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最後の最後まで

全体公開 人魚姫ドラヒナ 6875文字
2024-08-29 17:55:02

続きもので書いている、人魚姫ドラヒナのお話です。
この話(『魔女達の執念が、実るまで』https://privatter.net/p/11075853)から、少し時間が経っています。
病気が進行して寝たきりとなり、ロナルド王子の説得にも応じなかった魔女を救う為、サンズ姫に頼んで作って貰った『生き人形の手』も完成し、あとは、魔女の手記や書籍から『人魚の肉を使った、例の薬』のレシピを探し出すだけとなった。
それと同時に、『陸と海を繋げる計画』は、抽選者の移動を待つだけとなり、契約完遂も目前となった。
親友の苦悩を見ておれず、弟子を案じる『北海の氷笑卿』のモノローグを追加しました。

2024/02/26 に上げました

Posted by @kw42431393

 俺には、妹のヒマリ姫がいる。
 だから、知っていたつもりなんだけどやっぱり、女ってのは強いもんだ。つくづくそう思う。
 「なぁ、メビヤツもそう思うだろ?」   
 「ビビッ!」
 俺は長年愛用している帽子掛けのメビヤツを撫でながら、ヒナイチ達を見る。
 俺達4人と1匹の願いを叶える為に、俺達は諦めるつもりはないんだ。

 「どうです?」
 「うまいものだ。見た目じゃ、全く分からないだろうな、それに動かしやすい。」
 「祖国には、生き人形というのがありましてね。使う時の為に、ちゃんと隠しておくですよ?」
 少し前まで、ヒナイチは俺達と陸を歩けば、「今日は、あれを食べたい!」しか言わなかった。
 ドラルクの家に行けば、「魔女!今日のおやつは、何だ?」しか言わなかった。
 サンズ姫に至ってはこれ、俺の前だけなのかな?
 釣り上げたアリゲーターガーみたいに飛び跳ねて、すぐテンパっちゃって、年上の俺が守ってやらなきゃなそう思ってたんだけど。
 ヒナイチが持っている、カラクリ細工を見る。
 それを、確認する彼女たちの目は、無邪気な人魚姫と慌てん坊のくノ一ではなく

 「魔女から魔法を習っておいてよかった。お前達も予備を作っておいたらどうだ?いつでも、私が魔法で動かせる様にしてやるからな!」
 「こええ!!そういう事を、しれっと言うなよ。」
 あ~、見直してやろうと思ってたのに。こういう所、ヒナイチも人外なんだって思う。
 そりゃ助かるけどよ、あってたまるもんか。



 「あ~、ヒナイチ。ドラルクは、相変わらずか?」
 「ロナルド王子が言ってくれる前から、私も言ってるが聞き入れない。あいつは魔女として、名前が売れ過ぎた。しがらみが強いんだ。今や、私も魔女の一人だからな分かるんだ。」
 その後に続けた言葉。確かに、頑固では片づけられない内容だった。

 『私は、魔女達の協会に属している身なのだよ。そして、先日ヒナイチ姫にも登録させた何かあっても、協会に守って貰える様に。』
 『あぁ、あの胡散臭い連中な。陸にもいるぜ、それがどうした?』
 『おそらく、陸の魔女達もそうだろう。私達には私達のルールがあり、それを破る事は相当な覚悟がいるのだ。粛清される者も珍しくない。病気になった、状況が変わった、臨機応変に対応したそれは、免罪符にならない。』
 病気で死ぬか、契約違反で制裁を受けるか、属する世界から放逐されるか
 いずれにしても、結末は変わらないからだ、とか言いやがる。
 『じゃあ、イナ海国かシンヨコ王国に来い!俺達が守ってやるから。体が治るまで、そうしろよ!』
 『分かってないね我々を舐めないで貰いたい。仮に、地下牢に閉じ込めておいても、対象を消す方法なんていくらでもあるのさ。私はこの世界に染まり過ぎたから、ちょっとやそっとじゃ、足を洗わせて貰えないのだよ。』

  シンヨコ王国は、元々人ならざる者達にも開放的な国だ。
 他の地域で受け入れられない異端者、排斥された者、争いを嫌って逃げた者達が流れ着くま、最後のたまり場っていうか。
 そんな奴らだから、住んでいる国民達と揉め事なんてザラだ。
 その反面、俺もそうだけど国民達も慣れてしまって、命に関わらない限り、「あ~、いつものかな?」で済ませてくれてる。
 ご多分に漏れず、俺も慣れてるからな。サンズ姫からドラルクがやってきた悪事を聞いても、さほど驚きはしなかった。
 彼らにとって普通が、俺達には異常なんて、ザラだからだ。

