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【DS1】不死ラレ掌編SS集

全体公開 ダクソ短編 1 4220文字
2024-11-12 19:04:23

140~300字程度の不死ラレSS詰め合わせです。基本1話完結
片思いも両思いも悲恋も死ネタも友情もごっちゃなのでご注意ください

※盗賊♀うち不死注意
※連載中長編『盗賊の左手、呪術師の右手』のパラレル時空

目次
・炎症反応 2≫
・夢で逢いましょう 3≫
・宝の在り処 4≫
・君の手のひらで踊る 5≫
・火傷 6≫
・栞 7≫
・置き土産 8≫
・鍵開けの才 9≫
・三十六度一分 10≫
・火盗人 11≫



炎症反応 / 不死ラレ

黒革の手袋から現れたしなやかな白い指は、少しの間空を惑い、それから躊躇いがちにゆっくり俺の手の上へ載せられた。触れた肌が彼女の持つ炎の熱で焼かれそうなほど熱い。
もしこの体が鉄で出来ていたら容易くとろりと溶かされていたであろう。だがそんな熱さすら心地良いと感じるほど、俺はその熱に飢えていた。
「呪術以外も教えて、師匠」
呪いのような言葉が炎症のように胸に広がり心を蝕んでいく。ひりつく胸の内に隠してきた本心が疼き痛む。教えて欲しいのはこちらの方だ。頭の中からあんたを追い払おうとしても出来ないのは、どうしてなのか。頼むから教えてくれよ。



夢で逢いましょう / 不死ラレ

温かな木漏れ日の下、ラレンティウスは手を挙げて微笑んだ。
「じゃあ、またな。あんた」
そんなに急いでどこかに行かないで。話したいことがいっぱいある。久しぶりの再会を懐かしむくらいは許されてもいいはずだ。その背を追いかけて名前を呼ぶと、彼は記憶通りの柔らかい微笑みで手を差し出す。私も行きたいと頼んでも彼は首を振る。
「あんたには使命があるじゃないか」
そんなことは分かってる。でも今はその手を取り、ただ談笑していたい。あなたの好きな呪術の話でもして、それから——私が口を開き掛けたところで、無情な炎が私を包む。
ああ、またか。篝火が私を現実へ引き戻す。篝火の微睡の中で、ここにはもういない彼の声を聞く。至る炎の中に彼はいた。篝火の中にも。変わらず温かい。けれどその熱に触れる前に目が覚める。夢の中でくらい話させて欲しいのに。憂鬱な気分で立ち上がりながら、再び短刀を手に取り誓う。
使命を果たした先で、必ずあの夢の続きを見よう。



宝の在り処 /ラレ→不死

呪術の鍛錬を終え、彼女は再び旅立とうと身支度を整え始めた。黒革の外套を羽織り、その肩の煤や埃を払いながらこちらを向く。
「師匠、何か欲しいものは?」
あなたの為なら何だって盗んでくる、と盗賊の娘は悪戯っぽく目を細める。何もないと首を振ると、盗賊は少し残念そうに首をすくめた。彼女なりの気遣いと分かっていても、こればかりは如何ともし難い。彼女は欲しいものは全て盗めば手に入ると思っているようだ。だが呪術然り、本当に得難い宝は盗みでは手に入らない。その磨かれた翡翠のような瞳を誰も独り占めできないのと同じように。
金銀財宝より欲しくて堪らないものを、彼女はきっと——まだ知らないだろう。



君の掌で踊る / ラレ→不死

魔術師と彼女の笑い声が聞こえる。あいつも俺と同じように、助けられた縁で魔術を教えているのだそうだ。いつにも増して楽しげな声から意識を逸らすべく、瞑想に集中する。胸に纏わりつくこの感情から一刻も早く逃れたかった。
師匠師匠、と弾むような声が俺を現実に引き戻す。魔術師に習った魔術の話を聞かされながら、胸の奥で渦巻く何かを自覚した。
魔術と呪術どちらが優れているかを競うつもりはない。でもあいつのところに寄ったその足で俺のところに来るなんて……罪作りにも程があるだろう。
呪術の誇りを右手に灯し、いつになくメラメラとよく燃える火の勢いに思わず苦笑する。
魔術師と魔術、そのどちらに嫉妬しているのか。踊る炎は答えない。



火傷 / ラレ→不死

神々の火を継ぐと言い、あいつは王の元へ向かった。まだ全ての呪術を教えていないのに。待てど暮らせど祭祀場に戻ることはなく、突然、陰り蝕まれていた太陽が眩むように瞬いた。その時、使命を果たしたのだと理解した。
あいつを想い篝火を眺めた。あの強く純粋な火の名残が、まだどこかに残っていやしないかと思って。灰でも良かった。火の粉ひとひらでも。
結局、何も見つかるはずはなく、焦げついた心には火傷のような感情だけが取り残された。ジクジクと痛む傷は、やがて膿むだろう。だが形見代わりのこの傷だけは、治らなければいいと思った。



栞 / 学パロラレ→不死

準備室の外からパタパタと忙しない足音が近付いてくる。ああ、もうこんな時間か。顔を上げ、時計を見れば……長針は約束の時間より少し早い刻を指し示している。月曜の5時間授業の後、3階の角の教室から早歩きで真っ直ぐ準備室を目指すと、これくらいの時間になるらしい。読みかけのページに栞を挟み本を閉じた。
つい先日までは誰にも妨げられることのなかった時間。それなのに、いつからか俺は一向に読み終わらない本に栞を挟むのを心待ちにしていた。
どんな伝奇小説より、扉を叩く音で始まる青い物語が気になる。
もしそう伝えたら、あんたは一体どんな顔をしてくれるんだろうな。



