@azisaitsumuri
招かれた部屋は、既に饗宴の如く蓄音機が歌い、薄暗い中で香り高い蝋燭が淫猥に溶け出していた。誰への饗宴か、当然おれではない。
「待ち切れなかったんですからね?」
早く入って、鍵を掛けてしまって。淫猥に光る左手で招くこの男自身へだ。
「さあ、踊って歌わせてあげます。」
だからおまえも踊って歌って?と引き寄せて来る力に逃す気はないように見える。
「……それは、おまえ一人の方が映えるのでは?」
込められた力を認めながらもそう告げる。
首を傾げる相手からは、ことが進まない苛立ちすら感じる。急かすだけある。
「今日はおまえとする気分なんです。」
小さな光なのに男の妖しさを大きくするものだから、それを不思議に思いながらもそれなら仕方がないと、誘惑の手を握り返した。