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FellApart-18 「救いを求めて」

全体公開 FellApart 6384文字
2024-06-18 20:17:36

「Undyne、ソウイエバ-。」
「貴方知ってますか、でしょ?」

いつものマネキンのいつもの豆知識披露タイムだ。この出だしはその合図だ。

出だしこそ何度も聞いたとはいえ、彼の話すことは意外に面白く、適当に流すつもりがいつの間にやら相槌を打って話を聞いているのが日常。

「ハァ、私ノ台詞取ラナイデクダサイ。」
「何、私から進んで聞こうとしてるのがそんな気に入らないの?」
ソレナラ。知ッテマスカ-」

『天使の話。』

亀のお爺さんはそう切り出した。

「知らんじゃろ、お前さんは侵入者じゃからな……。」
「天使って羽が生えてるアレ?」
「まぁ、そうかも知れんな……。」

こういう話になったのはついさっき、Asrielの家から出てすぐのこと。道を進むと、ボロ屋と言うにも及ばないような建物が目に飛び込んできた。

そういうのに少しワクワクする自分もいて、興味津々に建物に近づくと亀のお爺さんがギロリと睨みこっちを見たのだった。

ため息を吐いてとても不機嫌そうだった。ごめんなさいと言ってもどうにも反応が薄く、ではお詫びをと「うちゅうしょく」を一つ買って許してもらった。

* うちゅうしょくを てにいれた。

そんな中、ふとお爺さんが切り出したのがこの話だ。

「そんな話、聞いた事がないわね。」
「僕もこの世界に長くいる方だと思うけド。」

ちょっと待ってろと、ガラクタを退かすと「天使」が見えた。Torielの服の紋様と同じもの。

「あっ!」
「前女王亡き後、いや、現女王『Alphys』が表舞台から姿を消してからしばらくして流れた噂話じゃ。」

Alphys、初めて聞く名前だ。今まで「女王」と伏せられていた者の名前は彼女だったのか。

「元来これはDELTA RUNEという王国の紋章、カッコいいじゃろ?まぁ、フワリン王のネーミングセンスには感服するが。」

昔を懐かしむような、切ない眼差しを僕に向ける。

「この紋章は王国が出来る前から存在しておってな、どのような意味かは長生きしてきたワシでもよく知らん。じゃが、三角形の上のこれが『天使』じゃと言われておる。」

キャリーバッグを開けると、カラカラに乾いた紙を取り出し僕らの前に広げた。

「地上を見し天使が舞い降り、我らを解き放たん。」

Torielとお爺さんの声は一言一句一致した。

ハハハ、と渇いた笑いを浮かべると、初めて会った時のような目に戻る。

「ワシは人間との戦争で戦ったモンスターの内の一人。その時に怪我を負って今はこのザマ、地上を見たことがあっても『天使』にはなれんかった。お前さん、この世界の事情は知っとるか。」
「さっき、教えてもらったよ。」

そうかと呟くと、言葉を続けた。

「この世界のモンスターは『天使』に縋った。じゃがそんな世迷言を信じたせいで皆んな塵に消えた。ワシらはこの世界に、その未来がどうあれ進展を望んでいる。しかしそれをお前さんに背負わせる訳にはいかん。たった一つ言えるのは、どこから来たのか分からんが、いや、例え地上から来たのであっても、お前さんは生きろ。」

