X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

元気が出る写真を送ってほしい

全体公開 SS/SSS 965文字
2024-09-05 18:10:55

SS

Posted by @otohitoe_



「元気が出る写真を送ってほしい」

アジラフェルは電話の向こうのクロウリーに頼んでみた。最近とうとう所有し始めたスマートフォン。特に写真や映像がすぐ記録できる機能がお気に入りで、近頃は撮り溜めたそれを眺めて夜を過ごすのが定番だった。
ふと、アジラフェルよりもずっと早くにこれを使っていたクロウリーなら、きっと写真もたくさん撮ってあるだろうと思いついての電話だった。

元気が出る写真?」
「そう」
「おまえの?」
「そう。わたしの元気が出そうな写真」
………
「クロウリー?」
「待ってろ」

クロウリーは何故か数呼吸分の沈黙を挟んで電話を切った。少し気になるものの、アジラフェルは期待に胸を膨らませた。一体どんな写真が送られてくるのだろうとスマートフォンを両手に持ったままわくわくしていた。
アジラフェルにとって一番効果的な写真といえば勿論クロウリーだ。セルフィーをするイメージはあまり無いが、真相はともかくそれを考案したのはクロウリーだという噂を耳にしたことがあるし、今から撮って送ってくれるかもしれない。
まあそれは期待しすぎにしても、楽しみなのは間違いない。少しひねくれたところがあるから、少しふざけてたり、わたしが怒らないぎりぎりのラインを攻めたほんのちょっと良くない写真が送られてきたりするのかも。
そうしたらわたしは、すぐにまたクロウリーに電話を掛けて、叱るふりをして話をする。保存しておいても罰が下らない程度の写真であればいいんだけど
そうつらつらと想像を膨らませては既に楽しんでいたアジラフェルだったが、突然大きな音を立てて開いた書店の扉がそれを遮った。ここは交番でも病院でもない。そんなふうに慌ただしく訪れてくる人物なんて大体決まってる。

「何かあったのか?」

そこには真剣な表情で真っすぐにアジラフェルを見つめる“本物”がいた。
その真に迫った様子に、クロウリーは元気をなくしてしまうような何か悲しい出来事がアジラフェルにあったと勘違いしたのだとすぐに覚った。
アジラフェルは笑った。当然クロウリーは困惑した様子だった。それもまた愛おしかった。
スマートフォンに写真は増えなかったけれど、アジラフェルは期待していたよりもずっと元気が出た。









© 2026 Privatter All Rights Reserved.