カルみと(+☕️🐸)
ぼいどシナリオネタバレあり
りのぴー様の三次創作です
@popo_trpg_ss
神無三十一は今世紀最大の危機に瀕していた。
仕事帰りに偶然出会った恋人の縞斑と食事をして、明日が非番であることも相まって“そういう雰囲気”になって縞斑の誘いに頷いたまでは良かったのだ。
しかし、ホテルに辿り着いてベッドに押し倒された神無はふとそこでようやく思い出した。
「…………あっ」
「……ん?なに?」
今日は縞斑に会う予定ではなかったため、勝負下着を履いていない。
更に言えば、あまりにも気の抜けた下着だった気がする。
「な、なにも……」
「そう…?」
だらだらと冷や汗をかく神無は、自身の天才的な記憶力故に昨晩選んだ下着の柄を鮮明に覚えていた。
あれは確かドロ課で行われた飲み会の帰り道、酔っ払った勢いで相棒のディーノに似ているとはしゃいで購入した恐竜柄の下着だ。
翌朝我に返って無駄遣いをした自分を諌めたものの、罪のない新品の下着を捨てるのは勿体無くて時々履いていた。
「あ…まって、まだ」
非常にまずい。
あの下着を晒すのは流石に恥ずかしい。
しかも相手は一回り以上年上の恋人だ。普段からそんな彼と肩を並べようと懸命に背伸びをしているのに、こんな幼稚な下着を晒したら一発で子供扱い確定である。
咄嗟に神無は縞斑の胸に手を当てて制止しようとした。しかし当然ながら、この状況で行われた弱々しい抵抗は行為への羞恥だろうと解釈されてしまう。
「恥ずかしい?」
「は、はず…っええと、その…」
恥ずかしい。縞斑の想定とは別ベクトルに。
正直に話すわけにもいかず、かと言って説明もなく強引に押しのけるわけにもいかない。
おろおろと言葉を探して視線を彷徨わせる神無の姿を緊張と受け取った縞斑は、ふっと小さく笑って顔を寄せた。
「もう待てない。」
「ちが、ん…っ!」
恥を承知で理由を叫ぼうとした唇は、それより早く縞斑に塞がれてしまう。
先ほどまで期待していたこともあって、唇の隙間から差し入れられた舌に絡めとられてしまえば体は素直に縞斑を求めるのだから仕方ない。
縞斑の動きに神無が翻弄されている間に、彼の手がするりと神無の下半身へと伸ばされた。
「っあ、まっ…!!」
せめてパンツごと下着を脱がせてくれと抵抗しようとした神無だったが、そんな彼の願いも虚しく縞斑は神無を焦らそうと制服だけを脱がしてしまう。
「……え?」
ふと何気なく視線を落とした縞斑は、神無の下着を目にして動きを止めた。
「恐竜…」
「っあー………」
いっそ殺してくれと両手で顔を覆う神無を見上げた縞斑は、そこでようやく神無がいつも以上に恥じらっていた理由を察する。
「…ひょっとして神無ちゃん、これが見られたくなかったの?」
「………………。」
「……あー……ええと、その……も、物持ちが良いんだね…?」
珍しく縞斑は全力で気を遣ってそう言った。
しかし、羞恥によって爆発寸前だった神無にその発言は逆効果だったらしく、ばっと顔を上げた彼は涙目で縞斑の胸を掴んでがくがくと揺さぶる。
「気にせず言えよ!!パンツ子供っぽいねって言えよ!!おおよそ22歳の履かない恐竜柄だねって言えばいいだろーーーっ!!!」
「いやそこまで言ってな、っく…ふ……」
「笑ってる時点で言ってるようなもんだろ!!そうだよあんたに会わないからって子供っぽいパンツ履いてたよ悪いかよ!!!」
「ちょ…ちょっと落ち着いて神無ちゃ、ぶふっ」
「笑うなーーーーーーっ!!!」
勢いに耐え切れず吹き出した縞斑の胸を叩いた神無は、えぐえぐと泣きべそをかいて真っ赤な顔で俯いた。
