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FellApart-14 「突入」

全体公開 FellApart 4045文字
2024-06-18 20:09:54

冷たい土を踏みしめる道が終わると、今度は人工的な道が現れた。近代的な建物にあるのとも違う、「近未来」な感じの。

明かりがぱっちりとついて、今は人々の活動時間だということを教えてくれる。

何か思ってたのと違ウ。」
「どんなのを想像してたの?」
「もっと石を敷き詰めたようナ。もっと暗い感じノ。」
「要塞のような、牢獄のような感じを想像してたのね。でもこの方が怖くなくて良いわよ。」
「そうだけどサ。」

確かに「Fortress」と名前がつくなら、如何にも兵隊の多い砦を想像する。その目を掻い潜り、目的地まで駆け抜けるスリルを求めていたのかも知れない。少し不服なBoogieには悪いが、僕もこの方が良い。

僕たちだけ、とはならないのはやはり安心感に繋がる。



ため息が出る。今日何度目の音だろうか。僕の知らないうちにその光があるという状況は何度経験しても慣れない。

一体何なんだろう。

「ハ、ハロー……、また会ったねぇ。」

その声でふとこの世界に意識が戻る。

Fortressの見張り小屋、というより受付のような所に目を向けるとFriskがいた。

「さっきぶりだね!」
「お家ぶりだねぇ……。それ、炎魔法を解く、よぉ……、ぜぇ……

指をくるんと回すと炎は幻のように消えた。

「もしまた戻ってくるならまたつけてあげるからねぇ……、ふぅ。」
「ところで何で僕たちより先に来れてるの?」
「それはもちろん、全力疾走だよぉ……。」
「えっ、僕見えなかったんだけど!?」

体力切れか、べちっとカウンターに突っ伏した。

この巨体で全力疾走、ぶつかると無事ではすまないだろう。いつもより汗をかいているし、何だか湯気が出ている気がする。

嘘ではないのは分かるけど、もちもちのあの身体の何処にそんなパワーが

じろり、視線を感じる。

「何か変なこと考えてるでしょ、僕がもちもちだからって。……昔は風のように走れてたんだよ?本当だよ?」

やはり若干気にしているのか、唇を尖らせて少しむすっとしている。思った事は事実だけど笑いものにするかと言われれば絶対にノーだ。Charaのために頑張った事実を否定なんてするもんか。

それに寧ろ、抱きしめられた時の、キングサイズのベッドみたいに大きくて、ずむむと沈むあの感覚が好きなのだ。肩を落とした彼女にその旨を伝えると、両頬を手で覆って「おませさん」って言われた。何だろう「おませさん」って。

「ナンパ魔と言われる僕をオとすなんて……。」
「え、何のこと?」

TorielもBoogieもニヤニヤしてる。ちょっと気まずい。僕だけ置いてけぼりなんてずるい!

「あ、そうだこれ。」

鞄からカチコチに凍った食べ物を出す。例のパスタだ。

「これ、あっためる事ってできる?」
「お茶の子さいさいお任せあれだよぉ、おませさん?ふふ。」

首を傾げ、二人に突っつかれる僕をよそにぼうっと炎を出すと、それを手でろくろのように回しながら火を当てていく。

「わお、凄いアナログ方式してル。」
「私なら途中で飽きるわよ。」

ふと「あっ」と言ってFriskは語る。

「そういえばSansの事なんだけどぉ。さっき伝えようと思って忘れてたことを忘れて今思い出したよぉ。」
「何?」
「SansはCharaよりよっぽど強いって言ったんだけどねぇ。彼はここの『王国騎士団』っていう所のリーダーでねぇ、Charaに戦闘スキルを教えたモンスターなんだよねぇ。僕からしたらすっごい困ることにね。」

えっ、と声が出た。

鞄の肩掛け紐をぎゅっと握る。

……まぁ、Sansだって何も考えてなかった訳じゃないみたいだけど。」

さらに文句を言いたげな顔でぼそりと付け足した。

「僕の想像よりも強そうなんだけど……、怖くなってきた……。」
「こ、怖くないもン!そんな滅茶苦茶強そうなモンスターなんテ!」
「王国騎士団長というと、あのモンスターの後釜ね。」

んー、と彼女は少し困ったような顔をする。

仕方ない、お守り代わりだよーとぎゅむぎゅむ抱きしめてくれた。ちょっと震える手でこちらからもハグをし返す。

ほっと一息つくとそれは終わった。肩をとん、と叩いて。

「ちょっとだけ、元気が出た気がする。もう少し頑張ってみるよ、ありがとう!」

とはいえまだ若干強張る筋肉でぎしぎしとFriskに背を向けると、そわそわもじもじ、ポニーテールの幽霊がこちらを見ていた。見るとBoogieそのものと言っても良いくらいの可愛らしい顔立ちである。

