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魔女達の執念が、実るまで

全体公開 人魚姫ドラヒナ 4 8249文字
2024-07-27 06:15:51

続きもので書いている人魚姫ドラヒナのお話です。
前半と後半で温度差があります。ご注意下さい。職業が魔女で、一番見た目が女性的なのに、結構男らしいプロポーズしてますね。
このお話から、さらに時間が経っております →消えゆく炎と、灯る希望(https://privatter.net/p/11004039)
人魚の肉を食い尽くし、病状が進んだ魔女は、深海でもほとんどベッドから動けなくなります。
それでも、契約を完遂し、治療薬を作る事は諦めていないという魔女に対し、新米魔女のヒナイチ姫は、親友夫妻の手を借りて、契約に縛られる魔女を出し抜こうと画策します。
衰弱していく息子の前で、葛藤するミツクリザメの竜子公のシーンを追加しました。
2024/02/23に上げました。

Posted by @kw42431393

 「こんにちは。ヒナイチ姫、これを魔女様に。」
 「あぁ、坊やか。今回もありがとう。」 
 「魔女様に、『元気になって』って、お伝え下さい。」

 玄関にいたハダカイワシの子供は、捕れたてのサクラエビを渡すと、ペコリと頭を下げる。
 そして、軽やかに、身を翻して帰って行った。
 聞けば、もっと小さな頃に定置網にかかって、鱗が剥け、体の一部も裂けてしまい、両親にここに担ぎ込まれたのだという。
 魔女ドラルクの手当によって、命を取り留めた彼はその対価として、週に一度、捕った獲物の一部を持ってくるという契約を結んでいる。
 今回は、サクラエビを持ってきてくれたという訳だ。

 「なぁ、魔女。契約、契約って言ってるけどお前は、やっぱり優しい奴だよな。」
 遠ざかっていく、子供の姿を見送る。
 暗闇に慣れた私の視線の先で、魔女の手によって、移植された義鱗が光っていた。



 『ヒナイチ姫。私達のやっている事は、慈善事業ではないのだよ。対価は、ちゃんと貰わなければいけない。そして、それは、相手の支払い能力と相談して決める事が、大切なのだ。』
 魔女ドラルクの監視、護衛、助手深海の魔女の一番弟子となった私に、懇々と、お前は言い聞かせる。
 大金を支払うというのは、よくある事だ。
 それが出来ない者に対しては魔女が指定したサンプルを取って来る、見慣れない者がやって来たら知らせる、連絡があったらドラルクの身を守る為に駆けつけるなど、契約する者の能力によって様々だ。
 助けたいから助ける、納得できないなら断る、それでいいじゃないかそう思って、口を尖らした私を窘める、お前の顔は険しかった。

 それは、彼が属している魔女の世界が、見えない強固なネットワークで、繋がっているからだ。
 特に、今回の契約では、大きな利益と資源、両方の世界の者達が動くのだ。勿論、両国から、未知の病が持ち込まれる事もあるだろう。
 だから、急遽開かれた魔女達の会合に、ドラルクに連れられて、私も参加させて貰った事がある。
 なんというかうん。異質な世界だったな。
 なんというか、普通ではない空気だった。
 本能的に怖くて、あいつのローブを掴んで、離れられなかった。我ながら、情けない話だ。
 そして、各々訳があって後ろ暗い世界を選び、互いに守り合う為に、多くの規定がある事も分かった。そして、それを破る事が、命に関わる事も。

 『それを破っていいのは、その世界から放逐されても生きていける、頑健な肉体と、制裁を撥ね退けられる程の社会的立場を持つ者なのだよ。』
 『そんな魔女も、いるんだな。』
 『少なくとも2人、知っているよ。一人は、私のお母様。もう一人は、氷笑卿。私の師匠に当たる人だ。』

 ドラルクが執念深いと言われるのは、深海の者だからというだけでなく、魔女という世界に住み着いた事で、その生き方が固着してしまったのかもしれない。



 『お前は、サンズちゃんの友ゆ、友人です。調べれば調べるほど、あのタコはヒナイチに首ったけだから、大丈夫とは思うけれども、あいつがやらかしてきた事は、教えておくです。注意は、しておくですよ。』

