X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

とある夜の四方天慈巳。

全体公開 自キャラ 1737文字
2024-09-22 06:40:55

「銀蝋と怪盗団」を終えて、四方天慈巳が思うこと。

CoCシナリオ「サイレン清掃会社」と「銀蝋と怪盗団」のネタバレがありますのでご注意を。
四方天慈巳の思いと、彼女の過去。

次ページに文章と画像があります。


……納得いかねー

大正時代から帰ってきた四方天は、心が晴れなかった。
こんな気持ちは人生で初めてだ。いつものように、いろんなことに対する怒りはある。
でもそれはいい。慣れてる。

…………

じゃあ、なんでこんなに気分が上がらないのだろうか。
……いや、原因はわかっているのだ。

なんで、スダとナナみたいなヤツが死ななきゃなんねーんだよ」

大正時代で出会った記者たち。
四方天は、彼らに起きた事態をあまり正確に飲み込めていない。
精神転移で犠牲にされたのだとは聞いた。だが、それ以上は詳しく理解していない。
はっきりしているのは、男爵のせいで理不尽に死んでしまったことだけだ。

……はっ。誰かがあっけなく殺されるなんて、散々見てきたじゃねーか」

自嘲気味に笑う。そう。老若男女問わず多くの死を見てきた。
嫌な思いは今でもするが、いちいち落ち込むようなことは一度も無かった。
それなのにどうして今更、何度も「納得いかない」と思ってしまうのか。

四方天にはわからない。自分の感情が、把握できない。
「時間がマシにする」ものだとも、「一生癒えない傷」だとも気付いていない。
ただ、もやもやを抱えたまま夜を過ごしている。



四方天は、親からろくに愛されなかった。

父親は、家庭のことなど放っておいてどこに居るんだかわからないことが多かった。
たまに帰ってきては数日泊まり、娘が家で起きてるというのに母親と体を重ね、
そして何を理由にしてか、いつかまたどこかへ行く。

母親は、全く笑わない人だった。父親が置いていく現金を使って生活し、
父親が帰ってきている間だけ「女」となり、娘と2人でいる時は感情が無いかのように生きる。

ちなみに、「四方天」とは母親の名字だ。父親は「梧桐武大(ごどうたけひろ)」と言うらしい。
正式な結婚をしていないのだとかで、四方天は一緒に暮らす母の名字を名乗っていた。

別に、両親に何かされたわけでもない。苦しかったわけでもない。
でも、とにかく、寂しかった。


四方天は、父親の遺伝子を色濃く受け継いでいる。髪色と眼の色は、父親に多少似ている。
一度だけ父親から聞いたことがあるのは、父親はどこかの国とのハーフらしく、
生まれつき「最強の体」で、誰にも負けない自信がある……という話だった。
その遺伝子を受け継いだ四方天は、幼い頃から非常に高い身体能力を有している。
家ですることもないので、近くの公園や山で思うがままに動き回る日々を過ごしていた。

そして「だからこそ」、教団に狙われ、実験体とされた。



そんな四方天は、教団から逃げ出し、サイレン清掃会社に身を置く今、
両親のことを忘れるようにしている。いや、過去のことは思い出さないようにしている。
青春などという心地の良い言葉と縁も無く、夢も希望も見えない中で、今まで生きてきた。
そんな彼女にとって過去など、思い出す意味も無いものだった。

だから、自分の感情にも気付けない。

四方天は、自分がなれなかった「夢や希望を持って生きる未成年」と出会うと、
憧れのような感情を持って、無意識に親しく想ってしまうクセがある。
ただ何回か接しただけの記者たちにさえ、気付かないうちに深い想いを抱いている。

必死に守ろうとして、必死に生かそうとして。

守れなかったのだ。



人が死ぬなんて、普通のことだ。自分も、どうせあっけなく死ぬ。
そう考えている四方天は、自分がどれほど大きな感情……
どれほどの「悲しみ」を、心に携えているのか自覚することが叶わない。

ただ自然の摂理として死んだはずの青年たちのことを、実は深く愛し、生を強く願っていた。
そんな自分が居たことを、四方天は知らないのだ。

……わけわかんねーよ

……彼女は、"大切な青年たち"のことを想わずにはいられなかった。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.