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俺は元気でやってるぜ。

全体公開 Δドラヒナ 3831文字
2024-10-07 10:40:12

成立済みのΔドラヒナ前提で、母の日ネタのお話です。兄弟喧嘩より後の時間軸になります。
Δロナルドくんにとっても、両親と言えばヒヨシ兄ちゃん。自分がいつも食べているΔ隊長のクッキーに、カーネーションのアイシングをして、白い花のクッキーは両親の墓に供える為。そして、赤い花のクッキーを、ヒヨシに贈ろうと、悪戦苦闘するそんなお話です。こっそり、Δ版の気障なキスネタも添えてます。
みっぴきが墓参りした後、やってきたヒヨシ・ヒマリ兄妹のシーンを追加しました。

2024/05/13に上げました。

Posted by @kw42431393

 「こんにちは。隊長、ロナルド、ジョン。」 
 「いらっしゃい、ヒナイチくん。」

  こうしてこの時間帯に、隊長の家にお邪魔するのは、少し珍しい。
 私と隊長達の休みが、合わなかったんでな退治人達も夜間こそ、仕事で忙しい職業だ。だから、中抜けさせて貰って、非番の隊長の元に来ている。
 本当は、休みが合えばよかったんだけどな。
 みっぴき揃って、やりたい事があったから。

 「あれこれは。」
 「そう。これから作るプレゼントと一緒に、贈ろうと思ってね。」
 玄関に活けられているのは、赤のカーネーションの花束が2つと、白のカーネーションの花束が1つ。
 白い花束は、ロナルドのものだ。彼もよく知らないらしいのだがロナルドの所は、両親が早くに他界されて、兄の吸血鬼ヒヨシが親代わりを務めてくれた。だから、赤い花束は、兄に贈るつもりなのだろう。



 「彼とヒマリちゃんが襲ってきた時は、どうなる事かと思ったよな。」
 「彼らにとっては、『ちょっとした兄弟喧嘩』だとさ。後片づけも、地獄だったよ。シンヨコの女性達にも、片っ端からちょっかいをかけるから、術も解かなきゃならんし、VRCも大忙しだったよね。」

 吸血鬼達の大侵攻で、我々に捕らえられたロナルドは、今やすっかり、チームΔの突撃隊長の役割だ。
 そして、弟のその後を聞いて、チラッと顔を見せに来た実兄と実妹。共に、真祖の血を引くのではという噂の三人が揃った、挨拶代わりの兄弟喧嘩。
 それは、あの大侵攻の比ではなかった。
 本部長の決定には、当初、皆が難色を示したものだが。
 チームΔがなければ、あの二人を止める事は難しかったと思う。

 『日出男、よくやった。ここまでやるとは、思わなんだわ。』
 『いってて、ニヒヒ。だろ、だろ?兄貴の弟だもんよ、俺は。週バンで『畏怖い』って、書いてくれっかな?』
 『ちいに。つよ。』
 『あぁ、強うなった。ヒマリ、そろそろ帰るか。じゃあ引き続き、うちの弟をよろしく。』
 『ん。よ。』

 大騒ぎさせておいて、これだった。しれっと、帰ってしまってな。
 でも、ロナルドやヒマリちゃんへの眼差しを見るに彼の女性観は、まぁ、置いといてとても、家族を大事にしている事が分かったんだ。
 ロナルドが二言目には、『兄貴の様な』と言う理由が、分かる気がする。

 『わっ!また、割っちまった。また、やり直しかよ~。』

  力を入れ過ぎヌよ。さぁ、ヌンが手伝うヌから。まだまだ、クッキーはあるヌ。

  キッチンの方から、その噂の本人の声が聞こえてくる。中々、苦戦しているらしい。
 「アハハ、やってるな。ロナルドは。」
 「部屋が、鉄臭くてすまないね。うちの母に贈るプレゼントも吸血鬼用だから、どうしても。」

  そう。明日は、母の日だ。地元の埼玉で、父と共にギルドと道場を守ってくれている母に、私は兄とカーネーションを贈る手配は済ませている。
 だけど、私もやっぱり自分の手をかけた『何か』を送りたくて、ここに来たんだ。
 「はい、どうぞ。」
 母の事を考えていると、目の前に赤いカーネーションが一輪差し出された。あれ、これは
 「艶々してる。これは飴か?」
 「そうそう。これは、ヒナイチくんに。花弁を剥がして、一枚ずつ食べる事が出来るよ。」
 器用だな。パッと見た目では、分からない。でも、綺麗過ぎて食べるのが勿体ないな。
 「赤いカーネーションと言えば、母の日のイメージだけど。プロポーズにも、よく使うもの。だから、君にもあげたくて。」
 そう言って、隊長が私の髪を掬ってキスをしてくれる。やっぱり、顔に出ていたらしい。
 「勿体ない、なんて思わないで食べてね。本当にプロポーズをする時は、もっともっと素敵なのをあげる。」
 耳元で囁いたりして、本当に気障なんだからこれからも、ずっとそうしてくれるんだろう。
 私が何十歳になってもそう考えると、気恥ずかしいな。
 「お母様のは、これに奮発した高い生き血を混ぜて作ったんだ。あの人は、多忙な方だからね。仕事の合間に、少しずつ食べて貰ってもいいかなそう思ったんだ。」
 そうだな。隊長のお母上は、有名な弁護士だ。頭脳担当だから、隊長同様、甘いものが欲しいよな。



