謎時空。
@azisaitsumuri
カンバスの上を筆が、色が、滑る。その都度、時が進む。そりゃそうだ。
「おまえって、結局それ、過去のことだろ。」
傭兵が言ったことが、リッパーには脈絡無く感じた。
そのせいでつい顔を上げてしまった。あーあ。
「過去?」
リッパーの傾げた首に答える傭兵曰く。
「例え描いている景色が現在のものだとしても、描き終えた頃、どころか描いている間に進んだ時のせいで、過去のことになるだろ。」
「……まあ。絵ですし?」
未来、を題材にしたとて、描いた絵それそのものは描き終わった、という過去形に違いない。
「なら、現在に手を伸ばさないか?」
言った傭兵が無造作に手を広げるから、リッパーは少し驚愕と不可解を伴って、傾けた首の儘静止した。
そして少しして笑った。
「なぁんだ。構ってほしいんですか。」
傭兵は眉を少し動かすだけで、黙った儘だ。
だからリッパーは告げる。
「邪魔しない程度なら、こっち来て良いですよ。」
その言葉に今度こそ明らかに顔を顰めた傭兵は、そのあと諦めたように大きく息を吐くと、手を下ろしてリッパーのそばに寄った。邪魔しないように背中に触れ、その体温をリッパーに伝えた。
例え向き合っているのがカンバスの過去の景色でも、現在には確かにこの男がいる。