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執着が込められた蝙蝠から…

全体公開 反転ドラヒナ 9 6137文字
2024-07-01 20:06:12

ピクスク様のオールジャンルイベント『あきらめない』参加作品の3作目です。
反転ドラヒナで、七夕と人外故の認識の違いをテーマにしてみました。
時期的には、監視について少し経った頃で、反抗期の娘を持った疑似父娘の関係という感じ。ドラルクさんは、じわじわ自分の執着心を自覚しており、過保護とも取れる行動が目立ち始めた頃のつもりで書いています。
最後のページは、一気に時間軸が飛んで、心身ともに結ばれた夫婦となった時間軸になります。
他にも書いた反転ドラヒナのお話は、こちらから読めます→https://privatter.net/category/50931

Posted by @kw42431393

捏造設定はこんな感じです。それでもOKな方は、次へどうぞ。

 反転ドラルク:
 強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。数十年前の人間と吸血鬼の抗争の最中に、当時随一と言われた吸血鬼殺しの男性に右目を潰され、義眼を嵌めている。彼が病死したのを聞いてから、遊び相手がいないので、『療養中』と称して引き籠っていた。再び、反人間派の組織に戻る可能性あり、と派遣されてきた監視員のヒナイチの太刀筋に興味を持ち、居城に通う事を許している。意地を張りつつも寂しそうな彼女に庇護欲をそそられ、いつしか、一方的な独占欲、執着心、劣情へと移行していく。

 反転ヒナイチ:
 吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に、密かに父親像を求めている。ジョンには心を許して、内心を吐露する事もあるが、ドラルクに対しては、反抗期の娘の様な心境で、居丈高になったり、泣き出したりと、情緒不安定気味。

 反転ジョン:
 ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。主夫婦がヤンデレ同士なので、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。みっぴきのバランサー。

 反転ロナルド:
 全ての吸血鬼と友人になれる世界を作るのが夢の退治人。戦闘に参加しないが、お話合いという必殺技を使う。最終的にお嬢が反転してゴリラになるのは、内緒。両種族の共生の為には吸血鬼、吸対、退治人の連携が不可欠な為、仲介者として奔走している。この時期、海外の語学研修に出ていた為、合流が遅かった。



 「酷い雨だなどうしたものか。」
 突然降り出した集中豪雨に、私はシャッターが閉まった商店の軒先に逃げ込んだ。
 それまで、晴れていたので、傘も合羽も持っていない。
 制服はもとより、下着までしみ込んで気持ちが悪い。困ったな

 最近、急に天気が崩れる事があるヌ。ヌンのを貸してあげるヌ。持って行って、損はないヌ。

 「ありがとう、ジョン。でも、こんなに晴れているんだ。大丈夫だろう。」

 出がけに、ジョンと交わした台詞を思い出す。あれで、彼は私よりずっと年上なのだ。
 ちゃんと、聞いておくべきだったなそう考えたけれども、後の祭りだ。
 そんな経緯で雨宿りを始めて、1時間ぐらい経つ。止む気配どころか、台風の様に風も強くなり、遠くで雷まで鳴ってきた。
 これから、監視対象の居城まで行かなければならないのに。



 七夕の日は、雨が降りやすいというのはよく聞く話だ。
 1年に1度しか会えない織姫と彦星は、この日を逃すと来年に先送りとなる。
 七夕のお話そのものは、何千年も昔からのものだ。それなのに、何故、彼らは律儀に守っているのだろうか。
 我々人間だったら、船や飛行機の様な乗り物を作るなり、父である天帝にもう一度頼みそうなものだが
 
