@azisaitsumuri
ゆっくりも優しくも丁寧も気に入らないらしい男だ。
「んん、ひどくして。」
その我儘の内容が、逆だったら訊いてやったのにと、毎度難儀なものだと思う。
「だめだ。怪我させるわけにはいかない。」
「いいから。いたくしてください。」
「よくない。おまえだって、良くないわけじゃねえだろ。」
治療の処置がしづらいところの怪我は良くない。
擦り付ける欲が、せめて痛みではなく、優しくあってほしい。
「怪我したら、ずっと痛い儘になっちまうだろ。」
「いいの。」
「なんで。」
「痛いの残れば、おまえの気持ち良いのがずっと体に残るから。」
それは、せめて痛みでなければ良いと思うのに。
「……もっと別のところから、おれの気持ちを受け取ってほしいところだが。」
男の細い首の根元、擦り付いて。噛み付いた。
びくりと跳ねた体から身を起こせば。
「どうだ?」
「もっと」
「……次、おまえが気持ち良くなるタイミングで、一緒に噛んで遣るよ。」
そう言えば、見下ろした顔は安心したように弛緩したようだった。
紛らわすように唇を舐めた。効果があるどころか胸の辺りがよけいにぐずぐずになるような気がした。
噛んだ自分の口の中にも気持ち良いのが残ってるんだから、こっちも大概なんだよなあ。