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10月31日 14:00

全体公開 神無三十一受け 7 31 3411文字
2024-10-31 13:52:39

神無さん誕生日記念
カルみと シナリオネタバレあり

 

 テーブルの上に広がる色とりどりのスイーツを見回した神無は、きらきらと目を輝かせてため息を吐いた。

 「幸せ……
 「まだ食べてないのに?」
 「こういうのは見るところから始まってんの!!」

 かぼちゃや紫芋や栗を中心に作られたプリンやミルフィーユやマカロンにケーキを上段に構えて、二段目にはこんがりと焼けたスコーン、三段目にはサンドイッチと季節の野菜が入ったキッシュを盛ったアフタヌーンティーセットを神無はうっとりと眺める。
 そんな神無の嬉しそうな様子を微笑ましく見守った縞斑は、店員が持ってきたコーヒーとロイヤルミルクティを受け取ってそれぞれの前に運んだ。

 「じゃ、じゃあいただきます!」
 「いただきます」

 真っ先にゼリーに目をつけた神無は、常温になる前にいそいそとスプーンに掬うと口に運ぶ。

 「〜〜すっっごいおいしい!!」
 「ふふ、よかったね」

 爽やかなジュレの甘さに痺れる頬を押さえて身悶えする神無を眺めながら、縞斑は三段目のサンドイッチを齧った。

 「ん、確かにおいしい」
 「ほんとだ!こんなの甘いものとしょっぱいもので無限に食べれちゃうじゃん……!!」
 「おぉ女の子がよく言うやつだ」

 ぱくぱくと甘いものの間に口直しのサラダやキッシュをつまむ神無は、ひとつひとつのスイーツを口に運ぶたびに丁寧に味わって頬を綻ばせる。
 二人分のアフタヌーンティーの予約は決して安いものではないが、ここまで喜んでくれるのなら奢り甲斐があるものだと縞斑はコーヒーを傾けて笑った。

 「このカヌレももちもちでおいしい〜っ」
 「神無ちゃんって甘いものに関しては食べるの早いよね」
 「だって生クリームとかカスタードって室温でちょっとずつ溶けちゃうんだよ?!少しでも早く美味しいうちに食べないと作った人に失礼じゃん!!」
 「なるほどなぁ」

 もりもりとスイーツを平らげた神無は、焼きたてのうちにスコーンにクロテッドクリームとラズベリークリームをたっぷり塗って齧る。
 口の端にジャムをつけたままもふもふと食べ進める彼を笑った縞斑は、手を伸ばして指でそれを拭ってやった。
 甘酸っぱいジャムを舌先で転がした縞斑が確かに上等なものだと感心していると、早々にスイーツの皿を空にした神無が首を傾げる。

 「先輩はスイーツ食べないの?」
 「あぁ、全部は食べ切れないだろうから神無ちゃんが食べたいやつ好きに取っていっていいよ」
 「えっ!?いいの?!」
 「元からそのつもりで二人分注文したからね」

 そう言ってスイーツの乗った皿を神無の方へ向ければ、彼は信じられないものを見るような表情でぱちぱちと瞬きをした。

 「先輩って……ひょっとしていい人なの?」
 「おっと、今更気づいた?」
 「だっていつも俺に意地悪だし、アサギリの言うこと聞かないし、この前だって……
 「やだなぁ神無ちゃん、お腹いっぱいなら言ってくれればいいのに」
 「あー!!うそうそ!うそです!!わぁ先輩ったらいつも通りやっさしー!!」

 皿を引こうとする縞斑の腕を掴んで訂正した神無は、改めてスイーツたちを眺めながら真剣に考え込む。

 「カヌレとマカロン……モンブランあぁでも、こっちのミルフィーユは甘さ控えめですごく美味しいから先輩にも食べてほしい……
 「俺は別に一口もらえたらそれでいいよ?」
 「えぇじゃあミルフィーユ一口食べて!あとスコーン絶品だから!二個あるから一個食べ、」

 思わぬスイーツのおかわりに嬉々とした表情で手を伸ばした神無はふと、ちらちらと周りの客たちが自分たちに視線を送っていることに気がついた。
 ただでさえ女性しかいない店内では、男二人でアフタヌーンティーを注文している時点で随分浮いている。
 それどころか女性顔負けの勢いでスイーツを平らげて、同席者のスイーツにまで手を伸ばす神無の姿は注目の的になっていた。
 流石にがっつき過ぎだろうか。周りの客たちに意地汚いと思われてしまったかもしれない。一緒に居る縞斑まで白い目を向けられてしまうのは耐えられないと顔を青くした神無は、持ち上げた手をおずおずと下ろした。

