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FellApart-21 「強がり」

全体公開 FellApart 5741文字
2024-06-18 20:25:34

随分と回りくどいことをする。

暗い工場に柔らかい足音を響かせてそうぼやいた。背負ってきたバックパックの中からは、道具のぶつかる音がかちゃかちゃと聞こえてくる。

タマシイを奪って欲しい-。

あんな事を言うような奴じゃないはずだ。確かにやんちゃはするし喧嘩は強い、だけどそれは喧嘩が好きだからというわけじゃない。心の底から悪い奴だからじゃない。

おかしい。あの顔はどう見ても本意ではなかった。

あれこれと考えていたら-、一つの可能性に行き当たった。

違う、あのポスターを飾っているのは別に何でもない、ただインテリアとして馴染んでしまって外すに外せないだけの代物-。

今この背中には冷ややかな暗闇が、目を落としたそこには自分の形をした影が地面に佇んでいる。ライトを照らせども、この道はどこまでも暗い。

-仲良しさんの前では頑張って笑っているつもりなのだが、彼にはどう見えたのだろう。

兄ちゃんは、Friskは、この顔を見て何を思っていたのだろう。

水を打ったような、それでも情けないような音が響いた。

違うんだ。」

湿っぽい匂いとオイルの匂いが鼻をついた。

ここはかつて女王が設計し、国家が運営していた場所。在りし日はコンベアが回り、作業員が機械を作り、煌々と明かりが点いていた。今は黒くその痕跡があるだけだ。

不慮の火事が起こって以来閉鎖されてしまったが、お化け屋敷の感覚でふざけて侵入する者が時々いる。自分の不注意で怪我をしても良いのだろうか。

そんなこの工場にはメンテナンスはされていないものの、確かセキュリティ用のパズルが形を残していたはずだ。それを流用してやろう。

しかしパズルをやるには電気が生きてないとどうしようもない。このコンディションだ、焼け落ちていたとて驚きはしない。そこをどうにかするために道具を用意しているのだが。

第一のパズルの場所へ辿り着くと、真っ先に配線の確認へ行った。

「電気はギリギリ無事、この先も使えるくらいの状態なら楽なんだけど。視聴率のためにも撮れ高を作らないとな。」

どっさり持ってきた整備道具からいくらか取り出すと作業を開始。使えるところは使って、補強した方が良いところは弄ろう。

かちゃかちゃ

心なしか手の動くスピードがいつもより遅い。今でもガラクタから仕事道具を改良発明してるし、腕が鈍ったというわけではないはずなのだが。

-果たしてこのテレビを成功させることは正しいことなのだろうか?Kidの「ハカセのため」というその意思は有難いけれど。

いつか兄ちゃんが語ったことが頭に過ぎる。

尊い犠牲だと言って、侵入者とはいえ子どものタマシイを奪おうと奔走する俺様はこのスーツに誇れるだろうか?

いや-、もう遅い。そうだ、あのポスターというのは打倒ヒーローを指しているんだ。違いない。俺様今日からヴィランだ。

科学に犠牲はつきもの。何かを捨てなければ、捨てなければ-。

汚れを取って、ピカピカにもして見栄えも良い第一の関門は完成した。しかし辺りの環境とあまりにも不釣りあいで結局浮いてしまった。

仕方ない。ガラクタはどかして、あぁ、前ここに来た人が捨てたであろうゴミまである。片付けてやろう。

時間も余ったことだし、もう少し手入れをしようかな。それと細工も。」

-うわっ、何ここ

僕たちは扉を抜けて、工場の前に立っていた。

視界一面にそびえるそれは煤けた、黒い容貌をしている。ところどころ歪な影がそこにはあった。

「こんなところでテレビショーやるのおかしいっテ!」
「そう言うなってー、ここはテレビ的にすげー美味しいんだ!通称お化け屋敷!何でもここは火の玉幽霊が出るってもっぱらの噂!」
「テレビって体を張るんだねー。」
「にしても現場の状態悪過ぎるわよ!」