 いつだったかドラルク達が席を外している間に、サンズは私にそう言った。
 彼女が教えてくれた内容は、驚くべき所もあり、なんとなく察していた所もあった。
 ドラルクが何度も危ない橋を渡って、後ろ暗い連中と取引していたのは、噂で聞いた事はある。だから、なんとなく察していた。そして、相手によっては、非人道的な実験台にしていた事も
 それでも、ドラルクを始めとした魔女達は、基本的には、医者や占い師、コンサルタント、祭司として生計を立てている。
 だから、魔女達の中でもトップクラスの魔術、薬学的知識と技術を持っているドラルクを訪ねて、命を拾った者達も多いのだ。
 彼は恨みも多く買っているが、同時に感謝もされている。それでいいと、私は思う。 

 ところで、彼女の話によると、ドラルクは、深海でも広大な領海を有する、竜子公の嫡子なのだそうだ。
 そんな彼が魔女として名を馳せる様になったのは、自分の体を治したかったからだという。
 それを聞いた時は、驚いたな。

 『お前は、所謂、深海の王子じゃないか。何故、黙ってたんだ?』
 それなら、こんな事をしなくても、イナ海国との同盟の為に深海に嫁入りする、という大義名分が成り立つのにそう思ったんだ。
 とはいえ、体の弱いドラルクはサンゴ礁では暮らしていけない。鍛えている私は彼より多少マシだが、やはり、深海の環境は体に負担が大きい。そう簡単に、出来る事ではなかったのだけど。
 『ごめんね、黙ってて。でも、お姫様だって、私が、真っ当な依頼だけを受けている訳じゃないのを知っているでしょ?私は、自分の体を治したかった。正攻法で手に入る物なら、実家の力で十分だよ。でも、非合法な物を手に入れようと思ったら、裏世界の者達とつき合わなければいけない。お父様達に、迷惑をかけてしまう。だから、距離を置いていたんだよ。魔女として、名前が売れれば売れるほど、実家から離れるしかなかったのだ。』
 だからこそ、この契約を必ず成功させるそう言う魔女の赤い瞳は、強い意志を持っていて

 『この契約が終われば、両国に、いや、将来的に、他の多くの国の間でも交流が広がるはずだ。そして、多くの変化がもたらされるだろう。それらがもたらす対価は、私の今までやってきた悪事を清算して、お釣りがくるはず。堂々と足を洗っても、誰も何も言えまい。そして、貴女のいる日の当たる世界に、私も行く事が出来る。堂々と
 『魔女それって。』
 本当は、魔女が兄と交わした契約内容も知っている。魔女から言わないので、私も黙っていたんだ。
 私達の望みは、同じだったから。
 だから、私も兄に一つ約束を取り付けたんだ。
 仮に、魔女の身にどんな事が起こっても、『ヒナイチとして、彼と永遠に共にいる事を許可する』。
 『深海の魔女ドラルクを、イナ海国の王族として迎え入れる』という約束を。