その言葉を終えると、まだ何かいるかと話しかけてきた。がめついなと思いつつ、今度は「ビチャビちゃ」なるものを買った。

あの。」
「何じゃ、まだ何か-。」
「Sansの事カ。」

あぁ、と髭をなぞり、ぽつりと一言だけ。

「Sansは色んなものに翻弄されて、もう限界じゃ。奴はいつだってお前さんを先回りする。気をつけることじゃな。」

ありがとう、と礼を言って僕は去った。Sansに対するもやもやを抱えながら。

先の道にある、願いを語るはずの花は何も言わない。それがこの世界の疲弊を告げている。

ふと、如何にも「天使」を崇めていそうな服装のモンスターが目に入った。色々話は聞きたいが、長話になりそうで気が引ける。

壁際をそろりと歩いていると、何に気づいたのかそのモンスターはこちらを向いた。

「あっ。」
あ、ぁなたうかにゃぃカオしてル。」
「見慣れ過ぎて気づいてなかったけド、確かニ?」
「これは巧妙な宗教勧誘よ、強い決意をもって断るのよGorey。」

がさごそと服を漁ると、どこからか紙袋を取り出した。

「これでぁなたセーヴされル。」

* かみぶくろを おしつけられた

それだけ言うと逃げるように立ち去っていった。置いてけぼりの僕の手には不思議な感触の紙袋だけが残った。

「世界って、広いね。」

無言の空気を和らげようとした僕の口からはそんな言葉しか出なかった。

次に進むと、どうやら電灯の調子が悪い部屋らしい。満足な明るさの無い暗い部屋だった。

「ひっ、こういう暗い所あんまり好きじゃなイ。」
「幽霊だから平気よ、本当に平気よ嘘じゃないわ。」
「二人とも怖がりだなぁ-。」

僕の進む方向にもう道は無かった。踏み外して、もう落ちるだけ-。

「あぁーごめんなさいぃぃぃ!」
「ほら言わんこっちゃなイ!」

その手の葉っぱを壁に突き刺し、クライミングの要領で元の道に戻った。僕はBoogieの花びらをもにもにする刑に処されてしまった。

「しかし、こうも暗いとどこ歩いてるか分からなくなるわね。」
「手すりとかあれば良いんだけど。」

ぷるんっ

足元に感じるゼリーのような感覚。何だ、これ。

よく目を凝らして見るとゴミを食べていたモンスターだった。見るからにゼリーみたいなアイツ。

きゅるきゅるとキャタピラが鳴ると同時に、唸り声が聞こえる。

するとずもももとゼリーが何段にも重なり、頂点には口のようなものがあるモンスターに変わった。

「うわっ、こんな時に!?」
「踏んづけたのがよっぽどご立腹みたいだヨ!」
「えーと、アレは、デカカビね!そういえばチビカビもいたはずだけど。」

♡ACT

♡ぶんせき *だきしめる *よこになる *ほうっておく

久しぶりに充実したACTの内容だというのに、まるで何が正解か分からない。デカカビについてもう少し情報が欲しい。「ぶんせき」でいこう。

* デカカビ
* 18 ATK 18 DEF
* きんえんしゅに フツウカビがいる。

滅茶苦茶どうでも良い内容だった。じゃあ何しよう

♡ だきしめる

「デカカビ、仲直りのハグしよう!」

意を決してそのぷるぷるボディにハグをすると、ねっとりとした不快な感触の何かが全身についた。でも、少しは効果があるだろうとちらりその目を見る。

「ぐるる!」
「うわっ、コイツ怒ってル!」

* ネバネバで うごきがおそくなった

足元にもネバネバが広がって動きにくい、かといってずっとつま先立ちも疲れる

嫌な感触を避けようと奮闘していると、僕の周りに8つの光弾が浮かんでいる。まずい

汚れること前提で転がって回避していく。僕の回避した先で再び光弾が出てくるせいで、どんどんと後退させられる。

「ふぅ、やっと攻撃が終わった。次に効果がありそうなのは何だろ。」

横になったところで効果なんて無さそうだし、ハグしたらべっちゃべちゃになっちゃう。「ほうっておく」のが正解なのかな

♡ほうっておく

横になっても放っておいても無防備になることに変わりはない。開き直って体育座りでデカカビの前に居座った。

「Gorey、正気?」
「仕方ないじゃんこれしか思い当たらないんだから。」

デカカビの様子を見ると唸り声が聞こえない。寧ろ少し頷くとしゅるしゅると元に戻り、「TRASH」と書かれた看板をその口に掲げて僕の横を素通りしていった。

* YOU WON!
* 0EXPと20ゴールドを かくとく!