げんなりする僕らをよそに、慣れたものだとカメラを構えてひょいひょい進んでいく。

「アイツの考えてるこト、いまいち分からなイ。」
まぁ、着いて行こうよ。僕らだけでここを通るの嫌だもん。」

しかし足が中々に速い。頑張って走らないと視界から消えてしまいそうだ。

だいぶ遅れて中に入ると、そこには黒い空間だけがあった。

今は外から入る灯りで何とか足元が見えるかという程度で、少し中に入ればお互いの顔も認識できないだろう。

「こ、こんなところKidは通っていったの?」
「どうなってるんだヨ。」
「一歩ずつ、慎重に、ね?」

ひたり、ひたり

そんな足音が静かに響く。お化け屋敷にしては何も見えず、声も無い。それがかえって怖さを際立たせた。

「K、Kid。どこにいるの?」
「早く出てこないと泣いちゃうヨ、Asgoreがネ!」
「そうよ、Goreyを泣かせたら、た、ただじゃおかないわよ!」

いつの間にか僕がダシにされているが今はそれどころではない。とにかくこんな中ではぐれたくなかった。

少し震える足で歩みを進めていると、がん、と何かにぶつかり尻もちをついてしまった。ひっ、と情けない声が漏れる。

そのまま後ずさるとそれが動いた感覚がした。ぱきぱきと音が鳴ると、何も見えないものの目の前で息づかいが聞こえる。

「だ、誰ですかぁぁ。」
「近づかないデ、食べないデ。」
「は、早く顔を見せなさい!怖いから!」

すると下から明かりに照らされた黒い目のモンスターの顔が現れた。

「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」」」
ぷっ、ふふふ。」

叫び声の終わり際、確かに聞こえた笑い声。

「お手本のような叫び声だな、二人とも!」

そこには黒い目など無く、ただただニコニコ笑うKidの顔があるだけだった。

僕の目尻には少し涙があった。

「こ、怖かったよぉ。」
「悪趣味なことするナ!怖いだロ!」
「私が生きてたらお説教してたわ。」

「まったく可愛い奴らだなー、もー!」

その手は僕を抱きしめわしゃわしゃと頭を撫でる。その手の力加減はどうにも手慣れていて、勢いは強いのに痛くない。何だかずっと待ち侘びていたような、そんな感覚が手から伝わってくる。

一頻り笑うと、微笑むような顔になって謝ってくれた。

「少しおふざけが過ぎちゃったな、ごめん。ちなみにさっきのは暗視カメラで撮れてるから安心してくれよな!あと生放送!」
「うわぁぁぁ一番聞きたくなかった言葉言わないでよぉ。」
「へへ、あとで何か買ってあげるからここは一つ!。」
「どうしたのサ。」

あぁ、いやと首を横に振ると、探索を再開しようと言った。

「えっと、君たち光源とか持ってないかな。流石に全部暗視カメラ映像は厳しいかも。撮影側って慣れてなくてさ、尺とかも考えてないんだよなー、大変だ。」
「うーん、ライトとか買ってないし。」
「あ、そういえばアレ!」
「そうだっタ。僕が光源になるヨ。気に入らないけど仕方なイ。」

あぁ、アレかと冷静さを取り戻した僕はタマシイを取り出し、Boogieに差し出した。

闇を照らすように一瞬だけ強く光ると、テレビ画面が淡く僕らの周りを照らし始めた。

床も壁も焦げつき、お化け屋敷に相応しい雰囲気を漂わせていた。

「凄え!何だその姿!」
「でっかくなったBoogieだよ、凄いでしょ!」
「名前はまだ無いヨ。」

Boogieで良いんじゃ、と思ったがどうにもそういう訳にはいかないらしい。名前のことは僕にはよく分からないや。

-あ。

ふと、あの時のHappstablookとのやり取りを思い出した。

「いやぁぁぁ!助けてよでっかいの!」
「この姿じゃ力加減が難しいノ!あとでっかいのって呼ぶナ!」

あぁー

「あの子のでっかいの呼びが気に入らなかったのはそれかぁ。」
「そういうこト。強くなさそウ。」
「歳相応の悩みねぇ。」

ふむ、とMonster Kidが考え込むと、Boogieの趣味やら何やらを聞き取り始めた。どういう方向性の名前をつけたいとか、そういうの。

しばらく素直に質問に答えて、ぱちん、と指を鳴らした。

「よし、決めた!その姿は『Hiphop Boogie』って名前にしよう!君は音楽が好きみたいだしピッタリだろ!」

僕がBoogieに返事を求めると、頬に手を当てて「良いんじゃなイ」と答えた。

「何だよー、ノリ悪いなー。」
「まぁ、まぁ。素直になれないだけだから気にしないで。」

さて、改めてと先へ進むとベッドが歩いてきた。その上には何とも可愛らしいマスコット的なモンスターが眠っている。

地下世界ってベッドも生きてるの?」
「魔法があればそれくらい簡単よ。ふふ。」

ひそひそと話していると、うぅーんと声を上げてそれは寝返りを打った。

瞬間僕の手を思い切り引いてKidが走り出した。

何のことか分からないまま僕は駆けていく。質問はあるはずなのにパッと思い浮かばない、思い浮かべられない。

しばらくすると、へたり腰を下ろした。

どういうこと、とやっと聞くと、あのモンスターは「きゅうかちゃん」というモンスターだったようだ。

「俺、一回そいつに面白半分で近づいてさ、そしたら、あぁ、恐ろしい。」
「何があったのサ。」
眠りを邪魔されるのって、誰でも嫌だろ?」

それだけ言うと、息は整ったかと聞いた。彼もあのモンスターからは離れたいらしい。

。」
「何だ、どうした?俺の顔に何かついてる?」
「何でもないよ。ただ-、優しいなぁって。」

足早に歩みを進める。すると、今までひたひたとしていた足元からがしゃん、がしゃんと音が聞こえる。

「ここは元々ベルトコンベアだったんだってさ。従業員が疲れないように自動で向こうに運んでくれるシステムだったとか。もう機能してないみたいだけど。」
「へぇー、ハイテクな所だったんだね、ここ。」
「こういうロマン溢れる場所、好きなんだよなー。」

