わりと慣れあってる系の了遊(ほんわか)。
@d9_bond
遊作が、花を持ってきた。
カフェナギは海辺の広場に店を出す事がある。
了見がデンシティに戻っている間はバイト上がりに遊作が鴻上邸へ顔を出すことがしばしばある。その際、今日のように手土産にとホットドッグを持ってくることは多々あったが、花を持ってきたのは初めてだった。
「それは」
「もらった」
「誰に」
「知らない人だ」
遊作が携えてきた花──というか花のついた一枝は、銀木犀だ。金木犀よりも弱いながら、金木犀に似た甘い香りの小さな淡い色の花をつける、可憐な印象の花だ。今は反対の手にした見慣れた紙袋から漏れるホットドッグの匂いに完全に負けていて残念ながら香りが分からないが。
銀木犀は畳んだ新聞紙にくるまれていて、枝の先はアルミホイルで包まれ輪ゴムで留めてある。店の、という感じでは全くない。
とりあえず家にあげ、手土産だというホットドックを並んで片付けつつ話を聞く。
「大した話じゃない。通学路の途中の家の庭にこの花が咲いていて、見ていたんだ。オレンジじゃない花は珍しいなと思って」
実際この辺りでは金木犀を植えている家の方が多い。
「そうしたら、ちょうど家の人が庭の手入れだとかで出てきて親切で分けてくれた。それだけだ」
「なるほど」
花と全く縁のない人間が持っているとインパクトがあるが、確かに話自体はシンプルだ。
だが、
「それで、この花の何がそんなに気になった?」
続けて問う。遊作は不思議そうな顔で了見を見た。
「珍しかったと言っただろ」
「それだけなら家の人間が親切心を出すほど見たりしない。分けると言われても固辞したはずだ」
珍しい土産にと持ってきたのなら納得しないでもない。だが今日持ってきたホットドッグはいつも通り手土産として出してきたが花はそのつもりがないらしく、切り口に水だけやってスクールバッグと一緒に置いていた。
「ああ……まあ、それも大した話じゃない」
遊作は、いくらかの躊躇のあとで目線を逸らした。らしくない自覚はあるのだろう、歯切れ悪く言う。
「この花、最初に見た時に日影だったせいか、おまえの髪の色に似ていると思ったんだが──」
傍らに置いていた銀木犀の枝をそっと手にすると、彼我の間に掲げてみせる。
「──気のせいだった」
そう言って、照れたように笑った。
確かに銀木犀は銀と言ってもやわらかな黄色がかった白色で、青みを帯びた了見の白銀とははっきり違う。
「きれいなことに違いはないがな」
「そうだな」
了見も微笑を返した。やさしい白の花を手にはにかみ目を伏せる様は珍しく、可愛らしくも感じた。