 元々、あいつとは、腐れ縁みたいなもんでな。
 兄貴を通じて、料理に使う食材や、調剤に使うサンプルを調達するのに、シンヨコ王国第2王子である俺を、あいつが指名してきてからだっけ。
 体力がないので、退治仕事に同行させると邪魔な所もあるが、あいつの魔法は便利なもんだ。野宿や移動、その他諸々あいつの魔法に、助けて貰ってた所も多いんだよ。
 人魚もあるのかな?人外ってのは、その属してる種族だの、組織だの、国だので面倒くさいルールがあったりする。俺達には、理解出来ねえよ。
 あんなクソみたいな生態で、どうやって存続してきたんだろう、ってのもあるんだ。
 確実なのは、連中と約束特に書面にした契約。これは、彼らとつき合う上で、かなりの比重を占めている。

 『仮に、私達が何者であったとしても、これまでと変わらないつき合いを望んでいる。』

 ヒナイチと初めて会った日に、ドラルクが、ウミガラスにつけて寄越した手紙の内容。
 それに同意したから、俺とサンズ姫は、こうしてここにいる。
 陸と海を繋げるこの計画に当たって、色々議論もしたし、お互い実験台にもなったし、必要な物を揃えてきたり途中で、息抜きに遊びに行ったりもしたよな。
 4人と1匹でいる時間は、楽しかった。
 しかも、これが成功すると、両国で困っている奴らの望みが叶う。祖国の経済が潤う。
 やる気出ない訳が、ないだろ?
 きっと、この時間が、一番充実してたんじゃねえかな。

 ドラルクがいつも飲んでいたあの人魚の肉で作った薬がなくなって、具合が悪くなるまでだがな。



 「そこまで知っても、絶交しないんだ。優しいな、ロナルド王子は。」
 「そりゃ、そうですよ!結婚する前から、サンズちゃんが憧れていた人です!!今だって、ずっと素敵な人です!」

 この前、俺が乗り込んでから、またさらに時間が経ってとうとうあいつは、深海でもベッドから起き上がれなくなった。
 だから、今回もジョンは来てない。ドラルクの身の回りの世話をしているんだ。
 今日、最初に移動する希望者の抽選が済んだ。後は、彼らがこの国と、イナ海国に集まるのを待つだけだ。
 契約は絶対に完遂させる、今までの悪事を清算する、対価にヒナイチを嫁に迎え入れる一番の立役者で、それを望んでいた奴が、それを見る事も出来ない。
 辛いよな。

 「そうでもない、納得はしてねえ。治療薬出来たら、遠慮なく、ぶん殴ってやるあれ?ヒナイチ。それは?」
 あいつが取り出したのは、ドラルクが作ったクッキーだ。
 あいつは、寝たきりなのに
 「契約は、絶対だからな。魔法はまだ使えるから、遠隔操作で、お菓子は焼いてくれてるんだ。ロナルド王子、サンズニャン、一緒に食べよう。」
 ヒナイチが差し出したクッキーを、俺も一つ摘まむ。味は、いつもと変わらなかった。
 こういう所は、さすがだと思う。
 だから、『バシッと言ってやる!』と乗り込んだ所で、覆す事は出来なかったんだ。
 「最近、魔女は塩クッキーにハマってるのかな?時々、しょっぱいのが混ざってるんだ。でも、美味しいぞ。」
 こんな時でも、目の前のヒナイチのアンテナが、くるりとハートマークを描く。それでも
 俺は、サンズ姫と顔を見合わせる。

 『魔女として一人前になったら二つ名に、『太陽の魔女』なんてどうかね?』

 ドラ公がそう言ったはずの笑顔は、やはり暗かった。
 あのバカあのクソ野郎。
 「そうだな。いつも通り、うめえ。」
 無理すんな、バカ。このクッキー、しょっぱくねえよ。
 時々、しょっぱいのは俺達がいない日に、泣いてんだろ?
 「あのタコ。やっぱり、治ったら本気でボコボコにしてやるぜ。」
 「ロナルド王子、そう言うな。でも、ありがとう。お前も諦めてないんだな。」
 「諦めねえよ。ドラルクと違って、俺達は動けるんだ。あいつだって、せめて契約完遂だけは見届けるって、足掻いてる。だから、諦めねえ。」

