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エースはいつも君の頭上

2024-10-11 21:01:19

生意気後輩部活のエースなシノレバー×先輩マネージャーゴーノレドの学パロ短話を書きました。

何部なんだろうとか、細部はあんまり考えてないです。
ただ「年下シルバー×年上ゴールドが見てえ」だけて書きました。
モブ女子が一瞬だけ出ます。

体育館の床に、多数の音が響く。
体重の掛かったダン、ダンッという踏み締める足音と、俊敏な動きに応じて摩擦を起こした靴底がキュキュッと高く鳴る音、そしてボールが何度も手に当たっては弾む音に、口から発せられる野太い掛け声も重なった。
ゴールドは耳慣れたそれらの音だけではなく、体育館の端から端までに目を配りながら息を吐く。
不意に、固まっていた集団の中から一人の男が飛び出した。
ボールを自分の一部であるかのように操り、かと思えばあっという間に綺麗なフォームでそれを放つ。寸分の狂いもなくそれが決まった瞬間、ゴールドの耳をつんざくような高く黄色い声が体育館に響き渡った。

「見た見た!? シルバーくんまた決めた!これで何点目!!?」
「えーわかんない! でもちょーかっこいー!!!!」
「シルバーくーん!! こっち向いてー!!!」

……
体育館の出入り口から聞こえたその声はその後も止むことなく、きゃあきゃあとヒートアップし続けている。
ゴールドは溜息を吐きながら体育館の端を歩き、つかつかと出入り口まで向かった。
「おい、点数表の点入れ忘れてんぞ」
「休憩だと思ってボーッとすんな、もう残り2分だから、急いでレギュラーの奴らのドリンク持ってきてくれ。用意は出来てっから運んでくるだけでいい」
通りすがりについでとばかりの伝達を事細かに行なったのち、出入り口に辿り着いたゴールドはすうっと息を大きく吸って、そして叫ぶ。

「くぉら!!! ンなとこで大人数突っ立ってんじゃねえよギャルども!! ギャーギャー喚かれると集中途切れんだろうが迷惑だ!!! さっさといなくなれ!!」
叫ばれた「ギャルども」もとい女子達はびくりと肩を震わせ、何よと言いたげな顔でゴールドを見つめた。しかし険しい表情を向けられ、渋々そこから立ち去っていく。
「なにあれ」「三年のマネージャーらしいよ」「自分はモテないからってやつあたりしちゃってイタイよね」と好き放題ぼやきながら去る背中を、ゴールドは「ケッ」と呟きながら見つめていた。

……ゴールド」
名を呼ばれて振り返ったゴールドは、再び顔を顰める。そして持っていたノートで、ぱこんと相手の頭を軽く叩いた。
「年上を呼び捨てにしてんじゃねえよシルバー。いい加減に『先輩』をつけて呼べ」
……中学時代に対戦して一度もオレに勝ったことのないゴールドセンパイお疲れ様です」
……練習試合後に息継ぎなしで悪口言えんのはすげえな、とだけ言っとく」
んで何の用だよ、とゴールドはシルバーに問う。
「ドリンク、もらおうかと思って」
「あん? 後輩に指示出したから今配ってるだろうが。そっちからもらって来いよ」
「あんたの手から直接欲しい」
「よくわかんねえ奴だな……?」
ゴールドは首を傾げながらも、それ以上の具体的回答が返ってこないことはよく知っている。
だから早々に会話を打ち切り、シルバーと共にドリンクを取りに向かった。