 『アハハ。それは、人間の考え方だ。しかし、その二人はいずれも人ではない。そんな事を、考えたりもしないのではないかね。』
 昨夜、七夕の話題になった時、ドラルクがそう言っていたのを思い出す。
 『そうだろうか。お互い仕事熱心だったのに、放り出すほど愛し合っていたのだろう?』
 思わず、ムッとした顔になる。普通は、離れ離れの相手を会えるのを、一日千秋の想いで待つものだと思う。
 私がそう思うのは、おそらく、幼い頃の父の記憶があるからだろう。
 私の父は忙しく、滅多に家に帰って来れなかった。だから、予定が狂って『また会えない』というのは、幼心に悲しいものだったから。
 しかも、雨が降って天の川が増水すれば、さらに一年先送りされるのだ。
 どうして、彼らは行動を起こそうとしないのだろう?
 『あらかじめ、父である天帝と、そういう取り決めで引き離されたのだ。ならば、それを破る方が、彼らにとってストレスとなる。お互い、寿命も長い。1年ぐらいの別離など、大した障害ですらないのだよ。』
 そうか吸血鬼であるドラルクからすれば、そういう考え方もあるのか。
 『人間共は離れている間に、心変わりしないか、二度と会えないのではないか等と心配するものだろう?だから、少しでも多く時間を取ろうとする。』
 『当たり前だ。実際、事故や病気だってない訳じゃない。少しぐらい
 道理を曲げてでも、あるいは、別の方法を探してでも私は、そういうものだと思う。
 『まあね。だから、強大な力と長い寿命を持ちながら我々を初めとした人ならざるモノ達は、人間共に押されているのだ。そして

 そこで、彼はニイと笑う。

 『何百年も続く、人間共と我々の抗争を終える鍵は、そこにある。儚い故に、その心も立場も移ろいやすい人間共が持つ狡さというか、柔軟さというか。束縛を断ち切ってでも、足掻こうとするとでも言えばいいのか。それが、人類勝利の鍵だ。そうは、思わんかね?』

 

 「ヒナイチくん、迎えに来たよ。」
 
 突然、降って来た声に我に返る。思わず、耳を疑った。
 肉体が頑健ではあるが、ドラルクはかなり濃い血を持った吸血鬼だ。
 それで死んでしまう事はないが、吸血鬼のサガとして、流れ水は苦手のはずだ。台風レベルのこの暴風雨の中、どうやってここに来たのだろう。
 「ウフフまぁ、決して楽しいものではないが。さあ、こちらにおいで。君に風邪を引かれては困るのだ。」
 そう言うと、彼は腕を引いて、私を軒下から引っ張り出した。どういう訳だか、雨に濡れる事はない。
 この状態では、傘さえ役に立つとは思えないがそう思っていると、ドラルクは得意気に、頭上に視線を向けた。私も、その視線を追う。
 「あこれは?」
 視線を追った先には、氷の壁が浮いていた。それが、周りを包み込む様にしている。
 雨音でよく聞こえなかったが、彼の黒い義眼が、チチチと歪な音を立てているのだ。
 「そうか。雨を凍らせて、周辺を覆っているのか。」
 「ご名答。この義眼は師匠に作って貰ったものだが、なかなか便利だろう?気温が高いので、この時期のコスパは悪いがね。」
 そう言って、彼はどこからかバスタオルを出して、私に巻き付ける。その上で、自分のマントを羽織らせてくれた。
 濡れているのもあるが、冷気で氷のドームを作っているのだ。晴れていれば、クーラーが効いた部屋にいる様に快適なのだろうが、ぐっしょり濡れている今は、寒気を感じる。
 「う、うむ。わざわざ、すまんなわ!?何をする!?」
 「ちゃんと、髪も拭き給え。見た目によらず、ズボラな子だ。」
 言葉とは裏腹に、美容師の様に丁寧で繊細に扱ってくれる、剣ダコのある手なんだろう。
 嫌な気分ではない見上げると、時々私をざわつかせる、子供をあやす父親の様な笑いを浮かべていた。
 
