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予習復讐

全体公開 2 5 10412文字
2024-09-23 23:02:50

何やかんやあっておしおきえっち。
何かあればすぐ消します

Posted by @yhchfysk

「ぁ、は、……ふぅ、ぁっう」

 ぐらぐらと揺れる視界に映るのは見慣れた天井と、随分前に友人から恋人に関係性が変化した相手の顔。
 不安定な視界のせいで表情はよく見えないものの、万葉の息遣いと平蔵の下腹部がきゅうと咥えているものが興奮を如実に物語っていて、自慢の元友人が平蔵相手の行為に没頭している事実ににんまりする。
 挿入前から限界が近かったのだろう、平蔵の快楽を優先するように浅く動いていた男は息遣いをくぅっと堪えさせて自ら猛りを引き抜く。するとすぐに熱は弾けて、平蔵の腹にぱたぱたと迸りが飛んだ。
 皮膚の上に散るそれらを眺めながら「今日もか」なんて内心独り言ちる。これまで万葉は平蔵のなかで出したことがない。

『腹の中に出したまま放置すると下すらしい』
『避妊具を使えば大丈夫らしいけど、購入するにしても僕達って目立つしなぁ』
『拙者は気にせぬよ』
『君の方が気にするべきでしょ』

 初めて二人で男同士のやり方を調べた時の会話だ。
 中に出されても時間を置かずに処置すれば大丈夫そうなので平蔵はいいんじゃないかと言ったのだが、「ただでさえ平蔵側の方が負担になるのだから」と万葉が頑として首を横に振った。
 役割分担に関しては互いの意見をせーので言い合った際に「平蔵が望むならどちらでも」なスタンスの万葉と「人体の可能性への好奇心が抑えきれない」とシリアスに言い切った平蔵によってあっさり決まり、今日までお互い探り合ったり意見交換したりして平和にやってきたと思う。
 そんな平和そのものな日々の中でも平蔵には不満があった。不満というか、これは平蔵が一方的にモヤモヤしている事柄であるのだが、閨について二人は最初にある約束をしていた。

『閨に関して他者に相談したり、独断専行で調べたりしないこと。調べる時は二人で話し合いながら手探りしていくこと』

 これを決めた理由はいくつもあるが、その内ひとつは前述した通り、二人揃って目立つことだ。
 雷電将軍の刃を受け止めた万葉の知名度はもとより、平蔵もまた名を広めるべく悪を断じ善行を積んでいるおかげで、良くも悪くも歩いているだけで注目されやすい。ゆえに貸本屋で下手な本を手に取ろうものならどんな影響があるかを考えると無暗な行動は出来なかった。
 しかし職業柄平蔵の年齢を気遣ってか、あるいは日頃の行いから勝手に気まずさを覚えるせいか、周囲が平蔵の耳が届く範囲で生々しい話題を出さない一方で、日々むくつけき筋骨隆々の水夫達に囲まれている万葉は常に下ネタを回収しやすい環境に恵まれている。要するに耳年間なのだ。
 そうして万葉が仕入れてきた話を二人で手探りで実行したり、ものによっては「これはもう少し体が慣れてからにしよう」と後回しにしたりして穏やかに情を交わしているのだが、それはそうと平蔵の心境はもどかしい。

「次は何を仕入れてくるのやら」

 水夫達とて常に下ネタばかりを話しているわけではないし、万葉も「この話を持って行くのはやめておこう」「これは相談してみよう」と取捨選択した上で平蔵に会っているので毎度新情報があるわけではないのだが、そもそも平蔵周りには取捨選択できるだけのネタが無い。
 平蔵とて年頃なのでそういった事には興味津々だし、何より穏やかに振舞うのが常な万葉が平蔵に手を出す時の懇願するような眼差しが愛らしいのでもっと気軽に愉しみたいと思うのに、今のままでは万葉の情報頼りでもどかしい。
 万葉自身はまったく気にしないだろうし、本人からは「平蔵が気に入ってくれると嬉しい。何でも二人で相談したい」という気概しか感じないので、これはこれで平和なのだろうが……

『気持ち良いでござるな』

 頭の中にリフレインする、情事中の万葉の声。
 心底楽しそうな笑顔に恥ずかしいとか、こんな事して翌朝に響かないかなといった心配はすぐに吹っ飛んで、腹の中を丁寧に擦られる感覚まで思い起こされて心なしか後ろがきゅうと窄まる。