カメラを構えてニコニコと笑う。もしここが今も健在であったなら、見たいものがあり過ぎて目を回すんじゃないか。

その先にある配管が作り出す通路を抜ければ、今度は足場が点々とある所に出た。恐らくこれも本来システムが回っていたのだろうが、液晶パネルの表示がバグっている辺り、期待はできない。

「よし、ここは僕の力デ-。」

そういうBoogieを彼は制止した。

「ここら辺でちょっと映える絵を撮らせてくれないかな。俺の番組の売りはアクロバティックなショーでさ、そろそろこの暗い退屈な絵にも皆んな飽きてきた頃だと思うんだ。」
「あー、まぁ、良いけド。」

ありがとう、と僕にカメラを預ける。この細い腕にはかなり重く、見かねたBoogieが配線で支えてくれた。

「Hiphop Boogieはスポットライト役を頼めるか?」
僕の役割いつもこんなのばっカ。」

しょげながらもきっちり明度を調整する。あとでちゃんと褒めてあげよう。

「Asgore、俺の姿はちゃんと映ってる?」
「バッチリ!」
「よし、じゃあ俺もキッチリ仕事しなきゃな!」

ぐっ、と踏み込み飛び出すと、僕の目の前から消えた。

「えっ。」

カメラを回してあちらこちらと探すと、配管に足を引っ掛けてくるんくるんと回ったり、その勢いで別の足場に着地、また別の場所に飛び出したり

3人の口から思わず声が漏れた。

「テレビスターってこんな感じなんだ。」
「凄いわねぇ。」
「目が追いつかなかっタ。」

暫し余韻に浸っていると、遠くから聞こえる呼び声が聞こえる。

「置いて行っちゃうぞー、早くー!」

はーい、と返事をしてBoogieが足元に配線を巡らせる。

ちゃんと撮れたかどうか、凄い怪しいんだけど。」
「許してくれると思うヨ。番組のコンセプト忘れたのかってくらい優しいシ。」

優しいのはありがたいけど、少しだけ心配がある。僕のことではなく。

モヤモヤとしていると、こんな所では見かけないようなものが目に入った。

「何これ。」

* へこんだフライパンを てにいれた

随分と使い込まれているようだけど、どうしてこんな

モンスターの攻撃を弾くくらいは出来そうだ、一応持って行こう。

ついでに聞こうとKidの元まで向かい、まずはカメラの映像を見てもらう。

「へへ、よく撮れてる!」
「正直にブレてるって言ってくれて良いんだよ?」
「そんな事言うもんか、不慣れなカメラで頑張ってくれてありがとな!」

リップサービスなのか本心なのか、まったく僕を責めることはなかった。その笑顔が明るいだけに、ずっと気になることがある。

「あ、そうだ。見て、フライパン。」

年季の入ったフライパンを見せると、ほんの少しだけ、目を見開いたように見えた。

「どうしタ?」
「あ、いや、ごめん。ちょっとな。やっぱり。はぁ。」

明らかに動揺している。モヤモヤが形を得て確信へと変わっていく。そしてこれから先がますます不安になった。

「無理に話さないで良いよ、ごめん。」

一瞬の沈黙。

その時、近くで聞き慣れない音が鳴った。

きゅる、きゅる。

何だ、この音。

背後から聞こえてくる。

ぇぇんぁぁい……。」

呻き声のような声で皆んな何かいると分かったようだ。

「ちょっと、こっちに。」

Kidは僕らを後ろに匿う。

「え、ちょ、僕ハ。」
「取り敢えず俺の後ろに!」

せぇぇぇんぱぁぁぁい。」

現れたのは4本腕の何かだった。何かを象っている訳でもなく、歪で、形容し難い。

赤い目はBoogieを見つめている。

「え、何、僕何もしてなイ。」

「せぇぇぇんぱぁぁぁい!!!!」

「「「いやぁぁぁ4本腕お化けぇぇぇ!!!」」」
「うっひょー撮れ高!じゃなかった、お前みたいな頭おかしい奴はつまみ出さなきゃな!」

* CODE:YNDRが こくはくしにきた!


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