ついったとおなじ。
@azisaitsumuri
ほら、終わりましたよ。
言って最後の切り落としを軽く払って遣る。
目の前の鏡台に映る自分をためつすがめつしているミストグリーンとやがて目が合う。
「これがおまえの好みか?」
はあ?
「別に。暑苦しいからですよ!」
髪を切って遣った理由なんて。
そう言えば確かにこの椅子に座らせる前は、そんな巫山戯たことをぬかしていたな、この男は、すっかりこちらの頭からは彼方上空に打ち上げられていた。
そんな、頭の中迄は涼しくならなかったらしい男は放って、道具の片付けに移る。
それに倣って椅子から立ち上がったお客は、自身から逸れた髪を払い落としながら箒を取り出した。
各々後片付けをすませ、風で髪が散らないように閉めていた窓を開けて、空気を取り入れる。
初夏の空気だ。
風が入って来た。
短くして遣った髪が、昨日とは違ったそよぎ方をする。
風を見て光を反射するミストグリーンに近寄り、切る前から晒されていた額に、音を立てて口付ける。
「サービス過多。」
まんまると驚いた瞳が言う。
「ああ、すみません。わたしの好みだったもので。」
白々しいと、赤い頬に睨まれる。大人しく享受しろ。