『無理をさせてすまぬ』
『後始末は拙者に任されよ』

 平蔵を包む布団をぽんと叩いて湯を沸かしに行く背中に、甘ったるいなぁと口元がむにゃむにゃしてしまう。
 なんだかんだで気が合うし好きなのだ。うっかり気持ち良さのあまり万葉の首元に腕を回したまま、無防備に気をやってしまう時があるくらいには。

……やっぱり相談でいいかな)

 睦言の相談をしている時は、とにかく距離が近い。
 相談を持ち掛けるのはいつも平蔵の家なので盗み聞きをされる心配もないだろうに、ぴったりと体をくっつけてくすくす笑い合いながら前回はこれが良かった、今回はこうしようと密やかに言い合う時間は格別で、気怠げな雰囲気のまま食べる夜食も最高だ。
 それらのやりとりをすっ飛ばすくらいなら、今後も相談しながらでも──

「この前引っかけたのが処女だったんだけどよ」

 木の上に登ってぼんやりと考えていたからか、平蔵に気付かぬまま根元に腰を下ろした青年達の会話が聞こえてきてあちゃーとなる。
 決意を固めようとした矢先にこれか、という気がしないでもないが、ある意味好機かもしれない。
 言ってしまえば事故なんだし、万葉もこんな風に盗み聞きして情報を仕入れているだろうからお互い様だろう。
 平蔵は黙って事の成り行きを見守ることにした。

「良かったじゃん、おぼこいの好きだろ」
「限度があるよ。マグロ過ぎて何もしてくんないし、下手でも少しくらいは積極性が欲しくなるじゃん」

 初体験の子に厳しすぎ、とけらけら笑う青年の声を聞きながら平蔵の顔は無になる。
 全部を真に受けるわけではないが、初体験……初体験でその感想に……

「俺の彼女は多少は咥えたりしてくれるけど、いつまで経っても下手だからどう言えばいいか」
「もう別れちゃえば」
「簡単に言うなぁ」

 この最低男、と詰るつもりはない。おぼこ好きはさておき、夫婦間での性交渉の不和は立派な離婚事由になる。不満があるなら新しい出会いを求めるのも、生存本能の視点で言えば間違いじゃないだろう。
 しかし平蔵にとっては大問題だった。平蔵は万葉に比べてそういった知識が不足しているし、何なら近頃においては一方的に気持ち良くされている気さえしてきた。
 万葉が手探りで発見した平蔵の急所は着実に快楽を拾って、万葉が達する波に乗るまでに何度も射精したせいで最終的に水のようになった精液をたらたらと流すだけになる、なんて事もままある。
 平蔵がそんなに頑張って膝は痛くならないか、もっと楽な姿勢は無いのかと頭を悩ませた時も嫌な顔ひとつしないで「平蔵と過ごせて嬉しいでござるよ」と、答えになってるんだかなってないんだかな返答を寄越されてしまうだけで。

「やっぱりこんな本じゃ参考にならないか」
「本まで用意した前のめりっぷりに引かれたんじゃないの」
「おう傷付くわ」

 困り果てた声とともにバサッと投げ出された本に、不法投棄だ、と呆れる気持ちを好奇心が上回る。気付けば口内に溜まっていた唾液をごくりと嚥下していた。
 男達がすっかり立ち去ってから周囲に人気が無いのを確認し、恐る恐る拾った本の中身をパラ見する。
 目次には「殿方が悦ぶ本当に気持ち良い○○」「彼女にされると嬉しい体位」などと書かれていて、タイムリーになんて物を拾ったんだと胸をざわつかせながら、気付いた時には腰に巻いた羽織で本を覆って駆け出していた。
 こんな本をこんな場所に放置していては公序良俗に反するし、せっかく出版までされた書籍がろくに読まれないまま捨てられるのは勿体ないし、偶然落下した物ではなく不法投棄された物なので拾ったところで届け出の必要もない。
 それでもなるべく人目を忍んで自宅に戻ったのち、入り口の戸に背を向ける格好で本を熟読し始める。
 武道を学んでいた身なので人体に損傷を与える急所や応急手当の方法には詳しいが、こと情事においてはとても詳しいとは口が裂けても言えない。
 あくまでも書籍は作者の周りの体験談であって、感じ入る場所やシチュエーションは人それぞれなのだから、信じ込むのは厳禁で参考程度に。というのを念頭に置きつつ「これを万葉に試したら」という想像をするだけで、何だかそわそわ胸が躍る気がした。