 『もう、ここまで来たら隠す必要はない。ヒナイチ姫、今回の契約の対価は、貴女だ。貴女はこれまで、他国に嫁入りしたくない、と言った。しかし、この契約が終われば、深海の魔女ドラルクの元に、嫁入りするのだ。』
 やっと言ってくれたな、魔女。
 それって、プロポーズだろ?ずっと、思いあってきたのに。
 『断ってももう遅い。お姫様も新米魔女とはいえ、もはや協会に名前を登録した身だ。契約は絶対だ、それは覆らない。それに貴女は、私と一緒にいるのが楽しいと言ったね?その言葉に、変わりはないね?』
 『くどいぞ、ドラルク。変わる訳、あるもんか。』
 頬を膨らませて見せると、魔女は嬉しそうに笑った。
 こんなに幸せそうな笑顔は、今までで、一番だったかもしれない。
 自分の10倍以上年上の相手なのに、とても可愛いと思った。だから
 『いたっ!?ヒナイチ姫、どこで覚えたのかね?そんな事。』
 お前に抱きついて、キスをしようとしたんだけど。あんまり勢いをつけ過ぎて、鼻に当たって。 
 すまん、魔女が顔を押さえて蹲っている。
 『あれ?おかしいな。サンズに借りた本を真似たつもりなんだけど。』
 『変な知識をつけないでおくれ。おいで、こうやるのだよ。』
 シュルシュルと音を立てて、8本の足が私の体に絡みついてくる。無数の吸盤が肌に吸い付いて、蠢いてなんだか気持ちよくて。
 『フフッ、魔女くすぐったいむっ!?』
 唇の間から、長い舌が入ってきた。
 あ、そうだ。本で見たぞ。私も舌をドラルクの中にいれこう、だっけ?
 『ふっぁん?』
 分かるのは、湿った音と捕食者の獰猛な赤い瞳。
 自分も動かなくちゃ、と頭では考えるんだけど実際は舌も体も動かない。魔女の長い舌が、口内で動いているのを追いかける事も出来ない。
 『むぐっ!?う、うぅ~!!』
 急に服の間から、触手が胸元に入ってきて飛び上がった。全身が固定されているから、ローブの中で見悶えてるだけだけど、嫌じゃなかったそれより、頭がふわふわして。
 『ふっううんんっ!!』
 そっかサンズが言ってたのって、こんな感じなのかな。
 好きな人に、こうされるのって嬉しい事だって言ってたな。
 『えっ!?ぷはっ!!』
 『ウフフ、苦しかった?でも、嬉しそうだったね。名残惜しいけど、今はここまで。契約を完遂するまでは、許嫁ですらないのだよ。辛いね。』
 『そんなき、キスはいいんだよな?次は、もっと上手にやるから色々パターンもあるみたいだし。』
 載っているイラストが、陸の人間のものだから、ちょっと勝手が違うけど『お前は子供っぽ過ぎるので、貸してやるです』って、サンズが言ったんだ。
 『それ、サンガ国の閨房術の本でしょ?サンズ姫も酷い事をロナルド王子は、体力がお化けだから容易いけど、私は全部応えられない。やっぱり、治療薬を作って、この体が治ったら体力つけようかね。』

 あの頃は、まだお前が毎日飲んでいる薬の在庫も余裕があって、そんな呑気な事が言えたんだよな。



 「魔女、入るぞ。ハダカイワシの坊やが、サクラエビを持ってきてくれたんだ。元気になって欲しい、って。」
 「ん?ああ、ごめんね。ヒナイチ姫、少し寝過ごしてしまったらしい。今、起きるよ。」
 そう言って、大儀そうにドラルクは、ベッドから身を起こした。慣れた深海の環境でも、日に日に具合が悪そうにする事が増えてきたもう、契約はほとんど完遂しているのに。
 両国の体制はほぼ整って、あとは最初に移動する者達の抽選と、実行を待つばかりなのに。

 『なぁ、魔女。契約の完遂を、後回しにしよう?もう、私達が動く所は、あまりないんだ。だから、先に治療薬を作ろう?サンズからは石の御鉢を借りれたし、燕の子安貝だって貰ったんだ。深海の竜の鱗は、お前のお祖父様から貰えるんだろう?だから、私がロナルド王子達と蓬莱島に行って、残りの材料を採ってきてあげる。元気になってからで、いいじゃないか。』
 だけど、お前は首を縦に振ってくれなかった。
 自分は、協会に属している魔女だから。先に結んだ契約を完遂する事が、優先だからそう言うのだ。
 『ヒナイチ姫とロナルド王子は、パスポートの発行に関わっている事を忘れたのかね?君達だって、そう簡単には動けない。』
 『カズサ王もヒヨシ王も、サブを指名してくれている。私達が、留守にしていてもいいんだ。少なくとも、お前が行くのは、無理だ。』
 『私が行くつもりだったけど、それは諦めるしかない。そうだとしても、『実行をもって、完遂とする』と明記しているのだよ。確認せずに、動いては違反行為になる。お姫様も、名前を登録したのだ。貴女にも、制裁が下る可能性がある。だから、お待ち。』
 そう言って、魔女は一息ついた。胸を押さえてるのは、痛みを感じているからなのだろう。
 『それにしても、思ったより事務仕事に時間が、かかっているらしいね。それだけ、多くの者達を誑かしてきたとも言える自業自得とは、よく言ったものだ。』
 お前は、最後の一瞬まで諦めないと言う。でも、その命が間に合うとは思えない。だから 
 チラリと調剤室に目をやる。いつの間にか、調剤室にあった木箱が無くなっていた。
 私が覗こうとすると、魔女もジョンも慌てて止めに来る、厳重に封がされたあの木箱。
 おそらく、あの中に、陸に憧れた同胞が捨てて行った下半身の肉が、入っていたのだと思う。
 だから、ギリギリまで我慢して、食い延ばしを図って人魚の肉を使う以前に、調合していた薬で誤魔化している。
 お前の教えを受けたから、分かる。
 急にここに来て、病状が悪化している理由が。

