傭の初夜を得られなかったリ()と殺伐過ぎてまともに喋れない傭
@azisaitsumuri
この小男を甚振った。
綺麗な夜に高揚した。その儘の気分で、やった。
まあたった一晩だ。
だが今迄お嬢さん方だったら、その一晩の内一瞬で下品なねをあげて、オシマイだった。
けれど生きたこの男と朝日を見た。この男は一晩を乗り切ったのだ。
「綺麗ですね。」
「グ……」
「夜も綺麗でしたけれど。」
「……ガ、は……」
「おまえ、どちらが綺麗だと思います?おまえはどちらがお好み?」
見下ろした先の地べたに蹲って地面と一体になってしまったかのような体はしかしどくどくと生きた証を流し続けているので、未だ土に還ることはなさそうだ。会話にならないどころか悲鳴も満足に上げられないのは、そこから血が流れ出ているから、声なんか出せないのだ。
けれどその目だけは閉じることなくこちらを見上げて、尚且つきちんと焦点を合わせている。わたしを、見ている。
身体のほうは兎も角、未だ正気を失っていない。失えていないようだ。
ということは、自分がなにをされてその結果どんな状態か理解してしまっているということであって、それを自分が今堪えられてしまっていることも理解してしまっているということだ。
かなり散々痛め付けて遣ったけれど、にも関わらずこの男、ここ迄甚振られたのが、初めてじゃないな。だから自分がこれくらいなら堪えられてしまうことを既に知っている。
これはよろしくないことだ。
良いこと悪いことの区別が無い自分でも思う。
どうして堪えられてしまったのか。正気を失うか、死んでしまえば良かったのに。じゃないと、また、堪えることになってしまう。またこの男は堪えてしまう。繰り返される苦痛を終わらせることの出来ない男を見下ろすところで、今更そう思っても、詮無いことだ。
膝を突いて濡らし、男のそば迄距離を下ろす。
未だこちらを見ている目を顔を掴んで下にさせ、その儘体も持ち上げる。口付けて中を吸って、自分の口に移した血溜まりを血溜まりに吐き出す。自分の口内を介して血溜まりの居場所を移動させること数度。
「ッゴっほ、っご」
漸く男がまともな呼吸を再開した。
自ら血を吐き出すさまを見ながら、自分も自身の口内を濯ぐように唾棄して血溜まりの中に唾を混ぜる。
「……ベッド迄運んで遣ればあとは自分で処置しますか?」
男はぐたりとして答えない。
そこに朝日が差しててらてらと血を反射させて、その下に広がる血溜まりにも湖光を作っている。
赤い水面から持ち上げてそれが泣くようにしたたるのを見届けながら、顔の向きを下にした儘運ぶ。たまに男が血を吐く。ぼたぼたと垂れて、氷柱のようだ。
男の部屋の扉から、ノブを抉って鍵を外す。蹴破るよりは派手な音が立たない。
薄いシーツに、心臓が上になるように横たえさせて、布団を被せる。部屋を見回してソファに引っ掛かっている布を布団の上から、更に被せる。
こうして置けば、勝手に生き延びてしまうだろうと思って。