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FellApart-15 「笑う者共」

全体公開 FellApart 4213文字
2024-06-18 20:12:00

そういえばちょいちょいタイトル変えてます。あんまり気にしないで!

へたりと腰を地面に下ろした。

顔は何も見えないはずなのにしかと僕を向いたあの視線。

僕の何処かしらに穴でも空いたような感覚がした。

「あれが、Sans……。」

そうボソッと呟くと、隣から大声が響く。

「今!僕と!目が合ったぁー!あはは!」
「うるサ。」

そんな嫌味など気にしないニコニコ笑顔が、僕にとっては疑問だった。

何をもってこの子は彼に憧れているんだろうか。あんなに薄気味悪いのに。

いや、そんな事を考えていても仕方がない。今はとにかくSansから逃げ延びる事。それが僕の目的だ。

ふと僕の頬を突っつかれた。

「えと、話聞いてる?ねぇ?」

ずず、と僕の真横まで顔を近づけているHappstablook。顔を直視できないが、生暖かい視線が熱く僕に向けられているのだけは分かる。

「あ、ごめん。考え事してた……。」
「この子だいぶ寂しがりを拗らせてル。」

ぷんっ、なんて効果音が聞こえそうな表情をしたかと思うと次はお願いモードに入った。

「Sans様からのファンサ貰ったのは嬉しいんだけど、その、サインも欲しくて……。」
「バッタリ会うまで付き合ってくれない?」

僕を含めて三人は一様に苦い顔を浮かべた。ちょっと待ってて、と僕らは顔を突き合わせた。

「どうしよう……。」
「正直ちょっと会いたくないわね、怖いし……。」
「おひとり様でお願いできなイ?」
「絶対駄々こねちゃうよ?」
でもまぁ、行くしかないわよね。地上にも出たいし。」
「じゃあ、サイン貰った後は全力で逃げるプランでいくカ……。」

「おまたせ。」
「結論どうぞ!早く早くー!」
「良いよ!」
「やっぱり!信じてたぞ友よー!」

今僕はちゃんと笑えているだろうか。多分滅茶苦茶引き攣っているんだろう。でも、この子の喜びの声が少しこそばゆくもある。

「じゃあしゅっぱーつ!」

ほんのちょっとだけ、先に進む勇気を貰えたような気がする。

そしてちょっとだけ歩くと、底は暗くて見えないくらいの高さ、飛び越えるなどまず出来ないくらい広い隔たりが現れた。僕は幽霊じゃないからふわふわと浮かんで向こう岸に渡れないし、花じゃないから瞬間移動も出来ない。

近くに操作盤はあるけど案の定パズルだし、よく分からないし

おおよそセキュリティの類なのだろう、パスワードまで設定されている。

「せっかくやる気が出たのに僕だけ置いてけぼりになっちゃう。」
「僕のツタも万能じゃないシ、正直こんな距離伸ばせなイ。」

Happstablookがそわそわする中、Torielは一人、何かを考えていた。

どうしたの、Toriel?」
「私、昔は結構やり手のウーマンだったのよ。その時に聞いたんだけど。」

まぁ、眉唾物だけどねと前置きすると、僕とBoogieにタマシイを出してと指示した。

「私の知り合いの博士がね。『特別なタマシイとモンスターのタマシイをくっつけると凄い強くなるんだ!』って話してて。信用はしてないんだけど、今はそれに賭けてみようかしら、なんて。」
「えぇー何それ?」
「またとんでもオカルトを話す博士だネ……。」
「何それ面白そう!見せて見せて!やってみて!」

どう考えてもホラだ、けれどダメで元々!

赤いハートに逆さの白いハートをくっつけると、一瞬強く光った。

光が止み、目をぱちぱちとすると、赤いハートの中に白いハートが重なったタマシイになっていた。

大成功?」

しかし僕の姿には残念ながら変化が無い。

あノ、ちょっト。

Boogieみたいな話し方。だけど少し声が低くてやたら反響してるような。

バッグの中にはいない。TorielとHappstablookはぽかんと口を開けて僕の後ろの何かを見上げている。

僕の姿見てヨ。

「Boogieの姿が変わってるんだね?どんな感じになったか見ーせて!」

ばっと振り返ると、Boogieはいなかった。

いや、何かいるのだけど、Boogie……、Boogie?

「正真正銘Boogieだけド。」
「えっ、心まで読めるの?」
「顔見れば分かるヨ。」

……えー!?」

ようやく事態を飲み込めた。いや、飲み込めてないけど今僕の前にある光景を信じざるを得ない。

頭がテレビのようになってて、それと、えーと、とにかくもの凄い姿になっていた。取り敢えず花の要素はほとんど無い。

僕らの顔を一通り見たBoogieは、ふふんと笑って腕組みをした。

「凄いだロ。今なら誰にも負けない気がすル。」
「あんまり調子乗ってると痛い目見ちゃうよー?」
「妬いちゃって可愛いネ。」
「凄いぞ!試しに魔法使ってみてよー!」
「分かっタ分かっタ、せっかちだナ。」

それっ、と軽く腕を突き出すと、隔たり全域に配線がみっちり生い茂った。

「これ、ちゃんと丈夫なんだよね?感電とかしないよね?」
「安心したまエ、僕に友達を傷つける趣味なんて無いからネ。君みたいなか弱い友達なら尚更だヨ。」
「今の調子乗ってるBoogie、ちょっと可愛いわね……。」
「よっしゃー!行くぞ友よー!」

やれやれと首を振るでっかいBoogieを横目に、配線から不思議と漂う植物の青い匂いを感じながら歩みを進める。

次の部屋も配線を生やすと、ほんの少しばかり気になる所があった。

誰も通れない、入れないであろう壁に入り口がぽつんと一つだけ。

誰にもバレないように、こっそり一人探検に入る。

中はベンチが一つと、それに寄り添うように咲く、鉢に入った青い花が一つ。

「ん、何これ……。」

*いたんだキッシュを てにいれた……

何でこんなところに?