 お前は、知らないけれどもその肉には、『延命』の効果はあっても、『治療』の効果はないんだと、兄は言った。
 お前が、かつて調合していた薬は、長年研究していただけはあって、『治す』事は出来なくても、『進行を止める』効果はあったんだ。
 でも人魚の肉が特効薬だと信じていたお前は、それ以降、それを全く飲んでいなかったんだろ?
 でも、私には最後の手段があるんだ。『治す』事は出来なくてもその間に、治療薬を作る時間をいくらでも作れる方法が。
 「なぁ、魔女。話が



  待ってヌ、ロナルド王子!ドラルク様は、まだ

 「悪い、ジョン!!サンズ姫から聞いたら、黙ってられねえ!ヒナイチだって、実は泣いてんじゃねえか!!あのバカに、バシッと言ってやる!!」
 「待って下さい、ロナルド王子!魔女に言っても、聞く訳ねーです!!それより、サンズちゃん達がしなきゃならない事は!!」
 ジョン達の声が外から聞こえてきたと思ったら、般若の顔をしたロナルド王子が、飛び込んできた。
 お前の方が、実はつき合いが長いんだもんな。そりゃ、怒るよな。
 お前は、一番、優しい奴だから。

 「おい、ドラルク!!俺が来た理由分かってんだろうな!?」
 「うんそうだね。覆すつもりはさらさらないけど、ちゃんと話すつもりはあるよ。皆、席を外して貰っていいかね?」
 「覆せや!!頭がかてーんだよ!このタコ!!てめーの命だろうがよ!!」
 ジョンは『ロナルド王子が、暴れた時の為に残る』と言うので、私はサンズニャンと部屋を出た。
 私が更新したい契約いつも言いそびれるな。
 言った所で、魔女が聞いてくれるかは謎なんだ。
 いや、たぶん承服しないだろう。だから
 「どんな手を使っても、契約を。」

 執着心があるのは、お前だけじゃない。私にだって、ある。
 私だって、新米だけど魔女の一人だ。
 そして、今の私なら上手く百戦錬磨のドラルクのサインさえ得られれば契約でお前を縛る事が出来るはず。
 もし、治療薬の作成に失敗しても、何度だって、何百年だってチャレンジ出来る。
 どんなに苦しませる事になってもどんな手を使ってでも、『欲しい者を手に入れる為』なら。

 「なぁサンズ。」
 「何ですか?」
 自分の手を見る。
 ちゃんと魔女の手記を調べる事は、出来ていないけれどもたぶん。
 「肉と骨と血があって、無くなっても生活に支障が少ない部分って、どこだろうな?」
 サンズは、このセリフを聞いて、どう思うだろう。
 それでも、『サンズちゃんの友人です』と、言ってくれるだろうか?

 「左手の小指なんてどうですか?」
 「たぶん、もっと必要だと思う。」
 よかったそうだよな。
 「分かりました。調剤室に行きましょう。型だけ取っておくです。いつでも、実行出来るように。」
 ありがとうそういう私に、彼女は不敵に笑った。
 そして、親友は、私が一番望んだ答えを、返してくれた。

 「サンズちゃんに足いや、尾鰭を向けて寝るんじゃねーですよ。それに、分かります。サンズちゃんだってロナルド王子の為なら、心臓だってあげたはずです。」



 どうしたものだろうでも、息子の意志を尊重しなければ。
 代われるものなら、代わってやりたい。
 どんなにお父様から、強大な力を受け継ごうともこればかりは、無理なものは無理なのだ。
 
 先日の事だった。
 私は息子から頼まれて、深海での有力者達と、表層、陸との開国、交易について協議を続けてきた。
 親友であるノースディンからは、『お前の頼みだから、反対はしない。だが、私は奴らの汚さを知っている。わが国だけは、絶対に開国しない。』と言われているが、他の者達からは、了解を得る事が出来たのだ。
 その結果を知らせようと、忙しい息子とその友人達を労ってやろうとドラルクの別宅に足を運んだ時だった。