……お、お疲れお疲れ」
日も既に山の中へ落ち、すっかり辺りも暗くなってきた部室棟。もう誰も居ないだろうとふんでいたシルバーは、勢いよく扉を開け、中にいたゴールドを見た瞬間、顔を顰めて言葉を紡ぐ。
「またあんたが最後なのか」
「居残り自主練してる後輩がいたらそりゃ残ってるだろ」
ゴールドは歯を見せて笑いながらそんなことを口にする。
「今日の鍵当番はオレだから、別に気にしなくてよかったのに」
「まぁ、オレが残りたかっただけだからあんま気にすんなよ。やることは沢山あるし、それにオレ、他人ひとの練習見るのも好きだしな」
ゴールドは部室内に置かれた椅子に腰掛け、机の上に沢山の紙束を乗せていた。乱雑に積まれ、見るために置かれていたはずの机中央の紙すらもクシャクシャになっていた。
「練習試合のスコア表と……他校のデータ、か?」
「おう! コーチとおめえらの親御さん達が協力して、こないだの秋大会のビデオ撮ってきてくれてたから、それ見てデータまとめた奴な」
……ゴールドが?」
「先輩つけろっつってんだろ。他に誰がいるンだよ」
目を瞠るシルバーに、失礼な奴とゴールドは唇を尖らせる。
「まぁオレも、選手のときはこういうのあんまり考えなかったけどな。でも得られる情報は多いほうがいいだろ? 対戦相手の得意技への対策技特訓とかも出来るしな。だから明日からの練習メニューもいろいろ考えて、」
「あんたは、また選手になろうとは思わないのか?」
またその話かよ、とゴールドは笑う。
笑いながら、ジャージズボンを膝から引っ張り、右の腓骨側の皮膚を曝け出した。大きな傷跡が縦に真っ直ぐ伸びている。
「何度も言ってっけど、暴走車に撥ねられて奇跡的に生きてただけで、もうスポーツをやるには難しい脚だ。おめえに勝ち逃げされちまったのは悔しいけど、同じ学校ならこれ以上の味方はいねえ。オレのぶんまで精々活躍してくれよ。あと変なところで怪我すんな、おめえ結構無茶しがちなんだからよ」
……ゴールドのプレイ、好きだったから追い掛けてきたのに」
「冗談言ってねえでさっさと着替えろ。汗かいたまんまでいると身体冷えるぞ」
……
シルバーは黙り込むと、自身のロッカーのほうへ向かい、そこを開けてユニフォームを脱ぎ出す。
ゴールドは机に向かいながらシルバーに語りかけた。
「そういえば、オレの作ったトレーニングメニューだとそろそろ物足りなくなって来てんだろ」
「ふざけるな。他のメンバーの2倍はやらされてるんだぞ」
「みんなメニュー違えから一概には言えねーと思うけど……まあそうかもな。2.5倍くらいってとこだ」
その数字を聞き、シルバーはゴールドに目を向ける。
驚愕の瞳を向けられ、ゴールドは悪戯っぽく歯を見せ笑った。

「うちのエース様にゃあ、とことん強くなってもらわねえとな」
もちろん周りもだけどよ、とゴールドは再び手元の紙に目を落とし、ペンを回しながら言葉を続けた。
「おめえテクニックはあんのになよっちいからよお、下半身鍛えるメニューばっか組んでたんだよな。でも今日見てて、充分使えるくれえになってたから、センパイとしてここはひとつ褒美でもやろうかなと思ってたんだぜ」
……褒美?」
「おう、特別な。何か奢ってほしいもんとかあるか? ただし高校生の小遣いの範囲でな」
作業が一段落したゴールドは、そう言いながらシルバーにまた目を向ける。
制服に着替え終えたシルバーは、真っ直ぐにゴールドを見つめていた。
「着替え終わったんなら帰ろうぜ。そこのコンビニでなんか奢ってやってもいいし、」
……が欲しい」
「は?」
シルバーは素早くゴールドの座る椅子まで近づくと、机に片手を置き、もう一方の手でゴールドの顎を上に引いた。
「ぐえっ」
座ったままのゴールドは、強引に上を向かされ首の痛みに声を上げる。
シルバーの顔が、ゴールドの近くにあった。鼻が触れ合うほどの近距離だった。
「な、なに、しる、」
「先輩が欲しいです」
「え、」
シルバーはテーブルに積み上がった書類を払い除け、バサバサと床に落とす。ゴールドはそれに目を向けようとしたが、それよりも早くシルバーがゴールドの首筋に顔を近づけた。
「え、ちょっ……!?」
ジャージのファスナーを下ろされて、ゴールドは首筋に強く吸いつかれる。
思わず跳ねた肩を見て、「先輩、結構敏感なんですね」とシルバーは笑った。
「や、しるば……くすぐって、え、から、」
「そうですか」
聞き慣れないシルバーの敬語に、ゴールドは戸惑う。
舌先が首を撫でては、ちゅうっと数回強く吸われ続けた。
「っ、ん……!」
そしていつの間にかゴールドはインナーの裾をたくし上げられ、腹を人目に晒されている。見ているのはシルバーだけだが、そのシルバーの手が侵入し腹から胸へとゆっくり這い上がってきた。
「ちょ、やめ、」
「嫌です」
逃げようにも、ゴールドは椅子に座った状態のまま身体を抑え込まれていた。
下手に動けばバランスを崩して倒れ、最悪相手の怪我にも繋がるかもしれない。
ゴールドはどこまでも、シルバーの身体のことを気にしており、そしてシルバーもその心理を利用していた。
「っ、これ以上、は……、じょ、だんじゃ、すまねえから……!」
……
まだ冗談だと思っているのか、とシルバーは少しだけ苛立ち、下半身にも手を伸ばそうとする。
しかしそこでゴールドはついに限界を迎え、シルバーを力いっぱい突き飛ばした。

