる。考えた末に、「あれは全部筋肉ってことにしよう」となった。どう考えても違うが。

パンを食べ終えたのを合図に店を出た。遠目に「としょんか」と書かれた建物が見える。あまりにも目立つのでまた寄り道をした。

本だけがある。人の代わりを本がしているといった状況であった。

本を読むのは嫌いじゃない。少し本を見繕って開いてみると、タマシイの事について書いてあった。

「愛、希望に思いやりがモンスターのタマシイの構成要素。二人はばっちり持ってるね。」
「やだ、褒めても何も出ないわよGorey。」
「Asgoreだってバッチリだヨ。」
「褒めてくれてありがとう、Boogie。」

ぽす、とBoogieの頭を、すかすかとTorielの頭を撫でてまた目を通すと、ニンゲンのタマシイはそれが無くとも存在できるとあった。

それは違うだろという思いと、妙な気持ちが湧き上がって何も言えなくなった。その後の内容はよく分からず、ぱたんと脇に置いた。

その他の本は、モンスターについてだった。モンスターの身体は魔力で出来ていて、タマシイと連動するだとか、戦いを望まないモンスターは防御力が低下するだとか。なんと魔法で誕生日を祝う習慣もあるらしい。

ふと自分の手のひらを見た。魔法が使えたら良いなと思う気持ちともう一つ。頭に浮かんだのは僕のタマシイの事。

さっきから考え事ばかりしている気がする。ぐでんと机の上に伸びる。

「おーイ、Asgore?」
「ちょっと疲れちゃって、ふわぁ。」
「そういう時は飴を舐めたらどうかしら?糖分っていうのが脳に効くって聞いた事あるわよGorey。」

幸いモンスターあめがある。バッグから取り出し包み紙を取る。ぱっと目が覚めた。でもそれは糖分のおかげではない。

「つっめった!!!」
「そういえばスパゲティも凍ってたネ。」
「Boogie寒くないの?」
「炎に当たってたらそんなニ。」

僕らを温める事に特化しているのか何なのか、食べ物よりも僕らを炎はついて回る。

「もう!あっ、そういえばChara!」
「そろそろ行こうカ。」
「あの子今頃どうしてるかしら。」

足早に町の向こう、Charaの待つ場所へ向かう。

霧が濃い。進めば進むほどに何も見えなくなっていく。

「Chara、Charaどこにいるのー?」

その声に応えるようにぼやんと小さな影が出てきた。

その小さな影は僕らを見つけると、ぷひゅぷひゅと抱っこをせがむポーズで向かってきた。

僕らも腕を広げて迎えたが、その中にCharaが入ることは無かった。寧ろすこし距離を取った。

おそい!」

杖をがんと地面に叩きつけてぷんすこと怒る。

「ごめん!」

「いいよ!じゃなくて!」

何か言おうとして、俯く。それを何度か繰り返す。

やっと、Charaは僕らに言った。

「ぼ、ぼく!ほめられたいから!くろやぎさんのタマシイうばう!みんなからほめられたいから!」

震えて裏返った声で意思を伝えた。

「-ふぅ、よし、頑張らないと。」
「全力で褒めるわよ、私もこれなら参加出来る!」
「もちろン、最後にはパーティー開かなきゃネ。」

* Charaが たちはだかった!

とは言ってもCharaの情報はTorielも知らない。ただ一つ分かるのは、何故かとても力持ちな事だけ。

ACTを開くと「ぶんせき」があった。なんて親切な

* Chara 999 ATK 999 DEF
* ほめられたいざかりの ちいさなこども。
* いっぱい ほめよう! Friskより

「え?」

偶然というべきか必然というべきか、三人は同じタイミング、同じ方向を見て驚いた。


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