「まぁ、Boogieみたいなお顔ね!」
「他人の空似とは言うけどこんなに似るかナ。」
「どうしたの?何か用?」

顔を覗き込むと、もごもごと声が聞こえる。

「あ、あの。Sans、様に会いに行くのか……?」
「あ、話聞こえてた?」
「会うのか……?」
「会いたくないっちゃないけど、会うことになる、と思う。」

するとちらちらと動いていた目が僕に釘づけになり、口元がどんどんとニコニコになっていく。

「いやったー!僕ずーっとSans様に会いに行きたくてここまで来てたんだけど、一人じゃ気まずくて進めなかったんだー!」
「友達いなかったノ?」
「だってGhost Townだよ?人は少ないし子どもなんてもっての外!Charaは一人で走って行っちゃうし。と言う訳で一緒に来てくれる?ね?ね!」

僕の手をぎゅうと握ってぶんぶんと振っているのを見ると断るに断れない。良いよの答えを言い切る前に抱きしめられた。

「ありがとぉー!」
「こんな沈んだ世界でも貴方は逞しいわねぇ。」
「もっちろーん!憧れの人がいる幸せで暗い気持ち吹っ飛ぶもん!」
「あら、見えるのね?」
「うん、Friskくらいでっかいからビックリしちゃった!」

「いて、火傷がちょっと。」
「あ、ごめんね!」

にひ、と笑うと僕の手をそっと握り先に進む。

「じゃあ、行くよ僕の友達!あ、あと僕Happstablookね、よろしく!」

先の扉を潜ると人がまばらにいた。とは言えこの手を握っていないと、Happstablookは風船のように飛んでいきそうだ。

遠めに人の顔が目に入る。

誰も彼もがちっとも楽しくなさそうだった。過ぎゆく人の大半が悲しそうな顔。

なるほど、あの熊の人が話していた事はおよそ本当の事らしい。

「うわーお、中々陰気な場所だなぁ。Sans様はこんな路地裏みたいな場所にいるのかぁ!」

ぼそぼそと人が声を垂らす中、明るく快活に響く失礼発言。

今すぐにでもあの子の口に人差し指を当てに行きたいが、ふわふわと浮かぶゴーストと、てくてくと歩む足ではそれも叶わない。

もやもやとしながら先を進む。

「あれ、そういえばTorielは。」
「いないネ。」

僕の側の影が一つ足りない。

きょろりと辺りを見回してもいない。そして今握っているこの手は、いつの間にか僕を引っ張るのをやめていた。

少し足早になる。

人の腕と腕の間をすっとしゃがみ抜けると、TorielとHappstablookは先にいた。どうやら何かを話しているらしい。

「これに懲りたら、あまり人の住む場所を路地裏とか言わないことよ?」
「ごめんなさい……。」

すごすごと僕の元に帰ってくる本体、いやその子の目には涙が浮かんでいた。どんな説教を受けたんだろう

しょんぼりするHappstablookの背中をすかすかと撫でていると、後ろから何やらざわざわと聞こえる。

振り向くと人々が足元を見て「危ない」だとか「あっ」だとか言っている。

「にーちゃんからのー、しょーしゅーめーれー!」

ばびゅんと駆け抜けたその影と声は間違いなくCharaだ。さっきまでぐったりしてたのに……、でも元気になって良かった。

その思いは一瞬ですっと消えた。その行き先には明らかに異質な何かがいた。

ニヤリと笑うその口だけが僕には見えていた。



そろそろ待ち合わせの時間だ、アイツが遅れてくる事はまず無い。言っちゃなんだが、あのお昼寝好きの教育とは思えないくらい正確な時間にやってくる。

ほら、今日もまた。

「にーちゃん、にーちゃん!」
……安心しろ、俺もさっき来た所だから。」

どさりと腰掛けた俺の息は誰にも悟られないように、静かに荒くなる。

タマシイの鼓動が速くなる。冷や汗が止まらない。

あぁ、そんな目で俺を見ないでくれ。

ぐっ、と声が漏れる。言わなければ。

ふぅーっと息を吐いて、出てきたのは小さな声。

「これは秘密の、秘密の会議だ。Charaは「はい」か「いいえ」で答えてくれるだけで良い。それだけで。」
「わかった!」

「Chara、お前は地下世界に落ちてきたモンスターと友達になったか?」
「はい!!!」

何の躊躇いも無い声、何の屈託の無い笑顔だった。脱力した。

誰とも知らない誰かだったなら、いや、もしそうであったとしても-。

俺が今からやろうとしている事、それはタマシイを奪う事。

皆んなこんな狭苦しい所にいなくて良くなって、兄弟と語った夢を叶えて、素晴らしいことじゃないか。

でも、そうしたらCharaの友達は一人消える。

たった一人、されど一人の大切な存在を俺が消すんだ。

その「一人」の重みは俺の知るよしもない。

俺の指の間の先、そこにいる。

足取りもおぼつかないまま、Charaに礼さえ言わずに立ち去った。

ヒーローなら誰を救う?もちろん市民、何の罪もない人々だ。善を助け悪を挫くんだ。

じゃあ、俺が今から倒そうとしているのは?

決めたんだ、タマシイを奪うと。

でも、何のために?

人通りの無い、秘密の場所で俺は頭を抱えた。

「正義って、何だ。」


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