「ぐ……
突き飛ばされた際に床に尻餅をつき、シルバーはその僅かな痛みに顔を歪ませる。
見上げると、顔を真っ赤にしたゴールドが椅子に座ったままシルバーを見下ろしていた。
金色の瞳は動揺で少し潤んでおり、乱れされて崩れたジャージと併せて改めて視界に入れると、より煽情的にシルバーの目に映る。だからシルバーは、思わずごくりと唾を飲み込んだ。

「ごー、」
……さきにかえる」
「は?」
ぽかんとするシルバーを無視して、ゴールドは床に散らばった書類を急いでかき集め、乱暴に掴んで立ち上がる。
自身のロッカーからショルダーバッグを取り出し肩に掛けると、未だ床に尻餅をついたままのシルバーをキッと睨みつけた。

……明日には忘れてやっから、おめえもさっさと気持ち切り替えとけ」
「おいゴールド、褒美は……
「んなもん、今のおふざけでチャラだチャラ!!!!!」
あと先輩呼びいい加減忘れんな!!!とまるで捨て台詞のように叫び、ゴールドは部室から出て行った。





…………しくじった……
シルバーは床に座ったまま、ひとり項垂れて額に手を当てる。

だってあの人が、オレのためにメニューを組んでくれるから。
オレのためにドリンクを作って渡してくれるから。
オレのために、対戦校の情報まで集めてくれるから。
オレのために毎日毎日遅くまで仕事してるから。
──オレだけに特別にご褒美をくれるとか、言い出すから。

……そこは言うだろう、先輩が欲しいって」
誰に言うわけでもなく、シルバーは呟く。

中学の試合で見たときから目を引く人間だった。
会場内での休憩中にもよく笑い、仲間を不思議と鼓舞させる存在で。
進学先を調べて追い掛けたら、不慮の事故で引退してマネージャーになっていたけれど、中身はほとんど変わっていなかった。
けれど外から試合を見る立場になったからなのか、激情を真っ直ぐぶつけるだけでなく、より知略を張り巡らせる一面も見せるようになっていて。

シルバーがそんなゴールドという先輩を「好きなのだ」とはっきり認識するまで、時間はほとんど掛からなかった。

……
落ち込みながら、けれど試合のときのようにシルバーは落ち着こうと意識しながら考える。焦らず前向きに思考を続ける姿勢はゴールドから教わったのだ。
それに出ていく直前にも、ゴールドは叫んだ。『おめえもさっさと気持ち切り替えとけ』と。




……明日から本気で口説く」
シルバーは目標を定め、やっと床から立ち上がる。ほこりを払い、部室の窓を閉め、他に乱雑に放置されたものがないか軽く見渡した。
特に何もないことを確認して、出入り口近くのスイッチを弄り部室の照明を落とす。
扉の窓から月明かりが差した。随分と暗くなっている。
こんな夜に先輩は1人で帰って大丈夫だろうか、とシルバーはふと考える。
「追い掛けるか……
『明日から』という目標をすぐさま切り替えて、シルバーはまた呟く。
最後に扉の鍵を責任持って閉め、シルバーは走り出した。
疲れていたはずなのに、シルバーは高揚する気持ちをそのまま足に乗せ、試合のとき以上に速く、月明かりに照らされた道を駆ける。
全てあの人がもたらした力だ、と強く思いながら。

愛しい愛しい先輩のもとへと、シルバーはただひたすらに走り続けるのだった。




【fin.】

●後輩シルバーによる部活のマネージャーゴールド先輩についての日誌 https://privatter.me/page/6713deebf4061
後輩シルバーの日記風文章を不定期に書いたりもしています
後輩×先輩が私の中でアツいです


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