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赤いケーキ

全体公開 3401文字
2024-08-13 10:47:54

クル監督っぽいもの
ワンドロで書いたものでテーマはベルベッドです

Posted by @akirenge

【赤いケーキ】

――逃げた彼等は後で締めよう。
オンボロ寮の監督生であるララは決意をしつつ、図書室の奥、閉架書庫で本の整頓をしていた。ララは図書室をよく利用するし、
頼まれればするのだが今回は魔法史の授業で騒ぎ過ぎた友人たちとお目付けをしているグリムに巻き込まれた形でモーゼス・トレインに
罰として閉架書庫の整頓をと言われたのだが彼等は逃走した。
巻き込まれるのには慣れて、慣れきってしまっていたのだが締めるところはしめておかねばなるまい。

「本は助かるのよね」

元の世界からこの世界、ツイステッドワンダーランドに異世界トリップをしてしまい、文化に慣れるのに四苦八苦した。
文字は何とかなった。読み書きは異世界パワーで何とかできている。
学ぶことは忘れていないけれども。元の世界に帰るための手がかりを探していたこともあったが、最近は余り探していない。
魔法がかかっている本もあるから気を付けるようにとは言われていた。
そう、ここは魔法のある世界なのだ。
ララは魔法を学ぶ学校であるナイトレイヴンカレッジで唯一魔法が使えない生徒である。魔法はちょっと憧れている。
面白そうな本を見繕いながらララは整頓を続けていた。
一時間後、ララは整頓を終えた。本を抱えて閉架書庫から開架書庫の方に出る。

「整頓終わりました」

「ご苦労様」

「これを借りていきます」

図書室のゴーストに話しかけてから本を借りる。ゴーストがいる。実体化しているとなっていると魔法の世界だとなる。
後で聞いた話ではナイトレイヴンカレッジがある賢者の島だからとか理由があるらしい。
本を抱えてララは友人二人とグリムを探しながら、廊下を歩く。

「子犬。悠々と歩いているな」

「クルーウェル先生。そう見えました?」

「殺気立っていたぞ」

デイヴィス・クルーウェル、ララのクラス担任が目の前にいた。殺気立っていたと考えこみ、

「抑えていました」

「その殺気をぶつけたい相手でもいたか」

「エースとデュースとグリムを知りませんか。トレイン先生に罰として言われた本の整頓から逃げて」

「見ていないが、また騒ぎを起こしたのか」

「起こしたくはないんですけど」

平穏にいきたいのに周りが許してくれない。クルーウェルは視線を下した。

「その本は」

「閉架からいくつか、整頓をしていたら面白そうだったので読んでみようかと」

読める範囲で、借りられる冊数ぎりぎりまで本を借りた。オンボロ寮に持ち帰ってのんびりと読みたいところだ。ララが好きなのはレシピ本だったり、
物語だったりする。閉架に入っている本は古めのものなのだが、古い本も読めるものは読みたいのだ。

「整頓していたのはお前だけか」

「頼まれたことはします。出来る範囲で。図書室には世話になっているし」

娯楽もそろえてはきたのだが図書室で本を借りて読むのは無料でできる娯楽だ。学園長が許可を出してくれたことについては感謝する。
それ以外はかなりアレだが。色々差っ引いてもかなりアレだが。

「時間はあるか」

「? ありますけど」

「来い」

クルーウェルに来いと言われる。何があったか? 何かやったか? と可能性を考えながら彼女はクルーウェルについていく。
ついたところは実験室だった。適当に座れと言われたので丸椅子を引っ張って座る。テーブルの上に借りた本を置いた。

(先生の授業は真面目に出ているし課題も出していたはず)

はずになるのはぬけがあるかもしれないからだ。授業は真面目に受けている。グリムがやらかしたのだろうかとなっていると目の前に赤色が置かれた。
よくよくみるとそれは白い皿に乗った赤い色のケーキであった。フォークも着いている。