 くちゅり、と音を立てて湿った唇が離れる。
 口吸いの合間に鼻で息をする事も、その間に瞼を閉じて口内の感覚に集中するともっと気持ち良くなれる事も、万葉と経験してから知った事だ。

「ぅ、…………ん」

 敢えて無防備になるよう一つに縛った髪の下。首元から差し込まれた手に襟足を撫でられて、それだけでゾクゾクした感覚とともに力が抜けていく。
 平蔵を思い遣る手つきはいつも優しくて、そこから溶かされるんじゃないかってくらい甘やかされて、「気持ち良い」「嬉しい」と素直に気持ちを吐き出されてしまえば、つられて平蔵もわけがわからなくなってしまうのだ。
 しかし今日ばかりは溶かされるわけにはいかない。常に思考を巡らせる頭が馬鹿になっていく感覚も悪くはないけれど、近頃の交合はいつもそんな風だったので、理性を働かせて久方ぶりに顔を合わせる恋人の袖をぐっと掴む。

「今日は僕にやらせてくれない」
「平蔵に?」
「たまにはいいでしょ。君ばっかり僕を気持ち良くして楽しんで、ちょっとずるいよ」
「ふむ」

 どういう風の吹き回しかと探るような目をされて、しかし無粋と思ったのかすぐに首が縦に振られる。
 第一関門クリア。後は軽口っぽく「僕も慣れてるわけじゃないから、下手でも勘弁してよ」と付け加えれば「それは構わぬが……無理だけはせぬように」と困惑した顔で言われて拳を握った。
 覚悟しろ楓原万葉。全部が上手くいく保証こそ無くとも、間違っても「好意に甘えて何もしない恋人」という烙印だけは避けてやる。
 そんな思いで夜着の帯を解いてやれば、既に期待で上向いている万葉の性器が目に入った。
 平蔵のなかに入る頃にはパンパンに質量を増しているそれが今はまだ可愛らしいと言えるサイズで、これがどうしていつもあんなに膨らむかなと自らにも付いている器官に疑問が浮かぶ。

(ま、いっか)

 いつもされている手つきを思い出しながらそうっと片手を添えて、ゆっくり上下に扱けばぐっとサイズを増すそれを暫く手中で可愛がる。
 にぎにぎしているだけでは足りなくなって、そろそろ油が欲しいと思う手前で顔を下げてみれば万葉は「はて」という顔をしていて、やはり彼もこれは未経験らしいと当たりを付けてにんまりした。

「っちょ、へいぞ……!」

 清潔にされたそれの先端をぺろりと舌で舐めて、止めるのも聞かずに少しずつ口内に収めていく。
 手は睾丸や根本をやわやわと揉みながら、口からは唾液を滴らせてわざとじゅぽじゅぽと下品な音を立てて舐めて吸ってやった。
 ぴくんと万葉の尻が浮いて、感じているのかびっくりしているのかはわからないが、ひとまずインパクトは与えられたようでほっとする。
 しかしなんというか、本で読んだ印象以上にやりにくい。当然ながら唇では手のように力を込められないし、女性であれば乳房で挟んで視覚的にも刺激を与えられるのだろうが平蔵には少々厳しい。
 ならばせめて口内に広がる雄の匂いに負けじと攻め立ててやろうと脳内会議していると、肩を強く掴まれて強制的に起こされた。
 みっともなく口周りを濡らしている平蔵を至近距離で見据える万葉の瞳は真っ直ぐで、真剣というか、若干どころじゃない殺気めいたものさえ見えるような。

「誰にやられた?」
「はい?」
「拙者の居ぬ間にこのような……。どれほど恐ろしかったか」
「えーと、万葉?」

 両肩を掴む手がぶるぶる震えている。
 どうやら万葉の中で平蔵の奇行は見ず知らずの第三者に襲われて覚えたものだと結論が出たようで、平蔵が自ら調べて学習したなどとは想像もつかないようだ。これまでの関係性からすればそれも仕方ないかもしれないけれど。

「安心めされよ」
「あのさぁ」
「その者の特徴を述べよ。月の無い夜に人知れず消してくれる」
「同心の前で言うのは関心しないよ」

 ちょっと落ち着いてほしくて頬を両手でうにうにすれば、むぅとむずかって殺気を収めてくれる。
 それでも疑心に満ちた顔で「では何故」と問いかけてくる顔はまだ納得していないもので、誤魔化しきれない気配にあーーーーと明後日の方向を見てしまう。

