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夕立とお迎え

全体公開 刑事探索者 18 21 2406文字
2024-07-04 21:52:53

刑事探索者組の前でキスするイアアキ。ネタバレは特にありません。

夕立とお迎え

 合同捜査を終え、寄せ集められた刑事たちは報告書を書き終えた者から順次解散という運びになった。
 しかしこのいつものメンバー、報告書が得意な人間の方が少数派だ。皆優秀な刑事であることには違いないのだが、どちらかといえば現場向きというか戦闘向きな者が多い。報告の整合性を考えると見捨てるわけにもいかないため、先に書き終えたメンバーが帰らずそのまま他のメンバーの手助けに回り、結果として帰るタイミングは全員一緒となった。
「本当に助かったぜ、特に変と三十一」
 背伸びをしてからしみじみと言ったのはアキラで、報告書は英語での提出となっている。本来の国籍に配慮された処置のはずだが、その所為で手伝える人間が限られてしまった。
 任務の関係で国外を飛び回っている帰代と、生来の頭の良さとデバイスの補助が強い神無の二人でサポートし、何とか定時には書き上げることができた。
「次は自分で書いてくれ」
「それか、いっそ日本語にしてくれた方が他の人たちも手伝えるから楽だと思う」
 溜息を吐く帰代と苦笑する神無に言われ、アキラは明後日の方向を見ながら「あ~まあ、考えとく」と濁す。期待できそうにない答えに向けられた左右からの視線に気づかないふりをしつつ、わかりやすい誤魔化しの口笛を吹いた。
「アキラさんあなたFBIでしょう!? 報告書くらいちゃちゃっと書いてください! こっちはもう手一杯なんですから!」
 聖と二人がかりで的中の報告書を何とか仕上げた廉士が半泣きで叫ぶ。その隣ではやりきった表情の的中が「吾輩、頑張った」と胸を張っていた。
「なんかもう、俺たちが書いたの清書だけさせた方が早い気がするけど、単独行動している時間があるとそうもいかないよね……
 凝った首を鳴らしながら力なく笑う聖は報告書が得意なわけではないが、基本何でも卒なくこなすため的中のサポートに割り振られた。流石にセクハラする余裕もなかった様子で、純粋に疲れているように見える。
「いっそ完全に誰かと一緒に行動させるか……いや、基本的に二人以上で行動してるはずなのに、いつの間にか単独行動してるんだったな」
 解決策を検討した上で、帰代はそれを自己完結で却下する。それこそ公安の潜入捜査官でもなければ刑事が単独で事件にあたることなどない。そのはずだ。
「対策はまた後日考えよう。とにかく、今日はもう早く帰って――――
 聖の言葉は突然の雨音に掻き消された。
 全員が窓の方へ視線を向ければ、いつの間にか真っ黒い雲に覆われた空から大粒の雨が降っている。まさにバケツをひっくり返したような有様で、視界が白く煙って見える程だ。
「夕立か」
「吾輩、傘を持ってきていない」
 今日の天気予報は一日晴れのはずだったので、的中以外も持っていて精々折り畳み傘だ。この激しい雨では心許ない。天気予報は、どうやら夕立という名のゲリラ豪雨は読めなかったらしい。
「まじかぁ……
 疲労だけでなくどこか顔色を悪くしたアキラがげんなりと項垂れた。水が苦手という自己申告は聞いていたので、一同気の毒そうな視線を向ける。
「夕立なら時期に止むはずですから」
「この後予定があるから、あんまり長くは待てないんだけどな」
「タクシー呼ぶか?」
 庁舎の玄関先でそんなやり取りをしていると、五月蠅い雨音に紛れてレインブーツが水たまりを踏む音が近づいて来た。
 先に気付いた聖が「ねえ、アキラちゃん。あれ知り合いじゃない?」と声をかける。
「え?」
 アキラが項垂れていた顔を上げれば、豪雨を黒い大きな雨傘でしのぎながら歩いて来た人影が、丁度玄関に辿り着くところだった。
 傘が持ち上がり、銀の髪に眼鏡の見慣れた顔が現れる。アキラの姿を見ると、口元がほんの微かに綻んだ。片手に持っている畳まれた傘を、アキラに向かって差し出す。
「アキラ、傘が必要だろう? 迎えに来た」
「イアン……!」
 小走りに駆け寄ったアキラがイアンに飛びつき、感極まった様子で首に手を回し顔を寄せる。
 そして、そのまま熱烈な口づけを見舞った。
 目撃したメンバーから「わ~お」だの「おい、場所を考えろ!」だの声が上がる。免疫のない神無などは赤い顔を両手で覆い、しかし指の間からしっかりその光景を見ていた。
 背後の声は意に介さず、たっぷり数秒間口づけを交わしたアキラが目を輝かせる。
「サンキュー、ダーリン。愛してるぜ」
「ああ、俺もだ。一緒に帰ろう」
 渡された傘を広げ、アキラが後ろを振り返った。
「手伝ってくれてありがとうな! じゃあ、また何かあったらよろしく頼む」
 照れもせずに手を振り、そのままイアンと並んで雨の向こうへと去って行く。
 その姿を見送った神無が「あ、アメリカ人って感じ……」と呟いたのを機に場が騒がしくなる。
「見た目日本人だけど、ああいうの見ちゃうとやっぱり向こうの人って感じするね」
「だ、ダーリンって仰ってましたけど、お付き合いされているんでしょうか……
「チューしてた」
「的中は今見たこと忘れておけ。まったく、付き合っていようがなかろうが構わないが、庁舎の玄関でやることじゃないだろう」
 少しだけ勢いを弱めつつも未だ降り続く雨の中、玄関先では賑やかな話し声が響いていた。

 後日この時のキスを話題にされ、感動のあまり勢い余った自身の行動に時間差で顔を赤くするアキラなのだった。


(あとがき)
 刑事探索者組の前でキスするCPが書きたくなって、アンケートとった結果同率一位になったイアアキです。ちなみに喋って無いキャラも場にはいるつもりですが、未履修なので台詞書く自信がないだけです。
 お迎えに来てくれたダーリンに感激しちゃったアキラさん。この後の用事は実はイアンとのデートなので、このまま一緒に過ごしたことでしょう。


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