ピクスク様のオールジャンルイベント『本を作るための、締切を作るための、イベント』参加作品の2作目です。
Δドラヒナで、Δ隊長(28歳)×高校生ヒナイチくん(16歳)のお話です。
Δ隊長が、新横浜警察署に赴任してきた年の初めての夏。
夏休みも終わり間近。ギルドに来たついでに、宿題の分からない所を教えて貰う約束をした、ヒナイチくん。
初恋の人に夏休みの思い出について訊ねると、エリート街道を走ってきた彼は寂しそうに笑う。
そんな想い人に、彼女は…?
欧米圏は、夏休みも長いし、宿題もないらしいですよ。学期の始まる時期の違い、とかそういう事らしいですが。
他のΔドラヒナのお話はこちらから読めます →https://privatter.net/category/51192
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*捏造設定になります。
・Δ隊長は、父親のドラウスさんは人間、母親のミラさんが吸血鬼という設定です。ヒナイチくんより一回り年上。ルーマニア育ちの日系ハーフ。なので、独り言や鼻唄に突然ルーマニア語が混じったりする。生まれつき虚弱体質だが、ブーストを使えば短期戦の戦闘参加は可能で、本編よりは体力もある。幼い頃から「ダンピールとしての、突出した探知能力で市民を守る」という夢の為に突っ走ってきたので、子供時代の話や、普通の高校生をしているヒナイチくんと喋る時、寂しそうな顔になる癖があります。
・Δジョンは元々ミラさんの使い魔で「体の弱い息子をよろしく頼む」と言われ、Δ隊長を主人として尊敬し、行動を共にしている設定になっています。なので、Δジョンの方がΔ隊長よりちょっと年上です。この世界でも新横浜のアイドル。
・ΔヒナイチくんとΔ隊長の出会いは、彼女が幼い頃に下等吸血鬼に襲われていたところをΔ隊長が助けた、という事になっています。Δ隊長は幼い頃からの憧れの人で、常にキラキラした目で見上げています。元々和菓子党だったが、幼い頃に貰ったクッキーを食べてから、現在はクッキー党。バーの娘なので、他の世界線に比べて料理は上手で、コミュニケーション能力もそこそこ高い。
「こんばんは、ヒナイチくん。」
「こんばんは、隊長さん。じゃあ、よろしくお願いします!」
ヌフフ、隊長さん…じゃないヌよ?今から、ドラルク様は『先生』だヌ。
ギルドマスターこと、父さんとの会合が終わった隊長さんに駈け寄る。
両手には、夏休みの宿題を持って。
今日は、8月30日。
待ちに待った楽しみの夏休み…が、いつの間にか終わってしまう。
友達と遊んで、部活動に勤しんで、宿題はほどほどやって過ごした日々も、学校に通う日常に戻る。
だから、今日。分からない所を纏めて教えて貰う約束だったんだ。
「あ、そっか。じゃあ、お願いします。先生。」
そう言って、一人と一匹の前に、アイスコーヒーとアイスココアを並べる。
そして、貴方は私の為に焼いてくれたクッキーをタッパから出して並べてくれる。
憧れの人と合法的に、お話が出来て、勉強になって、何より最高のおやつまでついている。
ここまで、最高な夏の思い出も少ないと思うぞ?
「じゃあ、始めようか。どれからしよう?数学から?」
「えへへ。数学、苦手なんだ。だから、ちょっと多いけど大丈夫か?」
大丈夫だよ、と笑ってくれる貴方に、少しズキリと胸が痛む。
…これは、内緒だぞ?わざと、残してたんだ。
本当は、分かる問題だってある。我ながら、ズルいよな。
でも、少しでもあの人とささやかな時間を過ごしたくって…
「…あぁ、ここか。懐かしい、昔、よくこんなのを解いてたな。」
そう言いながら、サラサラとノートに書き込んでくれる、細くて綺麗な指を見る。
赤いマニキュアに彩られたその指、こういうチャンスでもないと、じっくり見る事は出来ないから…本当は、写メに撮りたいぐらいなんだから。
「ヌヌイヌヌン?」
「あ、あぁ…すまない。えっと、ここは…こう?」
「いいよ、いいよ。その調子。」
優しい声に顔を上げる。目の前にある貴方の笑顔は、とても…
「…。」
「ん?どうしたの?私に何かついてる?」
何だろう…どこか寂しそうに見える。
貴方がここに赴任してから、数か月。通学路で、ギルドで、貴方と会う機会が増えた。
学校の事や、友達の事、子供の頃のお話をすると、貴方はフッとそんな顔をする。
もしかして、こういう話は楽しくないのかな?不真面目で、困ってるのかな?
そう思って、以前聞いてみた事がある。
『アハハ…そんな事ないよ。私はした事がないから、珍しいだけ。むしろ、もっとお話ししておくれ。』
だから、私から話す事は多いんだけど…隊長さんは、あまりしてくれない。彼は、どうだったのかな?
「う~ん、私は飛び級だったからね。幼い頃は受験勉強と習い事で、15歳から大学生だったし。論文発表の準備が、忙しかった記憶しかなくって。だから、夏休みの宿題って、不思議な感じなんだよね。」
「え?ルーマニアの学生は、夏休みの宿題がないのか?いいな~。」
初めて聞いたな。夏休みって、楽しみだけど宿題は、どっさりあるし。
「欧米圏は、宿題ないよ。あと、日本の夏休みは短いね。ルーマニアは、6月半ばから3か月間休みだよ。日本の学生さんは、忙しいなぁ…って、思ってた。」
「うぅ~、ますます羨ましい。日本の学校は、子供に厳し過ぎないか?」
「ヌーヌー。」
机に顎を乗せて、頬を膨らませる私をジョンが撫でてくれる。
でも、それは『普通の』学生だったらの話だ。
幼い頃からIQがよくて、飛び級で大学受験を控えていた隊長には、当てはまらない。
隊長は、どう思っていたのだろう。
「ん…小さい頃から、吸対に入るって決めてたから。必要な事だって教えられてきたし、いつだって、ジョンが傍にいてくれた。元々、勉強は好きだったよ…だから、別に…。」
そこまで言った所で、外から子供達の歓声が聞こえてきた。
浮き輪や着替えを持った、麦わら帽の子供達が駆けていく。
これから、プールか川で泳ぐ気なんだろうな…目の合った子供の一人が、こちらに手を振って来た。
勿論、私も手を振り返す。向かいに座っている貴方も、その子に手を振り返していた。
「…望み通り、吸対に入ったんだ。今も、満足しているとも。」
その言葉は、とても寂しく聞こえた。
貴方だって、本当は子供の頃…
「なぁ…隊長さん。明日、非番だよな?」
宿題も終わったし、お礼も兼ねて一緒に…
「ん…?何だね?」
何を言ってるんだ、私は。高校生にそんな事されたら、迷惑に決まってるじゃないか。
「…何でもない。よし、出来たぞ!隊長さんのおかげで、最終日はゆっくり出来そうだ。」
こんなの私の我儘だ。会えないと思っていた、初恋の人にこうして貰えるだけで、満足しなきゃ…
一緒に、川に泳ぎに行かないか?
涼しくって、魚も釣れて、ゆっくり出来る場所を知ってるんだ。
貴方とジョンと一緒に、夏の最後の思い出を作りたい…な。