そんな彼の手を取って宥めた縞斑は、頬を伝う大粒の涙を袖で拭いながら声を掛ける。
「これ、いつ買ったの?」
「……ちょっと前に、酔っ払って…」
「ディーノちゃんだーって嬉しくなった?」
「うぐぅ……」
図星を突かれて俯く神無を見ていた縞斑は今日は中断すべきかと悩んだが、このままでは神無の気が済まないだろうと思い直して頭を撫でた。
「今日は急だし仕方ないでしょ。」
「うー……」
「ほら、腰浮かせて。脱がせられないから。」
「うぅ"ー………」
泣きべそをかいた神無は、それでも呆れることなく続けてくれるらしい縞斑に甘えて腰を浮かせる。
両足から抜き取られてシーツの上に置かれた恐竜の呑気な顔を睨みつけた彼は、せめてもの八つ当たりに下着をベッド下へと蹴り落とすのだった。
※
「ぶははははは!!!!」
ショッピングモールの喫茶店の片隅にて、人で賑わっているのを良いことに聖心はコーヒーを吹き出して笑いながら机へと突っ伏した。
隣で複雑な表情を浮かべて腕を組む帰代は、向かいの席で涙目のままパフェを頬張る神無を見つめる。
「はははっ!!はぁ…はぁ……な、なるほどね、それでのび太くんみたく泣きながら来たんだ?」
予定よりも一日早く過去へやってきた神無は、泣きながら宿舎にいた非番の聖と帰代の裾を引いて「勝負下着を選んでほしい」と頼み込んだのだ。
事情を聞き出せそうにない泣きじゃくる神無をみたふたりは、ひとまず彼の希望通り近くのショッピングモールに移動して聖の指導のもと数枚の下着を見繕った。
その後、帰代の奢りでパフェにありついてようやく泣き止んだ神無にふたりはここに至るまでの経緯を聞かされたのである。
「笑いごとじゃないもん…ほんとに恥ずかしかったんだもん……」
「まぁね、まるっきり無いとは言えないミスだから気にすんなって気持ちもあるけど、相手がこうも年上じゃあねぇ……って変ちゃん大丈夫?」
「……………うるせぇ。」
共感するように頷く聖の一方、なんとも言えない複雑な表情を浮かべる帰代は、さながら娘の性事情を赤裸々に聞いてしまった母親の気分らしい。
「まぁでも、これだけ買えば大丈夫でしょ。むしろ買いすぎヤる気満々なくらい?」
「…おい。」
「冗談だってー変ちゃんは細かいなぁ。」
過保護な帰代に苦笑いを浮かべた聖は、改めて神無の隣に置かれた大きな紙袋に視線を向けて笑った。
あれだけ何枚も買えば勝負日に誤って履くことはないだろう。万が一のために予備を持ち歩くつもりだろうかと考える聖に、神無はふるふると首を振って顔を上げる。
「…ううん、これで毎日履けるから。」
「え?」
「不測の事態に備えて…如何なる時も勝負できるようにしないと……」
「…あー……」
拳を固めて呟く神無の意志は強く、めらめらと名誉挽回に燃える彼の姿を前に聖は思わず言葉に詰まった。
「……そうじゃないだろ、勝負下着って。」
「まぁ……乙女は毎日が戦いといいますし…?」
眉を寄せて聖の肩を叩いた帰代は、神無に正しい知識を与えるべきか悩んでひそひそと呟く。
半笑いの聖は神無の認識の訂正を縞斑に任せて、目の前で打倒縞斑と言わんばかりに意気込む神無を微笑ましく眺めた。
「よし…いつでも来いよだらだら先輩!!」
高らかな宣言も、騒がしい昼間の店内に消えていく。
過去の世界で行われた噂話は果たして、縞斑にくしゃみを届けるのだろうか。
神無が帰ったら聞いてみようと考えた聖は、ますます複雑な表情を浮かべる帰代の肩を軽く叩いてコーヒーを傾けるのだった。
終