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強制プライベート介入

全体公開 銀魂二次創作 59 2317文字
2024-07-14 18:51:56

隊士のプライベートに口出さない主義の土方と並の隊士のように扱われるのが許せない沖田の話
※沖田がうららに首輪つけて散歩しているところを見られて彼女ができたと噂になります

Posted by @bbbcde519

 沖田総悟に女ができた、という噂は屯所の中を一瞬で駆け巡った。
 隊内最年少にして一番隊隊長である沖田は真選組内ではある種の特権的な立場にある。この場合の特権とは偉さや権力ではない。沖田に率直にものを訊ける人間が少ないという意味だ。彼の不興を買えばバズーカが飛んできたり酷い目に遭わされると思い込んでいる隊士は多い。実は沖田は空気の読めるサディストなので案外下のものには手加減しているのだが、おそらく伝わっていない。同格で年上の隊長たちだって沖田には遠慮がある。
 沖田は自分を滅法素直な人間だと思っている。だから近藤に「お前に彼女ができたって噂になってるぞ、本当か?」と聞かれた時は正直に答えた。
「噂の心当たりはありますが彼女じゃねえです」
「え、何それ。まさかお前ふしだらな関係なんじゃ」
「いやぜんぜん、俺ァ至って健全ですぜ。ほら、新八くんと文通してた女の妹いたでしょ、あっちも替え玉してた。物見遊山で江戸に来るって連絡が来たんでこの前」
「デートしたの?」
「会うこともねーかと思いやしたが、土方さんのせいでねーちゃん飛び降りさせちまったし、仕方ねえから一回くらいと思って首輪つけて江戸城の周りを一周散歩しやした」
「なげーよあそこ5kmはあるけどォ!?」
「調教の快感が忘れられないって言うんでィ。まあもう会いませんよ」
「えー首輪はどうかと思うがかわいい子だったのにもったいねえなあ」
 近藤と話しながら沖田はあの時のことを思い出していた。うららと歩いている時、パトカーに乗っている土方とすれ違ったのだ。
 あの勘のいい男ならば絶対に沖田に気がついたと沖田は確信している。別に何がなくても容姿がいいせいか腰のもののせいか沖田は目立つし、女に首輪をつけて歩いていれば尚のことだ。現にパトカーを運転していた隊士は沖田を見て驚いた顔をしていて、だから噂の元凶は間違いなく彼だろう。だというのに助手席の土方はこちらを見ようともしなかった。沖田とは反対側の歩道に顔を傾けて煙草を燻らせているだけだった。
 その無関心さが癪に障った。忘れていたのに思い出してしまった。

 近藤に正直に話したというのに、噂はなかなか消えなかった。少し考えてみれば当たり前で、近藤は平隊士に噂を広める立場にはない。噂が噂を呼んで、最近では沖田が吉原の遊女に惚れられて店外デートをしょっちゅうしているということになっていた。流石に気になったのか、神山と山崎が立て続けに突っ込んで聞いてきた。事実無根だ否定しとけと真剣で脅したがそれでもなんとなく煙は残っているようで、沖田はむかついていた。隊士の好奇の目がこんなに鬱陶しいとは思っていなかった。
 市中見回りで並んで歩いている時、土方にふとこぼしてしまったのはそのむかつきが胸に巣食っていたせいだと沖田は思っている。
「あんたは存外何も言いやせんね」
「あ? 何がだよ」
「俺の交友関係に。あんたも知ってんでしょあのしょうもない噂」
 言ってしまってからダサいなあと自分で思ったが、土方は表情を崩さず言った。
「俺ァ隊士のプライベートには口出さねえようにしてるんだ」
 隊士のプライベート、と沖田は口の中で言葉を転がした。一度自分の舌で反芻し、土方の言っていることをようやく理解する。土方の中では、隊士のプライベートとこの沖田のプライベートはほとんど同義なのだ。だから介入しない。何も聞かない。
 隙あらば殺そうとしてくる沖田のことを他の隊士と同じように扱って線を引き、涼しい顔をしていられるのだ、この男は。
 灼けつくような怒りが沖田の肚の底で沸いた。目の前が赤く染まりかけたが親指の爪を掌に立ててなんとか抑え込む。沖田の激情に気づきもせず、土方は「なんだ、根掘り葉掘り聞かれてえのか。先に山崎に聞かれてキレてたらしいじゃねえか」と澄ました顔で言った。
「いいやちっとも」
「じゃあいいじゃねえか」
 よくねえよ、と沖田は心中で吐き捨てた。



「さっすが土方さん、無事帰って来れましたねィ」
 三日間の監禁生活を終え沖田に遅れること五時間、帰ってきた土方を沖田は屯所の裏口で出迎えた。
 沖田はこの上なく上機嫌だった。監禁生活も楽しめたし、屯所に帰ってきた土方の情けない姿さえも見られた。監禁場所のそばにキー付きの車を置いてきたから帰還の時間も当てられたしぼろぼろの服を隊士に見られるのを嫌い裏から直接自分の部屋に行くだろうという読みも良かった。
 精根尽き果ててやっと立っていると言った風情の土方は沖田を見上げて口を開き、一番に何を言うべきか考えている。しばらく待って、土方は腹から絞り出すように呟いた。
「おいヒロくんって誰なんだよ」
 沖田は歓喜した。とても笑みを抑えていられなかった。沖田を並の隊士と同列に扱っていたこの男が、ようやく自分を見た気がした。
「やっと訊きましたね」
「あ?」
「なんでもねえです」
 沖田は土方に笑いかけた。
「風呂沸いてやすぜ。それとも先に飯にしやすか」
「お前もっと他にいうことあるだろ……



後書き

 六角篇で土方さんがプライベート云々言ってるのを聞いて、これ沖田くんが聞いたらどう思うかなと思って書いた話です。地愚蔵篇前日譚にしました。
 知己で弟分の沖田にも一人の隊士として踏み込みすぎないのが良いと信じている土方さんと、おそらく踏み込まれたら苛つくのに並の隊士の扱いを受けるともっと怒る沖田くんは全く噛み合ってなくて切なくもかわいい。
 土方と沖田は本当にどうにもならないところが響き合ってかわいいという萌えをずっところころ転がしています。


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