「レッドベルベッドケーキ。薔薇の王国のケーキだ」

「赤いですね」

「ココアケーキを食紅で染めたものだ。辛くはない」

赤色と言えば辛いというイメージがある。クルーウェルが教えてくれた。レッドベルベッドケーキと言えば聞いたことはある。
ベルベッドは布のことだっただろうか。

……ベルベッドというと合体とかで使う部屋の名が」

「合体?」

「こちらの話です。……私に?」

「気が向いた。これは……旧友たちから貰ったケーキだが少しやろう」

(妙な感じに溜めが入った)

旧友と収めておいた方が無難で、楽そうな人物たちから貰ったらしい。
ベルベッドについてはこの世界ではララにしかわからないとある部屋のことが浮かんでいた。あのゲームは借りてやったものだ。以外とゲームもやるのである。
クルーウェルはララにケーキをくれた。
元の世界でもレッドベルベッドケーキはあった。元の世界だとアメリカのケーキである。アメリカというとケーキの色が個性的な国だ。
少しと言っているがケーキ屋で売られている一人分のカットケーキぐらいはあった。

「飲み物は、レモングラスティーでいいだろう」

……あのめっちゃ生える草」

「ハーブだ。草でまとめるな」

レモングラスはレモンの味がする緑色の草だ。二メートルぐらいにもなる。とてもわさわさしているのだ。クルーウェルが淹れてくれるらしいので淹れてもらう。
薔薇の王国はツイステッドワンダーランドにある国の一つだ。地図で見たことがあるがバラの花の形をしていた。
確かクルーウェルも薔薇の王国出身だったとどこかで聞いた。テーブルの上にティーカップに入ったレモングラスティーが置かれる。
フォークを手に取り、ララはレッドベルベッドケーキを一口サイズに切って口に入れる。ココアの風味、辛くはない。

「美味しい」

「古いレシピだと作り方が違うらしいが今はこれだ」

「バターケーキって珍しいし」

「そうなのか?」

――そうだ。ここやや洋風。
クルーウェルがそうなのか? と言ってきたので、フォークを口にいれながら話題を考えておく。ララは日本出身だ。バターケーキはあることにはあるが、
生クリームを使ったケーキのほうがメインだ。

「あんまり食べなくて」

「言われたことをやるのは感心するが、抱え込むことは辞めておけ。惨事が起きる」

……気を付けてるつもりではあるのですが」

元の世界でも言われた気がする。抱え込むというか自分でやった方が早い時は抱え込んでしまう。ちゃんと彼等は後で締めるつもりだったが、
追いかける時間の方が惜しかった。レモングラスティーを飲みつつも、微苦笑で抑え込みながら甘いケーキを食べる。作ってみようかという気持ちにもなる。
ツイステッドワンダーランドでは十六か十七歳の姿をしているララだが本来は二十一歳だ。話していると持たされていた多機能情報顛末が鳴る。
会話アプリだ。開いてみるとエペル・フェルミエからで、逃げたみんなはジャッククンが捕まえたからララサンおいでよと出ていた。

「誰からだ」

「エペルが逃げた彼等を締めに来いと」

「存分に締めろ」

「これを食べてからで。ありがとうございます。クルーウェル先生」

「問題は出来る限りは起こすな」

……起こしたくないのだけれども、状況次第です」

そうとしか答えられない。問題は、起きてしまうのだ。起こしたくなくても、起きてしまうのだ。



ララは何も気づかなかった。気づかれないようにした。彼女は目付け役から防護用のブレスレットを貰っている。この防護用ブレスレッドは
危険を緩和するものだ。それが効かないということはそれ以上のものがあるということだ。
閉架書庫から借りてきたベルベッド装丁をした赤い本。ほころびかけた。封印。

「手間のかかる。欲しいのは分かるが」

借りてきた本が一冊足りないと後で気づいて戻ってくるかもしれないが今頃は逃げた彼等を締めているだろう。
クルーウェルは抜きとった危険な、それこそ厄災にまた巻き込まれそうになっていた彼女を守っておく。生徒として、そして。

「子犬は渡さないがな」

大人しくしていた、彼女を取り込もうとしていた本が暴れ出す。魔法をかけておき、本を抑え、封印をしておく。
本は返しておくことにする。気づいたら気づいたで誤魔化しておけばいい。
甘いケーキに塗りつぶされてララは起きそうだった身の危険には、気づかない。


【Fin】


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