X以外のSNSでの投稿にはPrivatter+がおすすめです

安心できる場所

全体公開 みずいこ・単話 1680文字
2024-10-21 01:05:37

みずいこお題部第十九回より「おはよう」
関西弁非ネイティブのため口調は勘頼り

Posted by @a_yuuzora

ふあ、と息と声の合間のような声が隣から聞こえた。最近ではすっかりなじみになったその声は水上のもので、ただでさえ眠そうに重たい瞼をしぱしぱとさせながらログを見ている。
「眠いんか? 疲れとるん?」
そう生駒が訊くと、水上は眉根を寄せた。
「眠いのはそうなんすけど、疲れとる感じはせえへんのですよ」
「最近あくび多ない?」
「え、多いすか。気ぃ悪くさせてたんならすいません」
「別にそんなことないねんけど、単純に心配でな。夜寝れとる?」
「あー……それが、最近あんまり。寝付くまでに1時間くらいかかったり、朝までに二三回くらい起きてもーたりしてて」
「えっ、なにそれ大変やん! 授業とか任務とか大丈夫なん?」
「そこらへんは大丈夫です。ここで待機しとるときだけえらく眠いくらいで」
二人がそんな話をしていると、隠岐が口を挟んだ。
「それ、トリオン体の《時差ボケ》ちゃいます?」
トリオン体でいる時間が長いと寝つきが悪くなる、という話がある。
脳の活動時間は充分にあるのに生身が疲れていないせいで、ある種の《時差ボケ》としてそういう症状がでる、という推測がなされているが詳細は定かではない。そもそも寝つきの良さや睡眠の質は個人差があるし、個人の中でもその時のコンディションによって変わるものであるからだ。
「時差ボケぇ? 今更?」
「先輩三学期に入って自由登校になった途端滅多に学校来ぉへんくなったし、空いた時間任務入れまくってるでしょ。トリオン体でおる時間が長くなったからそういうこともあるんちゃうかなあって」
「はあ、なるほどなあ。隠岐は人のことちゃあんと見とるなあ」
生駒がそう褒めると隠岐は「それほどでも」と謙遜し、水上はむっと唇を曲げる。
「その言い方やと俺は学校通わんと生活リズム崩す奴みたいに聞こえ……ふあ」
抗議した瞬間あくびをしたものだから、自然とその場が長閑な笑いに包まれる。
『イコさん、いま気付いたこと言ってええです?』
内部通話で隠岐から生駒に通信がくる。
『何?』
『あの、水上先輩おれたちの前だと全然あくびとかせえへん気がして。そんな眠そうでもないし』
『え、ほんま?』
『おれも近くに人がおるとあんま寝れへんし、先輩も前似たようなこと言ってたんですよ。だから授業中居眠りとかもせえへんって。でも先輩イコさんの前だとよぉあくびするでしょ? もしかしたらイコさんの傍だと先輩安心して眠くなってるんちゃうかなあって思ったんですけど、どうでしょ』
『隠岐、それ世紀の大発見ちゃう? 天才か?』
『それほどでも』
「よし!!」
いきなり生駒が大きな声を出して立ち上がり、水上の腕を引いてベイルアウトマットのエリアまで連れて行く。
「え、え、なんすか」
「家に居っても寝れへんならいっそのことここで寝ればええよ。ほら、トリガーオフしぃ」
「え、あ、ハイ」
シュンと音がして水上は隊服から私服に戻る。生駒は自分のベイルアウトマットを水上のマットにぴったりと寄せてダブルベッドのような形にした。
「なんか嫌な予感するんすけど」
「嫌ってなんや、嫌って」
生駒はマットの上から水上を引っ張り上げやや強引に寝かせる。そして自分もそのすぐ隣で横になった。
「不眠症の水上をイコさんが寝かしつけてあげような」
嫌な予感大当たりやんけ、と口には出さないまでも思いながら渋い顔をした水上は、抵抗を諦めて大人しくされるがままになっている。
「絵面が地獄」
「そう?」
「でかい男とゴツい男が添い寝してるのまあまあ見苦しいでしょ」
「別に身内以外の誰が見るわけでもあらへんし、別にええやろ」
「まあ、確かに? ……ふあ」
「ほら、はよ寝え」
「じゃあ……まあ、仮眠とらせてもらいます。おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
すると三分もしないうちに水上は安らかな寝息を立て始め、生駒はその寝顔をしばらく眺めてふふっと笑った。

「ん? おはよう、よぉ眠れた?」
「はい……びっくりするくらいめっっっちゃ眠れました……
そんな会話をするのはそれから三時間後のことだった。


投稿にいいねする


© 2026 Privatter All Rights Reserved.