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現パロ寄り。探偵傭と冷やかし(?)リ。

全体公開 傭リ 5 4256文字
2024-08-13 21:04:11

先生!でぃーぶい事件なの!
最初少しエマ。そしてもぶさんが出る。最後少しハスさま。

やっぱN号棟(映画)とか例外配達(ゲーム)怖えなって笑←

 弟子を自称する助手から連絡のあったアパートの前に着いた。
 彼女はここにはいない。今は病院にいる。彼女自身も念の為検査を受けるそうだが、主体の患者ではない。
 連絡された時に訊いた彼女の第一声は、こうだ。
「先生!空から赤ちゃんが!」
……は?」
「たぶんアパートのベランダから!降って来たの!上手いことキャッチ出来たけど、人影を見たわ!こっちは今から病院に行くから詳しいことはまた後で。貴方は今から言う場所に行って!」
 慌ててはいるが、声を顰めようとしている、おそらくタクシーで移動しているのだろう彼女の声を聞きながら、外出の準備を進める。
 新聞紙の空いたところに場所メモを記した頃には、また慌ただしく連絡は途切れ、メモを破り取ってこちらも慌ただしく事務所を出た。そのつもりだったのだが。
「アラ、お出掛けですか?」
 のっぽの男が目の前に立ち塞がった。
「お急ぎですか?では行きましょう。」
 当然のように付いて来ようとする暇人を追い払うことはせず、目的地を目指した。
「中の下、と言った物件でしょうか。」
 その中でも底辺ぎりぎりですよ、と落ち着いてアパートを見上げるのっぽと、くだんの部屋のベランダ下に移動する。
「被害者は増えてはいませんね。」
……増えてると思ったのか?」
「さあ分かりません。」
 一日一回との約束でもあるのかしら、なんて言ってるこの男に、受けた連絡の内容は言っていない。ただ、アパートのベランダ下に移動した、それだけでこの男はおおよそのあらましを見当付けたのだろう。この暇人は刃も鋭いが、頭も切れる。
「まあたお巡りさんに内緒で事件捜査ですかあ?」
「ちゃんと連絡はするつもりだ。……おまえが一緒だと余計に連絡しづらい。」
「マア、わたしを殺人鬼だとでも言いたい?」
「おまえは直ぐに警官をおちょくり出すだろって言ってるんだ。」
 警官に友人がいる身としては、警察と折り合いが悪いというわけではない。ただこの男は、明らかな妨害はしないがちょっかいをかけて鬱陶しがられることはするので、面倒なのだ。
 くだんの部屋へ向かうための階段に足を掛ける前に、その前に並んだポストからはみ出した郵便物を取り出す。うへエレベーターないんですか、とうんざりして文句を垂れる男が、それに何を言うこともなく付いて来る。
 れいの部屋に着いて、インターホンを押す。どれほどそっと押しても音は響くものでそのためのものだし、浅く触れるだけでは音を出さない。きんこんと間延びした音がした。閑散としたアパート全体に響くようだった。コンクリートの冷たさは、悪寒に似ているように感じる。後ろの人外は関係ない。
 はい、と現れた女性は、恐る恐るといった動作なのに、こちらに怯えるというよりは、諦めたように表情が色褪せていた。長い髪はだらりと垂れ、年齢の割りに白髪が多く、年齢を判別し難かった。
 なぜ歳が分かったか。
「失礼。ポストから郵便物が落ちてしまいまして、ポストに戻そうとしたのですけれど、上手く入れられず。それなら、直接届けてしまおうと。」
 淀みない声でそう言いながら差し出した郵便物、でかでかと、これを受け取った「二十代のかた」に期間限定!と書いてある。
 女性は、すみません、と言い、郵便物が溜まって詰まっているのかもしれないと恥じらうように言って受け取った。外出は必要最低限で、帰宅時も両手が塞がっていることが多いから、と。
 ぼそぼそと話す様子からは、あまり多くの人間とのコミュニケーションを感じなかった。
 それを相槌を打ちながら聞いていると、きゃあきゃあと高いはしゃぎ声が聞こえた。
 振り返った女性の視線の先には良く似た顔触れの三人の子供がおり、こちらに手を振っている。あんたたち、と女性が困ったように言う声を聞きながら後ろを見れば、のっぽが手を振っている。
 ただでさえ目立つ容姿の暇人が扉越しにあやす子供達は、興奮したようで女性の言葉なんて耳に入っていないみたいだ。
「お呼びのようですねえ。」
 そう言うと、他人の家にずかずかと入り込む人外。さすがの女性にも焦りが見える。
「歓迎されるのは悪い気はしません。」
 人外はマイペースに子供を抱き上げたり手を繋いだりして上手いこと三人共を同時にあやしている。女性はもはや置いて行かれたように呆気に取られているようだった。
「すみませんウチのが。連れ帰りましょうか?」
 そう言って自分も家の中を見させて貰おうかと思えば、女性ははっとした様子で、困ります主人になんて言えば良いか、と捲し立てた。なるほど。
「そうですね、身内の無礼に、こちら迄無礼を働くところでした!」
 明るく調子付けて踏み出しかけた足を引けば、女性は安堵したようだった。よく見ると腹が膨らんでいる。
 人外は相変わらず子供達に大人気だ。
 その手が、こちらからは死角になっているほうへ向き、手招いた。
「貴方もご兄弟のそばにいらっしゃいな。」
