ピクスク様のオールジャンルイベント『本を作るための、締切をつくる為の、イベント』参加作品の3作目です。
心身共に結ばれてからの、反転ドラヒナで、夏の終わり、秋の始まりを感じて頂ければ…と思います。
反転なのに、彼女が大人になってきた時間軸なので、甘めでドラルクさんが負けております。
他の反転ドラヒナのお話は、ここから読めます→https://privatter.net/category/50931
@kw42431393
反転ドラルク:
強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。彼女を自分に溺れさせようとしている内に、彼女の血以外受け付けなくなる程、自分の方がのめり込んでしまった。
ジョンやロナルドの助けもあって、彼女とは両想いとなり、「両種族の抗争が終結したら血族になる」という契約を交わし、抗争終結に協力する。
下等吸血鬼など話し合いが通じない相手へのお野蛮担当。
反転ヒナイチ:
吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、さらに快楽堕ち一歩手前までなる。
ジョンやロナルドの助けもあって、依存から愛情に移行するまで成長する。市民の警護や避難の担当。
反転ジョン:
ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
主夫婦がヤンデレ同士なので、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。
みっぴきのバランサー。
反転ロナルド:
全ての吸血鬼と友人になれる世界を作るのが夢の退治人。
戦闘に参加しないが、お話合いという必殺技を使う。最終的にお嬢が反転してゴリラになるのは、内緒。
両種族の共生の為には吸血鬼、吸対、退治人の連携が不可欠な為、仲介者として奔走している。
最強のお嬢で、みっぴきの切り札。
リリリリ…
リーン…リーン…
チーチーチー…
日中は今でも焼けつく様な日差しだが、朝晩涼しい風が吹く様になってきた。
何より、虫の鳴き声がする…いや。
「フフ。お前もお茶会に招待されに来たのか?」
テーブルの上でピョンピョンと跳ねるコオロギを、指先でつつく。彼は警戒する様に、後ずさりすると草むらに逃げて行ってしまった。
「もう、夏も終わり…もうすぐ、また会えるな。」
そう言って、頭上を仰ぐ。庭園のテーブルを覆う様に茂っている、金木犀が目に入った。
あと、2週間も経てば、よい香りと共に、綺麗な橙色の花を見せてくれるのだろう。
『君は、何を挿しても似合う。つくづく、飾り甲斐のあるお嬢さんだとも。』
去年、そう言われた時は怒鳴って、挿されたこの花を地面に叩きつけたものだ。
私の心身を傷つけて、誇りを奪った化け物が、どの口で…と。
時が経てば変わるものだ、今となっては…
「ヌヌイヌヌン、ヌーヌヌヌ?」
「ん、何でもないぞ。もうすぐ、金木犀が咲くんだな…そう思っただけだ。」
「この暑さにも負けずに、今年も花芽を付けたのだ。我々と比べ物にならぬほど、強いものだよ。」
ジョンに続いて、姿を現したドラルクが、テーブルにクッキーを紅茶を並べてくれる。
さっきまで、彼と花壇の世話をしていたのだ。
元々、ふらりと庭いじりに出て行ってしまうので、監視任務として同行していただけだった。
いつしか手持ち無沙汰に感じて、手伝う様になって…今は、私用の花壇まで貰ってる。分からない事は多いが、嫌な気分ではない。むしろ、楽しく感じる様になってきたぐらいだ。
「金木犀か…勿論、受け取ってくれるだろうね?」
揶揄う様な笑いに、苦笑する。状況的に仕方なかったとはいえ…今も意地悪な奴だ。
今の私が、断る訳がない事も知っているだろうに…。
「あぁ、今回はな。綺麗に咲くといいが…。」
金木犀の花言葉は色々あるが、『気高い人』『初恋』『陶酔』『真実の愛』『誘惑』。
初めて陶酔するほど、自分を魅惑させる女性。真実の愛を捧げるに値する気高い人…気障ったらしいと思うが、そういうニュアンスで、髪に挿してくれたのだ。
紆余屈折あって、お互いの心を打ち明け合い、想い合う様になった今ならば…すんなりその言葉と共に、受け入れられるだろう。
「ロナルドは…?」
ロナ戦の関係で、オータムに顔出ししてきた帰りに、ここに寄ってくれるという。
彼自身、個人事務所の経営から、地域活動…そして、両種族の共生の時代を築くという目的の為に、いつ休んでいるのか分からない程、動いてくれている。
だから、違う組織と種族に属する三人と一匹で過ごす時間が、貴重に思える。彼が来るのが、私達も楽しみで仕方がないのだ。
今回は、苦労したみたいヌね。ロナルドくんが、締切ギリギリなんて珍しいヌ。
「ロナルドと一緒に、ジョン達も他県に応援に行っていたのものな。仕方ないか。」
「あぁ、思ったより面倒な案件だったよ。彼なら、もうすぐ来ると連絡があった。先におあがり。」
ドラルクが示したのは、彼お手製の最高のクッキーと紅茶。
気の置けない者達と大事に世話をされた花を見て、涼しい風と虫たちの声を堪能する。
こんな贅沢な時間だからこそ、揃って皆で食べたい…そう思う。
「いや、大丈夫だ。ロナルドとも一緒に食べたいから、私は待つぞ。」
「それは、それは…それまで、お腹が持てばいいがね。」
「ヌフフフ」
揶揄う様に言われて、ムッとする。
多少、図星なのもある…だから、私からお返しだ。
「おっと、何をするのかね?」
不意をついて、クラバットを掴んで引き寄せる。そして、その胸元に白いトルコキキョウを挿した。
これまでは私がされる側だったが、その花は、今の私が育てた花だ。
詳しいお前の事だから、説明しなくても分かってくれるよな?
「嬉しいね…いつも、私から言ってばかりだから。」
白いトルコキキョウの花言葉は、『永遠の愛』。
今はまだ、限りある昼の世界にいるけど…いつかは、お前の血を受け入れると決めているから。
永遠に、それをあげられる自信があるから。
「ヒナイチくん…」
顎に手をかけられる…今は歓迎している心地に、うっとりと目を閉じる。
今は安心するお香の様な香りが、鼻腔をついて…
『おこんばんは。遅くなりまして、申し訳ありませんわ。』
遠くから聞こえてきた、私達を支え続けてくれる友人の声。
待っていた時間に、嬉しさがこみ上げる。
「あ、ロナルドだ!」
「こ、これ。君ときたら…折角のムードだったのに。」
見上げると、興を削がれて口を尖らした209歳の吸血鬼と、困った顔をした優しいマジロの顔。
思わず、笑みが漏れる。
「そんな顔をするな。将来の私達に、時間はいくらでもある。とりあえず、今回はこれで我慢しろ。」
改めてクラバットを引き寄せて、彼に軽いキスをする。
いつも負けてばかりだから、してやったり…というものだ。
「フン…仕方がない。次回は、一本取らせてやらなければいいだけだ。」
ドラルク様も、諦めるヌ。ヒナイチくんは、ドラルク様が思っているより大人になってヌよ?
物足りなそうな彼と、そんな主を窘めるジョン。
この風景にも、いつしか慣れてしまったものだ。
「残念だな。次だって、私も負けてやらないぞ。」
そんな主従を庭園に置いて、私はロナルドを迎えに入り口へと足を向けた。