 これから、新しい面倒事が増えるんだよ。お前にだって、働いて貰うぜ。
 丸投げなんて、許さねえ。



 「ところで、ヒナイチ。」
 サンズ姫が、威儀を正してヒナイチに向き直る。
 サンズ姫は、最初ヒナイチに懐かれて困っていたが、最近、照れながら『親友』と言ってる事がある。会わせてよかったな俺は、本当にそう思う。
 それに、彼女は、少し前にサンガ国が疫病に襲われた時、精鋭を連れて蓬莱島に赴き、目的の仙人と会えたたった一人の人物だ。彼の指示に従って、万能薬の材料を集めた人物でもある。
 そして、祖国を救った英雄でもあるんだ。
 その万能薬は、長年ドラルクが探していたものだ。サンズ姫は、それを手にした事がある。
 それが、大きな強みになるはずだ。

 「ドラルクが、人魚の肉で作った薬の配合それを記したメモや手記は、まだ見つかりませんか?」
 「うん最近、寝込んでいる事が多いから、探しているんだけど。」
 「おそらく、ロナルド王子に調達させていたサブの材料は、人魚の肉の効果を増幅させる為に、使っていたはずです。お前の肉でも、あいつを治す事はできねーです。でも、『健康体でいる時間』を伸ばすのに、こした事はありません。」
 「分かったそろそろ、私は深海に戻る。あと、これ。」
 そう言って、ヒナイチは封筒から何枚か洋紙皮を取り出した。

 『武芸一辺倒だったから、魔法の細かい所はどうも苦手だ。』

 ついこの間まで、そう言っていたあいつが、たいしたもんだよな。
 「明日までに、解読してやりますよ。いつも、世話を焼かせてくれますね。」
 「すまないな。じゃあ、また明日!」
 「おう、明日はイナ海国だったな。じゃあな!」

  俺達はヒナイチを見送ると、サンズ姫の手元の書類を覗き込んだ。
 「すごいもんだな。目で見た物を、紙に転写する魔法だっけか。」
 ドラルクの私室で見つけた、重要そうなメモや手記は、難しいものが多いらしい。
 だから、ヒナイチが紙に転写して、サンズ姫に解析して貰っているんだ。
 「あいつは悪事も多く働いていますが、多くの者に恩も売ってるです。有事の際は協力する様、指示されていた者も、いたみたいですね。蓬莱島は、あのガリヒョロが上陸出来る場所ではありません。が、彼らの協力を得れば、自身の魔力と併せて不可能でないと、踏んだのでしょう。」
 オレンジ色に輝く洋紙皮に書かれていたのは、ドラルクの筆跡で書かれた計画書だ。
 蓬莱島の地図、上陸方法、目的の人物のいる地形、集める材料、予想日数本気で、自分が行くつもりだったのが分かる。
 「何よりすげえのは、さあいつ。この間まで、本気でガキだったんスよ。それが、惚れた男を助ける為に、ここまでする様になったんだ。信じられなくって、ですね。」
 「男の趣味は、ひでーとしか言えませんけどね。あの魔女がどうなろうと、サンズちゃんには、ど、どーでもいいですけど!ヒナイチは、サンズちゃんの大事な友人です。それに実は、ちょっと約束したですよ。」

 『なぁ、サンズ。この計画が終わってからも、皆で遊びに行ったりしような?』
 『簡単に言うなです、この能天気女。頭、お花畑かよ。』
 『ロナルド王子との子供達も連れて、ドラルクの作ったお弁当持って、山に行ったり、サンゴ礁でピクニックしてもいいな!』
 『に゛ゃ~!!勝手に決めるなであれ?お前は、どうなんですか?あのタコとその。』
 『ん私もドラルクも、長命種だからな。私の繁殖期は、もうすぐ来るんだけど間に合わないと思う。次のチャンスは、何十年後かも本当は、サンズとママ友になりたかったんだけど、無理だろうなって。』
 『は、繁殖期とか言うなです!!これだから、てめーら人外は、デリカシーってもんが!!い、いいですよ、約束してやっても!いつか、お前とあいつの子供達も連れて、遊びに行きましょう。』

 「ヒナイチと、そういう約束をしたんです。だから、魔女には元気になって貰わないと、困りますです。」
 「ですね、サンズ姫。ヒナイチに燕の子安貝を、あげたんでしたっけ?」
 燕の子安貝は、例の万能薬を作る為に必要なもんだ。だけど、全部使う訳じゃない。
 一部を砕いて、二人が煎じて飲めばあ、うん。そういう効果が、あるんだってよ。
 赤ちゃんは必ず健康に生まれてくるし、長命種のドラルク達は子供が出来にくいらしいんだけど、それも確実になるわ、訳で。
 「そ、そうですあいつにあげた、子安貝の使い方を、教えてやったです!」
 「あ、アハハハ。は、恥ずかしいっスね、俺達も頑張らないと!ドラルクに、先を越されたくないなぁ。」
 「だ、大丈夫ですよ。サンズちゃん達も、二人とタイミングを合わせて飲めば。」
 猫みたいに、縮こまった彼女を抱き寄せる。
 サンズ姫とヒナイチの描いた未来予想図それは、俺とドラルクの望んだ未来でもあるはず。
 未来のビジョンが固まると、俄然やる気が出るもんだ。
 「ヒナイチ。絶対、そうしようぜ。物語と現実は、違うもんな。」