「たまたま、本で見て」
「まさか貸本を」
「違うよ。本当にたまたまゴミ拾いした中にそういう本が落ちてて」
「それはどのような」

 まだ平蔵が事件に巻き込まれた可能性を捨てきれないといった顔で詰めてくる。そもそも平蔵がゴミ拾いをする所まではまだわかるとして、そんな物を拾ってわざわざ熟読した意味がわからないのだろう。
 もしかしたら万葉はわりと平蔵に夢を見ているのかもしれない、などと思いながら、こうなれば仕方ないので隠していた本を溜息混じりに差し出した。

「これだけど」
「ふむ」

 早速ぱらぱらと数ページ捲って、実際に内容を見ていくうちに纏っていた殺気が落ち着いていく。
 それでも納得いかない顔をしている万葉に「これ以上何を聞きたいんだ」という態度でいたら、拗ねたように眉を下げて上目遣いしてきた。うわ、かわいい。

「こういった事ならば、事前に相談してくれれば」
「そこかぁ」
「拙者も共に学べたものを……

 これまでの約束事を反故にされた気分なのだろう。そこばかりは平蔵も頭の片隅で考えていたので否定しきれず、うっと言葉を詰まらせればますます万葉の肩がしゅんと落ちる。
 これ以上落ち込ませてはせっかくの逢瀬が台無しになるので、出来ればぎりぎりまで黙っていたかった内心も白状する事にした。

「いつも万葉から、だから」
「拙者?」
「君は色んな人達から情報収集ができる環境だろうけど、僕の周りで閨の話をする人なんていないから」
「良き職場にござるな」
「そうだけど! ……いつも君頼りになっちゃってる、から」
「それは」
「何もかも新鮮な今はそれでいいかもしれない。けどそんなのがいつまでも続いたらって思うと、僕だって手の届く範囲で学んでおきたいって思うよ。それに」
「それに?」

 ここまで言うつもりは正直無かったけれど、もう言ってしまったっていいだろう。
 どのみち不法投棄されたからといって助平な本を持ち帰ってしまった事実は覆らない。

「無知だからって行動しなければ飽きられるって、聞いたから」
……誰がそのようなことを」
「その本と、本を捨てた名前も知らない人達だよ。僕もそう思う。してもらってばかりで何も返せないなんて、そんな一方的な関係はいずれ」

 それ以上言葉にする前に唇に手を当てられた。
 そうっと覆うように口を塞いでくる手は祈るように重ねられていて、「それ以上は言わないで」と懇願されているようにさえ思う。

「平蔵の言い分は承知した」
「じゃあこれからは」

 あっさり外れた手にほっとして、無意識に声が明るくなっていく自分を自覚する前に強く抱き締められた。
 その手は背中を擦るように撫でてからゆっくりと下りていって、やがて布越しの尻に割り入るようにぐっと窄まりを押される。

「ひぇっ」
「だが拙者は奉仕されるよりする方が好きでな」

 確かに日頃からそんなケはあった。
 あったけれども、まるで平蔵を黙らせるようにぐりぐりと窄まりを刺激してくるのは何だか違うような。

「あっぁっあ、やぁっそこ押さないでっ」

 雄を受け入れる快感をすっかり覚えたそこは指にさえ反応して、ぞくぞくと背筋の根から這い上がってくる快感に腰が浮く。
 このままじゃまともに意見を交わす前に頭をぐちゃぐちゃにされてしまうと予感して肩を掴むけど、見下ろした先の万葉はにこりと微笑んだまま、そのくせ漂う怒気めいたものを隠さず片手で器用に平蔵の帯を解いた。

「承知したとは言ったが、全てを受け入れたわけではござらぬ」

 手つきだけは丁寧に布団に下ろされて、見上げた先の笑顔は愛らしささえあるのに嫌な予感がする。
 そのままちゅっと可愛らしいリップ音とともにキスをされて可愛がるように頭を撫でられれば条件反射で力が抜けてしまうが、これで逃げ道が完全に塞がれてしまった事に平蔵はまだ気付いていなかった。



「や、ぁん、かずは、手つなぎたい」
「うむ」

 万葉のやり方はいつも優しい。
 平蔵が手を繋ぎたいと言えばすぐに繋いでくれて、口吸いをねだって見つめればすぐに顔を近付けてくる。今も平蔵の好きな浅いところを中心になかを擦ってきて、ぱちゅんぱちゅんと控えめな水音さえ耳に心地好い。
 おまけに万葉は褒め上手でもあった。万葉に触れられる度に快感を拾っては「平蔵はやはり覚えが早い」「感じてくれて嬉しい」と直接言葉にしたり、言葉が無くとも口付けや頭を撫でる手つきで表明してくれる。
 今も繋いだ手に力を込めたり緩めたりして万葉自身も気持ち良くなっていると伝えてくれて、この瞬間が平蔵はとても好きで、思う存分万葉に身を預けて馬鹿になれるのだ。

