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イケメンがイケメンをイケメンと言う

全体公開 銀魂二次創作 36 2046文字
2024-07-23 23:18:30

土方が全く出てこないけど沖土/土方は物凄く顔がいいと認識している沖田の話/近藤と沖田が話している

Posted by @bbbcde519


 近藤がひとつ欠伸をした。
 珍しいなと沖田は思う。平素の近藤は意外と武士らしさにこだわる男で隊士たちの前では欠伸など溢さない。とはいえ部屋には自分と近藤しかいないし、今日は二人とも一日中非番である。いつもより遅い朝飯兼昼飯の後、茶を淹れてぼんやりしながら晩飯の相談をしていたところだった。沖田の誕生日が近いから、今日は近藤が奢ってくれることになっている。
 なんにせよ近藤が自分の前で気を抜いてくれているのは喜ばしい。沖田は尋ねた。
「近藤さん、昨日は深酒でもしたんですかィ」
「それほどでもないけどな、すまいる行ったんだよ。閉店近くまでいたらトシが迎えにきてくれてなあ」
「世間ではそれを深酒って言いやすぜ」
 それにしてもあの男はまめだ、と茶を啜りながら沖田は思う。土方は近藤がスナックすまいるに行って、しかも閉店時間近くまで帰ってこないと気付くと手ずから迎えに行くことがある。放っておくと身ぐるみ剥がされて下着一枚で帰ってきたりするからだろう。沖田にも一応局長や真選組の体面を慮る心はあり、例えば志村家でサボっている近藤を見つけるのは自分か土方の役目だとは思っている。平隊士に探しに行かせれば流石に局長の面子が立たないからだ。だが近藤の夜遊びまで把握してすまいるに引き取りに行こうとは思わない。齢十八の沖田が閉店間際のスナックに顔を出すのはややまずいという事情もあるのだが、年齢ではなく気の回り方の問題である。まったくご苦労なことだ。他人事のように考えていると、ああそうだと思い出したように近藤は言った。
「トシが来たから女の子たちが盛り上がってな。ちょっとだけでいいから飲もうってみんなに誘われたのにあいつってば振り切って一滴も飲まねえんだぜ。ほんと固えよなあ」
 沖田は女たちに囲まれて厭そうな顔をしている土方を思い浮かべてにやりとした。
「それにしてもトシはなんでああもモテるのか、昔っからだが……ほんと、店のほとんどの女の子に取り囲まれて……お妙さんは俺の財布をチェックしてくれてたからトシの方にはいかなかったけど。一人の子なんか店外で会おうって本気で言い寄ってて大変だったんだぜ」
「罪作りな野郎でィ」
「まったくだ。しかし同じ男としては羨ましすぎてな……男を魅了する夜の蝶のお姉さん方を揃って骨抜きにしちまうたあね。俺ァちょっと虚しくなっちまったよ」
 近藤は羽織の上からでもわかる隆起した肩をしょぼしょぼと落として机に突っ伏した。どうやら本気で凹んでいるようで、ふむと沖田は首を傾げた。沖田にとって土方が女にモテるのは自明の理であってそれ以上でも以下でもない。ただ近藤にとっては違うのだろう。慰めようと思って口を開く。
「あのね近藤さん、これを言うのはまあ癪ですが、土方さんはちょっとそこらで見ないくらいの顔ですぜ。そんな奴と比べちゃダメでさあ」
 近藤が露骨に驚いた顔をして身を起こし、「お前がトシを褒めるなんて珍しいな」と言った。
「心外でさァ、俺ァ事実は事実として認識してやすぜ。土方さん喜ばすのは嫌だが、言ったって喜びゃしねえから別に構やしません」
「まああいつはモテても嬉しそうじゃないしなあ」
 近藤が意外そうにしているのが不思議だった。沖田は土方の顔が良いことなどずっと分かっている。武州にいた頃は毎日暴れていたくせに付け文を沢山もらっていて、江戸に来てからも幕臣の威光込みとはいえ大勢の女性に言い寄られているのだ、分かっていない方がおかしい。土方当人だって重々承知しているだろう。だけど顔の良さを誇るでもなく恬然としているからこそ気に入らないのだ。もう少し己の容姿を鼻にかける素振りでも見せたら可愛げがあったのに。もしくは数多の女に鼻の下を伸ばしていれば、姉を振った男を不実だともっともっと憎めた。
 だが、もし土方が男前ではなかったら、自分はこんなにも執着してないだろうと沖田は知っている。男前が歪む瞬間によろこびを見出していると気付いたのはいつだろう。とても近藤には言えないけれど。
 沖田は誤魔化すように肩をすくめた。
「土方さんの可哀想なところは顔の良さを持ち腐れてるところなんで。顔を褒めれば褒めるほど厭そうな顔するでしょ。面白くってね」
「屈折してんねお前」
「ま、なんにせよ近藤さんはむさいゴリラ属の中では見られる方だと思いやす。元気出してくだせェ」
「俺ゴリラ界のイケメンなの?」
 近藤が声を出して笑い、風がそよいだ。爽やかさに目を細めながら、沖田は「近藤さんはいい顔してますぜ」と言って笑った。




後書き

土方を男前だと思っている沖田の話でした。
土方さんは己の顔に無頓着なので男前って言われても喜ばなさそう。それを知ってるので沖田くんは男前だと口に出せるみたいなところがすきですね。
沖田くんが土方さんにいろんな感情を抱えすぎていて、憎みきることも惹かれることもできず宙ぶらりんになっているところに、沖土を見出しています。


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