みずいこお題部第十一回より「見せて」【ネイビー(紺色)】
関西弁非ネイティブのため口調は勘頼り
@a_yuuzora
まだ夕方の気配を残す夏の夜、警戒区域からやや離れたところにいつもはない色とりどりの提灯に灯された光の群れがあった。今日はその地区で夏祭りがある。その祭りの喧噪は聞こえないくらいの場所で、任務中の生駒と水上は祭りを見ていた。
「ええなあ、お祭り」
「隠岐たち楽しんでますかね」
「楽しんでもらわな困るわ、せっかく譲ったんやし」
「こういう時、年長者は貧乏くじ引きがちっすねえ」
生駒隊で今日任務なのは二人だけだ。地域のイベント事がある人手不足のときは大抵年下優先というのがボーダー内での暗黙の了解で、下三人は各々の友達と一緒に夏祭りを楽しんでいる。弓場隊も同じようなシフト調整をしたのか、弓場・神田がシフトに入り、生駒・水上と合同でこの地区の任務を担当していて、四人分のオペを藤丸が担当している。弓場・神田ペアは二人の反対方面を警邏している。
「水上は祭り行く予定あった?」
「特には……いや、カゲが屋台の手伝いしにこないか言うてきました」
「かげうら屋台もやるんか。そっち側で祭り参加すんのも楽しそうやな」
「まあこっちのシフトあったんで断りましたけど」
楽しそうな光景を遠目に見ながらすごす夜の任務はひたすらに平穏だ。忙しければ祭りに意識を割かずに済むのに、暇だと無駄話にばかり花が咲く。星が瞬く空を眺めながらだらだらと喋っていると、やや遠い西側の空に鮮やかな光が散り、少し遅れて爆発音が聞こえた。
「あっち派手にやってんなぁ! あれ誰?」
「あー、よぉ見るとド変態軌道のバイパー入ってるんで多分出水っすね。何やってんねんあいつ。トリオン兵相手にあんなん要らんやろ」
「遊んでんのやろか」
「それか祭りに行きたいのにシフト入れられてヤケになってるか」
「ヤケであんな花火みたいなんできるんならホンマに天才なんやなあ……せや!」
「できませんよ」
「まだなんも言ってないやん!」
「顔が雄弁すぎるんすわ。俺にもやれ言いたいんでしょ」
「俺も花火見たいねん! やって!」
「トリオン貧者に期待するもんちゃうんすよ」
ぶつぶつ言いながら水上はキューブを出して分割し上空に投げる。細かいメテオラの弾は二十メートルほど上で炸裂し煙幕のように散った。
「うーん、地味!」
「だから言うたやないですか!」
「分割したのがあかんのとちゃう? 一塊で投げたらもーちょい花火みたいにならへん?」
「一塊……ついでに蔵っちに習いたての合成弾やってみます?」
「水上の合成弾初お披露目? ええやん、見せて見せて!」
「実戦で使うには程遠いっすけどね」
水上がキューブを二つ出して捏ねていると、先ほどの煙幕を見ていたのか藤丸から通信が入った。
『おーい生駒隊、何もないとこに弾打ち上げてなにやってんだ?』
「寂しい夜空を花火で彩ろう思て」
『いや本当に何やってんだおめーら……そろそろそっちにゲート開くぞ』
「えっホンマ?」
「あ、ちょっ、捏ねてるときにそんなん言われても困るて」
水上ができたての合成弾を適当に上空に放り投げて戦闘態勢に入ろうとした途端、ゲートが開きバムスターが顔を覗かせる。すると先ほど放った合成弾――誘導炸裂弾がバムスターの反応を検知し弧を描いて直撃した。分割なし一塊の弾は大きく炸裂し容易く装甲を穿つ。機能を喪失したバムスターは残骸の状態で地面にぼとりと落ちた。
ゲートはそれ以上開くことなく大人しく閉じて、二人の視界には群青の夜空だけが残った。
「初合成弾で初撃墜おめでとう……?」
「ありがとうございます……?」
「偶然にしてはなかなかおもろかったな」
「んふふ、そっすね」
「でも花火とはちゃうかったなあ」
「だからそもそも花火やないんですよ」
「本物の花火見たなってきたなあ」
「これから毎週どこかしらで花火大会やる季節やし、どれかは見に行けるんちゃいます?」
「じゃあ都合のつくとき一緒に行こうな」
「俺もっすか。まあ、喜んで」
「そんで見た花火の再現がんばろうな」
「だからキューブは花火玉やないし俺は花火職人ちゃうんすよ」