 『にいさん、おふろおわったぞ!アイスたべていいか?』
 『あ~、ヒナイチ。待て、待て。ビシャビシャじゃないか。』
 
 いつも、幼い私をこうしてくれたのは、兄だった。たまにしか会えない父にも、そうして欲しかったそういう自覚はある。
 父とドラルクは、全く似ていない。なのに、置いてきたものを、何故彼に見出すのだろう
 「うん?どうしたかね?」
 「なんでもない。も、もういいったら!自分でやるそ、それより。」
 ジョンには少なからず漏らしたが、時々湧いてくるこの気持ちを、こいつに知られる訳にはいかない。
 認める訳には、いかない。

 私達は、監視員とその対象だ。しかも、相手は、いつ市民に危害を加えるか分からない、危険度Aの吸血鬼なんだ。

 



 「何故、私がここにいると分かったのだ?雨に降りこまれて、遅れるとは言ったが場所までは言ってないぞ。」
 私としては、心の動揺を誤魔化したくて、咄嗟に聞いただけだった。それなのに

 キキッ!!

 彼の義眼が、鋭い音を立てる。
 「ドラルク?」
 その音を聞いた瞬間、さっきまで胸にあった、温かい気持ちは霧散していく。
 彼の義眼は、本人の精神と連動して、様々な反応を示す。あの音は
 
 「私とて、伊達に長くこの街に住んではいない。だいたいの察しはつくとも。」

 それに、さっきまでの優しい顔は、能面の様な顔に変わっている。
 さっきの音と、この表情都合が悪い事を聞かれて、平静を装おうとしている。そういう時にする癖だと、彼の監視についている間に、私は気が付いていた。
 「そうとは、思えないが。」
 知らず、疑念が籠った声が出る。
 外に人や車が走っていれば、通話中の音から察しもつこう。でも、その時点で誰も外にいない。聞こえるのは、雨音だけのはず
 「。」
 「おい!何を隠している!?」

 やはり、気を許してはいけなかった。
 監視員に隠したい、何かがあるそう思うと、知らず荒げた声が出る。
 と、彼の視線が私の顔から下に降りる。その視線の先を辿る私の胸元を?
 「なバカ!このスケベ!!」
 慌てて、マントを掻き合わせて後ろを向く。シャツに下着が透けていた。
 こういうのには、淡白な吸血鬼だと思っていたのに。
 「おい!じろじろ見るなんて、失礼にも程が。」
 「気に入ってくれているじゃないか。そのキーホルダー。」
 「え。あ、あぁ。これかまあ、悪くはない。」
 冷静なドラルクの声に、赤面する。自意識過剰な自分が、恥ずかしくて顔を上げられない。
 「クスクス、何だと思ったのやら。まぁ、いい。これからも、その蝙蝠を大事にしてやってくれ給え。」
 「う、うるさい。」
 改めて、胸ポケットから顔を出しているキーホルダーを摘まみ出す。白い蝙蝠をモチーフにした、小さなぬいぐるみだ。
 右目に傷があってどうやら、蝙蝠に変身した時の自分がこの様な姿をしているらしい。いつだったか、気紛れだと言って、私に縫ってくれたキーホルダーだった。
 ドラルクも他の吸血鬼達同様、料理の他に、裁縫が趣味なのも知っている。断る理由もないし、丁度、任務中にキーホルダーが壊れてしまったので、付けていたものただ、それだけだ。
 何故、今ここで、キーホルダーの事を気にするのだろう。貰った当初、調べてみたが、発信機、盗聴器の類は仕込まれていないはず

 「クククさあ、帰ろうじゃないか。この大雨だが、今日は、七夕だ。ちらし寿司を用意してあるよ。いい海鮮が手に入ったのでね君の好物だろう?」
 そう言って、私の肩に手をかけて、引き寄せようとする。その手を払いのけると、私は、彼を睨み上げた。
 雨は、さらに強くなっている。ここで言い合いをしても仕方がないただ、それだけだ。ちらし寿司に釣られた訳でもないぞ。