「ひゃん、………ぅ、ぁあ、ん、はぅ、……ん、いく、またいっちゃう……

 緩やかな抽送の最中に宣言すれば、こくりと頷いた万葉がペースを崩さないままとんとんと中を突き上げてくる。あんな話をした後だからか、普段よりちょっと深めに挿入されているのが気になるけれど、今までもこんな事が無かったわけじゃない。
 そんな万葉の首元に腕を回して抱き付きながら薄くなった白濁をぴしゃっと吐き出せば、万葉もややペースを上げて自らの快感を拾いに行くのがお決まりだった。

(熱心な顔してるのかな)

 なるべく平蔵に負担をかけすぎないよう注意しながら腰を振る万葉の顔は毎回真剣そのもので、熱っぽい眼差しを注がれるのが好きでいつもの如くチラ見する。
 しかし今日の万葉は目が合うと同時に意味深ににっこり笑ってみせて、大きく開かれた脚をいつもよりきつい角度で上げさせて、

「────いっ……!?」

 ごちゅん、となかが抉られる感覚に衝撃を受けた。
 ちかちかと目の前に星が飛んで、それから体の最奥を目指すようなどちゅどちゅと抉るような突き上げに眩暈がして、次いで訪れる痛みに悲鳴めいた声が上がる。

「えっ、何っやだ! 痛いってば、ひんっ、やぁっ! 押さないでぇ……!」

 直前まで慣らされたおかげか、実際はそこまで痛くない。
 どちらかといえば衝撃の方が大きくて逃げを打つ腰を痕が付くんじゃないかってくらい強く掴まれて、万葉らしからぬ強引な仕草にひぇっと引き攣った声が出る。

「平蔵は、学習意欲が高いのでござろう……?」
「ひんっ、いや、いやいや、むりっ……これ以上入んない……!」
「まだ早いかと思ったが、そのような事を気にかけるくらいには余裕なようであるし。それに」
「う、うぇえっ、……つよ、い………、や、なんでぇ………?」

 いつも気遣いながら感謝を伝えてくれる万葉が、時にはじれったいくらい優しい恋人が、今日は全然言うことを聞いてくれない。
 日頃泣き言などこれっぽっちも言わない平蔵が半泣きで拒否しているのに、どうしてやめてくれないのだろう。

「行動せねば飽きられる、であったか」
「もうむり、それ以上むりだからぁ!」

 わけがわからない。
 平蔵は万葉と気持ち良く抱き合いたくて、ただでさえもどかしい友人関係から数年越しに恋人になれて、遠恋なのもあって少しでも飽きられる可能性を潰したかっただけなのに。

「二度とそのような発想が起こらぬよう、学習して貰わねばな」

 どうして処刑宣告のように聞こえるのだろう。
 こんな万葉を、平蔵は知らない。



「あぅう……! やだ、ほんとうにむりだから、奥むり……!!」
「これ、逃げてばかりでは慣れぬよ」
「ひゃぅん、ぁう……っやぁ!」

 互いの手を繋いだままがむしゃらに奥を目指すだけでなく、平蔵の好きな浅い位置のしこりも押し潰して擦られる。
 かつてそんな奥まで入られたことの無かった平蔵はそれだけで素直に快楽を感じてしまって、一突きされるごとに大きく背をのけぞらせて甘い声が出た。

「ひぃっぅ、きもちぃの、つよい……! まって、おねがぃ、まってぇ」
「待たぬ」

 普段は平蔵が待ったをかければ息が整うまで待って優しい言葉をかけてくれるのに、普段はかなり気を遣われていたのだと痛みと快感にぱちぱち弾ける頭で思い知る。
 もはや何をされてもびくんびくんと全身が痙攣して、ちっとも思い通りにならない四肢と過ぎた快楽に恐ろしくなって泣き出しても、万葉は涙を拭うどころかますます繋がりを深くして、そんなにも彼を怒らせるような何かをしてしまったのかと回らない頭で後悔した。