ふぅ、良かった。」

額の汗を拭おうとすると、相変わらずべたべたとした謎の物質がついていた。どうしようこれ。

「そうだ、この暗い場所を通る方法思いついたのよ。」
「ん、何?」



淡い明かりが僕らの前を照らす。道が分かるだけでこんなに安心するとは不思議だ。

僕がライト代わりって贅沢だロ。もうちょっとパワフルな活躍とかさせてくれなイ?」

そう、その方法とは大きなBoogieのモニターを明かりとして使う事だ。本人は不服そうだが仕方がない。

ガシャン、ガシャン

何やら重たいものが歩いている音がする。

「何か、この音聞いた事あるような。」
「あ、Asgore、前見ロ。」

何と前には熱消毒のアイツがいた。何で、どうして。

しかし先ほどまでと様子が全く違う。あのにやけ顔はどこにも無く、ふらふらと足取りまでも疲れ切った雰囲気が漂っている。

「ネ、熱消毒。」
「あら、この子こんな感じじゃなかったわよね。」
「これなら僕でもいけるナ。」

ワクワクするBoogieを制止して事情を聞いてみると、どうやらパワーチャージには相応の時間がかかるということらしい。

「ア、ベトベト。」
「あぁ、これはさっきの
「ソレクライナラ今ノ私デモ。」

火炎放射器を構えると、出てきたのは炎ではなく温風だった。ちょうど良い勢いで、ベトベトは蒸発して服も乾いていく。

「わぁ、一生ベトベトのままかと思ってたから良かったよ!ありがとう!」
「コチラコソ久シブリノ仕事デシタ、アリガト。腹痛ニ気ヲツケテネ。」

感じの良いニッコリ笑顔を向けると、再びガシャンガシャン足音を鳴らして次なる仕事を探しに行った。

「そろそろゴール地点っぽいよ。」
「ようやくカ。モンスターがいないだけあって僕の力を振るう機会も少ないナ。」

とぼとぼと歩いていくと目の前にエコーフラワーが咲いていた。あいも変わらずと思ったが、耳を澄ますと何か音が聞こえる。

コツ、コツ

コツ、コツ

あれ?