 「おっ、ヒナイチ。来たな。」
 「あぁ、どうだ?出来そうか?」
 「ヌ~ン。」

  修羅場になったキッチンで、ペンを持ったロナルドが苦笑いをする。彼の前に置かれているのは、アイシング前のカーネーション型のクッキーだ。
 色も赤、ピンク、オレンジ、緑、紫、青と揃っている。
 「兄貴にも、ドラ公のクッキーを食べて貰いたいからさ。せめて、俺がデコレーションぐらいって思うと、力が入り過ぎちゃってよ。」

  だと、思う。私も同じ事を考えたんだ。だから、仕事を中抜けして、ここにお邪魔させて貰った訳だ。
 だって、そうだろう。隊長の作るお菓子は、世界一美味しいんだ。
 大切な母にも食べて貰いたいそう思う。
 「仕方がないお子様だね。まだまだ、クッキー種があるから焼いてあげるよ。しかし、全員揃ってロナルドくんのご両親のお墓参り間に合うかな。」
 う~ん、この惨状を見ると。作ったクッキーを宅配に出してから、ロナルドのご両親のお墓に、カーネーションを供えに行く約束だったんだ。
 時計を見るだんだん厳しくなってきたな。
 「う〝~。ま、間に合わせるぜ。夜になると、ヒナイチが仕事だろ。明日になると、ドラルクが忙しくて、一緒に行けなくなるからよ。」

 それだな。私も、自分の分を塗り終えよう。ロナルドが終わったら、すぐ出発出来るように。
 何色にしようかな。隊長が選んでくれた、ラッピングペーパーが似合う、明るい色がいいな。

 「よし、一個出来たぞ。」

 その調子ヌよ。ロナルドくん。

 その声に顔を上げると、ガビガビながら、赤いカーネーション型のクッキーが目に入った。
 色白な彼の手の中で、それはよく映えて、胸を張って存在を主張している。
 「美味しそうに出来てるぞ。お兄さんもヒマリちゃんも、喜んでくれるだろうな。」
 そう言うと、ロナルドは頬をポリポリ掻きながら、こう言った。
 「兄貴達もだけどよ。昼の間にお前達を連れて行って、お袋達に紹介したいんだよ。もうちょっと、ペースを上げてかないとな。」
 「光栄だね、そう言ってくれると。ゴリラの面倒を見た甲斐が、あるというものだ。」
 そう言って、照れ臭そうにロナルドを小突く隊長の姿はとても微笑ましかった。
 そして、下でブー垂れているロナルドも、横で笑っているジョンも。
 この先ずっと、何があってもこの風景を守りたいそう思う。
 そう言えば、ロナルドは私達を親御さん達にどう紹介するつもりなんだろう? 

 「ん~、たいした事じゃねえよ。そもそも、あんまり両親の記憶がなくってさ。それでも、カーネーションを供えて伝えたいんだ。心配すんな、こいつらとシンヨコって街で元気にやってるよ、って。」
 「そっか。それがいい。」
 コツを掴んだのかな。
 彼の手の中で、今度は彼の心の様に、真っ白なカーネーションが咲いていた。

  「エヘヘそれからよ。こいつらは、俺が一番大好きな人達だぞ、って。よろしくなってそれだけだぜ。」



 「これ、ちいに。」
 「あぁ先に来とったようじゃな。」
 
 しばらくご無沙汰だった、両親の墓。
 本来ならば、雑草が生え、コケの一つも生えていてもおかしくはない。
 なのに今、目の前の墓石は几帳面に磨かれ、草一本も生えておらなんだ。綺麗に箒で掃いたのだろう。木の葉一つ、落ちていなかった。
 そして、目が覚める様に白いカーネーションが、供えられていた。
 日出男が年の割にお子様なのもあるが心は優しいがズボラで、細かい事は気にしない。
 おそらく、今のあいつの面倒を見てくれている、吸血鬼対策課のガリヒョロの隊長さんとマジロ、日出男との連携プレーで俺に向かってきた、あの退治人のお嬢さんもここに来て、手伝ってくれたのに違いない。
 何より

 「クッキーと手紙。」
 「そうじゃなどれどれ。」
 「ふふっ。」

 白いカーネーションが描かれた、アイシングクッキー。
 そこに添えられていた手紙には、日出男の雑な筆跡で、こう書かれていた。

 『アニキとヒマリへ  アニキんちにも、カーネーションと同じクッキーを送っておいたぜ。アイシングしたのは俺だけど、クッキーを焼いたのはドラルクだ。マジで美味いから、安心してヒマリと食ってくれよな。母の日にってもおかしな話だけどさ、俺にとってはお袋っていや、実質アニキだもんよ。また、シンヨコに遊びに来てくれよな。もっと、畏怖くなった俺を見せてやるからさ。  日出男』

 やれやれあの大騒ぎの後で、『また、来てくれ』ときた。あそこは、可愛い女の子も多かったし、居心地もよさそうじゃ。
 折角の、可愛い弟のご招待。
 また、近々、今回のお礼も兼ねて、今度はゆっくりと

 「日出男を、本当に大事にしてくれておるようじゃ。ヒマリ、帰ってからのクッキーも、次回会うのも楽しみじゃな。」
 「ん。」


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