 物語の人魚姫は、恋が叶わず儚い泡になる。
 でも、俺達が知っている人魚姫は自分の身を削ってでも、相手を苦しめる事になっても、欲しい者を手に入れる強い少女なんだから。

 


 
 「よく来てくれたね、私の可愛い人。」 
 「ノースディン様、お会いしとうございました。」
 「こちらこそ、どんなに貴女の顔を見たかった事か。やむを得ないとはいえ、こんな狭い所に押し込めた、無礼を許して頂きたい。」
 「貴方にお会いする為なら、私は命をも厭いません。」

 使いにやったヨロイザメが、持ち帰った木箱を開ける。
 中で妖艶に笑っているのはいつだったか舞踏会で声をかけた事のある、さる貴族令嬢。
 僅かながら、ヒナイチ姫同様、王族の血を引いている人魚だ。
 弟子の延命に少しでも役立つ様にと、選びに選んだ『薬剤』だ。
 
 過去の思い出したくもない経験から、私自身は、陸の者達と関わりの深い表層の者達と何より、陸の人間共に吐き気を催す様な、嫌悪感を持っている。
 近頃、弟子は表層や陸の王族の者達と、『陸と海を繋げる計画』とやらに勤しんでいるが、私には理解できない。現に、目の前のこの令嬢とて
 「フフフいい子だ。貴女は、たった今、私に会う為に命をも厭わないと、おっしゃいましたね?その言葉を覆す事は、決して出来ない。どんな惨い運命が待っていたとしても、その美しい笑顔を崩す事も決してない。その決意があるのなら、この契約書にサインをしておくれ。」
 「はい。」
 目の前の女性も、姿形は美しい。知性も教養も申し分ない。
 しかし、少し魅了をかけて愛を囁いただけで、簡単に堕ちた女性だ。
 目に付く様に、『竜の血族の嫡孫であるドラルクの命を救う為に、この骨肉全てを捧げる事を了承します。』と書いている契約書に、躊躇いなくサインをした。
 愚かな女だだから、期待の眼差しで見上げる令嬢を引き寄せる。
 彼女は『私への純粋な愛』の為に、命を捧げてくれたのだ。感謝の念と、この世の名残にささやかな夢を与えても、罰は当たらないだろう。
 「ありがとう、愛しい人。それではご褒美をあげよう。永遠の眠りを迎える前に。」
 深く口づけながら、手を滑らせて鱗の下を探る。
 本来、卵を産む時にしか使わないはずの、その場所を
 「あっふぅん。」
 グチュッと、淫らな音が鳴る。艶めかし気に、尾鰭がくねる。
 貞淑を売りにしているはずの、品性も礼節もある姫君達とて、一皮剥けばただの
 「くっ、うぅの、ノースデあっあいしてい!!」
 吐き気がする愚かな弟子よ。
 貴様は、『命を捨ててでも手に入れたい女性』と、イナ海国の姫君に入れ揚げている様だがそのヒナイチ姫を、私の前に連れてきてみろ。
 「っあぁぁん!!」
 どうせ、こんなものだ。だから、私にヒナイチ姫を紹介しないのだろう?
 『太陽の様なお姫様』が、ただの『淫乱な雌』に成り下がる姿を、見たくないからだ。
 「さてもう、満足しただろう?さようなら貴女の骨肉は、少しでも長く、大切に使わせて頂くとしよう。」
 この程度の者達など、何人切り刻もうと、どうという事はない。
 私にとって、この世で大切な者達は、私を地獄から救ってくれたドラウスと竜大公様、その息子であるお前だ。私の肉でお前を助けられるならと、何度悩んだ事だろう。

 「さて、そろそろ行くか。死に損ないの不肖の弟子を、ここに連れて来なければな。」

 果てて気を失った彼女を、再び木箱に戻す。その箱ごと、氷漬けにする。。
 他にこれを解除できるのは、私から教えを受け、私と近い魔力を持つドラルクしかいない。
 倉庫や牢に、入れるほどの事もあるまい。仮に、取り戻しに来た者がいたとしても、何も出来まい。

 私は木箱を調剤室の片隅に置いて、自分の居城を後にした。


 
 


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