「さっきの音、ここから流れてきてない。」

ぼそり溢すと、電灯がばちばちと激しく点滅し始めた。

一斉に振り向くと、遠くに三日月のような笑顔が見えた。電灯が暗くなると同時に消え、明るくなると同時に現れる。でも、それだけじゃない。

生きてたか……

久しぶりだな

俺にとっては複雑だよ。

タマシイを奪われる覚悟は出来たか。

「侵入者。」

その目は赤く、そして小さく輝いていた。

覚悟は、決まっていないようだな。」
「あ、、は、はぃ。」
「奪われる訳にはいかないからナ、笑顔野郎。」
だよな。」

電灯が長く切れたかと思うと、次の瞬間には何事もなかったように明るく、何も無い部屋が広がっていた。

初めてその目を見た。やはり何を考えているか自分には分からないくらい顔は見えなかった。

その場にへたり込んで、息を整える。落ち着け、きっとまたアイツは追ってくる。いや、立ちはだかる。

何とか立ち上がると、暗がりの時には見えなかった道を見つけた。

「ここは。」
「エコーフラワーが沢山咲いてるネ。」
「願いの間と呼ばれた場所ね。もう何も聞こえないけれど。」

これだけ咲いていて一輪も物を言わないのは不気味で仕方がない。数秒前のこともあって一刻も早く抜けた。

先に続く橋に、やはりいた。

長骨で作られたような薙刀を持ち、笑顔で待つSansが。

でも、もう引き返す選択肢など無い。行かないと、ダメだ。

腹を括って曲がり角から全身を現すと、Sansは長い息をついてぼそぼそと話し始めた。

覚悟が出来てなくたって良いさ。一瞬で俺なら終わらせられる、そうだ、大丈夫。」
「貴方の技術は高いものね。流石騎士団長ってところかしら。」

僕の心を落ち着かせるように、Torielは僕の手を握る。

「大丈夫、大丈夫。アンタが痛みを感じないくらい早く終わらせられるから。」
「もしかしテ、僕に勝てるとでも思ってるノ?」
デカブツ、アンタは戦いの素人だろ?」

ニヤリと笑いあのビームを撃ち出す何かを複数呼び出すと、じろり全機がこちらを向いた。左手を上に掲げると、口を開き準備が出来た。

「大丈夫だ!」

-間に合え

「我の友達に、手を出すなぁーっ!!!」

僕の前に飛び出してきたのは、ポニーテールにチェーンソーを携えた小さな影。

アンタは。」
「Happstablook、あの子の友達!」
危ないよ、退いたほうが身のためだ。何もアンタまで犠牲になる事無いだろ。」

それについては同意だった。勢いよく飛び出したHappstablookの手は震えて、怯えているのは目に見えて分かっていた。

「それでもだ!」
……。」
「Sans様、ううん、お前が友達を狙ってる理由なんて知らないし、そもそも友達が何者かも知らない!いや、どうだって良い!例え友達がどんな人でも、例えどれだけお前が怖くても!友達が助けて欲しい時には僕が守らなきゃいけない!それが僕が今立ち向かう理由!」

大きく息を吸うと、彼は叫んだ。

「分かったらかかってきやがれ、このゴミ袋!!!」

Sansは呆然と立ち尽くし、しばらくしてHappstablookの言葉通りに手を引いた。でもきっと一時的なものだ。

僕の頭に残ったのはSansの顔だ。あの時、啖呵を切った時、一瞬その笑顔が崩れた。

「と、友達ぃ。」

弱々しい声が耳に入った。Happstablookは泣いていた。

「あの時素直に逃げ出してごめんよぉ!僕魔法使えなくて!怖くて!僕、僕

ぐす、ぐすという声の中、僕の背後から静かに大きな腕がHappstablookの額に近づき、そして優しくデコピンした。

HappstablookはAsgoreより、Torielより、そしてこの僕より強イ。僕が言うんだから間違いなイ。」
でっかいの、優しいな。」
「相変わらずでっかいの呼びカ。まぁ良いヤ。」

TorielもHappstablookを撫でると、「でも本当の本当に危ないの」と伝えた。

じゃあ仕方ない。同行はできないけど、でも、サポートはするぞ!誰にも内緒のプランを考えてるからな!僕は僕に出来ることをやるんだ!」
「頼もしいね、ありがとう。僕と友達でいてくれて。また会おうね。」

今度は手を振らなかった。だってこれはお別れじゃないから。

僕は僕の行く方向に進むと、非常出口のような場所に出た。

そしてまたSansは待ち構えていた。

去っては現れ、去っては現れ。そういえばどうしてそんな回りくどいことをするのだろう。

バリアを破るには7つの特別なタマシイが必要だ。そして今、それが6つ揃っている。何が言いたいか、アンタにはもう分かってるだろ。」
分かってるよ、でも。」
……。あぁ。ここで生き残ってるモンスターから話も聞いていたようだしな。この世界で生きてきたモンスターは地上を夢見てきた。俺だって、そうだ。あの子に譲れないものがあったように、俺にも、俺には……。」

そこまで言ってくぐもると、彼の息が荒くなった気がした。

「あぁ、そうだ。これで良い、はずだ。正義なはずだ……。」

その目が今度は爛々と輝く。

同時に僕の側にはあの光がぼんやり浮かんだ。あの音が鳴り、初めて笑い混じりの声を彼は放った。

「アンタのタマシイで今生き残っているモンスターが皆んな救われる。夢が叶う。たった一人だ、一人だけだ。それが今俺が掲げる、『正義』だ!」

* Sansが えがおをうかべておそいかかってきた!


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