 ゆっくりと死角から出て来た子供は、猫背で警戒心があるようだったが、言われたことに従うことに慣れた様子だった。三人のどの子供よりも歳上のようだ。振り返ってちらちらと忙しない。ベランダのある方向だ。
「ふふ。貴方を抱き上げたら流石に天井に着いてしまいますね。」
 男が言うと、子供達、そして、歳上のその子供も興味をそそられたようで、寧ろ抱き上げてみせてくれとせがんでいた。本当に、その気にさせるのが上手い。
 子供の相手は暇人に任せて、女性と世間話をして時間を潰した。
「そろそろお腹が空きましたねえ。」
 三十分程したところで人外が言った。
「どっか食べに行くか。ああ随分長居してしまって、すみませんでした。」
 断定的に切り上げると、女性も焦って、すみません、と言って来る。
「じゃあね、かわいいご兄弟方とお母様。」
「お邪魔いたしました。」
 また手を振って出て行く人外の、その横で腰を軽く曲げて頭を下げた。最後迄手を振ってくれる子供達と、頭を下げ続ける女性に悪いと思い、さっさと階段に戻る。
 外に出て、もう一度ベランダの下をちらりと見遣る。ベランダには誰もいない。あの母親が、普段は閉じているのかもしれない。外出も最低限、窓も締め切っている。
「六人兄弟……ってことになるのか?」
「多産ですね。」
 歩きながら話す人外の声は、酷く冷えていた。
「ベランダに出たのは一番上の子でしょうね。」
「何か言ってたか?」
「何も。」
 何も。何も言わないことに慣れ切った顔をしていた。
「母親に命じられたと思います?」
「いや……あの人は自分が命じる側にはなれないよ。」
 少なくとも今のあの状態を見るに。
「おまえは?どう思う?」
「子供が子供を口減し、なんて如何です?」
 如何ですか、って言われてもな。だがこの男がこういうふうにものを言う時は、自分でも己の意見に懐疑的な時だ。
「まあ親が入念な見栄でも張らないと、家の金銭事情なんて子供に筒抜けだろうからな。」
「動機なんてどうでも良いんですよ。」
 思わず男を見上げるが、おまえそういうとこあるよな、とは言わない。その空洞の眼窩が、動機よりももっと本質的なものを見詰めている時があるのを知っているからだ。
「人間の女性が一度の人生のうちで出産出来るのなんて、せいぜい三度ですよ。」
「いやそれは、」
 そんなことないだろう、という事実を続けようとしたところで、それは当然のように遮られた。
「可能か不可能か、の話ではありません。そんなこと言ったら十一歳の少女だって妊娠は可能です。生命体の機能としては。」
 そうじゃなくて、と苛立ったように告げる眼は、冷静で冷徹だ。
「女性が人として正気を保てるかが問題なのです。多産が狂人と言っているのではありません。」
 この男の眼は、この男がいつも描いている、その絵が目覚める前のカンバスのように、真っ平でフラットに物事を見る。世界なんて、この暇人の前にはカンバスでしかないのかもしれない。
「人生の一大イベントがそう何度もあっては、一つの人生に負荷がかかりすぎだと思いません?一つの人生に負担を押し付け過ぎだと思いません?ひと一人がひと何人も人に育て上げて、人の儘でいられると思います?」
 時々この人外が、ベテランの医療従事者のように見えることがある。何人もの患者を診て来たかのような。
……おまえの見解は巫山戯ていてあべこべだと言う人間もいるが、おれはいつも助けられてる。」
「わたしが自ら進んでやりたいのは解剖なのですが?」
 頭を読んだように返事が来る。
「人間は全て、人間の勉強をきちんとすべきでは?」
 人外の言うことは耳が痛い。
「それは、人間がみんな医者になれるかもな。」
「そうなれと言っているんですが。」
 呆れたように言う男は、さすが動機なんてどうでも良いと言い捨てただけある。
……この事件を本当の意味で解決出来る存在は、人間にはいない。」
 警察にいったところで、この家族が救われるとは限らない。
 人間が人間に出来ることは少ない。
「人間のことがダァイスキな知り合いを知っています、紹介しましょうか。」
 暇人が、冷静で良く通る声で言う。
「それは……
 人間に人間を任せられないのなら、という話だろうか。けれど、それは。
「まあもう手遅れですけど。」
「子供いっぱいなのだ?」
 にゅるりと影が立ち上がるように現れた相手は、自分が子供であるかのように元気いっぱいであった。
「え」
「人間が隠し事の出来る相手なんて、人間くらいですよ?」
「わはは。子供の数だけ触手出して遊ぶぞ。」
 そう言ってずるずると陽気に移動してゆく影を、引き留めるか否か、けれどこちらが決めたことなど、あちらには些事である。
「遅かれ早かれ、似たような事態に陥っていたでしょう?」
 先程迄感じていたもどかしい無力感など比べ物にならない程の明確な出来ることの無さに思わず呆然としていれば、背を屈ませて告げて来る男の声が、耳の直ぐ横で聞こえる。まるで、何かをするということをきちんと諦められる理由が出来て良かっただろうと言いたげだ。
「でもこれで、あの子が兄弟を殺すことはもうないですよ。」
……それは、そうだな。」
 既に一人の子供が死んでいるのではないかという疑いは、邪神なら知り得たことかもしれない。


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