土方さんと沖田くんが架空のクソ映画を一緒に見る話
※出てくる映画はすべて捏造、架空のものです
@bbbcde519
「土方さんいやすか、いやすね」
他ならぬ土方相手に入室の許可など取らない沖田はスパリと襖を開け、土方が机に向かっていることを確認して満足そうな顔をする。土方も慣れたもので「勝手に開けるな、なんだってんだよ」と返した。
「これから木ローでクソ映画やるんでィ。見やしょう」
「……は?」
沖田が言うには公開当初から気になっていた映画ではあるのだという。ただ忙しさに取り紛れて映画館には行けなかった。少し前に隊士の一人がDVDを借りてきて上映会をしたがそれにも仕事があって参加できなかったから、ロードショーは是非見たいのだという。参加しなかったの間違いではないかと土方はちらりと思った。最年少組員兼筆頭隊長である沖田は、年上の平隊士の集まりには積極的に加わらない。内外から鬼と呼ばれる自分はともかく沖田が参加したいと一言言えば平隊士は両手を挙げて喜ぶと土方は思うのだが、沖田は気を遣われるのを嫌っているらしい。そこには若干の見えない距離がある。
「で、隊士どもが言うことにはそれが結構なクソ映画らしいんでさァ」
「いやそれわかっててなんで見んのォ!?」
「公開当初気になってた気持ちを成仏させてえんで」
「面白くねえって分かってんだったらそれで成仏しろよ。フツーに面白い映画を見て盛り上がればいいだろ。そっちに誘えよ」
「面白い映画を土方さんなんかと見たくねえや。つまんねェ映画をくさしながら見るのがいいんでィ」
近藤ではなく自分を誘ったのは思い切り悪口を言いたいからかと土方は合点した。近藤と映画の批評をしようとは土方も思わない。近藤にはフィクションをわざわざ見てこき下ろすなんて発想がない。つまらなかったら寝てしまい、すっかり終わった後起き出してなんか寝ちまったなあと笑うだろう。
「ほら、机の上片付けておいてくだせえよ、十時まであと五分しかねえや」
なんだかんだと言いながらも珍しい誘いを断る気がなかった土方は広げていた書類をまとめて部屋の隅に片付け、座布団を出してやった。いつのまにか沖田は四合瓶とポテチ、紙コップを持ってきて机に配置している。
映画が始まる。着物姿の男が宇宙船に乗り込み、とある大富豪の私有星に到着する。男は星の唯一の住人である富豪の城に招かれていた。城が映ると、ある程度は我慢しようと思っていた土方は思わず突っ込んだ。
「いや明らかに江戸城じゃねーか。もっと異星感出せよ」
「よく見てくだせェ土方さん、訴訟対策にか姑息にも屋根の色だけ変えてますぜ。ていうかあんた静かすぎでさ、クソ映画は声出して突っ込んでなんぼでィ」
城には老境に差し掛かった孤独な富豪と怪しげな20人の招待客。土方と沖田の声が重なる。
「「多いわ」」
乗ってきた船は爆破され宇宙の塵になってしまい(「なんでここだけCGやたら豪華なんだよ」「スターウォーズみたいですねェ」)定期的に来る船も一週間は来ない。ネット回線も電話線も切られてしまっている。(「星に誰もいねえのに電話線があるか」)全員が星に閉じ込められてしまったのだ。(「スケールの大きいクローズドサークルだなァ」)
主役の男が豪奢な天蓋付きベッドに入るシーンで(「外見は江戸城中身は天人風かよ」「クリームたい焼きみたいでさ」「うまそうじゃねーか」)土方は五本目の煙草に火をつける。なんとなく違和感があって横を見ると、なぜか沖田と視線が合った。え、と思った時にはふいと目を逸らされ、彼の透きとおった氷の眼は長い前髪に隠されてしまう。
こいつなんで映画見ずになんで俺の顔見てんだ、と思う。
「……なんだよ」
「いやね、土方さんがどんな顔してコレ見てんのか気になって」
「どんな顔だったよ」
「いつもとおんなじ、眉間に皺寄せた脇役俳優顔でさァ」
「あんだと」
ふと気がつくと画面の向こうは朝になっていた。朝食の席には富豪と20人の招待客が一人残らず揃っている。
「いやこの流れで連続殺人事件始まらねーのかよ!」
珍しく沖田がふは、と声を出して笑った。
映画は後半に恐竜が三体出てきて城を踏み潰して終わった。
エンドロールが流れる中、土方は残ったポテチを齧りながら言った。
「アレだな、タイトルが一番良かったな」
「関係者が聞いたらなかなか心に来そうな良いコメントどうも。恐竜が三体いたのも考えたデザイン全部使いたかった感があって俺ァ嫌いじゃなかった」
「バカの発想じゃねーか。しかしツッコミどころが多くて疲れたぜ」
「はいお疲れ様でした。まあまあ楽しめましたぜ」
沖田は残りのポテチを袋を傾けて自分の口に流し込むと、立ち上がって紙コップと共にゴミ箱に捨て、四合瓶を持ち、その上で土方に向き直る。
「ねえ土方さん」
「うん?」
「俺この映画見るの二度目でさ」
「は?」
「ホントは映画館で見たんでィ」
沖田は土方の反応も見ずにさっさと部屋を出ていく。残された土方は口を開けて沖田の背中を見ていた。
「……は?」
襖が閉まる。
TVの向こうのアナウンサーが24時を告げた。
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後書き
沖田くんはアグレッシブなクソ映画見た時に土方さんがコレ見てなんて悪態つくか聞きたくなってるといいなという萌えです。
沖田くんは土方さんを映画を見て一緒に悪口言う相手としては最適だと認識してるといい。自分の時間も使って土方さんにクソ映画見させるという嫌がらせをする沖田くんはかわいい。
創作物を見てそれを見た時の相手の反応が知りたいのは愛の一種だよなあと思ってます。