「ゆるひて、もうっ……へんなことっしないから、ちゃんとするからぁっ」
「平蔵はちゃんとしておるよ。ちゃんとしすぎていたでござる」
「やぁっ何でぇ……!!」

 もう嫌だと、無理だと訴える体が勝手に腕を突っぱねて万葉を退かそうとするけれど、力の入らないそれを意に介さない万葉はますます前のめりになって繋がりを深くする。
 どちゅん、と音がしそうなくらい真上から体重をかけられて、既に体内に埋まっている性器がますます奥まった場所を穿った。
 ごりゅごりゅとしこりごと内臓を潰すような熱と質量に、体内の全部が溶かされてしまうんじゃないかと錯覚を覚え、平蔵はますます体の下で暴れた。
 何度も強制的に達した体はほぼ色の無くなった精液をぴしゃんと弱く吐き出して、万葉も回数は少ないながらに平蔵のなかに何度か射精する。
 その度に感じたことのない熱がじわじわと体内に広がっていく感じがして、ちかちかする視界もあって平蔵は既に今が現実なのかもわからなくなってきた。

「二人で共に、都度どこまでできるか話し合っていきたかったが、放っておけばいらぬ学習と疑惑を持たれるようであるからな」

 ならば多少の荒療治は仕方あるまい。
 かろうじて聞こえた声は次いでどちゅんと奥を穿った熱によって吹っ飛んでしまう。
 もはや怖いのか気持ち良いのかわからなくなって、わけもわからぬまま謝ったり嫌がったりする平蔵の声に確かな快楽も滲んでいることに万葉は気付いている。

「やぁぁああ! おかしくなる、あたま、ばかになって、もぉゆるしてよぉ!!」
「平蔵のたゆまぬ向上心を、拙者は心から慕っておるが」

 ずるんと抜かれかかったそれが、またしこりを押しながらどちゅんと奥を叩く。
 もはやのけぞり過ぎてどこを見ているかもわからない平蔵の肩口に初めて噛み痕を残しながら、放っておいても精液を吐き出し続ける平蔵の性器をやわく握った。

「たまに独断専行しすぎるところが困りものにござる。これはその仕置きでござるよ」
「やらぁまたいっちゃう! やだってば、もぉいきたくない! こわい、やぁっ……、くる、やだきちゃう、んん~~~~……!」

 なかが収縮してはまたその刺激で達して、終わりの見えない快感の波に頭も全身もめちゃくちゃになる。
 鈴口に爪を立てられたせいで前からもぴちゃぴちゃと精液が止まらなくなって、イキ狂わせてくるのは万葉だというのに、今の平蔵は目の前の存在に縋るしかなくてぐちゃぐちゃな顔で懇願する。

「もぉしない、もぉやらない、かずはのイヤなことしないから! ごめ、……うぅ~~……
「あぁ、沢山泣いてしまったな。けどわかってもらえて嬉しいでござる」

 布団の隅に置いてあったちり紙で顔を拭かれれば、やっと快楽地獄が終わると思ってほっとした平蔵の口元が緩む。
 やっと万葉に優しくしてもらえて嬉しいとその表情が語っていて、力の入らない腕で万葉の首元に腕を回してぎゅっと抱き付く。

「えへへ……。万葉、好きだよ」
「拙者もお慕いしておるよ。さて」

 ずるりと性器が抜かれた感覚に「んっ」と声が漏れた。
 散々あられもない場所を擦られたせいで敏感になっているそこはちょっとの刺激でもぞわぞわと喜悦を運んで、腫れたそこからどろりと何かが流れ出るのを感じる。

「あぁ、こんなになってしまって……
「僕のなか、気持ち良かったんだよね……?」
「平蔵はいつも極上にござる。しかしこのままにもしておけぬゆえ」

 行為の最中あまり甘えられなかったのでここぞと甘えた顔を見せる平蔵に、つられるようににこりと微笑む万葉の指があわいに触れた。

「ひぇっ」
「すぐに掻き出さねばな。時間を置くと厄介にござる」
「いい、いい! 自分でやるから」
「しかし力が入らぬであろう? 後始末は拙者の仕事ゆえ、お主は寝ておればよい」
「いや普段はそれでいいけど今はちょっと、いや君絶対わかってるよね?! まだ怒ってるの?」
「仕置きが終わったとは申しておらぬ。掻き出しがてらその辺りもじっくり話そうぞ」

 腹の中のものを掻き出すべく人差し指と中指を合わせて鉤状に曲げてみせる万葉の笑みが、いつも通り愛らしいのに恐ろしく見える。
 まだまだ敏感ななかをまた引っ掻かれたらどうなってしまうのか末恐ろしくて、逃げを打つ平蔵の腰を笑顔の万葉が押さえつけるのは容易かった。


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