成立済みのΔドラヒナ前提で、母の日ネタのお話です。兄弟喧嘩より後の時間軸になります。
Δロナルドくんにとっても、両親と言えばヒヨシ兄ちゃん。自分がいつも食べているΔ隊長のクッキーに、カーネーションのアイシングをして、白い花のクッキーは両親の墓に供える為。そして、赤い花のクッキーを、ヒヨシに贈ろうと、悪戦苦闘する…そんなお話です。こっそり、Δ版の気障なキスネタも添えてます。
みっぴきが墓参りした後、やってきたヒヨシ・ヒマリ兄妹のシーンを追加しました。
2024/05/13に上げました。
@kw42431393
「こんにちは。隊長、ロナルド、ジョン。」
「いらっしゃい、ヒナイチくん。」
こうしてこの時間帯に、隊長の家にお邪魔するのは、少し珍しい。
私と隊長達の休みが、合わなかったんでな…退治人達も夜間こそ、仕事で忙しい職業だ。だから、中抜けさせて貰って、非番の隊長の元に来ている。
本当は、休みが合えばよかったんだけどな。
みっぴき揃って、やりたい事があったから。
「あれ…これは。」
「そう。これから作るプレゼントと一緒に、贈ろうと思ってね。」
玄関に活けられているのは、赤のカーネーションの花束が2つと、白のカーネーションの花束が1つ。
白い花束は、ロナルドのものだ。彼もよく知らないらしいのだが…ロナルドの所は、両親が早くに他界されて、兄の吸血鬼ヒヨシが親代わりを務めてくれた。だから、赤い花束は、兄に贈るつもりなのだろう。
「彼とヒマリちゃんが襲ってきた時は、どうなる事かと思ったよな。」
「彼らにとっては、『ちょっとした兄弟喧嘩』…だとさ。後片づけも、地獄だったよ。シンヨコの女性達にも、片っ端からちょっかいをかけるから、術も解かなきゃならんし、VRCも大忙しだったよね。」
吸血鬼達の大侵攻で、我々に捕らえられたロナルドは、今やすっかり、チームΔの突撃隊長の役割だ。
そして、弟のその後を聞いて、チラッと顔を見せに来た…実兄と実妹。共に、真祖の血を引くのでは…という噂の三人が揃った、挨拶代わりの兄弟喧嘩。
それは、あの大侵攻の比ではなかった。
本部長の決定には、当初、皆が難色を示したものだが。
チームΔがなければ、あの二人を止める事は難しかったと思う。
『日出男、よくやった。ここまでやるとは、思わなんだわ。』
『…いってて…、ニヒヒ。だろ、だろ?兄貴の弟だもんよ、俺は。週バンで『畏怖い』って、書いてくれっかな?』
『ちいに。つよ。』
『あぁ、強うなった。ヒマリ、そろそろ帰るか。じゃあ引き続き、うちの弟をよろしく。』
『ん。よ。』
大騒ぎさせておいて、これだった。しれっと、帰ってしまってな。
でも、ロナルドやヒマリちゃんへの眼差しを見るに…彼の女性観は、まぁ、置いといて…とても、家族を大事にしている事が分かったんだ。
ロナルドが二言目には、『兄貴の様な…』と言う理由が、分かる気がする。
『わっ!また、割っちまった。また、やり直しかよ~。』
力を入れ過ぎヌよ。さぁ、ヌンが手伝うヌから。まだまだ、クッキーはあるヌ。
キッチンの方から、その噂の本人の声が聞こえてくる。中々、苦戦しているらしい。
「アハハ、やってるな。ロナルドは。」
「部屋が、鉄臭くてすまないね。うちの母に贈るプレゼントも吸血鬼用だから、どうしても。」
そう。明日は、母の日だ。地元の埼玉で、父と共にギルドと道場を守ってくれている母に、私は兄とカーネーションを贈る手配は済ませている。
だけど、私もやっぱり自分の手をかけた『何か』を送りたくて、ここに来たんだ。
「はい、どうぞ。」
母の事を考えていると、目の前に赤いカーネーションが一輪差し出された。あれ、これは…
「艶々してる。これは…飴か?」
「そうそう。これは、ヒナイチくんに。花弁を剥がして、一枚ずつ食べる事が出来るよ。」
器用だな。パッと見た目では、分からない。でも、綺麗過ぎて食べるのが勿体ないな。
「赤いカーネーションと言えば、母の日のイメージだけど。プロポーズにも、よく使うもの。だから、君にもあげたくて。」
そう言って、隊長が私の髪を掬ってキスをしてくれる。やっぱり、顔に出ていたらしい。
「勿体ない、なんて思わないで食べてね。本当にプロポーズをする時は、もっともっと素敵なのをあげる。」
耳元で囁いたりして、本当に気障なんだから…これからも、ずっとそうしてくれるんだろう。
私が何十歳になっても…そう考えると、気恥ずかしいな。
「お母様のは、これに奮発した高い生き血を混ぜて作ったんだ。あの人は、多忙な方だからね。仕事の合間に、少しずつ食べて貰ってもいいかな…そう思ったんだ。」
そうだな。隊長のお母上は、有名な弁護士だ。頭脳担当だから、隊長同様、甘いものが欲しいよな。