 「あぁ、お父様ですか。すみませんね、こんな姿で。」
 ベッドから気怠そうに身を起こす、息子の姿は、幼かった頃を彷彿させる程、やつれていた。
 元々、いつこうなっても、仕方がない子だった。
 それが、200以上も生き長らえてきたのは、稀に見る優秀な頭脳だけでなく、『自身の体を治す』という異常なまでの執着と、『死の恐怖』から逃れようとする、たゆまぬ努力によるものだった。
 特に、最近は寝る間も惜しんで、深海と表層、陸へ飛び回っている。それが、体に負担をかけないかパパもミラさんも、心配していた矢先だったのに。
 「お気になさらずに。人魚の肉を切らしてしまっただけですよ。でも、甲斐はありました。もうすぐ、契約を完遂出来るのです。そうしたら、治療薬作成に移れます。もう少しの辛抱ですから。」
 もう少し?もう少しだって?
 しかも、そんな体で最後の材料を集められる訳がないだろう? 
 「む、無茶を言ってはいけないよ。当初は、似た材料で作ろうとしたけれど、それは不可能なのだろう?」
 息子は、実際に蓬莱島に赴き、仙人にあって万能薬を手にした、サンズ姫から聞いたらしい。
 ドラルクは、ロナルド王子を通じて、それと近い材料を集め、その万能薬と同じものを作ろうとしていた。
 それは、サンガ国のくノ一達が、とっくにやっていた事と同じそして、結局、失敗に終わった試みだと。
 蓬莱島に住む仙人の家にある、庭木に成る紫の石と、その洞に住む火ネズミの血これだけは、彼の地に行かなければ手に入らないものだと。

 「ね、ねえドラルク。」
 これは、言っていい事なのだろうか元々、息子はヒナイチ姫の肉を目当てに近づいた。
 でも、それを断念した。彼女への、愛情故に
 「ヒナイチ姫に、頼んではどうかねその。」
 彼女の肉を少しだけ少しだけ貰って、命を繋げば。
 ヒナイチ姫だって、お前をパパが調べた範疇でも、とてもお菓子の為だけで、ここまでお前の為に動いてるとは思えない。きっと
 「何ですって?」
 ドスの利いた息子の声に、背筋が凍る思いがする。
 あぁ、やっぱり駄目だ。それ以上は、言えない。
 「お姫様から、肉を貰えと?間に合わないから、私を不老不死にしろと?」
 「だ、だって現実、間に合わないじゃないか。」
 それにミラさんだったらでも
 「お父様貴方なら、そうなさいますか?お母様に体の一部を切断しろ、と?してくれると分かっていても、そうしますか?」
 駄目だミラさんのそんな姿を想像するだけで、耐えられない。
 私だったら、要らないと言う。
 「バカな!!そんな事をするぐらいなら
 「「死んだ方がマシだ」」
 「!?」
 「そうでしょう?お父様。」
 あぁ、お前もやっぱりそうなのだねでは、私に何が出来るのだろう。

 「分かったらお引き取りを最後の最後まで、足掻きます。ほんの僅かな間でも、あの子の隣で、日の当たる世界に行けたのなら後悔はしません。」
 「そ、そんなパパは、お前に何もせめて
 何も、してやれないのかね?
 「引き続き、交渉が上手くいった国々と、イナ海国、シンヨコ王国との仲立ちを頼みます。私が死んで頓挫する様では、命を賭けた甲斐がありません。」

 目の前で、息子の瞳がチカチカと光る。
 同時に足元に、紫色に輝く魔法陣が描かれてこれは、息子がよく使う転移魔法だ。
 「ドラルクや。」
 「ごめんなさい。」

 気がつけば、自分の居城の前にいた。
 今は、干渉するのはよそう。まだ、諦めていないと言っていたじゃないか。
 親なら信じて

 「ドラウス、どうした?」
 背後から、凍り付く様に冷たい海水が流れ込んできた。
 正体は、分かっている私達を誰よりも案じて、支え続けてくれた、大事な親友。
 「親として情けないね。本当は、もう察しているのだろう?」
 ドラルクの師匠で、もう一人の親と言っても過言じゃない、北海の氷笑卿
 
 「まぁ、入っておくれノースディン。」
 


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