そんな疑問を持ちつつベンチに腰掛けるとほんのり温かかった。誰かがここでくつろいでいたのだろうか。

すると、ぼそぼそ声が聞こえてきた。遠くからではない。この部屋の中でだ。ここにあるのは僕とベンチと花一輪。

喋る花には慣れっこだ。何を話しているのか、のそのそと耳を澄ます。

「うわぁぁぁぁ!!!」

叫声が無防備な僕の耳をつんざいた。

この花は意思を持っているのか?いや、違う。この花じゃない。全くの逆方向から聞こえてきた。

皆んなの元に急ぐと、悲鳴の元がすぐに分かった。

ガリガリの馬の上半身に魚の下半身がくっついた、白目の奴。

「いやぁぁぁ!助けてよでっかいの!」
「この姿じゃ力加減が難しいノ!あとでっかいのって呼ぶナ!」

きょろきょろと辺りを見渡すTorielは、僕を見つけるとふわふわと駆け寄ってきた。

「Gorey、あなたどこ行ってたの!」
「あ、いや。それより、アイツは何?Torielは知ってる?」
恐らく、恐らくよ。アイツはAaron。今は痩せこけてて見る影も無いけれど……。」

そういえば手に握っているのは鉄アレイだ。恐らくはボディビルダーのような姿だったのだろう。

それは白い歯を剥き出しにして笑う。あの笑顔のように。

「やっとご飯にありつけそうだね(^_−)☆」

思い切り鉄アレイを振りかぶると、遠心力に任せて僕まで向かってきた。

「うわっ、ちょ、僕美味しくないよ!」
「嘘はよくないよ、君の方から美味しそうな匂いがするからね(^_−)☆」

なるほど、そういう事か。

このまま僕が逃げて、皆んながてんでんばらばらになるのは良くない。かと言って僕が鉄アレイでぐちゃぐちゃにされたくもない。

ならばとキッシュを取り出し、進みたい方とは真逆の方に放り投げた。

「今!」

その一声で皆んな一斉に逃げる。

来た方向の入り口はBoogieの配線で塞いで、万全の体制だ。

「さっきの奴、僕らのことをご飯って言ってた。」
「幽霊だから食べられないよって言ったのに『嘘つけ』って!チェーンソー見せてもビビらないし!」
「筋肉を作るのにご飯は必要不可欠だからね。ここは『ある程度の生活』が保証されるけど、それ以上でも以下でもない、ってところかしら。その『ある程度』がどれほどか知らないけれど。」
「Friskは何なんだロ。一際大きくて、もちもチ。」

何か心当たりがある。そうなる理由。

でも難しくて、複雑で、思い出せない。

あれ、さっきのって戦闘だったっけ。

うーん、と考えても答えは出ない。

「そういえば、ここって花が沢山あるね。」
「エコーフラワーね。声を吹き込むとそれを繰り返すの。昔はよく願いをそれに吹き込んだのよ。」

あの時のぼそぼそ話す花と同じ。でもここのはそんな声すら聞こえてこない。僕らの声が僕らの口から出てこだまするだけ。

ちょっと心も落ち着いたし、先に進もうか?」
「そうしよう!じっとしてるのは嫌いだから!」

二人の方を振り返ると、何か話していた。

「ところで、Boogie?いつまでその姿でいるつもりなのかしら?」
「ずっとだヨ。カッコよくて強いからネ。」

ずっとか。

強い味方になってくれて嬉しいな。

僕のバッグの中から嫌味がもう聞こえなくなるんだ。

肩に掛けられた紐を僕は握りしめた。

そう小さく笑い飛ばした。つもりだった。

改めて先に進もうとすると、背後から声が聞こえてきた。

あー、この姿でいると疲れるんだよネ。そろそろ休もうかナ。でもアイツがこっちに入ってきちゃうかもだかラ、もう少しだケ。」

どうやらさっきの僕の顔は笑えていなかったらしい。今の方が笑えている確信がある。

ふふ、というTorielの笑い声が少し恥ずかしい。

「じゃあ改めまして、行こっか?」
「おー!」

ズドン!!!

その声は爆風でかき消された。カラカラと瓦礫の崩れる音が鳴る。

「アレ、ココ、コウヤッテ通ルンダッケ。」

カタコトの言葉が硝煙の中から聞こえてきた。

「マア良イカ。ソチラ、消毒シテマスカ?」
「え、ぁ……。」
「シテナイ?最近食中毒ガ流行リデシテ。綺麗ニ消毒シナイト、オ腹ガ痛クナルンダ。」

ぼうっ、ぼうっと炎が燃え上がる。その姿は四足歩行のロボットだった。ニヤリと笑ってまた炎が吹き上がる。

「サア、全身綺麗ニ熱消毒!」

* No. 8209が しょうどくしにやってきた!


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