置き土産 / ラレ→不死

大小、形さまざまな鍵を眺めていると、かつての旅を思い出す。錆びた鉄の錠を開けた鍵、大きな門扉を容易く開けた華やかな装飾の鍵、どの錠にも噛み合わず持ち主に役立たずだと罵られた一番小さな鍵。それらを慣れた手つきで捌きながら、鍵開けする真剣な眼差しに、開錠の音と同時にふっと緩められる目元。その先に待ち受ける未知に心躍らせ、弾む声色と足取り。どんなに時が流れても、この鍵の束が記憶の扉をこじ開けてあの日々を鮮明に思い出させてくれる。俺には破る錠なんてないのに、全く粋な置き土産をしてくれたもんだ。腹の内で独り言つと、そうでしょう?と賛同するみたいに、鍵たちは一斉に揺れ心地良い音を奏でた。金属が擦れ合うくすぐったい音は、聞き馴染んだ誰かの笑い声に似ている気がした。



鍵開けの才 / 性転換IF(不死♂ラレ♀)

「なあ、呪い師。これが何か分かるか?」
錆びた鍵束、いわゆる万能鍵を揺らして見せる。興味津々に見つめた魔女は、目を丸くして小さく首を振った。
「そうか。これはな、どんなものでも開けられる魔法の鍵だ」
大仰だが間違っちゃいない。それに、お人好しの魔女はこんな戯言だって本気で信じ込むんだから、世話のない話だ。
「なあ、あんたならこの鍵で何を手に入れたい?」
間を置いて、魔女はくすくすと笑い出す。それから鍵束を揺らす俺の手を取り、無垢な青い瞳でこちらを見上げた。
「私の欲しいものなら、もうここにある。あなたといる時間に、鍵なんてかかっていない」
がつんと頭を殴られたような衝撃。思わぬ反応に面食らい、鍵束を取り落とす始末。
あんた、泥棒の才能もあったんだな」



三十六度一分 / 現パロ不死×ラレ

カーテンから覗く朝日が、寝ぼけまなこに容赦なく差し込む。まだ眠い目を擦り待ち受けを覗くと、アラームが鳴るまで五分も寝られたことに気付く。
いま目を閉じれば、まだ寝直せる。定位置から大きく動いた布団とタオルケットを掛け直す。仕上げに無防備な寝顔を盗み見て、眠りに就こうとし……目が合った。
光に透かしたラムネ瓶みたいな瞳が、一部始終見ていたと言わんばかりに薄められる。にやついた口元が憎たらしくて、抗議のつもりで顔を押しのける。すると、手首を取られ、そのまま口元まで持っていかれて頬ずりをされる。右手は朝一番のちくちくした無精髭を堪能する。痛くはないものの、こそばゆい。手を引こうとしても一向に終わる気配はなく、それどころか身体ごと強く引き寄せられる。
しまいには腕の中に捕らえられてしまった。同じ布団にいたとは思えないほど温かい身体に包まれて、居心地の良さから抵抗をやめる。
「もう、起きただろう?」
寝起きの少し掠れた低い声は、目覚ましになるどころか眠りを誘うだけだ。呼吸に合わせて上下する胸に顔を埋めて、人肌の温もりを感じながら目を閉じた。
「温まるまで起きない」
冷えた鼻先と両手を彼の胸にぴったりとくっつける。規則正しい鼓動が少しだけ早くなって、再びゆっくりとしたペースに戻る。
「それなら、お安い御用だ」
頭上から掛けられた少しくぐもった声を合図に、両足も自由を奪われた。他の温もりは知らないけれど、いつどこに触れても彼は温かい。
以前平均体温を尋ねたところ、平均より大分低い私より、彼は一度以上も高いと分かった。全く意外ではない。彼が内に宿す情熱の炎を知れば、この程度で収まっているのが不思議なくらいだ。もし体温が心の温度で決まるなら、いまごろ私は大火傷を負っていただろう。
そんなことを思いながら、身体全てを任せ、ひとときの微睡みに身を委ねる。
私と彼の体温が、足して二で割って、ちょうど三十六度一分になるまで。



火盗人 / 不死→ラレ

あなたの優しい祈りが、いつも私の身を案じてくれるように。私もあなたに呪いを掛けていればよかった。喜び勇む背に掛ける呪文を知っていれば、あなたが炎に惹かれ身を亡ぼすのを防げただろうか。後悔しても痕跡は灰一つ残っていない。代わりに現れた魔女を《師》と呼ぶには躊躇われるだけの時間を共にした。貰った火を見て偲ぶ筋書きを、あなたが考えていたとは思わない。盗み続けの人生には相応しい罰のように思えた。初めて与えられた温かな光を奪われた今、私にとってこの世界の命運などどうでもよかった。あなたさえいればよかった世界に残されたのは私だけ。
闇は火をよく引き立てる。闇の中でなら、あなたがくれた火は漲る生命の血潮となり赤々と輝いた。胸の呪いを埋める闇は次第に広がって、次第にあなたの声も温もりも忘れていった。それでも、玉座を目指した。敷いた道が赤く染まっていく度、あなたを思い出した。炉の中で燻る目障りな燃え残りなんて吹き消して、今から最後の仕上げに取り掛かる。
私は盗人。あなたがくれた火を世界に焼べてやらずに、私だけの火にしよう。あなたはきっとそれを許さない。だから——早く私を𠮟りに来て。


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