 「気安く触るな。私だって、伊達にお前の監視員に選ばれた訳ではない。つまらない事をしたら、ただではおかん。」 
 我々吸血鬼対策課の存在意義は、『共生の為の秩序』だ。
 しかし、相反した世界を生きる我々は、隔たりが大き過ぎる。
 現在においても、中立派、親人間派の吸血鬼達とでさえ、認識の違いで諍いが起こる事は多々あるのだ。反人間派に属していた、この吸血鬼なら、猶更だ。

 だから気のせいだ。迎えに来てくれた時、とても嬉しい気持ちがしたのは。
 温かい何かがあった気がしたのはただの夢だ。私の甘えだ。



 「それにも、染み込ませているのか?ドラルク。」
 「当たり前だとも。迷子アプリよりも、確実だ。私の血を受け入れればいずれ、君にも分かる様になるだろう。」
 私達にも、紆余屈折あってロナルドと出会い、私とドラルクは、『両種族の抗争が終結し、共生の時代が来た時は、血を受け入れて永遠に共にいる』という契約を交わした現在彼も当時と比べるとずいぶん変わったが、そこに関しては変わらないらしい。

 ため息をついて、胸ポケットから頭を出している、蝙蝠のキーホルダーを撫でる。
 あれから、15年近くの時間が経った。
 胸ポケットに入れていたこの蝙蝠は、何度も手直しをされて、見た目は当時とさほど変わらない。
 変わったのは、その鎖に連なっているのは、寮の鍵ではなく、この居城の合鍵だという事。
 私が今も彼がしている事に対して、怒りではなく、嬉しいと感じている事。
 今、目の前で彼が裁縫に使っているその糸には

 「お鉄の匂い。お糸に、ドラルクさんの血を染み込ませてありますのね。」
 「うむ。そうしておけば、私が君の仕事に同行して、出払っていても多少の事は分かるし。私の気配を纏わせておけば、多少のお守りにはなる。」
 その答えを聞いて、紅茶を飲んでいたロナルドが、苦笑いをする。
 
 あの時いや、それ以降も何度となく。
 何故か、彼は私がいる場所に迷いなくやって来たり、下等吸血鬼が私を警戒する素振りを見せたりと妙な事があったのだ。それがこの蝙蝠のキーホルダーに、染み込んでいた彼の血の仕業であった事を知ったのは、いつの事だったか
 ならば、当時、問い詰められた時、訳を言わずに誤魔化すはずだ。
 心身共に結ばれ、人ならざる者達のサガを理解しつつある今だからこそ、嬉しいと感じるのであって当時の私が聞いたら気持ち悪がって、捨ててしまったに違いない。

 「まったく過保護な奴だ。今縫っているベビー服にも、自分の血を染み込ませようと、言うのだからな。」
 「ヌ~。」
 「まぁ、およろしいですわ。竜子公様も、その様に育てられたと聞きますわ。ドラルクさんも、もうすぐそうなるのでしょうね。」
 「お父様みたいに、過保護それは、嫌過ぎる。いいや、仕方ないだろう。これから生まれて来るその子は、狭間の子だ。しかも、15年経って、抗争も落ち着いてきて、やっと授かった息子だとも。何に代えても守ってやりたいし。か、体の一部だけでも、少しでも長くいたいじゃないか。」
 必死に抗議をするドラルクから、大きくなった自分のお腹に、視線を移す。さっきから、ご機嫌らしい。
 この賑やかな声が、お前にも聞こえているのだろうか。

 「お前も楽しみだよな?その服を着た姿を、私達に早く見せてくれ。」
 望まれて生まれて来る、竜と吸血鬼殺しの血を受け継いだ、私達の赤ちゃんはおそらく。
 「ヒナイチくんも、そう思わんかね?」
 「さあな。」

 自分の所有物に固執する、人ならざる者の執着ではなく愛情が籠った糸で縫われた服を纏って、育っていくのだろうから。
 
 
  
 
 
 
 


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