「おっ、ヒナイチ。来たな。」
「あぁ、どうだ?出来そうか?」
「ヌ~ン。」
修羅場になったキッチンで、ペンを持ったロナルドが苦笑いをする。彼の前に置かれているのは、アイシング前のカーネーション型のクッキーだ。
色も赤、ピンク、オレンジ、緑、紫、青と揃っている。
「兄貴にも、ドラ公のクッキーを食べて貰いたいからさ。せめて、俺がデコレーションぐらい…って思うと、力が入り過ぎちゃってよ。」
だと、思う。私も同じ事を考えたんだ。だから、仕事を中抜けして、ここにお邪魔させて貰った訳だ。
だって、そうだろう。隊長の作るお菓子は、世界一美味しいんだ。
大切な母にも食べて貰いたい…そう思う。
「仕方がないお子様だね。まだまだ、クッキー種があるから焼いてあげるよ。しかし、全員揃ってロナルドくんのご両親のお墓参り…間に合うかな。」
う~ん、この惨状を見ると。作ったクッキーを宅配に出してから、ロナルドのご両親のお墓に、カーネーションを供えに行く約束だったんだ。
時計を見る…だんだん厳しくなってきたな。
「う〝~。ま、間に合わせるぜ。夜になると、ヒナイチが仕事だろ。明日になると、ドラルクが忙しくて、一緒に行けなくなるからよ。」
それだな。私も、自分の分を塗り終えよう。ロナルドが終わったら、すぐ出発出来るように。
何色にしようかな。隊長が選んでくれた、ラッピングペーパーが似合う、明るい色がいいな。
「よし、一個出来たぞ。」
その調子ヌよ。ロナルドくん。
その声に顔を上げると、ガビガビながら、赤いカーネーション型のクッキーが目に入った。
色白な彼の手の中で、それはよく映えて、胸を張って存在を主張している。
「美味しそうに出来てるぞ。お兄さんもヒマリちゃんも、喜んでくれるだろうな。」
そう言うと、ロナルドは頬をポリポリ掻きながら、こう言った。
「兄貴達もだけどよ。昼の間にお前達を連れて行って、お袋達に紹介したいんだよ。もうちょっと、ペースを上げてかないとな。」
「光栄だね、そう言ってくれると。ゴリラの面倒を見た甲斐が、あるというものだ。」
そう言って、照れ臭そうにロナルドを小突く隊長の姿は…とても微笑ましかった。
そして、下でブー垂れているロナルドも、横で笑っているジョンも。
この先ずっと、何があってもこの風景を守りたい…そう思う。
そう言えば、ロナルドは私達を親御さん達にどう紹介するつもりなんだろう?
「ん~、たいした事じゃねえよ。そもそも、あんまり両親の記憶がなくってさ。それでも、カーネーションを供えて伝えたいんだ。心配すんな、こいつらとシンヨコって街で元気にやってるよ、って。」
「そっか。それがいい。」
コツを掴んだのかな。
彼の手の中で、今度は彼の心の様に、真っ白なカーネーションが咲いていた。
「エヘヘ…それからよ。こいつらは、俺が一番大好きな人達だぞ、って。よろしくなって…それだけだぜ。」
「これ、ちいに。」
「あぁ…先に来とったようじゃな。」
しばらくご無沙汰だった、両親の墓。
本来ならば、雑草が生え、コケの一つも生えていてもおかしくはない。
なのに今、目の前の墓石は几帳面に磨かれ、草一本も生えておらなんだ。綺麗に箒で掃いたのだろう。木の葉一つ、落ちていなかった。
そして、目が覚める様に白いカーネーションが、供えられていた。
日出男が年の割にお子様なのもあるが…心は優しいがズボラで、細かい事は気にしない。
おそらく、今のあいつの面倒を見てくれている、吸血鬼対策課のガリヒョロの隊長さんとマジロ、日出男との連携プレーで俺に向かってきた、あの退治人のお嬢さんもここに来て、手伝ってくれたのに違いない。
何より…
「クッキーと手紙。」
「そうじゃな…どれどれ。」
「ふふっ。」
白いカーネーションが描かれた、アイシングクッキー。
そこに添えられていた手紙には、日出男の雑な筆跡で、こう書かれていた。
『アニキとヒマリへ アニキんちにも、カーネーションと同じクッキーを送っておいたぜ。アイシングしたのは俺だけど、クッキーを焼いたのはドラルクだ。マジで美味いから、安心してヒマリと食ってくれよな。母の日にってもおかしな話だけどさ、俺にとってはお袋っていや、実質アニキだもんよ。また、シンヨコに遊びに来てくれよな。もっと、畏怖くなった俺を見せてやるからさ。 日出男』
やれやれ…あの大騒ぎの後で、『また、来てくれ』ときた。あそこは、可愛い女の子も多かったし、居心地もよさそうじゃ。
折角の、可愛い弟のご招待。
また、近々、今回のお礼も兼ねて、今度はゆっくりと…
「日出男を、本当に大事にしてくれておるようじゃ。ヒマリ、帰ってからのクッキーも、次回会うのも楽しみじゃな。」
「ん。」