 「ん?どうしたの?」
 「あー……えっと、やっぱりその、さすがに食べ過ぎかもなーって……おもって……
 
 呟いて俯く神無はちらりと他の客を見回す。
 縞斑がつられて周囲を見回せば目があった客たちはぱっと顔を逸らしたが、それでも二人の様子が気になるらしく時々視線を送っていた。

 「あぁ……なるほどね?」

 絶世の美男が嬉々としてスイーツを平らげるという絵になる光景なのだから、客たちが視線を送るのも仕方がないだろう。
 その眼差しに悪意がないことを確かめた縞斑は、神無の勘違いを訂正したところで肩身が狭いことには変わりないだろうと考えて神無の分のアフタヌーンティースタンドを持ち上げた。

 「え、わっ先輩なにすんの?」
 「いいからいいから」

 神無の前から空のスタンドを取り上げた縞斑は、自分の前にあるまだスイーツで溢れたスタンドと入れ替える。
 何事もなくコーヒーを傾ける縞斑を不安げに見上げる神無の一方、客たちの間から密やかな歓声が上がった。
 恋愛における性別の壁が取り払われつつあるこの都市部において、男性同士のカップルはさほど珍しいものではない。
 察しの良い一部の客から向けられる視線を愛想笑いでやり過ごした縞斑は、困惑する神無に向かって首を傾げて見せる。

 「これでいいんじゃない?」
 「でも、」
 「元々気にしなくていいけど、さっき神無ちゃんが言ってた2つはこっちから取って食べるからさ」
 「あ……うん、ありがとう
 「それよりそのゼリー、ちょっと気になるから一口ちょうだい?」

 どぎまぎする神無をそう言いくるめた縞斑は、彼が差し出したスプーンに盛られたゼリーを口に運ぶ。
 爽やかなジュレと底に注がれた栗のムースが溶け合う絶妙な味に、縞斑は感心した様子で目を瞬いた。

 「ん、これもおいしいね」
 「だ、だろ?」
 「コーヒーにも合うし、良いお店だ」

 コーヒーを傾けて話題を逸らす縞斑の立ち回りはスマートで、相変わらず年上の余裕を感じて少しだけ悔しい。
 そこに噛みつけば更に子供っぽさに拍車が掛かってしまうことをすでに本日実感済みの神無は、素直に彼の優しさに甘えて話題に乗ることにした。

 「それにしても、よく店の予定取れたよね。予約混んでなかった?」
 「まぁ……女性の皆さんの甘いものへの情熱には挫けそうになったけど、可愛い恋人のためならなんとか?」

 この店はネットでの予約でほとんどの席が埋まるほどの有名店だ。ましてやアフタヌーンティーとなれば平日でも予約は必須のはずだが、縞斑も例外なく甘いものに飢えた女性たちとの予約戦争に参加したらしい。
 モニターの前で予約開始時間をじっと待つ縞斑の姿は少しだけおかしくて、神無は思わずくすくすと笑みを漏らす。

 「……今失礼なこと考えたろ」
 「べっつにー?」

 とぼける神無だが、ひとまず周囲の視線からは意識が逸れたことを良しとして縞斑もスコーンをかじった。

 「ところで先輩、このあとどうするの?」
 「あぁ、このあとは神無ちゃんが欲しいプレゼントが決まらなかったから、このあたりのお店見て一緒に選んで……夕飯を食べた後にちょっと行きたいところがあるかな」

 縞斑から神無の欲しいものが分からなかったから一緒に選びたいという話は昨晩のうちに聞かされていたため、何となく縞斑にねだるつもりでいたものを頭の中に思い浮かべて神無はこくりと頷く。

 「どっちもいいけど、夕食後の行き先はないしょ?」
 「内緒かな。損はさせないつもりだから、今日一日は俺に時間をくれない?」

 にっと自信満々に笑う縞斑の姿はまさに頼れる大人で、そんな彼に背伸びをして追いつきたいという気持ちは変わらないが、朝から失態を犯した今日くらいは甘えてしまおうと思えた。

 「わかった、期待しとくね」
 「応えられるように努力するよ」

 せめて挑発的に返事をした神無は、最後の楽しみにとっておいたカヌレをぱくりと頬張って笑ってみせるのだった。




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