@azisaitsumuri
リッパーは澱みなく動かしていた筆を止め、手を下ろしてそれを置いた。
「やっぱり。」
「なんだ?」
それを見ていた傭兵が反応を返した。
そこに傭兵しかいなかったからだ。
「人の視線というのは、相手の顔に行きがちです。表情というものが、大体は顔を指す言葉であるように、顔には情報が集まります。人の視線は、相手から情報を得ようと、相手の顔に目を向けがちになります。」
「……なるほど、そうだな。それで?」
「おまえの視線もわたしの顔を頻繁に見ています。」
「そうだ。そしてそれは、今おまえが言ったように、ごく自然なことのなのだろう。」
「いいえ。おかしいです。」
「……へえ。なにが?」
リッパーは筆を動かすように澱みなく話し、色を選ぶのに迷いがないようにきっぱりと断言した。
「わたしは仮面を付けています。そんなものを見ても情報が読み取れないと言う不変的な情報しか得られません。だから人は、この顔を見ても、一目見たら、それで終わる。」
「……それで?」
「おまえは、わたしの顔、見過ぎ。」
それにけたけたと笑う傭兵を放って、リッパーはまた描画に戻った。